「にげないと、にげないと」
『マテ!』
とあるT砂丘から町へ向かう小道で、子供が頑張って走ってました。
どのくらい頑張ってたかと言うと、涙目でバケモノから逃げ出すくらいです。
「はやくはやく……なんでもっと早く走れないの!?」
急いでも急いでも、逃げることができません。
走ろうとすれば走ろうとするほど、体はスローペースになった気がする。
『マァァテェェ!』
追いかけて来る奴の声もスローな気がしたので、思わず振り返ったのが行けなかった。
そこにはミイラがズトズトと、T砂丘から走って来るではありませんか。
最後の手段として思いっきりジャンプしたら……とても高くジャンプしてしまって、落ちてくるころには足元にミイラが!?
「わわあああ!? やりなおし、やりなおし! ぼく死にたくないよ……アっ痛たたた!?」
ドッスーン!
子供はベットから落ちて、無事に目を覚ましました。
なんと、あれは夢だったのです! そう理解した瞬間に、さっき啼いていた子供はもう笑い始めました。
「アハハ! なーんだ夢か~。だったらピラミッド一周しながらお尻ペンペンとかすれば……」
『逃げるの嫌じゃなかったの? あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ』
笑いだした子供があれもしたかったなー、これもしたかったなーとゲンキンなことを言ってると、後ろから声がしてきます。
振り向くとそこには変な格好だけど可愛い子が居て、鹿さんと一緒に首を傾げて居ました。
そして驚く子供の胸に、鍵を刺しこんだのです。
するとどうでしょう! 子供の手足から力が抜けていき、代わりにミイラが現われたではありませんか。
●
「子供の頃って、ビックリする夢を見たりしますよね。理屈は全く通ってないのですが、この夢が狙われます」
セリカ・リュミエールが中国地方にある、T県にあるとある都市の地図を持ってきた。
そのビックリする夢を見た子供が、ドリームイーターに襲われ、その『驚き』を奪われてしまう事件が起こっているという話だ。
「この『驚き』を奪ったドリームイーター自体は既に姿を消しているようですが、奪われた『驚き』を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしているみたいですね」
現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して欲しいと言う事だろう。
何人かが視線を向けると、言葉には出さずに肯定の頷きを返す。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『驚き』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるでしょう。周囲には人はいないはずですので、よろしくお願いします」
そういってセリカは周辺の地図を含めて渡してくれた。
「相手はミイラの形をしており、自分を無視して立ち去る誰かを追い掛ける習性がある様です。これを利用すれば、より確実に被害を出さないように戦えるでしょう。目を閉じ息をひそめて黙って居れば見逃す事もあるそうですが、今回はあまり意味が無いでしょう」
配下などこの他に敵はおらず、袋小路にでも引き寄せれば安全に戦えるだろう。
「頭にかじりついて知識を食らい、腕にかじりついて欲望を食らいと、ミイラだけに包帯を使ったり噛みついてくるようですが、本質的にはドリームイーターが持つ力と同じ様です」
この2つの攻撃に、包帯で自分を治癒・キュアすると言うらしい。
「なるほど、確かに普通のドリームイーターがモザイクを飛ばしてくるのと同じだよね。威力の差は在るだろうけど、時間があれば調べてみるのも良いかも」
