蜘蛛人間

作者:紫村雪乃


 大都会。コンクリートの森林だ。
 その大都会にはある噂があった。
 糸をとばし、都会の闇を飛び回る超人がいる――そういう噂だ。
 馬鹿馬鹿しい噂話であった。誰も信じてなどいない。が、一人だけ、真剣にその噂の真実を確かめようとしている者がいた。
「きっと超人はいる。俺は信じているんだ」
 ライトを片手に、そして首からはカメラをつるし、彼――青年はつぶやいた。そして都会の闇に足を踏み入れる。
 時は深夜。オフィス街のためにすでに人の姿は絶えていた。
「……もうすぐだ。きっと超人の姿をカメラにおさめてみせる」
 青年はカメラを手にした。
 その時だ。彼の背後に人影が現出した。
 黒いフードを被った白い肌の女。無論青年は知らないが、彼女の名はアウゲイアスいった。第五の魔女・アウゲイアス、と。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にはとても興味があります」
 魔女はいった。そして手にした鍵を青年の胸に突き刺した。
「あっ」
 呻きをもらし、『興味』を奪われた青年はその場に崩折れた。その背後には異様なモノが立っている。
 赤と青の体色をもつ人型。顔には鼻も口もなく、ただつり上がった二つのの複眼のみぎらりと光っている。
 蜘蛛人間。それが青年の『興味』が生み出したドリームイーターであった。


「不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が形の良い唇を開いた。
「『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようですが、奪われた『興味』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターにより、事件は起こるようです。その怪物型のドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい。そのドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も目を覚ましてくれるでしょう」
 セリカはある都市の名を口にした。巨大なビルが林立した有名な大都会だ。
「ドリームイーターはその都市に現れます。正確な出現場所はわかりません。しかし、ドリームイーターは自分の事を信じていたり噂している人がいると引き寄せられる性質があります。都会の闇に陣取れば誘い出すこともできるでしょう」
 ドリームイーターは『自分が何者であるかを問う』ような行為をしてくる。答えなければ殺そうとするようだ。
「撃破しなけれはりません。そうすることで被害者も目を覚ますはず」
 ドリームイーターの戦闘手段は、とセリカは続けた。
「手から糸を飛ばします。強力な粘着力と強靭さをもった糸。簡単に断ち切ることは不可能です。さらには「心を抉る鍵」。それにより敵の肉体を斬り裂くことができるようです」
 言葉を切ると、セリカは信頼を込めた瞳でケルベロスたちを見回した。
「強力な敵です。けれど皆さんならきっと斃すことができます」
 青年を助けてあげて。
 セリカはいった。


参加者
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)
アルカナタ・ナイカード(蒼芒の伽藍・e04940)
ステイン・カツオ(御乱心アラフォードワーフ・e04948)
尽影・ユズリハ(ロストブレイズ・e22895)
ミカ・ミソギ(未祓・e24420)
エストレイア・ティアクライス(メイド騎士・e24843)
詠沫・雫(メロウ・e27940)
海花櫻・美音(一空・e29511)

