黙示録騎蝗~閻魔は渇望に狂う

作者:雷紋寺音弥

●地獄へ誘う者
 薄暗い山林の奥深く。巨大なカマキリのようなローカストが、その腹部から伸びる中腕に、一つのコギトエルゴスムを握り締めていた。
 特殊諜報部族『ストリックラー・キラー』の長、イェフーダー。その手から宝玉に与えられたのは、辛うじて肉体を維持することが可能な程度のグラビティ・チェイン。
「ウ……ガァァァッ! モットダ! モット、チカラヲォォォッ!!」
 コギトエルゴスムより蘇ったのは、甲虫型のローカスト。湾曲する顎と深淵の如き深い闇色を携えた甲殻を持つが、クワガタ等と比べても随分とスマートな体型をしていた。
「『獄標のタルヴィス』ともあろう者が、哀れなことよ。だが……グラビティ・チェインが欲しいのであれば、それは自ら奪って来るのだ」
 部下と共に蘇ったばかりのローカスト、『獄標のタルヴィス』をイェフーダーが強引に押さえつける。そのまま、漆黒の甲殻に覆われた背を軽く突き飛ばし、略奪へ向かうよう急き立てる。
「もっとも……お前の奪ったグラビティ・チェインは、全て太陽神アポロンに捧げられるのだがな」
 宵闇の広がる空へと消えて行くタルヴィス。その姿を見送りながら、イェフーダーは自らの鎌を軽く舐めつつ呟いた。

●地獄への案内人
「招集に応じてくれ、感謝する。ローカスト達に、新たな動きがあったようだ」
 その日、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)よりケルベロス達に告げられたのは、ローカストの太陽神アポロンが、新たな作戦を行おうとしているとの報。
「連中はコギトエルゴスム化しているローカストに最小限のグラビティ・チェインを与えて復活させ、そのローカストに人間を襲わせてグラビティ・チェインを奪おうとしているらしい。燃費の悪さからコギトエルゴスム化させられた存在だが、その分、戦闘力も高い。最小限のグラビティ・チェインしか持たないといっても、侮れない戦闘力を持つ相手だぞ」
 おまけに、グラビティ・チェインの枯渇による飢餓感から、人間を襲撃する事しか考えられなくなっている。反逆の心配もなく、仮にケルベロスと戦って撃破されたとしても、敵の被害もまた最小限。
「同胞を捨て駒にすることが前提の、非道な作戦だ。この作戦を行っているのは特殊諜報部族『ストリックラー・キラー』を率いる、イェフーダーというローカストらしいな」
 敵は狡猾にして非情な存在。いずれはイェフーダーと直接対決する必要があるだろうが、今は目の前の悲劇を食い止めねばならないと、クロートは告げる。
 復活したローカストの放たれた場所は、富山県にある山村だ。都会に比べれば人口は少ないが、それでも人間の生活圏であることに変わりはない。
「敵のローカストは、全身を漆黒の甲殻で覆い、巨大な顎と牙を持った甲虫の姿をしているぞ。オオエンマハンミョウ、という虫の名を聞いたことはあるか? あれが、そのまま昆虫人間になったものと思ってくれればいい」
 オオエンマハンミョウ。タイガービートルの異名を持つ肉食性の昆虫で、その性質は獰猛かつ凶暴。そして、放たれたローカストもまた、それに等しい性質を持っている。
 その存在は、さながら地獄への道標そのもの。故に、付いた二つ名は獄標のタルヴィス。巨大な顎で相手を切り裂き生命力を吸収する、鋼の牙で相手の身体を食い千切る、全身の甲殻をオウガメタルで強化することにより、更なる防御力を得るといった技を持つ。
「真正面から戦えば、苦戦することは間違いない相手だな。何も考えずに力押しで挑むのは得策じゃない。自分の立ち位置や使用する技の相性も、よく考えて作戦を練った方がいいぞ」
 太陽神アポロンの卑劣な作戦。それを阻止するためにも、力を貸して欲しい。そう結んで、クロートは改めて、ケルベロス達に依頼した。


