強襲グランネロス~ファースト・シューティスト

作者:土師三良

●鋼鉄のビジョン
 ダモクレスのアンドロイドの一団が荒野を行く。
 最後尾にいるのは、シェリフスタイルのガンスリンガーを思わせる出で立ちの男性型アンドロイド。シルエットは人間と変わらないが、帽子の下にあるのは鋼の仮面のような顔だ。
 突然、彼はその無機質な顔の横に手をあて――、
「どうした、ドクターエータ?」
 ――と、虚空に語りかけた。誰かと通信を交わしているらしい。
「……なに? ……おいおい、今度はグランネロスに襲撃かよ……判った。すぐに戻る」
 ガンスリンガーのアンドロイドは通信を切り、立ち止まった。
 同時に他のアンドロイドたちも歩みを止め、一斉に振り返る。
「グランネロスでまたネズミどもが暴れてるらしいから、ちょっくら戻って退治してくるわ。二十七号と五十三号は一緒に来い。後の奴らはクワガタ野郎の追跡を続けろ」
 二体の屈強なアンドロイドを伴って、ガンスリンガーは来た道を引き返し始めた。
 先程までは後方にあった光景が仮面のミラーグラスに小さく映る。
 廃墟と化した町。
 その町の中にあるのだ。
 彼らの拠点――移動要塞グランネロスが。
「こういう時、人間だったら、不敵に笑って『面白くなってきやがった』とでも言うのかねぇ?」
 ガンスリンガーは誰にともなくそう尋ねた。
 ちっとも面白くなさそうな口調で。
 
●ザイフリートかく語りき
「ローカスト・ウォーを生き延びた『阿修羅クワガタさん』なるローカストとその一党がダモクレスの移動要塞グランネロスを襲撃した」
 ヘリポートに集まったケルベロスたちの前で、ヘリオライダーのザイフリートがいつになく興奮気味に語り始めた。
「グランネロスは『エクスガンナー・シリーズ』と呼ばれるダモクレスどもの活動拠点だったらしい。そこに蓄えられていたグラビティ・チェインを奪うため、阿修羅クワガタさんとやらは攻撃を仕掛けたのであろう。弱者の虐殺という手段を選ばず、あえて強敵であるダモクレスに挑むとは……敵にしておくには惜しい奴だな。いや、こういう者こそ、敵として相応しい。状況が許すなら、私自身が刃を交えたいものだ」
 それからザイフリートは『武人たる者の矜持が云々』とひとくさり語り、ケルベロスたちを少しばかり辟易させた後で本題に戻った。
「ダモクレスどもは阿修羅クワガタさんを追撃するため、エクスガンナー・シリーズを放った。今、グランネロスに残っているのは最低限の護衛のみ。この好機を放っておく手はあるまい? 三十人からなる強襲隊をグランネロスに送り込み――」
 ザイフリートの片手が上がり、すぐに振り下ろされた。
「――叩き潰す!」
 とはいえ、ケルベロスの強襲隊がグランネロスに攻め込めば、追撃に出ていたエクスガンナーたちはすぐさま戻ってくるだろう。それを阻止するためには、強襲隊とは別の面々がエクスガンナーを足止めしなくてはいけない。
「そういうわけで、その足止めをおまえたちにやってもらいたい」
 と、ザイフリートはケルベロスたちに言った。
「エクスガンナーは精鋭だ。おまけに量産型のダモクレスを従えている。撃破するのは難しいだろう。だが、今回の任務はあくまでも敵の足止め。グランネロス制圧の時間が稼げれば、それでいいのだ」
 ケルベロスたちが稼ぐべき時間は最低でも七分。もちろん、グランネロスが完全に制圧されるまで戦い続けるのが望ましいが、七分以上の時間を稼ぐことさえできれば、撤退という選択肢もありうる。敵にとってはグランネロスの防衛が最優先事項であるため、ケルベロスが背中を見せたとしても追撃してくることはないだろう。
 また、グランネロスはそれ自体が巨大なダモクレスであり、戦闘形態に変形することができるという。万が一、戦闘形態への変形が確認された場合は、強襲隊の支援に向かう必要があるかもしれない。
 続いて、皆が相手をすべきエクスガンナーについてザイフリートは説明を始めた。
「おまえたちが足止めするのは『エクスガンナー・ラムダ』という名の試作機だ。ガンスリンガー然とした姿をしており、その外見の通り、銃火器を自在に扱うことができる。能力や思考を成長させる機能も備えているらしい。それに先程も言ったように量産型のダモクレスもいる」
 ラムダが引き連れている量産型ダモクレスの数は二体。どちらも『ガードロイド・アイン』と呼ばれるタイプの護衛機であり、甲冑じみた姿をしている。性能はエクスガンナーに劣るが、ケルベロスが単体で敵う相手ではない。
「繰り返すが、敵を撃破する必要はない。時間を稼ぐことさえできれば、おまえたちの勝ちだ。そのことを忘れるな」
 と、改めて念を押した後で、ザイフリートはニヤリと笑ってみせた。
「では、行くとするか。ダモクレスどもに教えてやろう。自分たちが恐れるべき相手が阿修羅クワガタさんだけではないということをな」