■リプレイ


 むっとする熱気も、さすがに夜ともなれば幾分かはおさまっているようだ。
 そこは都会の狭間。林立するビルの足元に横たわる闇の中であった。
「蜘蛛人間ってどこかで聞いた事あるような?」
 闇の中、一人の少女が首を傾げた。鮮やかな金髪蒼瞳の溌剌とした少女だ。
 名はエストレイア・ティアクライス(メイド騎士・e24843)。かつて正気を失い、荒野を放浪していた少女であった。
「蜘蛛人間というと……」
 白髪痩躯の男が口を開いた。闇が凝したような冷然たる美貌の持ち主。名をアルカナタ・ナイカード(蒼芒の伽藍・e04940)という。
「アメコミ系なのか特撮系なのかで意見がわかれそうなところだね。今回はどうやら前者の様だが……」
「しかし」
 海花櫻・美音(一空・e29511)という名の若者が辺りを見回した。
 ビル郡に挟まれた路地裏。やや離れた場所には多少光が差し込んでいる。表通りから届いてくる明かりだ。ここなら戦闘にむいているだろう。
「面倒臭いドリームイーターだな。何というか……自分探しとでもいうのか? 俺は自分は自分でしかないからな。他人に問う事も問われる事も皆無だ」
 美音は落ち着いた相貌に嫌悪の色をにじませた。
 我、思う故に我在り。己は己の意思のみにて存在を確定するのである。在る意味を成すのに他者の認定はいらない。
「でも、やっぱり噂ってつい気になっちゃいますよね」
 無邪気そうな声で詠沫・雫(メロウ・e27940)という名の少女はいった。深い海を思わせる蒼の瞳のためか、おおらかで淑やかな雰囲気をもつ少女である。私も、と雫は続けた。
「真相を確かめたくなることってよくあります。結果がどうであれ、その探究心は失われたらもったいないですよね。だから」
 絶対に助ける。
 夜明けの水平線に曙光が差すかのように、雫の蒼の瞳に強い光がやどった。
「そろそろでございますね」
 闇の中から一人の女が立ち上がった。
 髪も瞳も緑色に輝いて。小柄であるため少女かと思われがちだが、違う。ステイン・カツオ(御乱心アラフォードワーフ・e04948)という名の女は 三十八歳のドワーフであった。
「そうでございますね」
 うなずき、エストレイアもまた立ち上がった。
 一瞬、闇が光に圧される。それはエストレイアの輝きによるものであった。


「蜘蛛人間」
 路地裏の薄闇の中、足をとめた小柄の女が声をもらした。すると傍らを歩いていたもう一人の女もまた足をとめた。こちらは少女である。
「蜘蛛人間?」
「そう。都市伝説の一つで。果たして、そのような超人がいるのでしょうか?」
 さあ、と少女は首を傾げた。信じてはいない顔つきである。すると女が続けた。
「このような噂がでまわるのはハリウッドかなんかの影響でございましょうか?」
「そうかもしれませんね」
 少女がうなずいた。
 その時だ。気配は突如わいた。
 ビルの壁面。何かが貼りついている。
 赤と青の人型の異形。蜘蛛人間――ドリームイーターだ。
「……俺は何か?」
