運命の君に逢いたくて

作者:小鳥遊彩羽

 とある街の郊外。森の奥にある、古びた洋館。
 住む者もなくなって久しいその場所に、深夜、一人の少女が足を踏み入れた。
「うう、やっぱり夜は不気味だなあ……」
 懐中電灯の明かりで周囲を照らしつつ、少女はゆっくりと奥へ進んでいき――そして、一つの扉の前で立ち止まった。
「奥から二番目……ここかな」
 軋んだ音を立てて開く扉。室内に懐中電灯を向け、少女は小さく声を漏らす。
「……ほんとにあった。――運命の人を映し出す、鏡」
 それは、部屋の隅に立て掛けられた姿見だった。少女は恐る恐るといった足取りで、姿見の方へ進んでいく。
「どんな人なんだろう。……私の、運命の人」
 しかし、少女がそれを確かめることは叶わなかった。
「……っ!?」
 不意に身体を強張らせる少女。その胸元から突き出した、一本の鍵。
「私のモザイクは晴れないけれど……」
 囁かれた声は、少女のものではなく、少女の背後に立つ『誰か』のもの。
「――あなたの『興味』に、とても興味があります」
 第五の魔女・アウゲイアスはそう言って、糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた少女を見下ろす。
 その傍らに現れたのは、一人の青年。
 それは、顔がモザイクで覆われたドリームイーターに他ならなかった。

●運命の君に逢いたくて
 不思議な物事に強い『興味』を持ち、実際に自分で調査を行おうとした者が、ドリームイーターに襲われその『興味』を奪われる。
 『興味』を奪ったドリームイーター自体は既に姿を消しているようだが、奪われた『興味』を元に新たなドリームイーターが生み出され、事件を起こそうとしている。
「皆には、その討伐を頼みたいんだ。『興味』を奪われてしまった子を、助けるためにも」
 力を貸して欲しい。そう言って、トキサ・ツキシロ(蒼昊のヘリオライダー・en0055)はその場に集ったケルベロス達を見やった。
 『興味』を奪われた少女から生まれたドリームイーターは、顔がモザイクで覆われた青年の姿をしているという。
「とある街の郊外に、今は誰も住んでいない古い洋館が建っていて、そこの一室にある姿見を真夜中に覗き込むと、運命の人が映るっていう噂があるらしいんだ」
 その『運命の人』が現実化したのが、このドリームイーターであるらしい。
 そして、ドリームイーターは誰かを見つけると、『自分が何者か』を問うのだという。
 この問いに正しく答えられれば、見逃してくれるということもあるらしいのだが――。
「いずれにしても、皆にはこのドリームイーターを倒してもらいたいわけだから、どう答えても戦うことに変わりはない」
 また、ドリームイーターは、自分のことを信じていたり噂をする人がいたりすると、その人のほうに引き寄せられる性質があるのだという。
「だから、この性質を利用して、……そうだな、洋館の中庭辺りにでも誘い出してしまえばいいんじゃないかな。噂話については、ドリームイーター自身のことについて皆が考えたことを話してもいいし、何なら皆が思う運命の人について語ってみてもいいと思う」
 何せ、元より強い夢の力を持つケルベロスのこと。誘い出すこと自体は、そう難しくはないはずだ。
「運命の人がどんな人なのかわかるなら、俺もちょっと興味あるかなー。なんて。でも、まあ、……そういう人は自分で見つけ出してこそ、だよね」
 そんな風に締め括り、トキサはよろしくね、とケルベロス達に後を託した。


参加者
シア・フィーネ(ハルティヤ・e00034)
シグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)
山田・ビート(コスプレ刀剣士・e05625)
八上・真介(徒花に実は生らぬ・e09128)
姫橋・憂妃(夜の踊り子・e15456)
葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)
鴻野・紗更(よもすがら・e28270)

