夏の海とクラーケン

作者:波多蜜花

「あったー! うふふ、間違いないわ。この浜辺こそがクラーケンが出るって言われてる場所よ!」
 少女が訪れた場所はプライベートビーチと言っても過言じゃないほど、人が来ない奥まった場所にある小さな浜辺。
「この本によるとイカの姿をしたクラーケンが現れるって書かれてるけど……どのくらい大きいのかな、やっぱり3メートルくらいはあるのかなっ?」
 わくわくとした表情が隠しきれない程、太陽の光を反射してキラキラと光る青い海のように少女の表情は輝いていた。
 砂浜へ向けて歩き出そうとした少女の足が、不意に止まる。それは第五の魔女・アウゲイアスが、少女の心臓へその手に持つ大きな鍵を突き刺したからに他ならない。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 アウゲイアスがそう言うやいなや、意識を失いその場に崩れ落ちた少女と入れ替わるように、少女が探し求めていたクラーケンがその場に現れたのだった。


「海の魔物って言うたら、色々おると思うんやけどな」
 分厚い手帳を開きながら、信濃・撫子(サキュバスのヘリオライダー・en0223)がそう切り出した。撫子が言うには今回はクラーケンを捜し求めて浜辺へとやってきた少女の『興味』が奪われてしまったらしい。
「『興味』を奪ったドリームイーターはもうおらんみたいやけど、奪われた『興味』を元にして現実化したドリームイーターがこの浜辺の海におるんよ」
 これを放っておけば、いずれ移動を始めて少女が思っていた通りのイカの姿をしたクラーケンとして人々を襲うようになるだろう。
「それだけは避けやなあかんよってな。それにこのドリームイーターを倒さんと、この女の子も目を覚まさへん」
 早々に倒してしまわなければならない相手だと、撫子が手帳からケルベロス達に目線を移す。
「この浜辺は奥まったとこにあってな、地元の人間でも滅多に訪れやんらしいわ。クラーケンは海の中におるけど、浜辺で噂しとったら姿を現すはずや。それと、人間を見つけると『自分が何者であるかを問う』みたいなことをしてきて、正しく答えられへんと殺してしまうみたいや」
 これは奪われた『興味』から生まれたドリームイーターに共通する性質のようで、今回のドリームイーターも例に漏れずといったところだろうか。
「イカのクラーケンでも人の言葉を喋るってことか?」
 それまで大人しく後ろで聞いていた猫塚・千李(ウェアライダーのミュージックファイター・en0224) が撫子に問い掛ける。
「クラーケンや言うても、ドリームイーターやからな!」
 なるほど、と千李が頷くのを見て撫子がケルベロス達に向き直る。
「それとなー、その浜辺の海……めっちゃエメラルドグリーンで綺麗な海らしいで? ドリームイーター倒したあとやったら、遊んでくるんもええと思うわ!」
 何せ夏だ、目の前に美しい海があるのにそのまま帰るのはちょっと勿体無いというもの。
「どんな興味でもそれを使って化け物を生み出すんは許したらあかんからな、皆で倒してきたってや!」
 その後のお楽しみも存分にな、と撫子はウィンクをしてみせた。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)
アマルガム・ムーンハート(ダスクブレード・e00993)
露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)
瀬戸・玲子(ヤンデレ予備軍・e02756)
真月・勝(ただの探偵・e05189)
アルテナ・レドフォード(旅好きな剣術使いさん・e19408)
ユーディアリア・ローズナイト(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e24651)

■リプレイ

●夏の魔物にご用心
「ここってクラーケンが出るって噂があるの、知ってる?」