参加者
ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)
ヴォイド・フェイス(ミスタースポイラー・e05857)
天羽・舞音(力を求める騎士・e09469)
リリー・リーゼンフェルト(耀星爛舞・e11348)
アドルフ・ペルシュロン(緑の白馬・e18413)
エルザート・ロッソ(ファントムソード・e24318)
嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)

■リプレイ

●渇望
 東の空が白み始めるのには、少しばかり尚早な時分。だが、それでも農村の朝というものは、都会のそれに比べれば随分と早い。
 夜の帳が上がり始める頃合いを見計らい、近くの農家からは、ちらほらと人の影が見え始めた。自転車をこぎながら、新聞を配達している少年の姿もある。そんな日常の一コマを破壊するかの如く、漆黒の魔蟲は空を切って畑へと舞い降りた。
 獄標のタルヴィス。渇望に狂うオオエンマハンミョウのローカストが、獲物を見つけて高々と吠える。が、その叫びに応えたのは、果たして逃げ惑う人々の悲鳴ではなく。
「耐える、頑張る、我慢する。取れる手段が3つもあるんだから、どれか1つくらい成功する。さあ、来るっす」
 自らの手を刃で傷つけ、アドルフ・ペルシュロン(緑の白馬・e18413)が挑発するようにして立ちはだかった。
 片手に松明、片手に鮮血。肉食の虫をおびき出すのには、好都合な条件を揃えたつもりだ。
 もっとも、相手はあくまで、『虫のような姿をした異形の存在』である。人の肉を食らうのは、その奥に蓄えたグラビティ・チェインを欲してのこと。
「グオァァァッ!!」
 光や血の臭いではなく、純粋な力によって惹かれたのだろう。咆哮と共にアドルフへと襲い掛かるタルヴィスの牙が、寸分狂わぬ狙いで彼の首筋へと食らいつく。
「……っ!?」
 全身を走る強烈な痛みに、思わずアドルフが敵の身体を振り払った。予想していた以上に、敵のスピードは速い。その上、こちらの身体を屠った直後に、すぐさま距離を取って間合いを測り直して来る。
 ヒットアンドアウェイ。攻撃力とスピードの双方を高い水準で合わせ持った、タルヴィスの得意な狩りの方法だった。それを抜きにしても、こちらが敵に一方的に貪り食われることを受け入れでもしない限り、相手もまた動くことを止めなかっただろう。
 戦況は常に変化する。戦いとは、互いに足を止めて行うものではない。囮として、各上のローカストに単身で挑むことは、あまりに無謀と言わざるを得なかった。
(「ま、拙いっす……。耐えるのはできるとして、このままだと敵の動きを止めるだけの余裕がないっす……」)
 一撃で倒されることはない。しかし、人家のない場所まで誘導できるだけの余裕もない。次の一手をどうするか。それを考えている間にも、タルヴィスの攻撃は容赦なく、アドルフの体力を削って行く。
 もう、これ以上は限界だった。さすがに、放っておくわけにもいかないと、残る仲間達も次々と降下し、タルヴィスを取り囲むようにして農村の大地へと着地した。
「やはり、地上で動き回る敵をレンジ外から狙い撃つのは無理があったか……」
 戦場をガスで覆いつつ、カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)は大盾の後ろから敵を見据える。
 こちらの認識が甘かったことは否めない。だが、それでも今は、村民に被害が出なかったことを幸いと思わねば。
「まあ、済んだ事は今更悔やまない! 行くわよ……殺界形成!」
 リリー・リーゼンフェルト(耀星爛舞・e11348)が殺気で人々を遠ざけたところで、ようやく本格的に戦闘開始……の、はずだったのだが。
「Noooo! デイブレイク拝みながらのスカイダイブから、俺様だけ真夜中に逆戻り!?」
 凄まじい轟音と共に、頭から降下したヴォイド・フェイス(ミスタースポイラー・e05857)が、休耕中の畑に顔面から突き刺さっていた。パラシュートなしで、のっけから自爆に等しい登場の仕方。どう見ても、人間の首から下が逆さまに畑から生えているようにしか見えず、どこぞの推理小説に出てきた死体を思わせる様相である。
「まあ、そう簡単に後ろを取らせるほど、敵も馬鹿じゃなかったようですけど……」
 それでも、少しは行動を考えたらどうかと、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)が溜息交じりに呟いた。
「とりあえずぅ、虫、こっち、来い……」
 ラトゥーニ・ベルフロー(至福の夢・e00214)がミミックのリリを投げて敵の気を引いた隙に、ケルベロス達は改めて体勢を立て直す。初動こそ上手く行かなかったが、本当の戦いはこれからだ。
「あんな暴走するまでに飢餓とかになったローカストには同情するけど……危害を加えるなら容赦しないよ!」
「獄標のタルヴィス……その力、見せてもらおうか。……変身!」
 エルザート・ロッソ(ファントムソード・e24318)が杖と槍を十字に構え、天羽・舞音(力を求める騎士・e09469)もまた戦うための姿へと変わる。
 夜明け間際の惨劇。徐々に白み始める山々の狭間を背に、互いに『地獄』の名を冠する者達の戦いが始まった。