■リプレイ

 雲一つない空に、星が瞬く夜。
 昼間の暑さの名残を残す生温い風が吹く中、ケルベロス達は廃墟と化して久しい洋館へ訪れた。
 ぼろぼろになった館の一室に、置き去りにされたままの姿見。
 そこに『運命の人』が映るという噂を聞いて訪れた一人の少女の『興味』が奪われ、新たなドリームイーターが生まれ落ちることとなった。
 人の『興味』から生まれたドリームイーターは、その存在を信じたり、ドリームイーターにまつわる噂話などをすれば、誘い出すことが出来るのだという。
 荒れ果てた中庭の一角で、ケルベロス達は戦いの準備を整える。
「運命の人の姿が見える……なんて、ロマンティックですわよね!」
 もし映るとしたら、どのような人が映るのだろう――想像を重ねれば、シグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)の声は弾むばかり。
「ぴぴぴ。鏡に映った人をスマホで撮れたりするカナー」
 ぴこぴこと翼を動かしながら、シア・フィーネ(ハルティヤ・e00034)はじいっと洋館の方を見やる。
 テレビウムのジルもシアの後ろで、画面の顔をぴかぴかと光らせながらドリームイーターの姿を探しているようだった。
「知ってる人が運命の人だったら、シアこれからドキドキしちゃうカナー」
 両手で頬を押さえ、ちょっぴり恥ずかしそうな仕草の後、みんなの運命の人も見れるといいねと満面の笑みを覗かせるシアに、姫橋・憂妃(夜の踊り子・e15456)もくすくすと楽しげに微笑んでみせて。
「運命の人を映す鏡って『この世』のひとしか映さないのかしら? ロマンチックな運命だけを映すのかしら……なんて」
「……運命の人、ってどういう人を指すのだろうね」
 謎掛けのようにも響く憂妃の言葉に、葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)が静かに続いた。
「運命の人、って言ったら、やっぱり恋愛方向のことだよな?」
 八上・真介(徒花に実は生らぬ・e09128)が確かめるように問う声に、伊月はそうだねと小さく頷いてみせる。
「恋愛ももちろんそうだけど、自分の生き方に大きく関わる人って意味だったら……いろんな意味があると思うんだ」
 実のところ、恋も愛もまだ知らない真介ではあるが、伊月の言葉にどこか納得したようにへえ、と声を漏らした。
「出会うことで人生変わる人って意味なら、いろいろありそう。恩人とか、親友とか」
 運命の人に逢えるという鏡に、真介も興味がないわけではない。
 もし、そこに映った人にもう出逢っていたりしたら、それこそ明日から人生が変わってしまうだろうだから。
「……運命、運命の人……運命の人っていうのが、よくわからないけど……」
 淡々と呟いて、ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)は小さく首を傾げる。
 彼もまた、真介と同様に恋や愛といった感情がどういうものなのかわからず、それゆえに運命の人というのがどういう存在であるのか、今ひとつ想像出来ずにいた。
 そこに、シグリッドが言葉を添える。
「ウェインさんには、どなたか……異性の方でも、同性の方でも、心に浮かぶ方などはいらっしゃりませんか?」
 それを聞いて想いを巡らせるウェインの脳裏に、二人の女性の姿が浮かび上がる。
「髪が長くて、サラサラしていて――」
 その二人が、自身にとっての運命の人かどうかはわからない。けれど、何かをひとつ理解したかのようにウェインは頷いて、首に巻かれたマフラーに手を添えた。
(「……どちらにしても、思い出を汚されたく、ないな」)
 話に興じる間にも、彼らは周囲への警戒を怠らなかった。
「私、意外と若く見られがちですが何気に三十歳超えてるんですよね」
 さりげなく仲間達の死角をカバーするような位置につき、山田・ビート(コスプレ刀剣士・e05625)は自らの身の上を交えて語り出す。
「運命の人がわかるなら私も知りたいですねぇ」
 齢三十を超え、独り身が寂しいと嘆くビートの声は切実な響きを持っていた。
 運命の人というのは、想像するだけでもロマンチックなもの。
 それを信じるという興味を奪われたとあっては放ってはおけないと、鴻野・紗更(よもすがら・e28270)は思う。
 夢を奪った張本人を、招き寄せるために。
「わたくしの願う運命の方、とは、……生涯お仕えするに能うあるじさまでございましょうか」
 いつか出逢えると良いのですがと、紗更は静かに願いを紡ぎ、穏やかに微笑んでみせた。