「その辺りはお任せしますね。いずれにせよ、子供の無邪気な夢を奪って、ドリームイーターを作るなんて許せません。子供を無事に起こす為にも退治をよろしくお願いします」
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)が他のドリームイーターの例を思い出していると、セリカは何枚かの報告書を渡してくれた。
今回の件が気になる者が中心になりつつ、ああでもない、こうでもないと地図と一緒に相談し始めたのである。
参加者 | |
---|---|
付喪神・愛畄(白を洗う熊・e00370) |
毒島・漆(心は中年・e01815) |
辰・麟太郎(臥煙斎・e02039) |
エンジュ・ヴォルフラム(銀の魔女・e04271) |
スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678) |
神宮寺・純恋(陽だまりに咲く柔らかな紫花・e22273) |
ロボ・シートン(オオカミ王の末裔・e27756) |
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723) |
●
「夏休みの宿題ねー。ああー、そんなんあったわねー。遠い昔の話ね」
神宮寺・純恋(陽だまりに咲く柔らかな紫花・e22273)は溜息ついた。
あまり年齢に関係のある話題は言いたくな……。
「うちの子も来年小学1年生だし、夏休みの宿題とかやるようになるのかしらね。あたしは適当にパパっと終わらせてたけど」
別に気にもしなかったので平然と子供の実年齢を口にした。
「男の子なら大概は放っておくんじゃねぇかな。夏休みを楽しんでても心の底では宿題のことを気にしてしまう気持ち、なんとなくわかるぜ」
スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)は豪快に笑って困るまで放置するのが相場だと茶化す。
「まあ、その辺はなるようにしかならないわね。ともあれ、ドリームイーター倒してしっかりと子供も助けてあげないとね……ちょっち行ってくる」
純恋はやんちゃ小僧を見守る親の笑顔を浮かべ、ちっちっちと指を振って見せた。
被害者宅を挟んで出現予想地点の一つを抑える為、純恋はテレ蔵君と一緒に移動し始めた。
「ま、今回の敵は俺とレスターを同時に相手しなきゃならなくなった時点で命運が尽きてるけどな?」
「そう思ってくれて問題ないと、自信持って言えれば良いんだけどね。ただ、知った顔がこれだけ居るのに、自信無いとは流石に言えないかな」
彼女から少し離れて追いながら、スピノザがニヤリと笑って胸を叩くと、レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)は肩をすくめた。
レスターとしては誠実というか堅実に行きたいので、舞台を整える(確実に殺れる状況)までは断言したくないのだ。
とはいえ、不確定な話をしている訳にもいかない。
反対側に居るもう一チームの方かもしれないが、敵は今にも出現しかねない、準備だけは整えておく必要があるだろう。
「確認は終わったのか? お前さんに宿題渡ったかって聞くのも野暮だけどよ」
「ん? ああ、見回りは終わったし、結界の方はエンジュがやってくれたよ。って……そういえば面と向かっては初めてだっけ?」
スピノザは突き合いの長さから不要と知ってなお、一応尋ねておいた。
なぜならば、レスターは一人の女性を伴っていたからである。
女性を呼ぶ言葉に軽い違和感を覚えたスピノザは、冗談ででも、レスターは女が苦手だから紹介してくれるのか……なんて言うのを我慢する。
「エンジュは俺の……」
「スナイパー同士の相棒。頼もしそうね。少し妬けちゃうかしら? なんてね。エンジュ・ヴォルフラム、エンジュって読んでくれると嬉しいかしら?」
