
●某教会
「女子の勝負下着は白に限る! ……と言うか、それ以外の下着を身に着るようなヤツは、駄目だ、駄目っ! 俺達が求める女神とは、程遠い! 女子と言ったら、下着は白! それ以外は認めねぇ! だって、そうだろ!? よく考えてみろ。そして、思い出せ! それ以外のヤツが近づいてきて、妙な絵画を買わされた事を! 胡散臭い団体に入信させられた事を! ちょっとイイ関係になりそうになって、怖いお兄さん達に有り金全部を持っていかれた事を! 常にサインは身近にあった。それは下着! 白の下着! どんなに清純そうに見えても、下着が派手な奴はヤバイ! とにかくもヤバイ! その事をお前達は知っているはずだ。身を以て理解しているはずだ! だからこそ、下着は白に限る! それ以外は認めねぇ!」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、信者達はビルシャナの言葉に賛同し、『それ以外はヤバイ、ヤバイ』と連呼するのであった。
●都内某所
「オルネラ・グレイス(夢現・e01574)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、信者達は多少の刺激でも鼻血を噴くほどの残念チェリー揃いです。そのため、過度な刺激を与えるだけでも、戦闘不能に持ち込む事が出来るでしょう。なお、信者達の生死は成否判定には影響しません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() 祭礼・静葉(サイレン堂店主・e00092) |
![]() ローゼンシア・エストファーネ(吸血姫・e03662) |
![]() ジャック・ハイロゥ(廃墟の街のガンスリンガー・e15874) |
![]() アーシェ・ネイトラスト(ドワーフの鎧装騎兵・e20369) |
![]() ヤークィソ・バロール(魔銃のバロール・e24752) |
![]() 薊・狂(狂い華・e25274) |
![]() エヴゲーニャ・アヴェルチェフ(エヘイエ・e26805) |
![]() アリス・アンジェリス(鏡と夢の物語・e28851) |
●教会前
「下着が派手な奴はヤバイ。だから白に限る、ねェ。随分と短絡的な野郎が居たモンだ」
薊・狂(狂い華・e25274)は仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前に立ち、呆れた様子で溜息をもらす。
ビルシャナはかなり偏った考えを持っているらしく、白以外の勝負下着を認めていないようようである。
そのため、白以外の下着を身に着けている女性は危険人物として認識しており、『どんなに誘惑されても、絶対に心を許すな! 変なツボを売られたり、やけに高い絵画を買わされるぞ!』と警告しているらしい。
「どうしてこう……ビルシャナって種族は犯罪者か変質者の予備軍みたいになるのかしら? 実はビルシャナって変人の集まりかも、やっぱり地獄の業火で永遠の闇に帰すべきよね」
ローゼンシア・エストファーネ(吸血姫・e03662)も、同じようにげんなりとする。
ビルシャナ達からすれば、そうする事で自分達の身を守っているのかも知れないが、そんな事で安心する事が出来るほど、世の中は甘くないだろう。
「まあでも白一択ってのもないよねー。服だって色んな色があるから楽しいのに……」
アーシェ・ネイトラスト(ドワーフの鎧装騎兵・e20369)が、自分の考えを述べた。
しかし、ビルシャナ達は『白以外の下着は、下着に非ず』と訴え、信者達に偏った考えを植え付けているようである。
それが原因で信者達も白以外の下着は穢れているというイメージがあるらしく、他の下着を身に着けないようにしているようだ。
「……とは言え、勝負下着と言えば、白! 赤も白と並ぶメジャーカラーですが、圧倒的に白です!」
そんな中、ヤークィソ・バロール(魔銃のバロール・e24752)が、白い下着の良さを語り出す。
彼女にとっての下着は褌の事を指しているため、赤と白しか選択肢がなかったりするのだが、仲間達はその事実に気づいていないようである。
「それにしても、どうしてそんな考えに至ったのか謎ね。まあ、本人達に聞いてみれば分かると思うけど……」
そう言ってアリス・アンジェリス(鏡と夢の物語・e28851)が、仲間達を連れて教会の中に入っていく。
教会の中にはビルシャナ達がおり、いかに白い下着が尊きモノなのか、真顔で語り合っていた。
「……キモッ」
それを目の当たりにした祭礼・静葉(サイレン堂店主・e00092)が、ドン引きした様子でその場から飛び退いた。
「一体、何がキモイって言うんだ! ひょっとして、俺達が身に着けている下着の事か? この下着の何処が問題なんだ? 何も問題がないだろうがっ!」
その言葉にムッとしたのか、ビルシャナがケルベロス達を睨む。
彼らにとっては、何ひとつおかしな事ではないため、静葉の反応に納得がいかないようである。
「あ、あの、下着、がどうとか大声で言うのは、止めた方がいいですよ?」
エヴゲーニャ・アヴェルチェフ(エヘイエ・e26805)が少し顔を赤らめ、気まずい様子で視線を逸らす。
「つぅか勝負下着だよな? 『穿いてない』が1番に決まってるだろ?」
それと同時にジャック・ハイロゥ(廃墟の街のガンスリンガー・e15874)がキリリとした表情を浮かべ、キッパリと言い放つのであった。
●教会内
「は、穿いていないだと!? あ、ありえん。そんな事ある訳がない。な、何て恐ろしい事を口にしているんだ、お前は……」
その途端、ピュアボーイの心を持ったビルシャナ達が激しく動揺した。
それはビルシャナにとって、あり得ない事。
例えるならば、純白の下着が雪の如く降り注ぐ光景を目撃するのと、同じレベルであった。
そのため、どうしても受け入れる事が出来ないようである。
「勝負下着ってぇのは見えない所で相手の想像力を揺さぶる究極の決戦兵器。それをあえて無防備に取り払い相手に委ねる……日本人の大好きな儚さを極めてるだろ」
それでも、ジャックは怯む事なく答えを返す。
これにはビルシャナ達も激しく動揺したものの、美味い言葉が浮かばず、口をつぐむ。
「……と言うか、下着で、何の勝負をするのかしら……?」
そんな中、エヴゲーニャが不思議そうに首を傾げた。
どうして勝負をしなければいけないのか?