 その時、突如として大きな風が辺りを吹き抜けた。
「ぴー!」
 ざわざわと大きく揺れる木々の梢。驚いたような声はシアの口から零れたものだ。
 気配を感じてケルベロス達が振り返ると、あたかも初めからそこにいたかのように、一人の青年が佇んでいた。
 一目見て、その青年こそがドリームイーターであるとケルベロス達は理解した。
 顔中を覆うモザイクが、その何よりの証だ。
「……僕が何者か、ご存じですか?」
 ドリームイーターは、モザイクで覆われた口から機械で加工したような幾重にも重なった声を紡ぎ出す。
 どう答えようとも、ケルベロスとして成すべきことはただ一つ。
 だからこそ、シグリッドは問いに答える代わりに声高らかに告げた。
「――わたくし共は、貴方を倒す運命の者ですわ!」
 そして、それは結果的にドリームイーターの『問い』に対する『答え』となり――。
 次の瞬間、シグリッド目掛けて放たれたモザイクの塊を、素早く身を呈したウェインが受け止めた。
「シアのだいすき、みんなにとどけっ!」
 すぐさま、シアが綺羅星を解き放つ。
 降り注ぐ光の袂に揺らめく幾つもの小さな影。そこから生まれたお化けの南瓜達がウェインをはじめとする前衛陣に力を注ぐ傍らで、テレビウムのジルが凶器――もとい大鎌を手に夢喰いへと躍りかかった。
「ジルくんもやっちゃえー!」
 シアの声に応えるように勢い良く振り抜かれた大鎌が、顔面のモザイクにヒットする。
「いざ、参りましょうか」
 ――夢喰いの背後に聳える館。
 そのどこかで醒めぬ眠りに落ちたままの少女を迎えに行くために。
 踏み込んだ紗更が高々と跳躍し、ドリームイーターの頭上目掛けてルーンアックスを振り下ろした。
 頭をかち割らんばかりの衝撃に、モザイクの欠片が剥がれ落ちる。
 着地してすぐ邪魔にならぬ位置へと後退した紗更の脇を抜けるように、続けてドリームイーターへと肉薄したのは伊月だ。
「僕は伊月、帝国山狗団の葛籠折伊月。罪無き興味を取り戻す為、君を討つ!」
 名乗り上げると同時に、伊月は鉄塊剣を振り下ろす。単純かつ重厚無比の一撃だが、それはドリームイーターの意識を惹きつけるには十分すぎるもの。
「大丈夫! 何とかなる!」
 自らに言い聞かせるように叫び、ビートが続けて地を蹴った。
 絶対に負けないという強い意志と共にドリームイーターの鳩尾に叩き込まれる、流星の煌めきを宿した重い蹴りの一撃。
 そこに、真介が束ねた二つの妖精弓を構えながら狙いを定めた。
 強度を増した弓から放たれるのは、神々を殺すとさえ言われる漆黒の巨大矢。ドリームイーターの影を縫い止めたような手応えを感じながら、真介は想いを馳せる。
 運命の相手が殺しに来るとあっては、――それもある意味運命的な相手ではあるけれど。
「……人、特に女の子が見る夢は幸せじゃないとな」
 少女が、今度こそ幸せな夢を見られるように。
 現実化したこの悪夢を倒すことこそが、自分達の役目だ。
「運命の人、ねぇ? そんなものは信じてないけれど……そうね」
 憂妃は吐息を混ぜた声を零しながら、シャーマンズカードを広げてみせる。
「不思議な話はスキだから、乗ってあげるわ?」
 その直後、カードに描かれた紋様が光を帯び、戦場に現れたのは【暴走する殺戮機械】――ランページ・マシーン。
 唸りを上げながら、ドリームイーターへと一直線に飛び込んでゆく暴走ロボットのエネルギー体。その動きを追いながら、シグリッドは避雷の杖を差し向ける。
「在るべき場所へと、お帰り下さいまし!」
 夢は夢へ。在るべき場所へ。
 杖の先から迸った光に貫かれ、ドリームイーターが動きを鈍らせる。
 内蔵モーターを用い、ドリルのように回転させた拳を叩き込みながら、ウェインは静かに告げた。
「人の想いは、遊びものじゃないよ。……止めてくれないのなら、僕は君を『破壊』する」