参加者
不破野・翼(参番・e04393)
黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)
上野・零(シルクハットの死焔魔術師・e05125)
コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)
楠森・芳尾(霧隠れ・e11157)
天照・葵依(蒼天の剣・e15383)
月代・風花(雲心月性の巫・e18527)
サーティー・ピーシーズ(十三人目・e21959)

■リプレイ

●LOCK
 乾いた風とともにタンブルウィードが転がっていく。
 まるで逃げるかのように。
 一触即発の空気の中で対峙する二つの集団から。
 集団といっても、一方は三人しかいない。エクスガンナーのラムダと、ガードロイド・アインの二十七号と五十三号。
 先程まで彼らはグランネロスに向かっていた。その歩みが止まったのは、もう一方の集団――八人のケルベロスと二体のボクスドラゴンが目の前に降下してきたからだ。
「はじめまして」
 と、一礼したケルベロスは不破野・翼(参番・e04393)。べつに相手を馬鹿にしているわけではない。真剣に礼を尽くしているのである。倒すべき敵として。
「姓は不破野、名は翼。ただのケルベロスです。よろしくお願いします」
「いやいやいやいや」
 ラムダはかぶりを振った。その仮面のような顔に目鼻が備わっていれば、毒気を抜かれたような表情が浮かんでいるかもしれない。
「よろしくじゃねえよ。なんなの、おまえら? もしかして、グランネロスに侵入したネズミどもの御同輩か?」
「まあ、そんなところかねぇ」
 と、楠森・芳尾(霧隠れ・e11157)が答えた。表情も語調もひょうけているが、普段の彼をよく知る者なら気付くだろう。その声に緊張が滲んでいることに。
「俺らもグランネロスでいっちょ暴れてやろうと思ってたんだけどよぉ。ついてねえや。こんなところで別口の敵とカチ合っちまうとはなぁ」
 もちろん、本当に『いっちょ暴れてやろう』と思っていたわけではない。こちらの目的がラムダの足止めであることを悟らせないようにしているのだ。
「……だけど、ここで会ったのもなにかの縁。せっかくだから、一戦交えようじゃないか、エクスガンナー」
 芳尾に続いて、上野・零(シルクハットの死焔魔術師・e05125)がラムダに語りかけた。シルクハットの鍔に手をやり、余裕のある所作で角度を調整しながら。
「無理に相手をしろとは言わないけど、ここで僕らを止めないと――」
「――グランネロスを齧り回るネズミが増えることになるわよ」
 黒住・舞彩(我竜拳士・e04871)が後を引き取った。
「どの道、貴方に選択肢はないのよ、ラムダ。仲良く一緒にグラネロスに行くなんて無理な話なんだから」
「いや、俺は一緒に行っても構わねえよ」
 仮面のミラーグラスを舞彩に向けて、ラムダは零を真似するかのように帽子の鍔を摘んでみせた。
「戦う場所が変わるだけだからな。ここで戦おうが、グランネロスで戦おうが、結果は同じ。おまえらが無様に死ぬだけのこった」
「おうおう、言ってくれるじゃねえの。嫌いじゃないぜ、そういうノリ」
 サーティー・ピーシーズ(十三人目・e21959)が凶悪な笑みを浮かべて、斬霊刀の『My Sin』を抜いた。
「おら。そっちもはやく抜きな、ガンマン」
「じゃあ、遠慮なく……」
 ラムダの語尾に幾つもの銃声が重なった。二丁の拳銃を素早く抜き、盛大に弾丸をばらまいたのだ。