 くぐもった声で蜘蛛人間が問うた。はじかれたように二人の女が目を上げる。もう一度蜘蛛人間が問うた。
「俺は……何だ?
 少女はこたえなかった。こたえたのは女の方である。
「存じていればこうして出向くこともないでしょう。ほらさっさと死にやがれください」
 女――ステインが叫んだ。怒りを込めて。いちいち感情を抜き取られてデウスエクスに変えられるのであるならば、迂闊に何かを感じることもできない。
 ステインは男が好きである。飢えているといってよい。その想いが抜き取られるとするなら――。
 なに? 私、死ぬの?
 胸の内でステインが愕然とした時、蜘蛛人間のつり上がった複眼がぎらりと光った。
 瞬間、風がしなったようだ。そうステインが感得した瞬間、ねばりつく糸が少女――エストレイアの身体をからめとっていた。
「あっ」
 エストレイアは呻いた。彼女は灼滅者であり、油断は無論していない。さらに反応速度は常人を遥かに凌ぐ。それでありながら糸を躱せ得なかった。敵の攻撃はそれほど速いということか。
「後だ」
 十五歳ほどの少年が叫んだ。彼――新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)の鋭い目は蜘蛛人間の素早い動きを捉えていたのだ。
 恭平はカラーボールを投げようとし――やめた。すでに蜘蛛人間のは見えぬ。
「どこだ?」
 幻想的に美麗な少年が周囲に視線を巡らせた。ミカ・ミソギ(未祓・e24420)という名のヴァルキュリアである。
 ミカは一枚の翼を広げた。それは光の翼である。輝く翼は辺りを蒼空の色に染め上げた。
 が、頭上の闇は深く、さしもの光も届かない。蜘蛛人間の姿を捉えることはできなかった。
 その時である。一人の娘が片手を上げた。
 尽影・ユズリハ(ロストブレイズ・e22895)。
 美しい娘である。同時にどこか艶めかしさがあった。それはわずかにゆるめた胸元から覗くむっちりとした双珠のせいであるかもしれない。
 いや――。
 ユズリハを語るに、その肢体のしなやかさは無用であった。それよりも特徴的なのはその目を覆う目隠しである。これでは敵を捉えることなど不可能であろう。
 刹那である。ユズリハの手が翻った。闇を裂いて疾ったのは、いつの間にか彼女の手に現出していたゲシュタルトグレイブ――物質の因果律そのものを破壊する、アスガルド神により創造された選ばれし者の槍である。
 瞬間、路上にわだかまっていた闇の中から疾風のように影が躍りあがった。
「無駄だ。私から逃れることはできない」
 ユズリハがいった。
 恐るべし。彼女は五感を地獄化していたのであった。すでに彼女の五感は超人の域にまで高められている。のみならずユズリハは視覚をふさぐことによってさらに感覚能力の底上げを行っていた。闇に潜む蜘蛛人間が見出されたのもむべなるかな。が――。
 呻く声は二つあがった。一つはビルの壁面に飛びついた蜘蛛人間のものである。その赤青の胴に傷が刻まれていた。
 そしてもう一つ。
 それはユズリハの口から発せられた。その彼女の首から血がしぶいている。