 顔を覆うモザイクがちらちらと瞬いて、倒すべき敵と定めた伊月を狙う。
 大きく口を開けたモザイクに喰らいつかれながらも伊月は決して怯むことなく、大切な幼馴染達の名を冠したアームドフォートを構え、その主砲を解き放った。
「残念だけど、そう簡単に倒れはしないよ」
「ぴぴぴ! 伊月ちゃん、回復するねー! ジルくんも、一緒に回復!」
 戦況をしっかりと見定めていたシアがすぐに癒しのオーラで伊月を包み、ジルもテレビの顔に応援用の動画を流す。
 ドリームイーターの攻撃力は、盾役の者達が受けてもなお強烈と言える威力を持っていたが、シアとテレビウムのジルが力を合わせて戦線を足元から支えていた。
 真介や紗更、そして憂妃が命中精度の高い攻撃を続け、シグリッドもジャマーのポジションを生かして着実にドリームイーターの動きを封じていく。少しずつではあるが、ドリームイーターは確実にその動きを鈍らせていった。
 やがて幾度かの攻防を重ねた頃には、飛んでくるモザイクの塊を避けることも難しくはなくなっていた。
 戦いの終わりが近づきつつあるのを感じながら、ケルベロス達は攻撃を続けてゆく。
 掲げた杖の先からシグリッドが時空を凍結する弾丸を放ち、ドリームイーターをさらに追い詰めたその直後。
 不意に響いた電子音声は、ウェインが発したものだった。
「その魂に、誇り高き結末を――」
 獅子の礫刑(レオニード・ザッパー)の名の通り、背に負うは獅子座の刻印。全身に蓄積させた魔力がさながら獅子の鬣のような光の粒子となって、ドリームイーターを斬り刻む。
 闇夜を照らす光の雨。それが降り止むよりも先に、紗更が踏み込んだ。
「――失礼致します」
 夢喰いの青年の、人の形をなした身体へ螺旋を込めた掌が触れる。
 瞬間、内部から爆ぜる衝撃がドリームイーターを襲った。
「ほら、余所見なんてしないで、こっちを見て頂戴」
 そこに叩きつけられた鮮やかな地獄の炎は、憂妃の手によるものだ。
「焼け付く炎を刃に纏え! 霊刀解放!!」
 力強く叫び、ビートが刀を手にドリームイーターへと迫る。
 ビートの愛用の刀に宿るのは、炎を操ったとされる鬼神の力。若干の不安があった命中も、敵の回避率を下げることで結果的に向上し――大きな破壊力を込めたどこまでも追いすがる斬撃に、ドリームイーターの輪郭が揺らぎ始める。
「じゃあな。難しいとは思うが、次はいい夢として生まれ変われるといいな」
 魔力の媒体たる懐中時計を触媒とし、真介がつくり上げたのは透明な水の矢。
 伸ばした指先から放たれたどこまでも蒼く澄んだ一本の矢が、モザイクの顔を貫き悪夢に終わりを告げる。
 ――まるで、そこには誰もいなかったかのように。
 ドリームイーターはモザイクの欠片を散らし、その場から掻き消えた。