勝負をしない時は、白じゃなくてもいいのか、気になったようである。
「お、お、お、お前はなんて破廉恥な事を聞くんだ! ひょっとして、お前は白の下着じゃないな!」
ビルシャナが警戒した様子で、エヴゲーニャを睨む。
実際には白の下着を穿いているのだが、その質問にわざわざ答える必要もないため、言葉を発する事を躊躇った。
「……と言うか、別にあんた達のために、つけている訳じゃないし……」
静葉がビルシャナ達に冷たい視線を送る。
ビルシャナ達は自分達が下着を見る事を前提にして話を進めているが、別に見せるつもりもなければ、見られたくもないため、あれこれと指示をされたくないようである。
「それとも、まさか事ある度に毎回相手の下着を確認つもりなの? だったら、実は下着が見たいだけなんじゃない? 本当は色なんてどうでもいいんでしょう?」
ローゼンシアがラブフェロモンを使いつつ、いかにも下着が見えそうで見えないセクシーなポーズを取って、ビルシャナ達を挑発する。
「そりゃ、当たり前……あっ! いや、な、何を言っているんだ! 俺達は別にそう言うつもりで下着が見たい訳じゃない! そんなモノは見なくても分かる。とにかく、そういう奴はヤバイんだ! 雰囲気からしてヤバイんだ!」
ビルシャナが激しく動揺しながら、言い訳をし始めた。
まわりにいた信者達はローゼンシアに釘付けだが、その事に気づかないほどビルシャナの心は乱れていた。
「具体的に、どうヤバいのでしょうか? 宗教や詐欺、美人局に引っかかったのは貴方の自業自得だと思いますし、その時の女性がたまたま白の下着を穿いていなかっただけで、単なる偶然だと思うのですが……。私も……その、滅多に白い下着は着ませんが、貴方が行きあったような人を騙すような酷い女性ではありません、ということは自信を持って言えますから」
アリスがキョトンとした表情を浮かべ、自分の考えを述べていく。
「い、いや、偶然なんかじゃない! あれはサインだ。サインは必ずあるものだ。普通の奴なら、そう言ったサインを見逃しているが、俺は違う……!」
ビルシャナが何の根拠もなしに断言をした。
基本的にはノープランなので、深くツッコまれると、アレなようである。
「とりあえず、お前らが実際にそういう場面を目にしてねぇ、チェリーボーイだってのはよく分かった。だからまぁ、想像しろや。勝負下着ってぇのは、まずそういうド助平なことをするためのシチュエーションを盛り上げる決戦兵器なわけだ。通常の腹を冷やさない等々でつける下穿きたぁわけが違う」
ジャックが険しい表情を浮かべ、ビルシャナ達に語っていく。
「お、おい! 何か勘違いをしているようだが、お、俺達はチェリーじゃねぇ。すげぇハードなプレイもこなすほど、経験豊かなヤツらばかりだ!」
これにはビルシャナのプライドが傷ついたのか、ある事ない事、思いつく限り言い放って強がった。
まわりにいた信者達も『相手が引くくらいハードなプレイも出来るっす』と言った感じで、何となくビルシャナに話を合わせた。
「とりあえずさー、白ならどんな下着でもおっけーって事だよね? それこそシンプルな物から過激な物まで、そうこんな感じに……。白ならどんなのでも安心なんだよね? まあ、ボクは危ないと思うけどなー、白なら大丈夫って考え。もう狙い撃ちじゃん、白だったら君たち簡単におとせるんだよ。ギリギリの着てる娘も、シンプルなの着てる娘も、みーんな等しく女神なんでしょ?」
アーシェがビルシャナ達に通販のサンプルを見せながら、含みのある笑みを浮かべる。
そのせいか、ビルシャナの顔色が見る見るうちに青くなり、下処理される前の鶏のようになった。
「俺の勝負下着も白なんだけど、此れならお気に召すかい? 勝負下着は矢張り白が一番だよなァ。なぜなら――。勝負下着が白のオンナは安全なんて思う浅はかな馬鹿野郎が捉まるからなァッ!!!!」
狂が白のブラを見せてニコリと美しく微笑んだ後、ビルシャナを問答無用でブン殴ると、ぐりぐりと自慢の美脚で踏みつけた。