 目の前に広がるエメラルドグリーンに輝く海を眺めながら、メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)が口火を切ると、アマルガム・ムーンハート(ダスクブレード・e00993)が手で望遠鏡を作る仕草をしながら海を見て、
「クラーケン、出るんだってね。クラってつくしクラゲなのかな?」
 と、冗談交じりに笑った。
「タコやイカの姿をしているらしいよ? ここに出るのはイカの姿をしているらしいけど……」
「ん、きいたこと……ある。……すっごく、おっきい……イカさん、だよね……?」
 イカと言えば触手のような10本の腕が思い浮かび、オークみたいな事にならないといいけど……と思いながら瀬戸・玲子(ヤンデレ予備軍・e02756)が答えると、ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)が海風に攫われる長い黒髪を押さえながら頷いた。
「クラーケンっていや船を沈める怪物だったか? ならかなりのデカさなんだろう」
「私の地元に伝わる話ですが、海に浮かぶ島のような形や大きい海蛇の形をしていると言う人もいますね。どちらも巨大なので全貌を見る事は出来ずに船諸共沈められるという事です」
 真月・勝(ただの探偵・e05189)の想像を含んだ声に、アルテナ・レドフォード(旅好きな剣術使いさん・e19408)が北欧に伝わる話です、と夏の日差しに目を細めた。
「そんな巨大な生物がいるんです? デウスエクスではなくてです?」
 興味津々といった響きを含ませて、ユーディアリア・ローズナイト(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e24651)が視線を波間に走らせる。
「クラーケンは島くらいの大きさがある! とかいう話もあるっぽい。でも、ここに出るのは3メートル程度って話だよ。……クラーケンとは言えないかも?」
 3メートルもあれば十分人を襲えるサイズではあるが、クラーケンかと言えばどうだろうと露木・睡蓮(ブルーロータス・e01406)が首を傾げた。
「でもあれだぜ、実際に見てみると意外と大きく思えたりするんじゃねぇか? ……あんな風にな」
 すっと猫塚・千李(ウェアライダーのミュージックファイター・en0224) が示す先に、全員が視線を移す。そこには、波を掻き分けるように此方へ向かってくる白く大きなイカ、クラーケンの姿が見えた。
「確かに大きさは3メートルくらいっぽい……でもあの腕を広げると大きく見えるかも」
 戦闘態勢を整えながら睡蓮が長く青い髪を揺らして頷けば、
「確かにな、触腕は俺の胴回りぐらいあるんじゃねぇか? あれに巻き付かれるのは厄介かもな」
 と、冷静に分析してみせる。
「何はともあれ、イカ焼きにしてやんよ! それからこの海をレッツエンジョイだよっ!」
「わたしも早く倒して海で遊びたいなぁ」
 アマルガムがびしっとクラーケンに向かって指を向けると、メリルディがぼそりと南瓜さんと、と呟いた。
 長い触腕を蠢かせクラーケンの姿をしたドリームイーターが、ケルベロス達の待つ砂浜へと上陸するまで、あと少し。

●クラーケン退治!
「うー……じゃない。くー、りーーー!」
 先手を取ったのはメリルディで、クラーケンが自身の射程距離に入ったと同時に栗を抜いて麻痺毒を詰め込んだ特性イガグリを召喚し、クラーケンの頭上へと落とす。それは言われなければウニにも見えて、誰とは言わないがウニとイカか……と呟く声が聞こえてくる。見た目はユニークなグラビティだけれど、それはしっかりとクラーケンにダメージを与えていた。
 初手でエンチャントの付与を考えていたロナだったけれど、そういえばヒールは持ってきていなかったのだと思い直して軽やかなステップを柔らかい砂の上で踏み出した。身に纏う装飾が涼しげな音を奏で、太陽の光を反射する。
「ひらり、ひらり。光よ踊れ。闇夜に、空に、大地に轟け。―さぁ、幕を開けよう」
 苛烈な閃光の魔法陣が描かれると、それはクラーケンの生命力を奪ってロナへと流れ込んだ。
「イカした攻撃でイカせるよっ」