 戦いで荒れた箇所にヒールを施し、ケルベロス達は少女を迎えに館へと足を踏み入れた。
 先頭を歩いていたシアとテレビウムのジルがひょこっと部屋の入口から顔を覗かせるのと、意識を取り戻した少女が起き上がったのは、ほぼ同時だった。
「だいじょうぶカナー?」
「ひゃあっ!?」
 自分以外の誰かの存在にびっくりしたような少女の元へ、ケルベロス達は近づいてゆく。
「ケルベロスのシアとジルくんが来たから、もうだいじょうぶだよ!」
「けっ……ケルベロスさん……?」
「はい、わたくし共はケルベロスにございます。大事はありませんか、お嬢様」
 紗更が穏やかに頷き、そして少女へ事の経緯を説明した。
 少女は意識を失った時のことは覚えていなかったが、ケルベロス達に命を救われたのだとすぐに理解し、慌てたようにありがとうございます、と頭を下げた。
「いつか運命の人に会ってビビビってなる日が来るよ!」
 シアの元気な声に勇気づけられたようで、少女の顔に笑みが戻る。
「運命の相手ってのは、誰かとか、何かに教えてもらうものじゃなく、自分の人生で見つければいい」
 真介もまた、さりげなく声を掛けた。
 運命はあまり信じていないけれど、己の人生を変えた友達や恩人はいる。
(「今何してるかな。流石に寝てるかな」)
 今の自分がここにあるのも、彼らの存在があってこそ。
 願わくはそんな存在がいつか少女にも現れればいいと、真介は思った。
「……恋愛的な意味では無いかも知れませんけれど」
 そう前置きをして、シグリッドは続ける。
「もしかしたら、ここでわたくし達、出会う運命だったかも知れないですわね?」
「そうだったら、とっても嬉しいです」
 楽しげに微笑むシグリッドに、少女もくすくすと笑みを零した。
「可憐な女の子が真夜中にこんな所にいたら危ないよ? 僕じゃあ壁くらいにしかなれないけど、よければ帰り道にお供させてくれないかい?」
 傍らに膝をつき、伊月が柔らかく微笑みかけると、少女は少しばかり照れた様子ではい、と頷いた。
「怖い思いをしたあとは誰かが居たほうが安心、デショ?」
 憂妃もまた、少女へと優しく微笑んでみせた。
「しかし本当に運命の人とやらが映るんですかねえ? ……僕には、皆さんの姿しか見えませんけど」
 鏡を覗き込み、後ろを振り返り、そんな動作を何度か繰り返してから、ほんの少しばかり残念そうにビートは肩を竦める。
「うん、僕にも、皆の他には誰も見えない。……見えたほうが、幸せなのかな。よく、わからないけど」
 同じく鏡を覗き込みながら、ウェインはぽつりと呟いた。
 ほんの少しばかり気になって、ちらちらと横目に見やりながらも、自分達以外の誰かが映らないことに、シグリッドは逆に安堵の気持ちを覚えていた。
(「……まだ見ぬ運命の人が居るのなら、事前に知ってしまうのは、ちょっぴり残念ですわよね」)
 だって、この人だと自分で気づいてみたいから。そんなことを思いながら、シグリッドはふふ、と小さく笑った。
 一方、興味のないふりを装いながらも本当は興味津々だった憂妃は、皆に隠れてこっそりと鏡を覗き込む。
「あら……」
 ほんの一瞬、憂妃にだけ見えたその人は、見覚えのある誰かにどことなく似ているようで――。
(「そんなはずないわね、み……見間違いよ見間違いっ!」)
 後には、皆が見ているのと同じ風景が映るだけ。
 憂妃はふるふると首を横に振るものの、見えた面影はそう簡単には消えてくれそうになかった。

作者:小鳥遊彩羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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