ゴフっ!?
レスターはエンジュ・ヴォルフラム(銀の魔女・e04271)の挨拶に、本気で噎せた。
好意を抱いていると知られるのを恥ずかしいと思っていたのだが、恐るべき不意打ちである。
からかわれ……ているのだろうか、それとも本気だろうか、一瞬の空白が永遠にも等しく感じられた。
「あ! 向こう側に敵が来たみたいだね、俺達は俺達の仕事をしよう」
レスターはドギマギする心を抑え、今だけ出現してくれた敵に感謝する。
●
『ハ、ヤ……ク、ヤーレ~』
うめき声挙げて町を歩くミイラ男。
薄汚れた包帯に身を包み徘徊する。
「夏に砂丘にミイラか、まるで映画だな」
「はて……ミイラといえば……古代エジプトに出てくる身体に包帯を撒きまくったアレだと思ったが、ここでか」
砂丘を背にするケルベロス達は、町を徘徊するミイラを発見した。
辰・麟太郎(臥煙斎・e02039)の呟きを拾って、ロボ・シートン(オオカミ王の末裔・e27756)は苦笑する。
「今回の奴は学術的なヤツじゃなく、化物としてのミイラっぽいやつだな。まぁ、たまたまだろうが、今回のドリームイーターは確かに映画の影響かもな」
ロボはこれは倒すしかないと決意を固めたが、元々は考古学者の発掘によるものなのにと笑うしかなかった。
なんというかミイラが歩くなど、想像の中の茶番でしかない。
どーせ、砂丘を全部掘った所でここからは何も出てこないと思うぜ。と軽口叩き、苦笑を笑い声に替えた。
「暑ぃのは勘弁願いてぇが……ガキが目を覚まさねぇまま、ってのは面白くねぇ。ちょっくらデートしてくるわ」
子供が死ぬ、そいつぁ頂けねぇよ。
麟太郎はそう口にして、ミイラから見える位置から斜めに横切り、袋小路になった道へと歩き出す。
既に場所の目星は付けており、そこまで誘導しきれば、人払いを終えて居る事もあり、一般市民を巻き込むことは無いはずだ。
おっつけ、向かい側のチームも駆け付けるだろう。
『こちら付喪神……。ついて来てるね。やっぱり無視するのが効くみたいだ』
付喪神・愛畄(白を洗う熊・e00370) は携帯を取り出し通信を送ると、サンオイルと間違えて持って来た錆止めを仕舞うと、ビハインドのつくもと共に砂丘を後にする。
水着で遊ぶのはまた今度にしようと言いながら、路地に入り込む仲間とミイラを追い掛けた。
大丈夫だとは判っていても不安なので、重力の鎖を携帯を持たない方の拳に巻きつけておく。
『……こちら毒島。路地の入口も無事に封鎖したそうです。到着次第、仕掛けましょう』
道の途中で待機していた毒島・漆(心は中年・e01815)も、煙草を携帯灰皿に放り込むと携帯を通じ、人払い役のエンジュが結界を新しく張ったとと報告。
途中の道も封鎖していることだし、問題は無いと告げながら一同に合流する。
『マーテー!』
「ははっ、付いて来な包帯ヤロウ……っ!」
麟太郎は少し歩くペースを落として独り言を呟いた。
付けておいた目印を1つずつ確認し、仲間達の指示を携帯で受けるたびに、ペースを変更して誘導してきたのだ。
「いい子だ。三、二、一!」
そして、最後のマーカーを確認した事で、振り向きながらドローンを展開した!
本来、人は追い掛けて来る気配や先行する怪しい影を、無視できるように出来てはいない。
だが別の目的があれば、短い期間なら集中する事も出来る。
先んじて潜伏し、あるいは隠れて追跡してきたケルベロス達は、この袋小路を犠牲出さぬ戦場とする為に、一気に動き始めた!
「援護します、タイミイングを合わせて突入してください」
「悪ぃな。まずは、これから行くぜ!」
漆はナイフを引き抜き太刀を担ぐと、既に餓えておいた地面に蔦を這わせ始める。
それがミイラに絡みつくのに合わせて、ロボは掌底で殴りかかった!