 どやぁ……っという文字が後ろに見えるような満足気な顔でアマルガムがガトリングガンを構え、爆炎の魔力が込められた大量の弾丸を連続で撃ち出すと、砂地に足を取られないように注意しつつ睡蓮が腰を落としながらアームドフォートをクラーケンへと向ける。
「海で遊ぶのは楽しみだけど……まずはこっちが先っぽい!」
 構えたアームドフォートの主砲を一斉に発射すれば、命中を確認してぐっと拳を握った。
「本当におっきなイカですね!」
 前衛で戦う仲間を守るように縛霊手の祭壇から霊力を帯びた紙兵を大量に撒き散らし、ユーディアリアが感心したようにクラーケンを見上げる。ドリームイーターだとはわかっているけれど、初めて見る巨大イカにこの世界をもっと知りたいと願うヴァルキュリアの少女の目は輝いていた。
「さぁ『依頼』を始めようぜ!」
 バトルシューズのローラーの激しい摩擦熱を利用して炎を纏わせると、勝がクラーケン目掛けて鋭い蹴りを放つ。その炎はクラーケンへと燃え移り、それはなんとも……香ばしい匂いがしたような、しないような。
「体感的にも暑いですが、視覚的にも暑いですね……早めに終わらせましょうか……」
 北欧出身のせいか日本の暑さに慣れていないアルテナが、ほんの少し表情に翳りを見せながら手にした武器に雷の霊力を纏わせて神速の突きを繰り出した。暑さに辟易しているとはいえ、その鋭さは変わらずクラーケンを弱らせていく。
「逃がさないからね」
 万が一の逃走を考えて、海側から回りこんでいた玲子が掌を前に突き出すと、その掌からドラゴンの幻影を放つ。それはクラーケンを飲み込み、炎を上げた。
「オォォ……ワタシハ、ナニカ……コタエヨォォ!」
 動きに精彩を欠くクラーケンが太い触腕をうねらせながら問い掛ける。
「ドリームイーターよ、それ以上でもそれ以下でもない、ね」
 玲子が眼鏡の位置を直しながら答えると、その答えに満足しなかったのであろうクラーケンが触腕を玲子目掛けて鞭のようにしならせた。身構えた彼女の前に飛び出たのは睡蓮で、伸びてきた触腕にその身を締め付けられる。
「大丈夫か?」
「これくらい、へーきっぽい!」
 千李の気遣う声と癒しの力に睡蓮が表情を変えずに頷いてみせた。
「一気に決めちゃおう、ケルス」
 ケルス、と呼ばれたメリルディの攻性植物が蔓のような触手形態を取ると素早い動きでクラーケンへと絡み付き締め上げる。身動きができなくなったところをメリルディの動きに連携するように動いていた勝が手にしたコインを礫のようにして放つと、玲子が魔導書の魔術全てを解き放ち、全魔術を圧縮して一発の銃弾に変え拳銃へと装填する。
「全術式解放、圧縮開始、銃弾形成。神から奪いし叡智、混沌と化して、神を撃て!」
 その一撃はクラーケンの目と目の間を撃ち抜き、ぐらりと傾きかけたところを追い討ちするかのようにロナが放った半透明の御業がクラーケンを鷲掴み、砂浜へと沈めたのであった。
「イカさん、退治……おわり……かな?」
「よーし! それじゃあ海を満喫……の前に被害者の女の子を起こしにいこうかな」
 ロナの言葉に伸びをしつ、アマルガムが答え、倒れている少女のもとへ歩いていくのだった。

●夏の浜辺と煌く海に誘われて
 周辺のヒールも済ませ、それぞれが思うがままエメラルドグリーンに輝く海を楽しんでいた。
 今年新調したばかりの水着にラッシュガードを羽織ったメリルディも四十九院・スケキヨ(パンプキンヘッズ・e01109)と共に波打ち際に立って、慣らすように寄せては返す波の感触を確かめている。
「あのさ、南瓜さんって泳げる?」
 オレンジサファイアのような可憐な水着がよく似合っている愛しい恋人を自慢に思いつつ眺めていたスケキヨは、その恋人からの質問に頷きながら膝まで浸かるように歩いて答えた。
「泳ぎかい? 幼い頃いざという時に溺れてしまうといけないからとみっちり特訓されたから、多分大丈夫な筈だよ」
「この前の川遊びもそうなんだけど、そういったところに行ったことがないから泳げないんだ。よかったら教えてもらえないかな」
