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廃ビルを彷徨く黒猫を追っていくと、死後の世界に辿り着く。
そんな噂に惹かれて、一人の少女が懐中電灯片手に廃ビルを散策していた。
「地獄でも天国でも、下見できるなんて面白そうじゃない」
夏季休暇で持て余した時間を消化するには、うってつけの話だ。
意気揚々と瓦礫を踏み越え、足取り軽く進む少女。
その左胸に、暗闇から現れた第五の魔女・アウゲイアスが鍵を突き立てる。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
アウゲイアスが呟いて鍵を抜けば、倒れた少女の側に大きな黒猫が現れた。
黒猫――少女の『興味』から生まれたドリームイーターは、首元の鈴をチリンと鳴らして、闇の中に消えていく。
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不思議な物事に強い『興味』を持ち、実際に自分で調査を行おうとしている人がドリームイーターに襲われてしまう事件。
その一つを予知したミィル・ケントニス(ウェアライダーのヘリオライダー・en0134)は、ケルベロスたちへ説明を始めていた。
「死後の世界へ案内してくれる黒猫、という噂を確かめようとしていた女の子が、パッチワーク第五の魔女・アウゲイアスに襲われてしまうようなの」
アウゲイアスは既に姿を消しているようだが、奪われた『興味』を元に怪物型ドリームイーターが現実化してしまった。
「この怪物型ドリームイーターを倒してくれるかしら。無事に撃破できれば、『興味』を奪われて倒れたままの女の子も、目を覚ましてくれるはずだわ」
怪物型ドリームイーターは、大きな黒猫の姿をしている。
「身体を伸縮させることが出来るようで、飛びかかるように噛み付いたり切り裂いたり、あとは自分の身体で飲み込むようにして、トラウマを植え付けることもあるみたいね」
人間に遭遇すると、まずは間合いを保ったまま首を傾げて、自分が何者なのか問うような素振りを見せるようだ。
「それに対して正しく応対出来ないものを殺してしまうようだけれど、目的はドリームイーターの撃破だから、これは依頼の成否を左右するような重要事項ではないわ」
もう一つの性質として、噂をしている人や、存在を信じている人に引き寄せられるというものがある。大事なのは此方だろう。
「黒猫ドリームイーターが、被害者の少女に襲いかかる事はないわ。まずはしっかりと、敵を撃破することを考えてね」
参加者 | |
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リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241) |
八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658) |
高原・結慰(四劫の翼・e04062) |
エルム・ユークリッド(夜に融ける炎・e14095) |
イアニス・ユーグ(楽園に破れし夢追い人・e18749) |
カッツェ・スフィル(黒猫忍者いもうとー屍竜ー・e19121) |
呼亞・鳴唖(そんなこと言う人嫌いです・e21282) |
枝折・優雨(チェインロック・e26087) |
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廃ビルに到着するなり、イアニス・ユーグ(楽園に破れし夢追い人・e18749)が辺りを見回した。
人が居れば剣気を解放して立ち去らせるつもりだったが、その必要はなさそうだ。
それでも念のため、呼亞・鳴唖(そんなこと言う人嫌いです・e21282)が入口周辺をキープアウトテープで塞いでおく。
「いかにも『出そう』な場所だな」
懐中電灯やランタンの灯りを頼りに少しばかり進んでから、ぽつりとイアニスが呟いた。
鋭い眼差しに精悍な肉体。無骨な印象を受けるそれとは裏腹に、彼の動きは忙しない。
猫柄のスマートフォン片手に方々でシャッター音を響かせる姿は、映画などにありがちな厄介者兼被害者一号といった雰囲気である。
「出そう、か……確かに、暗がりから闇に溶け込む黒猫でも出てきそうだ」
きっと、それは死者の国へ案内してくれるに違いない。
敵を誘き出すための仕掛けとしてエルム・ユークリッド(夜に融ける炎・e14095)がイアニスの台詞を拾い上げ、素知らぬ体で噂話に仕立てあげる。
「死後の世界に連れてってくれる黒猫なんて、どんな姿してんだろうな」
