古城の恐怖に慄きて

作者:幾夜緋琉

●古城の恐怖に慄きて
「ふーん……そうなんだ。面白そうじゃん!」
 とても嬉しそうに、笑顔でネットを見ている青年。
 大学生の彼は、大学のオカルト研究会の部長。
 部長だからこそ、オカルトなものを常日頃追い求めており……ネットで検索していたのは、八王子の古城に現れる、落ち武者の噂話。
 ……勿論、それが真実かどうかは解らないし……出た、というウワサも、出なかったというウワサもネット上に沢山転がっている。
「よし。八王子なら車で1時間位だな。仲間達を呼んで調査団ゴーだ!」
 と、携帯電話を手に取った……その瞬間。
 ……その背後から迫り、グサリ、と手に持った鍵で、彼の心臓を貫く。
 突然の事に驚きの表情……そして、そのまま、そこに崩れ墜ちる。
『私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります』
 と言うと、そのまま落ち武者の姿をした、ドリームイーターが、彼の傍らに出現。
 そして、そのドリームイーターは、夜の町に姿を現わすのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、集まって頂き感謝ッス! 早速ッスけど、今回の事件について、説明をさせて貰うッスね!」
 と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスらに元気な挨拶と共に、早速説明を始める。
「今回、ケルベロスの皆さんに退治為てきて頂きたいのは、ドリームイーターなんッスよ」
「このドリームイーターは、不思議な物事に強い興味を持ち、それを実際に自分で調査を行おうとしている人を襲い、その興味を奪う事件を起こしているんッス」
「この興味を奪うドリームイーターは、既に姿を消している様ッスけど、その奪われた興味を元にして、現実化した怪物型のドリームイーターによって、事件が起ころうとしているんッス」
「つまり、この怪物型ドリームイーターの被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してきて欲しい、って訳なんッスよ。このドリームイーターを倒す事が出来れば、興味を奪われてしまった被害者も、恐らく目を覚ましてくれる筈ッスからね!」
 そしてダンテは。
「このドリームイーターは落ち武者が化け物とばけた様な姿形をしてるッス。どうやら一体だけの様ッスけどね」
「このドリームイーターの特徴ッスけど、人間を見つけ次第、自分が何者であるかを問いかける行為を行い、正しく対応出来なければ殺してしまう様なんッスね」
「このドリームイーター、同じような怪談話などを信じていたり、ウワサしていたりする人に引き寄せられる性質がある様ッスから、みんなも、そういったものに興味あるような言動を行えば、このドリームイーターが引き付けられてくる筈ッス!」
「ちなみに、このドリームイーターの攻撃手段ッスけど、その手に持った刀ッス。ある意味侍の如きその攻撃手段と共に、モザイクを飛ばし、考える力を失わせる攻撃が可能ッス。これはパラライズ効果を持った遠距離攻撃っすね」
「尚、刀の攻撃は、血を吸う効果、つまり体力を吸収する効果もある模様ッスから、それも注意して欲しいッス!」
 そして、最後にダンテは。
「人が何に興味を持つかは千差万別ッス。その興味を利用し、化け物を生み出すドリームイーターをのさばらせておく訳には行かないッスよ! ケルベロスの皆さん、宜しく頼むッスね!!」
 と、拳を振り上げるのであった。


参加者
御籠・菊狸(水鏡・e00402)
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)
御剣・冬汰(夜空に願いを・e05515)
タクティ・ハーロット(重力喰水晶・e06699)
神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)
本多・風露(真紅槍姫・e26033)
シェーラ・エクリプス(暴走銀拳・e30827)