「そういうことなら、犬かきからバタフライの指導でもバッチ来いさ!」
 色々あって、最近まで出歩くことができなかったメリルディの可愛いお願いに、スケキヨが優しく子どもに教えるように簡単な泳ぎ方を伝授する。
「リル、水が深い場所は恐いかい?」
「深いところは……うん、溺れちゃいそうで怖いや」
「大丈夫、何があっても私が傍に居るから……おいで」
 落ち着かせるように手を引いて、ゆっくりと胸が浸かるところまで来ると2人で澄んだ美しい海を眺めた。
「そうだ、いつか泳ぐのに慣れたら魚が沢山いる所に行きたいね。彼らを間近で見るの、凄く楽しいから」
 君と2人で、と囁くスケキヨに、メリルディは南瓜さんと一緒ならと微笑んだ。
「ユー、ユー見て、ください、かにさんです」
「ほんとです、可愛いですね、イソラちゃん!」
 一緒に遊ぶ為に来てくれた杜燕・イソラ(宵空に虹を架けて・e30099)と共に砂浜にしゃがみこんでカニを眺めているのはユーディアリアだ。2人の少女が無邪気にカニを眺めているのをイソラのビハインドが見守るように眺めている、それは優しい光景だった。
「イソラちゃん、海といえばどんな遊びがあるんでしょうか? ボクよりイソラちゃんの方が詳しそうです」
 ユーディアリアの問い掛けに、イソラが少し悩んでから口を開く。
「すなあそび、とか、波で追いかけっことか、楽しそう、です。でも……イソラ、さびないと思うんです、けど、さびるの、こわいので……すなあそび、が、いいです」
 ノースリーブの白いワンピースを着たレプリカントの少女がそう言うと、プラムカラーの元気いっぱいな水着を着たヴァルキュリアの少女がにっこり笑って頷いた。2人でお城を作る為の砂山をペタペタと掌やスコップで叩いていく。
「どうすれば丈夫に作れますかね?」
「濡らした砂を、すこしずつ重ねて固め、て、表面を平らにならす、といいそう、です」
「イソラちゃんは物知りですね!」
 年下のお友達の期待に応えたくて、こっそりアイズフォンを使ったのは内緒のお話。
 もうひとつの『依頼』を遂行すべく、勝は青い迷彩柄のサーフパンツに白のパーカーを羽織り、真夏の海を堪能するかのような格好で、星条旗をモチーフにしたビキニを纏いテンガロンハットを被ったピアディーナ・ポスポリア(ポスポリアキッド・e01919)の後ろを歩いていた。
 初めて見る海を案内して欲しいというピアディーナの『依頼』を可愛らしく思いながら後ろを歩く勝には、彼女が今どんな表情をしているかなんて気が付かない。それでも、ピアディーナは一緒に初めての砂浜を歩くことや波打ち際の足の感触が楽しくてはしゃいでしまう。
「元気なのはいいが、すっ転ぶなよ?」
 そんな彼女を見て、もうこの世にはいない娘を思い出して勝は細めた目を隠すようにサングラスを掛けた。
「楽しいね、その……初めて、海見て、どきどきとまらないや……ひゃわっ……!」
 砂に足を取られ、すてんとこけた彼女に手を貸しながら勝が笑う。
「まぁ水着だから汚れても問題ないだろうが」
「う、うん……ありがとう、Mr.勝」
 繋いだ手の大きさにドキドキしつつ、一瞬見えた彼の目が寂しそうに見えてピアディーナは砂を払いながら、もう少しこのまま歩きたいと呟いた。
「いいぜ、嬢ちゃんの『依頼』だからな」
 こけないように、手を繋いで。在りし日を想う彼と、前を見つめる彼女は再び波打ち際を歩き出した。
「は……はなしちゃやだ、よ……? ぜったい、だよ……?」
 しっかりとゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)の手を握ったまま、顔を上げてお願いをしているのは淡いピンクのビキニを着たロナだ。泳げないからと、ゼノアに泳ぎを教えてもらっているのだ。バタ足をしたり、顔を水に付けたりと泳ぎの基礎から始めているのだが、慣れない海にロナは悪戦苦闘の様子。
「水を恐れるな。風呂に入るのと同じだ。何も怖くない」
「そう……なのかな? うん……がんばって、みるね……!」