エルムに返しつつ、イアニスはスマートフォンを別の方向へ向けた。
追いかけるエルムの表情は落ち着いたものだったが、両目からは僅かに好奇心が漏れている。
とはいえ、さすがにそれを読み取れる者はいない。
仲間たちからすれば、荷物のように小脇に抱えられたウイングキャット――首元にお洒落な鈴を付けた、黒い長毛に白手袋が特徴のロウジーの方が、よっぽど気になる。
「死後の世界に案内する黒猫かぁ。黒猫は不吉の象徴だって言われますけど、そんな迷信に振り回されて忌み嫌われたんじゃ、猫だって迷惑ですよね。あ、僕は黒猫好きなんですけど」
ちらりとロウジーを見やり、テレビウムの小金井を連れた八王子・東西南北(ヒキコモゴミニート・e00658)が話を繋ぐ。
「そもそも随分とオカルトな存在ですよね、死後の世界に導くなんて。仮に実在するとしても地獄はやだなぁ……どうせなら天国の方が……あ、でも猫耳しっぽの萌え萌え美少女な黒猫たんなら、地獄に連れて行かれちゃってもいいかな……なんちゃって」
息つく暇もなく喋り通して、東西南北はハッと振り返った。
「よく喋るね。もしかして、怖かったりする?」
ジトっとしたカッツェ・スフィル(黒猫忍者いもうとー屍竜ー・e19121)の視線に射抜かれ、みるみるうちに顔を赤くして俯く東西南北。
「そ、そりゃ正直ちょっとは怖いですけども……いえあの、すみません、です、はい……」
噂はしなければならないが、ネット界隈を炎上させるような勢いで喋る必要はない。
けれどもアクセルとブレーキを程よく踏み変えられるほど、東西南北は器用でなかった。
一気に静まり返る空気。
やむなく、大して噂を信じていない枝折・優雨(チェインロック・e26087)が、お供のビハインド――此方も『カッツェ』の名を持つ山猫獣人――に目を向けて独りごちる。
「猫とは縁が切れないわね……出会い頭に殺しに来るような猫とは、進んで関わりたくはないけど」
はた迷惑な猫なら間に合ってると続けた主の言葉をどう受け止めたか、ビハインドのカッツェは童話の悪戯猫を思わせるニヤついた笑みを浮かべて、ゆらりと漂う。
「猫……猫、ねぇ」
今度はケルベロスのカッツェが呟き、宙空を眺めた。
(「死後の世界に案内する黒猫なんて、カッツェが噂されてるのかと思ったよ」)
時に様々な黒猫グッズを身につけ、蒼黒二振りの鎌を手にデウスエクスを死へと送り続けるカッツェ。
デウスエクスにも噂されるほどになったか……とまでは思わなかったにしろ、聞きつけた黒猫の噂には親近感を感じずにいられない。
(「黒猫を追ったら死後の世界に行けるっていうのは間違ってないよね。カッツェを追いかけたデウスエクスは全部あの世行き……あれ? でも予知を聞いて現場に行ってデウスエクスを倒して……カッツェって、追いかける方かな……?」)
うーん、と小さく唸って、程なくカッツェは考えるのを止めた。
(「ま、どっちでもいいか。追っても追われても『黒猫が死後の世界へ誘う』ってことに変わりないし」)
噂を信じつつ、何なら自身がその真実に成り代わってしまうくらいのつもりで進むカッツェ。
そんな彼女に負けず劣らず、噂に強い感情を抱いていたのは鳴唖。
(「……自分が何者であるか、か」)
黒猫がそう尋ねるのは『興味』から生まれた故の半ば機械的な性質だったが、鳴唖の心には突き刺さるものがあった。
(「黒い猫……私も……いや、考えても意味はないね」)
どれだけ想っても、漆黒の衣で身を固めても、己が内包する色は変えられない。
だからこそ、鳴唖は此処に来たのだ。
(「この戦いを乗り越えたなら……私は……」)
服の裾を摘み、鳴唖は一際真剣な面持ちで先を見据える。
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「夜の廃墟って、雰囲気があってどきどきするね。こういう場所なら、オバケや変な噂があっても不思議じゃないかも」
身を潜めつつ、リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)が言った。
高原・結慰(四劫の翼・e04062)と共に奇襲を狙うリリアは、仲間と付かず離れずの距離を保って追随している。
二人とも灯りは点けていないが、先行する者たちが光源を持っているので追うのは簡単だ。
「噂話、盛り上がっているかしら?」
「どうだろうね」
結慰は短く返して、噂に思考を傾ける。
(「……死後の世界なんて、私には考えられないね」)
生まれてきたものは滅びる定めを持ち、滅んだものは生まれる定めを持つ。
生と死は巡り巡って循環する。それが結慰の信念であり、死後に別の世界で生きるなどという考えは受け入れ難い。