●修羅
 広がる煙の中、刃と甲殻が互いに空を切る音が響き渡る。
 スピード、パワー、そして防御力。そのどれを取っても、タルヴィス単体の力では、ケルベロス達のそれを凌駕している。単一の能力に特化せず、敢えてバランスよく立ち回れる間合いを維持しているため、一時も油断することは許されない。
「チカラヲ……ヨコセェェェッ」
 己の本能のままに叫び、タルヴィスの牙がケルベロス達へと襲い掛かる。すかさず、ライドキャリバーのカブリオレが盾となり、衝突する鋼の身体と鋼の牙が、激しい火花を撒き散らす。
「『獄標のタルヴィス』、か。正気を失って尚これとは、さぞ名高きローカストであったのだろうな」
 敵の猛攻を目の当たりにして、カジミェシュは改めて、相手の持つ地力の高さに戦慄を覚えた。
 耐え難い飢えと渇きに襲われていながら、あの戦闘力。本能のみでここまでの立ち回りができるとなれば、それだけで恐るべき相手である。
 願わくは、十全の状態で刃を交えたかったが、今はそれを言っている場合でもない。
「まずは、少しでも機動力を奪わせてもらおうか」
「フォローは任せて! オウガ粒子、戦術散布開始!」
 ボクスドラゴンのボハテルにアドルフの受けたダメージを回復させつつ、カジミェシュは高々と大地を蹴って跳躍する。リリーの装甲から放たれた光り輝く鋼の粒子を背に受けて、流星の如く飛来する脚。強烈な蹴撃が敵の身体を貫かんとするが、しかし相手も黙ってやられるはずもなく。
「……ッ! グゥゥ……」
 鉤爪の生えた四肢を大地へと突き立て、タルヴィスは吹き飛ばされそうになった自らの体勢を強引に立て直していた。
 攻撃が効いていないわけではない。が、これは予想以上に手強い相手だ。
「詩え翼、舞え剣……譜演調べる想臆の乱舞をここに……」
 それでも、この機を逃してはならないと、すかさずエルザートが光の翼から粒子を解き放つ。
 空中を浮遊する紅と蒼。二色の粒子は一面に広がり、さながら星空の如き様相を紡ぎ出す。刹那、その光が鋭い刃と化し、無数の流星となって降り注いだ。
 どれだけ素早い動きを持ってしても、追尾する剣の雨からは逃げられない。群がる刃を強引に振り払おうとするタルヴィスだったが、それは舞音がさせはしない。
「神妙にしていろ……!」
 蒼炎を纏った薙刀を巧みに操り、斬撃と共に蹴り上げる。それだけでなく、続け様に自らもまた大地を蹴って、空へと舞い上がった相手を追撃する。
 空中で振り被られる薙刀の穂先。憎悪の象徴を宿した一撃で、奈落の底へと誘うかのように。
「……ウゥ……キサマノ、チカラモ、ヨコセェェェッ!!」
 大地へと叩き付けられたタルヴィスが、明らかに正気を失った瞳で舞音を睨み付けていた。もっとも、間合いの関係から、タルヴィスが彼に仕掛けることはできないのだが。
「リリ、代わりにぃ、がんばれ」
 そんな中、再びミミックのリリを投げ付けて、ラトゥーニは何やらロープを張っていた。
 奮闘するサーヴァントを余所に、ここだけ何やらマイペースな空気。しかし、自分のペースを大事にしているのは、何も彼女だけというわけではない。
「さっきは思わず、ワンコの神様の一族に呼ばれた気がしちゃったぜ! ん? だったら、マスクは白じゃなくちゃ駄目だって?」
 ようやく畑から首を引っこ抜いたヴォイドが、ブラックスライムを展開しながら、何故かカメラ目線になりつつ叫んでいた。
 いったい、彼は誰と会話をしているのだろう。ふと、そんなことが気になったが、それはそれ。
「空腹は最高のスパイスってか? まー命懸けなんだろうけっども、人生のスパイスにしちゃ、ちょいと効き過ぎじゃネ? エグい事やるよネェ」
 そう言いながらも、ちゃっかり自分もブラックスライムに敵を捕食させているところが抜け目ない。まあ、彼にとってはスパイスの効いた獲物を前に、ちょっと味見してやった程度のことなのかもしれないが。
「強い、硬い、速い。それでも、同じ時間で撃てる手数はこっちが上っす」
 カブリオレのガトリング砲で敵を牽制しつつ、アドルフもまた真正面から敵を蹴り飛ばす。衝撃に相手の身体が揺れたところで、今度は麻代が自らの掌を炎で包み、そのまま敵の顔面を打ち据えた。
「肉を喰わせて骨を断つ、みたいな感じですか? 食いたければいくらでもどうぞ」
 ただし、代金はそちらの命になる。その言葉は、果たしてどこまでタルヴィスに通じていただろうか。
「ハァ……ハァ……スベテ……クライツクスゥゥゥッ!!」
 自らの身体に刻まれた傷を物ともせず、タルヴィスは本能の赴くままに、暴れることを止めようとはしなかった。