●STOCK
 ラムダより半秒ほど遅れて、ガードロイドたちも右肩のブラスターキャノンを斉射した。
 弾丸と熱線の豪雨を浴びたのは前衛陣――翼、舞彩、零。防具の破片が血飛沫とともに舞い散り、空気が焦げる臭いと硝煙の臭いが混じり合う。
 だが、それらはすぐに吹き飛ばされた。
 前衛陣の背後で起きた三つの爆発によって。
 敵の攻撃による爆発ではない。後衛の天照・葵依(蒼天の剣・e15383)がブレイブマインを用いて仲間たちの傷を癒したのだ。
「月詠! シュタール!」
 葵依の声を受け、二体のボクスドラゴンが属性をインストールした。月詠は舞彩に、シュタールは主人の翼に。
「ありがとう」
 シュタールに礼を言いつつ、翼が自分たちの前にサークリットチェインを展開した。
「甘い匂いにゃあ、ご用心。なんつってな」
 ニヤニヤと笑いながら(まだ緊張は隠しきれていなかったが)、芳尾が『乱心香(ランシンコウ)』を発動させた。催眠効果を有する無色透明の煙が袖口から流れ出て、ラムダへと伸びていく。
 しかし、その見えざる攻撃をラムダは躱した。敏捷性に基づくグラビティへの対処が得意なのかもしれない。
「無駄、無駄。おまえらの技なんぞ、俺には通用……」
 ラムダの言葉が途切れた。煙とは別の角度から鎖が飛来し、手首に絡みついたのだ。
「通用したみたいね」
 と、舞彩が言った。鎖の正体は彼女の右腕から伸びる超鋼金属製の『ドラゴニックチェーン』。魔法によるダメージだけでなく、怒りを植え付けることもできるグラビティだ。
 互いの右腕を鎖で繋いだ状態でラムダと舞彩は睨み合った。
 そこに甲高い声が響く。
「アタシもガンスリンガーの端くれ。銃を使って悪さする奴はほっとけねっすよ!」
 声の主はコンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)。
 ラムダは鎖を振りほどき、コンスタンツァを見た。
「生きるためにグラビティ・チェインを求めることを『悪さ』呼ばわりかよ。俺に言わせりゃ、餌としての立場もわきまえずにデウスエクスに噛みつくことこそ『悪さ』だぜ」
「アタシたちは餌なんかじゃないっす!」
 そう吐き捨てて、コンスタンツァは『殲剣の理』を熱唱した。舞彩と同様、敵に怒りを付与するために。
 彼女たちがラムダを怒りで引きつけている間に他の面々はガードロイドたちと戦っていた。
 ガードロイド『たち』といっても、攻撃を分散するような愚は犯していない。最初の標的は二十七号。まず、零がブラックスライムを放った。溶岩じみたそのスライム『D.black lava flame』は捕食モードに変じて、二十七号の巨体を包み込んだ。
 二十七号はスライムから脱出せんと必死にもがいたが、その隙を突いて――、
「逃がさないからね!」
 ――二刀を手にした月代・風花(雲心月性の巫・e18527)が突進した。左手の日本刀が閃き、二十七号の腱(に相当するパーツ)が月光斬で断ち切られる。
 更に別の刃が走り、黒いスライムに包まれた二十七号に青白い彩りを加えた。サーティーが『My Sin』で達人の一撃を浴びせ、氷結させたのだ。
 それでも二十七号は見かけ通りのタフさを示して、なんとかスライムから逃れ、左手のハンドレーザーで反撃した。『俺を無視するんじゃねえ』とばかりに五十三号もブラスターキャノンを発射した。
 両者の攻撃対象は今回も前衛陣。しかし、彼らに与えられたダメージは(全快とまではいかないが)すぐに癒された。翼がまたサークリットチェインを用いたのだ。
 一方、二十七号には癒し手がいない。先程の攻撃によって受けたダメージだけでなく、状態異常もまだ残っている。
「……どうせなら、もっと冷やしてみる?」
 零がエアシューズの蹴りで達人の一撃を打ち込み、二十七号の体の一部を凍り付かせた。間を置くことなく、芳尾のフロストレーザーが同じ場所に命中し、ダメ押しとばかりにサーティーが絶空斬のジグザグ効果で氷結の範囲を広げていく。
「おまえの低温稼働限界はどれくらいだぁ?」
 またもや凶悪な笑みを浮かべるサーティー。
 その横で風花が雷刃突を仕掛けた。斬霊刀『雲蒸竜変の太刀』を持つ右手に力を込めて、二十七号の装甲を抉り抜く。
「えーい!」
 彼女の叫びに砲撃の音が重なった。
 舞彩が左腕の『ドラゴニックガントレット』を砲撃形態に変形させて、ラムダめがけて轟竜砲を撃ち込んだのである。
 砲撃は一度では終わらない。コンスタンツァもドラゴニックハンマーから轟竜砲を放った。
「自称『ガンスリンガーの端くれ』のくせして、ちっとも銃を使っちゃいねえじゃねえか」
 二発の竜砲弾を立て続けに受けながらも、ラムダが銃を撃った。今度は連射ではなく、一点射撃。
 銃弾が真一文字の軌跡を描いて飛び、舞彩の左腕に突き刺さった。『ドラゴニックガントレット』の一部が砕け、血の代わりに地獄の炎が噴き上がる。破壊耐性を有する防具(ラムダの銃撃は破壊系のグラビティだった)を身につけているにもかかわらず、ダメージは決して小さくなかった。
 しかし、舞彩は動じない。
 信じているからだ。
 仲間たちを。
 その信頼を裏切ることなく、葵依がマインドシールドを素早く展開してヒールを施し、彼女の指示を受けたボクスドラゴンたちも舞彩の背中に属性をインストールした。