「――あら?」
リリアの漏らした声で現実に立ち返り、結慰は視線を先行する仲間たちの背に向け直した。
順調だった散策の足が止まっている。もしや、敵が現れたのだろうか。
「向こうに回りこんでみようよ」
気配を消す気流を纏いながら提案する結慰に、頷くリリア。
通路を迂回していく二人の耳に、チリンと鈴の音が届いた。
「――大きな黒猫だな」
手を伸ばしても届かないほどのところで首を傾げる黒猫に、エルムが見たままの答えを返す。
適当に話を続けながら進んだ一行のもとへ、それは突然、姿を現していた。
ケルベロスたちはそれぞれ用意していた答えを吐き出そうとするが、その前にロウジーがドリームイーターに近づいていく。
二匹の黒猫は程よい距離で見つめ合って、また互いに首を傾げた。
随分と和やかな光景。
鏡で映したような二匹の違いは背翼と尻尾の輪。それからロウジーの鈴が、揺らしても鳴らないことくらいか。
「……ロウジーが案内するのは死後の世界じゃなくて、ごちゃごちゃして隠れやすいけれど、程好い気温と風通しの場所だろう」
主人の言葉で、にらめっこを終えたロウジーは面倒くさそうな表情を浮かべつつ戻ってくる。
その間も、黒猫は静かに首を傾けて、じっと問うような視線を送るだけ。
しびれを切らした優雨が紫の布製ジャケットを翻し、右手に括りつけたケルベロスチェインを振るおうとしたところで、ケルベロスのカッツェが進み出て言った。
「自分の存在を他者に問う時点で、お前は何であれ『偽物』だよ。それに、死神ならここに居るからね」
見せつけるように鎌を閃かせると、落ち着いていた黒猫が唸りだす。
偽物扱いへの抗議か、示された敵意への反抗か。
いずれにしろ剥がれ始めた化けの皮を、イアニスと東西南北が更に引っ掴んでめくり上げた。
「早く正体を見せろ、ドリームイーター!」
「アナタが何者かって? ……倒すべき敵、ですよ!」
二人の言葉に、黒猫は揺らいで膨れ上がる。
「……キミはただ、倒されるべき邪悪な夢の中の黒猫だ! そして、私は……」
猫の形も成さなくなった敵に歯噛みして、星辰の剣を抜きながら鳴唖は叫んだ。
「私は、白猫だ。漆黒を纏い、邪悪な夢を祓う、白き猫のウェアライダーだ!」
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鳴唖が瓦礫の転がる床に守護星座の陣を描く。
放たれた光が前衛を包んだ直後、不定形の塊と化した黒猫は鳴唖を頭から飲み込んだ。
塊の中で苦しみ悶える鳴唖を助け出そうと、東西南北が黒色の魔力弾を撃ち出し、イアニスが神速の槍撃を放つ。
しかし塊は揺蕩うような動きでそれらを躱して、鳴唖を含んだまま廃ビルの奥へ向かおうと身体を引き摺っていく。
その歩みを押し留めたのは、回りこんで身を潜め、仲間たちのやりとりに耳をそばだてていた二人のケルベロス。
「――死後の世界に行くのはあなただけよ、黒猫さん」
灯りを点けながら飛び込んできたリリアが蹴りを浴びせて、結慰が光の剣を一閃。
塊は半分に割れて鳴唖を吐き出し、再び猫の姿に戻った。
「アレに飲み込まれたら、確かに地獄が見えるかもしれないわね」
禍々しい断面を見てしまった優雨が、右腕を差し向けながら吐き捨てる。
「そんなの願い下げよ、早々に消えて」
言って深く集中すると、敵の足元で爆発が起きた。
怪物であることを白状したにも関わらず、しおらしげに吹き飛ばされる黒猫。
地獄の翼を露わにしたエルムが、それを蹴りで地面に叩き落とすと、ケルベロスのカッツェが氷縛の螺旋で捉えて壁に押し付けた。
更にビハインドのカッツェが金縛りにして、小金井が凶器で一叩き。
ぺとりと落っこちる黒猫。
小金井はすぐに駆け戻って、癒やしの羽ばたきを送っていたロウジーと共に応援動画で鳴唖を癒やす。
「神様、戦場に立つケルベロスの兄弟、姉妹にあなたの加護を。わたしたちをお守りください」
術ではなく単なる祈りの言葉をリリアが囁いていると、苦しみを解された鳴唖が立ち上がって後衛に守護陣の光を向けた。
一方、黒猫は水溜りのように溶け広がってから猫の姿を取り直し、その場に後肢を残したまま身体を伸ばす。
湧き水のように溢れて、何処まででも届きそうな黒色の中に光る爪。
それが優雨に触れる寸前で、割り込んだビハインドが主の身を庇った。
バッサリと斬られてもニヤついた笑みを保ち、しかしビハインドは牙を剥き出しにすると、瓦礫を操り次々と敵にぶつける。
不定形とはいえ、大小様々な塊が当たれば痛かろう。
萎むように元の場所へ戻っていく黒猫だったが、割と前のめりな陣容で挑むケルベロスたちの攻撃は手厳しい。