 とてもお風呂と同じには思えなかったけれど、折角教えてもらっているのだからとロナがゼノアの言うとおりにバタ足をしていると、ゼノアがぱっと両手を離した。
「……わ、あ……! ゼノ……て、はな……わ、わぷ……!」
 いきなり手を離されて半ばパニックになりながら、ばたばたと手足を動かし溺れそうになっているロナをゼノアが手を伸ばして救い上げる。
「……ここ、足着くだろ?」
 自分にしがみついてぷるぷると震えるロナに呆れつつ、ゼノアが頭を撫でた。
「……およげるようになっても、はなしちゃやだ……」
 ほんのちょっとの我侭だけれど、それはきっとロナの本心なのだろう。もう一度手をしっかり握り、改めて泳ぐ練習を始めるのだった。
「皆様お疲れ様でしたわ!」
 メリッサ・ルゥ(メルティウィッチ・e16691)が朗らかに戦いの疲れを癒すケルベロス達に労いの声を掛け、アマルガムが持ってきていたバーベキューセットの準備を手伝う。セットができたところで、鮮やかなイエローグリーンのビキニ姿を惜しげもなく晒すように浮き輪を持って海へと飛び込んだ。
「本当に綺麗な海ですわね」
 浮き輪の上に座り、煌く波にぷかぷかと揺られて楽しそうに浜辺を見遣る。
「流されねぇように気を付けるんだぜ!」
 そう自分に向かって叫ぶ千李に、
「わかりましたわ!」
 と、手を振って応えた。
「夏の海の日差しはヤバいかも!」
 猫柄のサーフパンツを穿いた睡蓮がしっかりと日焼け止めを塗り、水上ハンモックを膨らませると既に数名が遊んでいる海へと躍り出た。
「波に揺られながら眠るのは最高かも! でも寝てる間に流されるのは怖いかも……」
 どうしようかと考えて、思い付いたのはケルベロスチェインとゲシュタルトグレイブを組み合わせて即席の錨を作ること。我ながら名案だと、即座に行動に移す。
「うん、完璧っぽい!」
 暫くの間、楽しそうな仲間達の声を聞きながら、睡蓮は海の上のシエスタを楽しむことにした。
 黒のビキニとフリンジをあしらった白のホットパンツという水着姿の玲子と、青いタンクトップビキニ姿のアルテナが被害にあった少女と海を楽しんでいる。事前に用意していたシュノーケルと簡単な潜水道具を持ち出して、クラーケンを探そうと助け起こした少女に提案したのだ。
「なかなか上手くできませんね……」
 美しい海で遊ぶことに癒されたのか、アルテナが暑さを忘れたようにシュノーケルを調整する。
「リラックスして浮かぶのと、ゆっくり口で息を吸ってゆっくり吐くのがポイントよ」
 ぷかりと浮いて、水中の風景をゆっくりと楽しむのだと玲子がアルテナと少女に説明する。暫くするうちにコツを掴んだのか、ゆったりと青い海を楽しむと、今度はスキンダイビングだと海の中を潜り始めた。
「ふふふ、女の子の水着姿はいい! 鼻の下伸びちゃうなっ!」
 アマルガムが肉や野菜、そしてイカを焼きながら、太陽の光を受けて眩しいほどの笑みを浮かべる。
「ところで千李は泳げる、のかな?」
 なんとなく猫は泳げなかったり水嫌いのイメージがあると、アマルガムが笑う。
「泳げるぜ、猫のウェアライダーではあるが苦手に思ったことはねぇな」
 なるほどねー、と頷きながら焼けたイカ焼きを千李に渡した。
「さー! みんなー、美味しいバーベキューが焼けたよー! たべよたべよー♪」
 アマルガムの声といい匂いに誘われて、海で遊んでいた仲間達も砂浜の小さなバーベキュー会場へと集まってくる。
「わー、いい匂いっぽい! 美味しそうかも!」
「とっても美味しそうです、いただきます!」
 睡蓮とユーディアリアのはしゃぐ声に、誰かが幸せそうにしているのを見るのが好きなアマルガムも満足そうにイカ焼きを頬張った。
 お腹が膨れたら、また海へ遊びに行く者、ビーチバレーに興じる者とそれぞれが夏の海を満喫している。まだまだ終わりそうにない夏の空は高く、海は青く澄んでいた。

作者:波多蜜花 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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