「私の大好きなニッポンのワザアリな言葉(※諺)に『褌を締めてかかる』があります! さぁ! デウスエクスとケルベロス、出会いは即ち死合い!」
それと同時にヤークィソがバサリとケルベロスコートを脱ぎ捨て、肌もあらわなサラシと褌姿になり、ダイナマイトモードで震脚と共に左拳を突き出した。
「そ、そんな馬鹿な……。白なのに……白なのに……」
ビルシャナが信じられない様子で、激しく目を泳がせる。
まわりにいた信者達も現実を受け入れる事が出来ず、半ば放心状態になっていた。
「さァ、おいで。――ヤバイ白があるってコトも、教えてやるよ」
そう言って狂がビルシャナ達を挑発するのであった。
●ビルシャナ
「ば、馬鹿な……。白の下着は、純潔の証ではなかったのか……」
狂から解放された後も、ビルシャナの魂は抜けたままだった。
自分にとって正しいと思っていた世界の崩壊。
それは少なからず、ビルシャナの心にダメージを与えていた。
「勝負下着ってぇのは見えない所で相手の想像力を揺さぶる究極の決戦兵器さ。それを普段から穿いてるような奴は、たった一人お前らを純粋に思ってくれるような相手じゃねぇ、勝負下着を餌に他の有利な条件を引き出そうとする海千山千の勝負師なんだ。てめぇらチェリーボーイが骨の髄までしゃぶられてポイされてもしょうがねぇよ」
ジャックがクールな表情を浮かべ、ビルシャナに語り掛けていく。
「そんな馬鹿な……」
だが、ビルシャナは未だに現実を受け入れる事が出来ず、自分の中にあった世界の崩壊を感じながら、恐怖で身体を震わせていた。
「そもそも、下着の色だけで、人間の良し悪しなど分かる訳がありません。そこばかりにこだわって、まわりが見えなくなっている方が問題だと思いますよ」
アリスが色々と察した様子で、ビルシャナに話しかけた。
「ま、まわりが見えなくなっている……だと!? ば、馬鹿にするなっ! すべて見えている。すべてを理解した上で行動しているんだァァァァァァァァァア!」
ビルシャナが逆ギレ気味になりながら、孔雀の形をした炎を飛ばす。
それに驚いたナノナノが、孔雀の形をした炎を、ギリギリのところで避ける。
「アンシンせい、ミネウチです!」
その間にヤークィソが信者達に当て身を放ち、時代劇の真似をした。
ローゼンシアもブレイブマインを発動させ、ビハインドのラヴァと間合いを取った。
「ひょっとして、この勝負をするために穿く下着と言う事ですか……? よく分かりませんが、下着の色は関係ないと思うのですが……」
エヴゲーニャが大きなハテナマークを浮かべながら、ビルシャナにルーンディバイドを使う。
「いや、そう言う意味じゃない。そうじゃないんだ! 絶対に違う!」
すぐさま、ビルシャナが反論し始めた。
「だから、うるせぇよっ!」
狂がイラついた様子で、ビルシャナの顔面を蹴った。
その一撃を食らったビルシャナがぶしゅっと鼻血を噴き、頭をフラフラさせた。
「なんかもう拗らせたよーなやつばっか!!」
それに合わせて、静葉がイラついた様子で、ミミックのシカクケイと連携を取って、ビルシャナに攻撃を仕掛けていく。
「ここはあなたの居場所じゃない……闇へ還れ」
次の瞬間、ローゼンシアがトラウマボールを放ち、ビルシャナにトドメをさした。
「うぐ……! そ、それでも、俺は……白が好きだああああああああああああああああああああ!」
それがビルシャナにとって最後の言葉となった。
「……と言うか、もっと他にいう事があったよね? それとも本当になかったの? うわっ……、ボク的にそれはないわー……」
これにはアーシェも思わずツッコミを入れ、ドン引きした様子でビルシャナの死体を眺めるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年8月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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