優雨が目一杯伸ばした右腕の鎖で敵を縛り上げ、イアニスが辛うじて命中率が三桁に乗った技――空の霊力を込めた刃で斬撃を繰り出せば、千切れかけた猫の身体を結慰が踏み叩く。
「世界の中心東西南北ここに在り!」
「オバケは怖いけど、ドリームイーターならちっとも怖くないわ! 誓約の舞、魅せてあげる!」
東西南北が叫び放った不死鳥の幻影と、青翠の風を纏って舞うリリアの指先から放たれた槍のような比礼が、身体を戻し切れない猫を射止めた。
恨みがましく漏れる唸り声。それにロウジーが「にゃあ」と不可思議な鳴き声を被せる。
黒猫に気付く余裕はなかっただろう。鳴き声が消えると、姿をくらませていたエルムが敵の真後ろに現れて、下から上に一息で斬り上げた。
それを喰らいながらもエルムの姿を探せば、今度は死角に回りこんだケルベロスのカッツェが鎌を振るう。
翻弄される黒猫は斬られ捻られ潰されて、形を保てなくなりかけていた。
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リリアと結慰が、ほぼ同じタイミングで腕を振り上げる。
オウガメタルで覆われた拳は敵を挟み込んでぶち当たり、黒猫を紙切れ同然にまで押し潰した。
「冷たく無慈悲な虚無に抱かれて消えるの。それで”彼方へ誘う黒猫”のお話はおしまい」
近づく終焉をリリアが言葉にして告げれば、黒猫はそれを否定するように膨張する。
が、それも束の間のこと。
東西南北が溶岩を敵の足元から噴出させ、エルムが翼から取り出したような炎を叩きつける。
燃え上がる猫の身体をカッツェの投じた蒼鎌が裂いて、イアニスが傷口をこじ開けるように稲妻を帯びた槍を突き刺すと、鳴唖が畳み掛けるように飛び蹴りを浴びせた。
黒猫は空中で三回転して着地したものの、その後の動きが鈍い。
鎖を揺らして優雨が念じれば、再び起きた爆発が猫の身体を吹き飛ばす。
「そろそろ終わりかな? じゃあ、お前を本物にしてあげるよ。嬉しいでしょ?」
また一つ魂を刈り取る瞬間が近づいて、声を弾ませるカッツェ。
「さぁ、夢は夢へとお帰り、私が憧れた猫の黒色……!」
対して鳴唖は、僅かに緊張を含んだ様子。
「すべてを乗り越えて……行くよ、私の魔法の箒!」
開いた手に魔法の箒を呼んで跨がり、鳴唖は天井スレスレまで飛び上がる。
「これからはデウスエクスを死の世界に案内するといい。但し、この『Schwarze Katze』の糧になってだけどね!」
カッツェは漆黒の鎌をかざして、しなやかに地を駆けた。
黒猫は逃げ場を探すが、エルムが咄嗟に動いて行く手を塞ぐ。
やがて墜ちてきた鳴唖が敵にぶつかって、舞い上がる砂埃の中に刃が閃いた。
「……アナタが紡いだ歴史と世界は此処でお終い」
滅びの光を喚ぼうとしていた結慰が、力を抜いて呟く。
「――拝啓……乗り越えられたよ、私自身の夢と憧れに……なんて、ね」
鳴唖の声が聞こえて、次第に澄みゆく景色の中に黒猫は残っていなかった。
「おはよう、眠り姫」
奥で倒れていた少女に、すっきりした顔の鳴唖が言った。
「死後の世界を見ようとして、そのまま帰って来れなくなる様な事にならなくて良かったね」
「怖い噂に惹かれる気持ちは分かるが、女子一人で廃ビル探索は危ないぞ?」
「ご友人やご家族が心配します。無茶はダメですよ」
「……それでも死後の世界が見たいなら、片道切符で案内しようか?」
結慰とイアニス、東西南北が真面目に話している所へカッツェが冗談めかして言うと、少女は跳ね起きて手を振り、全身で拒絶を表した。
「それじゃあ、帰ろうよ」
少女へ帰宅を促す結慰。
「……もう少し探検……じゃない。散策していかないか?」
好奇心をひた隠して言うエルム。
「え? ……用は済んだのだから、私は帰るわよ」
優雨が提案をピシャリと封じて、一足先に出口へ向かってしまった。
なし崩し的に、そのままぞろぞろと続いていく一行。
その最後尾で、東西南北は子供の頃まで記憶を遡り、一匹の黒い野良猫を思い出す。
泣いていた自分の顔を舐め、慰めてくれたあの子はどうしているだろうか。
……さすがに、もう死んでしまっただろうか。
(「だとしたら……死後の世界に行くのも悪くなかったかな?」)
大人になってちょっぴり強くなった姿を見せて、あの時のお礼を――。
そこまで考えて、東西南北は首を振る。
焦らなくとも、終わりはいずれ来るのだ。
礼を言うのは、その時で良いだろう。
作者:天枷由良 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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