●BARREL
「いざや聞こし召せ、蔦ノ花神!」
 葵依の声に応じて、荒野に花々が咲いた。ケルベロスの前衛陣に蔦が伸び、傷口が塞がれていく。
 癒しは地上だけでなく、天からも訪れた。芳尾が降らせたメディカルレイン。こちらの対象は後衛だ(芳尾が自分に課した任の一つは、回復役たちを回復させることだった)。
 戦いが始まってから既に数分が経過している。二十七号は満身創痍だったが、まだ力尽きてはいない。集中的に狙っているとはいえ、舞彩とコンスタンツァはラムダの相手をしているし、葵依とサーヴァントたちは回復役に徹しているので、二十七号への攻撃手は五人だけなのだ。それに五人全員が常に攻撃していたわけではない(翼は序盤はサークリットチェインの重ね掛けをして、芳尾は回復役を兼任していた)し、前衛の翼と零は防御を優先する位置取りをしていたので、手数とダメージも犠牲になっていた。
 だが、防御と治癒を重視したことによって、ケルベロスに与えられるダメージもまた軽減されている。そして、それこそがケルベロスの狙いだった。皆、判っているのだ。自分たちの使命は敵を倒すことではなく、あくまでも時間稼ぎだということを。
 ラムダも愚かではないので、そのことに気付いたようだった。とはいえ、気付いたからといって、どうなるものでもない。
「よそ見すんなっす! アンタの相手はアタシっすよ!」
 グランネロスがある廃墟を見ていたラムダに向かって、コンスタンツァが叫ぶ。『ちっとも銃を使っちゃいない』と指摘された彼女ではあるが、今はリボルバー銃を構えていた。
「アタシの銃とアンタの銃、どっちが強いか勝負っすよ! GO、ロデオGOっす!」
 銃口から放たれたグラビティは『クレイジーロデオ』。猛り狂う牛のオーラを纏った赤い弾丸がラムダの脇腹を撃ち抜く。
 舞彩も何度目かの『ドラゴニックチェーン』でラムダにダメージを与えた。
 別の鎖も唸りをあげた。翼のケルベロスチェインだ。もちろん、目標は二十七号。鋼鉄の体を猟犬縛鎖が締めつける。
 先程の『クレイジーロデオ』の猛牛さながらに二十七号は暴れ回ったが、その激しい動きに翼が引きずられることはなかった。バトルオーラで自身の足を貫いて地面に縫い付け、踏ん張っているのだ。
「今です!」
「任せて!」
 翼の合図に応じて、風花が『砕破烈刃(サイハレッジン)』を繰り出した。
「すべてを砕く必殺の一撃、砕破!」
 大地の霊力を帯びた『雲蒸竜変の太刀』が二十七号の頭部に叩き込まれる。
 そして、二十七号はついに倒れ伏した。
 だが、勝利の感慨に浸る者はいない。
 それ以上に重要な事実を零が呟いたのだから。
「……七分経過」