●煉獄
 東の空が白み始める時分、ケルベロス達と獄標のタルヴィスの戦いは、なおも膠着したまま続いていた。
 周囲に散乱するロープの切れ端。ラトゥーニが仕掛けたものの名残だ。もっとも、グラビティの力を持たない単なる縄など、タルヴィスにとっては何の障壁にもならなかったようだが。
 それでも、度重なる攻撃の応酬により、敵の機動力は既に大きく損なわれて久しかった。が、その強固な甲殻を鋼で覆い、こちらの体力を吸収する術を併せ持つタルヴィスは、なかなかどうしてタフである。
「お腹が空いてかわいそーなローカストちゃんに、お腹いっぱいグラビティをぶち込むお仕事だヨ! なんて優しいんだ、俺様」
 相変わらずの軽口を叩きながら、ヴォイドが何やら境界線のような物体を具現化させ始めた。漫画のコマのフレームに見えなくもない代物だが、その辺は全く気にしておらず。
「あん? 欲しいのはグラビティじゃなくて、グラビティ・チェインの方だってぇ? OH、残念! オーダーのミスでも、返品は受け付けてないんでねぇ!」
 謎の塊で相手を容赦なく殴り飛ばし、カメラ目線になってにやりと笑って見せた。彼曰く、これは最高にフリーダムな技であり、凶器ならぬ狂気で判定して欲しいとのこと。
「どれだけ鎧を纏おうと、片っ端から引っぺがしてやるっすよ!」
 続くアドルフの拳が敵の装甲を正面から砕き、追随するカブリオレが炎を纏って突撃する。戦い始めの頃とは違い、明らかに攻撃が通り易くなっているのは幸いだ。
「ウゥ……オレニ……チカラヲ、ヨコセェェェッ!」
 だが、それでもタルヴィスは諦めることなく、少しでも多くの獲物を狩ろうと必死だった。
「飢餓ってるからって、ガツガツしすぎなんじゃないですか? こちらはどこぞのパンみたいに、肉体のストックがあるわけじゃないんですよ?」
 辟易した様子で零し、雷の霊力を帯びた刀を突き立てる麻代。相手の攻撃を引き付け過ぎた代償か、彼女自身もまた負傷が激しい。少しでも味方を守ろうと動いた結果、敵の攻撃が届かない後衛が囮になるという作戦と、互いの行動を食い合う結果に繋がってしまっていたのだ。
 迫り来るタルヴィスの巨大な顎。さすがに、これ以上は耐えるのも限界だったが、しかし麻代が倒れることはない。
「……!?」
 間髪入れずに割り込んだカブリオレが、彼女の代わりに攻撃を受けて消滅した。一瞬、アドルフに申し訳ないと思う麻代だったが、今は悲観に暮れている時間も惜しかった。
「連続攻撃だ。一気に仕掛けるぞ!」
 舞音の掛け声の下、頷くリリーとカジミェシュ。エルザートの飛ばした電撃がリリーの身体に残る傷を吹き飛ばし、彼女に更なる力を与え。
「せめて、最期にケルベロスをこれだけ苦戦せしめた事を誇って、冥府へ逝くがいい」
「行くわよ! バーニングエルフキック!」
 繰り出される二つの赤い三日月。紅の軌跡を描く蹴りが炎を呼び、それは空中で十字に合わさって。
「よし……これで決める!」
 飛翔する舞音の脚が、一筋の閃光となり炎へと重なる。ドライバーの必殺キーは、敢えて押さない。それをせずとも、今は仲間達との力の重なりが、その代わりとなっていることを知っていたから。
「グォォォッ! バ、バカナァァァッ!?」
 立て続けに襲い掛かる蹴撃の嵐。どれほど強固な装甲を纏い、どれほど機敏に動き回ろうとも、さすがのタルヴィスも、これには耐えることができなかった。
 その身を貫かれ、紅炎に包まれながら、地獄への道標を名乗るローカストが膝を突く。昇る太陽の光に焼かれるかの如く、飢えたる閻魔は断末魔の叫びを上げて爆発した。