「くっ」
 ユズリハはがくりと片膝ついた。かなりの深手だ。急速に活力がユズリハの身から抜け落ちていく。
「傷は浅いぞ」
 恭平の手が舞った。するとユズリハの身体が裂けた。魔術的に切開したのである。分子レベルでユズリハの細胞が復元されていく。
 が、それでもユズリハは立てなかった。傷が深すぎる。
 そのユズリハから無理やり視線をもぎはなし、雫が簒奪者の鎌――敵対者に速やかなる死をもたらすべく作られた、忌まわしき大鎌でエストレイアをとらえている糸に斬りつけた。が、糸は驚くべき強靭さをもっていた。容易くは切れない。
 ステインが吐き捨てた。
「そんなチンケな鍵が効くかよ! ドワーフなめんじゃねえや!!」
 返答は殺気のこもった沈黙だ。ドリームイーターの姿は完全に消え失せた。ただ凄愴の鬼気がケルベロスたちを吹きくるんでいる。
「逃しはせん」
 アルカナタが視線を走らせた。索敵する。同じ闇の眷属――自称吸血鬼たる彼の鋭敏なる知覚は確実に蜘蛛人間の存在座標を固定化しつつあった。
「そこか!」
 美音が手裏剣を放った。螺旋の力を内包するそれは流星のようにビルの間に吸い込まれていく。
 その一瞬後の事だ。魔鳥のような影が空に舞った。
「逃がさん!」
 恭平が杖を差し伸べた。
 ライトニングロッド。雷鳴の破壊と賦活の力が籠められた、戦闘兼手術用の電撃杖だ。
 ライトニングロッドの先端から稲妻が迸りでた。が、紫色の光彩が魔影を切り裂きくより先に、蜘蛛人間は糸を放ち、別のビルの壁面にとりついている。と、さらに跳躍。空を軽々と舞い、さらに別のビルの壁面にさかさまにはりついた。
 ケルベロスたちを見下ろす蜘蛛人間の複眼がぎらりと光った。まるでケルベロスたちを嘲笑うかのように。
「もうっ!」
 さすがにかっとしたかのように雫が簒奪者の鎌を放った。月輪のごとき光流をひきつつ、大鎌が蜘蛛人間めがけて迸る。
 大鎌の刃がコンクリートの壁面を切り裂いた。恐るべき威力である。が、すでに蜘蛛人間の姿はない。赤青の魔影は空を翔けていた。
「迅い!」
 呻く雫はその時、脇をすりぬけ、疾る影を見た。純白の髪を翻す美影――おお、アルカナタだ。
「私は私、吸血鬼に連なる血筋の末端にしてケルベロスの一人。ポニーテール大好きなアルカナタ・ナイカードだ」
 アルカナタが二振りの刀――士魂刀と日本刀をたばしらせた。闇に十文字の銀光が刻まれ――。
 ぐおおおおお。
 耳を塞ぎたくなるような声が響いた。蜘蛛人間のあげる苦悶の叫びだ。
 何が起こったのか。
 そう、蜘蛛人間は切り裂かれていた。信じられぬことだが、アルカナタは空間ごと敵を切り裂くことができるのだった。
 さずがにたまらず蜘蛛人間は落下した。
「今です!  足止めさせていただきます!」
 ようやく戒めを解いたエストレイアが馳せた。颶風のように蜘蛛人間を襲う。
「まんまとひっかかってくれましたね!  天からの使者、メイド騎士参上です!」
 エストレイアが跳んだ。その様は飛鳥。そして脚は流星と化して蜘蛛人間に突き刺さった。
 いや、蜘蛛人間は逃れた。エストレイアのつま先が蜘蛛人間の体表をえぐって過ぎる。一瞬、蒼の瞳と銀の複眼の視線がからみあった。そして、しぶく黒血。
「まだだよ」
 ミカが日本刀を抜きうった。闇に白光の亀裂がはしる。それは緩やかにみえて、何者も逃れえぬ鋭さを秘めていた。いかな蜘蛛人間といえど逃れうる術などあろうとは思えない。
 が――。
 ミカの一刀は空をうった。
「あっ」
 愕然としたミカは呻いた。そして、見た。蜘蛛人間の手からのびた糸が頭上の街灯にからみついているのを。
 まるでばね仕掛けでもあるかのように蜘蛛人間の身がはねた。虚をつかれたケルベロスたちに一瞬の遅延がうまれる。その中、美音のみは投擲の姿勢をとっていた。
 美音の手が視認不可能な速度で動いた。拳銃弾の速度で飛んだのは水晶の小瓶である。
 蜘蛛人間の身体にぶち当たり、小瓶がはじけた。瞬間、猛毒の花が開いた。たまらず蜘蛛人間が地に落ちる。毒のためかすぐには動けない。
 そうと見てとり、雫が動いた。歌う。いや、それは歌唱というより、咆哮というべきかもしれなかった。
 空間すら振動させ、不可視の衝撃が蜘蛛人間をねじ伏せた。
 と――。
 地に伏した蜘蛛人間が顔を上げた。彼をして、そうせざるを得ないほどの凄絶の殺気が吹きつけてきたからだ。