『こちら付喪神、全員の到着を確認。俺も治療に移るよ』
最後まで携帯を開いていた愛畄は、包囲網が完成したことを報告。
そして敵がこちらに向かってこなくて良かったと思いながら、つくもを戦場に送りだし月光を呼んで、囮を務めた麟太郎の治療を始めた。
ここにケルベロスとドリームイーターとの戦いが幕を開ける。
●
「ミイラ男か、まるでホラー小説だね」
ターゲットサイトに見える歪な包帯と醜く歪んだ歯並び。
実際のミイラならば綺麗にされているだろうに、子供の想像ゆえにゲームのような醜さがある。
「そっちはあんまり得意じゃないんだけど……悪夢にうなされる子供を放っておけない」
レスターは両手に持っていたライフルを、一丁だけ抱え込んで姿勢を安定させると、撃ってから移動を再開。
そして狙撃用の収束モードから、両手で構える広角の連射モードに、制圧戦闘に意識を振り替えた。
「(あまり、戦っているところはレスターに見られたくないわね。それでも、普段通りに私は、私の欲求に従うわ)」
言葉には出さずにエンジュは呟くと、流体金属を呼び起こした。
「まずは定石どおりに」
「おーけよ。動きの割りに上手いし、ここは着実にあててきましょ」
エンジュと純恋は顔を見合わせ、同時に流体金属を散布して攻撃用の結界を起動させた。
オウガメタルは注がれたグラビティに歓喜して、仲間達のガイドを喜んで務める。
そして二人同時に身を沈めると、エンジュは空を翔け純恋は直線的に駆けだす。
「そーれっと! オウガメタルちゃんよろー」
純恋は先行して流体金属を隆起させると、巨大な拳に替えて殴りかかった。
少し遅れてその上を飛び越え、エンジュがカカトを落とす。
「ヒュー。やるね。やっぱりケルベロスは女性陣もたくましいや。……レスターも苦労しそうな気もするし、あのくらいで丁度良い気もするがね」
スピノザは口笛を吹くと銃弾にグラビティを込め、ミイラ男の足元に放つ。
それは周辺の重力を定方向に制御し、侵攻を阻む力を持っていた。
続けて重力の鎖を束ねつつ、その場を飛びのいて介入のチャンスを窺い続ける。
仲間達が一斉に飛びかかるが、敵もやられてばかりでは無い。
攻撃の幾つかは避け、果敢に反撃する。
『オ、オ、オオ!!』
「痛たたっ、おいたは駄目だって言ってるでしょー」
無数の包帯が絡みついて退路を断ったかと思うと、強引に噛みついて行く。
純恋が齧じりつかれた頭を抑えながら、涙目になって引きはがすが。
その姿はコミカルなものの、抉られた傷は痛々しく、感染するゾンビや吸血鬼でなくて良かったと言う他ない。
「さすがにやりますね。……動きは的確ですが、やっぱり一発は軽いな」
「俺たちより強いから大変だけど、アタッカーじゃないしね。っと……これならなんとか、痕は残らなさそうだよ」
漆が敵の動きを眺めて居ると、愛畄は噛み傷を精霊に置き換えて抽出した。
唇の艶やかな精霊を撫で上げると、一撫でごとに元の傷痕が薄くなっていくではないか。
「ありがと。んもう、みてなさいよねー昔から弓だけは得意なのよ!!」
純恋は治療のお礼を言いつつ、次は攻撃に出るか、それとも治療し切って完全に傷を塞ぐか思案し始めた。
そして矢を握り込み、雷神の名を唱えて撃ち放つ。
「この様子なら大丈夫そうだけど、むしろ逃げられる方が厄介かもしれませんね。……仕方無い、少し無茶しますか」
「任せとけと言いたいが、野郎は避けるのも上手えからな。一緒に攻撃するとすっか」
漆は顔色が悪くなるほどの血をグラビティと一緒に送り込むと、右手のククリを天に放り投げ、染み出した黒きナニカで拳を覆い叩きつける為に走る。
それに合わせて麟太郎は一緒になって飛び込み、手刀の回りにグラビティを収束させた。
『巡りて染まれ、一輪花』
貫手がミイラ男を貫くが、血など無いだろうに、奪った力に合わせ闘気で緋色に染まって行く。
こうしてケルベロスの戦いは、佳境に突入したのである。
●
「きゃっ!? ……だけど、まだまだ」
エンジュは被りついて来た敵を、我が腕から引き離した。
ヨダレなどの汚れは無いが、それだけに悪意は強烈だ。
染み込む呪いが筋力・精神力その全てに浸透して行く。
『痛いの痛いの飛んでいけ―。』