●黎明
 戦いが終わると、そこに広がっていたのは何の変哲もない農村の風景だった。
「……終わりましたね」
 ドライバーを解除し、元の姿に戻った舞音が静かに呟く。敵を撃破し、村人の被害もなく戦いを終えることができたケルべロス達だったが、その表情は重かった。
「今度はまともな人に出会って、こんなことにならないように……」
 利用されるだけ利用されて、最期は錯乱したままに散って行った。そんな哀れなローカストへ、エルザートは追悼の意を込めて祈りを捧げ。
「欲を言えば、万全な状態の相手と戦いたかったですね」
「それは、私も同感だ」
 麻代の言葉に、カジミェシュも言葉少なげに頷いた。
「いつまで続くのかしらね……。あの時、もう少し奴らを減らせていれば、こうまで長引かなかったかもしれないけど……」
「せめて、オウガメタルだけでも助けたかったっす……」
 リリーとアドルフの口から零れるのは、耐え難い後悔の念。だが、ここで嘆いていても始まらない。敵が終わりなき黙示録を続けるというのであれば、それを阻止するのがケルベロスの役目。
「まあ、なんだかんだで、終われば元通り、いつものままさ。それじゃ、また会おうぜ!」
 最後に、ヒールされた畑を横目に、ヴォイドが何者かに呟きながら颯爽と去って行く。その背中には、いつの間にかラトゥーニが勝手に貼り付いていたのだが……当の本人は、あまり気にしていないようだった。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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