 闇の中に白の髪が舞っている。ユズリハだ。
「ああ、知っているよ、キミが何者か」
 ユズリハの口から声が流れ出た。静かな、しかし恐い声が。
 だって、とユズリハは続けた。
「私たちはキミを待っていたから。キミは夢だ。不思議を信じる青年の興味が形になった超人だ。……でも、きっとキミの姿は彼の想いからかけ離れている。彼の夢は食べられて、想いは歪な形になった。だから」
 するりとユズリハは目隠しをとった。闇に赤光が閃く。ユズリハの瞳だ。
「キミの物語は、ここで終わりにしよう」
 する、とユズリハは動いた。疾風と化して蜘蛛人間との間合いを詰める。
 その時だ。蜘蛛人間の手から糸が噴出された。が、ユズリハはとまらない。さらに迫ると、あえて螺旋力を込めた手で糸を受けた。
「ぬんっ」
 ユズリハはゲシュタルトグレイブの鋭突を蜘蛛人間の身に叩き込んだ。その速さはまさに迅雷。毒と咆哮に打ちのめされた蜘蛛人間には逃れようはずもなかった。
 紫電に神経回路を灼かれながらも、蜘蛛人間は跳び退った。が、逃げることはかなわない。すでに迅速の機動力を失ったその身では。
 その時に至り、ようやく蜘蛛人間は悟った。喰らうはずのモノであった彼が、今、喰らわれようとしていることに。
「くわっ」
 恐怖に衝き動かされたように蜘蛛人間が動いた。逃走――ではない。馳せた。ユズリハめがけて。
 さしものユズリハもその蜘蛛人間の反応は意想外であった。わずかに隙が生じる。その隙めがけ蜘蛛人間は心を抉る鍵を閃かせ、切り裂いた。ユズリハを――いや、彼女をかばった小さなドラゴンを。
 それはボクスドラゴン。雫のサーヴァントであるメルであった。
「ぶち抜けろあほんだらぁ!!」
 闇よりもなお真っ黒な絶叫。悪意を破壊力に変えて、ステインは拳を蜘蛛人間にぶち込んだ。
 岩すら砕く一撃。たらまず蜘蛛人間が身を折った。
「闇に舞うのは私だけで十分だ」
 アルカナタが刃を横殴りに払った。間合いの遥か外から。
 刃は届かぬはずなのに――が、蜘蛛人間の肉ははじけた。空間ごと敵を切り裂く二刀斬空閃である。アルカナタを敵とする者に呪いあれ。
「終わりだね。――遮るものなどありはしない。那由多の彼方へ己を放て」
 ひどく冷静に告げたミカは光翼の光粒子を制御、魔術的破壊存在に変換し、蜘蛛人間を撃った。それは巨大な鉄槌の一撃にも匹敵したろう。蜘蛛人間の身がアスファルトに叩きつけられ、陥没した。
「くうっ」
 アスファルトの砕片をばらまき、蜘蛛人間が身動ぎした。まだ悪夢存在は動けるようだ。
「もう動かないでください」
 雫がガトリングガンのトリガーをひいた。ばらかれる熱弾に撃たれ、蜘蛛人間の身がズタズタになる。しかし、それでも蜘蛛人間は在ることに執着した。醜く、貪欲に。
 余力をふりしぼり、伏した姿勢のまま蜘蛛男は空に躍り上がった。が、待っていたのは魔術的破壊であった。
「大地に眠りし黒の刃よ。彼の敵を浸食し爆ぜて砕けろ!」
 恭平は叫んだ。それは呪唱発生――トリガーボイスである。彼が行ったのは古代語魔法と精霊魔法の複合であった。その複雑な術式を瞬時にして恭平は可能とする。
 刹那であった。爆弾を飲んだかのように、蜘蛛人間の身体が爆散した。
「怪人でなく、ヒーローなら……良かったのに」
 再び静寂を取り戻した都会の闇の中、哀しげなユズリハの声のみ流れた。


 ケルベロスたちが被害者である青年を見出したのは、彼らがドリームイーターを斃してより、数時間後のことであった。
「俺は……みんな夢だったのか」
 夢から覚めたような顔で青年は辺りを見回した。そしてケルベロスたちに気づいた。青年の顔が哀しげにゆがむ。
「超人はいる」
 美音は告げた。
「が、シャイな奴らしく人前や写真等は苦手みたいだ。興味があるのはいいが、そっとしておいてやれ」
「しかしまぁ」
 アルカナタがふっとため息を零した。
「大本の魔女達をなんとかしないとキリが無いね。今度ヘリオライダーの皆に予知を頼んでみるかな……」
「それはそうと」
 エストレイアが仲間を見回した。
「わ、私、お役に立てたでしょうか!」
「ええ」
 ミカがうなずいた。
「最初に糸に捕らわれたことを除けばね」
「もう」
 エストレイアはぷっとむくれた。

作者:紫村雪乃 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。