すかさず純恋は紫の菫の花を咲かせ、夏の風に混じることでスレミ色の薫風と成って呪いを打ち消した。
「っ許せない……『Dance on my grave.……俺の墓で踊れ』後悔させてやる」
『おっと、これ以上は進ませねーぜ?』
大切な者を傷けられ、レスターとスピノザは同時に言魂を放った。
まずはスピノザの重力弾がミイラの足元を崩してよろけさせると、レスターは右半身に刻まれた刺青をなぞる。
過去に穿たれた幾つもの傷痕、時には自分の肉を抉って生肉のまま食わされるような拷問の記憶までが、鎖のタトゥーと共に蘇る。
現出化した痛みは限界のある肉体ではなく、精神を媒介するがゆえに天井知らずだ。
「つらいだろう? 我慢する事は無いよ」
「(そういえば、相当な目にあたって言う話だよな。……何もかも忘れさせてやってほしいもんだ)」
既に枯れ果て地獄した涙がハラハラと零れる。
友のそんな姿を見て、スピノザは……紹介された女へチラリと視線を流した。
「レスターは少し落ち着いて、ね。守ってもらえるのは嬉しいけど、私もケルベロスの一人なのよ」
エンジュは溜息つきながら、……まだまだ、隣は遠いわね。と零した。
一人前に見られてないような気がするし、保護されるよりは、共に手を取り合って戦いたいものだ。
やはり全力で行こうと、背伸びでは無く、確かな望みをこそ力に替える。
「俺が先に足止めしといてやるぜ。干からびた数千年前の死体なんざ、食えるもんじゃねぇからな。ゆっくり唱えてな」
彼女が足を留めて深呼吸したことで、ロボは大技に出る気だなと終局を悟った。
空を貪るモノは誰か、それは我であると、ミイラ男顔負けの肉弾戦を挑む。
爪を立て、噛みつきグラビティの連鎖へ対抗する力を奪っていく。そして……大きく飛びのいた!
「悪いわね。『朽ちる翼 堕ちる影 風は絶え 巨躯は地に臥せる』夢は、夢のまま果てなさい。『カミゴロシ』」
エンジュの後ろに、影で出来た翼が出現する。
かつて鳥、ことに漆黒の翼を持つカラスは、魂の運び手とされていた。
その羽は不死者の力を食らう鳥たちの象徴、使い魔とも、神の使者ともされる力がミイラ男に襲いかかる!
そして、最後の戦いを挑むのは彼女だけではない。
『"儀式闘術"……漆業罪架』
漆は敵を重力で引き寄せると、武技の型を魅せ始めた。
演武にも似たその動きであるが、引き寄せられた敵が、勝手に飛び出してくる。
磨き抜き連撃に向いたその型ゆえに、次々にミイラ男を殴り倒して行った。
「引き裂くのみだぜ!!」
ロボは遠咆えあげて彼方より狼たちを呼び寄せると、共に襲いかかった。
かつて北の大地アスガルドに群狼の拳を振るう、銀狼の戦士が居たと言うが、それにも勝る勢いで飛び込むのだ。
「頃間だな。さっさと帰ぇな。折角の夏休みが終わっちまうぜ……?」
逃がさないように空へ居を移していた麟太郎は、愛刀で弧を描いた。
新円を描く満月の刃は、偽る夢幻の使徒を打ち砕いたのである!
「ミイラはもう眠る時間だ、砂の下へお帰り。……悪夢の時間は終わりだよ」
「(……あんたもなかなかやるじゃねーか、逃がすんじゃねーぞ。ただ尻に敷かれないようにしねーとな)」
崩れさるミイラを見つめる物憂げなレスターに、スピノザはあえて陽気な声をかけた。
「夢は醒めて、いい子は起きる時間。悪い夢は、笑い飛ばしましょう。御見舞にいこっか?」
彼が反応する前に、エンジュは笑って子供の見舞いを申し出でる。
「それはいいけど、片付けが大変そうだね……」
続けて愛畄がゲンナリした表情で、荒れはてた路地裏を眺めると、周囲から笑い声が上がった。
陽気は陰気を払う出なく、置き替えると言うが、笑顔こそが何よりの薬なのかもしれない。
「しっかし、想像力ってのは時には凄まじい物を生み出すよな~」
最後にロボは色々と思い返し、ドリームランドに住まうナニカを思い浮かべる。
それが本当に居るのか、それともデウスエクスかしらないが……今宵は、ここまでにしよう。
作者:baron |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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