●LOCK,STOCK,AND BARREL
 七分間――必要最低限の時間を稼ぐことはできた。
「一応、任務成功ってことだよなぁ」
 少しばかり余裕を取り戻した芳尾が仲間たちを見回した。無傷の者は一人もいないが、戦闘不能に陥っている者もいない。この後も戦い続ければ、より多くの時間を稼ぐことができるだろう。上手くいけば、ラムダを倒すこともできるかもしれない。ただし、倒すことを目的にした場合、今まで以上に苛烈な戦いになるはずだ。
 興奮の後から湧き上がってくる不安をなんとか抑えつけて、芳尾は己を鼓舞するようにニヤリと笑ってみせた。
「へっ……面白くなってきやがった」
「それそれ、そういう言動。実に人間らしいよなぁ」
 と、ラムダが言った。
「参考にさせてもらうぜ。いつか、人間社会に潜伏する時に備えてよ」
「アンタに『いつか』なんてないっす。ここで朽ちるっすよ」
「いや、これ以上、おまえらと遊ぶつもりはない。少なくとも、今日のところはな」
 コンスタンツァの挑発を受け流して、ラムダは後ろ向きに歩き始めた。傷ついた体を引きずるようにして、五十三号がそれに続く(攻撃は二十七号に集中していたが、ラムダを幾度も庇ったため、五十三号も負傷していた)。撤退するつもりらしい。
「おいおい、つれねえなぁ」
 と、去りゆく二人にサーティーが嘲笑をぶつけた。
「もっとつきあってくれや。それとも、なにか? 俺らがこのままグランネロスに行っちまってもいいっていうのか?」
「好きにしろよ。おまえらを倒せる自信はあるが、この分だと、俺も深手を負うかもしねえ。ボロボロの状態でグランネロスに帰投したところで足手まといになるだけだ。つーか、間尺に合わねえよ。自分の身を犠牲にして仲間を救う――そんな不条理な行動を取るほど、俺はニンゲン的じゃないんでね。しかし! いずれ! 借りは! 返す!」
 ラムダは叫び声に合わせるかのように後方に何度もジャンプして距離を広げ、最後にわざと機械的な声を出した。皆をからかうように。
「面白クナッテキヤガッタ!」
 そして、五十三号とともに地平線の彼方に消えた。
 翼が大きく息をつく。
「七分以上の時間を稼ぐことはできましたが、七分以内に倒すことや撤退に追い込むことはできませんでしたね。引き分けといったところでしょうか?」
「いや、目的を果たしたのだから、私たちの勝ちだ。この勝利をより完全にするために――」
 葵依が振り返り、グランネロスが擱座している廃墟に目を向けた。
「――グランネロス強襲隊の応援に向かおう」

 廃墟を目指して走っていく八人。
 その視界の中でグランネロスが徐々に大きくなっていく。
 距離が縮まっているからだけではない。移動要塞から人型へと変形し、車高(今は体高と言うべきか?)が伸びているのだ。およそ五十メートル。
 だが、巨体のあちこちで爆発が起き、体高はまた短くなった。脱出した強襲隊の攻撃を受けて、膝をついたのである。
 それでも圧倒的な重圧感が減じることはなかった(むしろ、膝を折ったことで巨大な顔が地面により近付いたため、迫力が増したようにも見えた)が、八人は臆することなくグランネロスを打ち据えた。ケルベロスチェインで、フレイムグリードで、リボルバー銃で、バスターライフルで。
 他の場所からも何条もの火線が飛んだ。エクスガンナー・ゼロ、デルタ、ジェイドの足止めをしていたチームの攻撃だ。
 そして、激しい猛攻の果てにグランネロスは胸部を撃ち抜かれ、自爆を遂げた。大きなクレーターと頭部を置き土産にして。
 その凄絶な最期を見届けると、八人はクレーターに背を向けて、地平線に目をやった。
 いつか倒さなくてはいけない敵――エクスガンナー・ラムダが消えた地平線に。

作者:土師三良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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