■リプレイ

●恐怖と興味
 八王子にある、とある古城。
 遥か昔に激戦の結果、千人以上もの死傷者を出したという……曰く付きの古城。
 そんな古城に付いて回るは、やはり怪談話の類い……そんな怪談話に事欠かない古城の近くへとやって来たケルベロス達。
「んー……前にもこのドリームイーターのおばけって、自分について質問してたよなぁ……なんでだろー」
 と、軽く頬を掻きながら御籠・菊狸(水鏡・e00402)が呟くと、それにタクティ・ハーロット(重力喰水晶・e06699)も。
「そうだぜ。まぁこのドリームイーターの他にも何種類かドリームイーターがいるみたいだぜ。それぞれが色んな事で、確認しているようなんだぜ」
 と。
 ……幾人もの、ドリームイーターの魔女達。
 今回のドリームイーターもその一つで……興味を抉り、それを利用するドリームイーター。
 その興味こそが、怪談話な訳で……。
「しかし怪談話とは、何とも夏という感じがするな」
「そうだな。世の中の不思議な事は沢山あるが、怪談や幽霊話と言えば、夏場のテレビで毎年の恒例というべきものだ。まぁ、私はあまり興味ないのだがな」
「そうだな……まぁ触れる事が出来るのなら問題無いだろう。やるべき事をやらねばな」
「うむ。今回のドリームイーターの目的が、そちらに関しての興味な訳だが、どうにも相容れなそうな相手だ」
 ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)とシェーラ・エクリプス(暴走銀拳・e30827)に、螺堂・セイヤ(螺旋竜・e05343)が。
「まぁ、ムギさんと一緒に戦うのは久しぶりだが……『死椋殲団』の肉体派コンビの力、見せてやるとしようか……!」
 とニカッと笑うと、そうだな、とムギも笑みを浮かべる。
 ……そんな二人に対し、御剣・冬汰(夜空に願いを・e05515)と神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)、本多・風露(真紅槍姫・e26033)らは。
「しかし人の噂も七十五日……って言うけれど、流石に消えるまで待てる案件じゃないよね?」
「そうだな。好奇心は猫をも殺す……だが、それも大切な感情。青年の『興味』は返して貰わねばな」
「うーむ。しかしわしは幽霊とか非科学的なものにあまり興味は無いのう。真剣に、そんなもの信じて活動するのもどうじゃろうかと思うのう? というか、超面倒臭ぇのじゃ。それをドリームイーターがするというのじゃから、何とも暇なことじゃのう」
「ああ。まぁ落ち武者と言えば……謀反を起こした彼が思い浮かぶが、まぁ……それはさておき、肝試しを装ってドリームイーターを誘い出すとしよう」
「そうだね。肝試しにはうってつけな感じの古城だし、これ以上、被害が大きくなる前にサクッと終わらせちゃおう♪」
 冬汰の笑みに皆も頷き、そしてケルベロス達は、古城の入口へと辿り着くのであった。

●恐怖の呼びかけ
 そして、ケルベロス達はドリームイーターの誘導作戦を開始する。
 古城近くで、口にするのは……幽霊の噂話。
「なあなあ、皆、知ってるか? 何でもこの近くに古城の主が出るらしいぞ?」
 とムギが口火を着ると、セイヤ、冬汰、菊狸にタクティに雅も。
「そうだな。古城に落ち武者の亡霊が出るというが……古城……八王子城跡と言えば、有名な心霊スポットだったな……」
「うむ。この八王子の古城では摩訶不思議な事が起るらしいしな」
「そうだよなー。僕も聞いたのだが、お城でオバケがでたとか。うー……この辺で出たらどうしようなー。ちょっぴりこわくないこともない……ぞっ」
「あれ? 菊狸は怖がってるんだぜ? まー、なんか出るとは聞いたんだよなぁ……いやー、正直眉唾もの過ぎるんだけどねぇだぜ」
「でも、刀を携えた亡霊だったか? ありそうな噺ではあるよな」
「ああ。まぁ俺はそれくらいしか知らんのだぜ。他何か知ってたり、似たような話知らない?」
 と……そんな会話を交し、ドリームイーターの注意を引き付けようとする。
 その一方、雅は周囲にキープアウトテープを張り巡らせ、シェーラは姿を隠し、潜む。
 ……そして、更にセイヤとムギが。
「しかし、落ち武者とは生前のどの様な人物だったのだろう」
「んー……そうだな。俺が聞いた限り、古城の主というのは凄い筋肉モリモリらしい。だからこそ、是非一度見てみたいもんだぜ!」
「え? 筋肉モリモリ……って、そんな幽霊出て来たらこえーよ!」
 と、突っ込みをかました……その瞬間。
『……クククク』
 と、不敵な笑い声が響き渡る。
 ……そして、次の瞬間。
『……俺は、なーんだ……?』
 闇の中から響く声が、ケルベロス達へと問いかける。
 その問いかけに、自信たっぷりに。
「んー……たぶんねこだー!!」
 と全く違う答えを。
 ……いや、更に。
「いや、違うな。財宝の番人だろう」
「いやいや。古城の主だろう」
「そうだな……お前は……ゾンビ、か?」
「まー何物であろうと、俺達の敵だよねだぜ?」
 冬汰、ムギ、雅にタクティが次々と誤った答えで答えていく。
 それに……ドリームイーター……いや、落ち武者は。
『クククク……ケケケ……!!』
 嬉しそうに笑うと共に、刀をすっ、と抜いて構える落ち武者。
「落人といえど侍な訳だし……刀剣士としては、思わず刀で殺り合いたくなるよね♪」
「そうだな……さあ、余計な一般人が現れて邪魔をされては困る。ここに居るのは俺達だけだ」
 とシェーラが殺界形成を発動し、更に周囲の一般人の排除。
 ……元々こんな怪談スポットだから、そんなに一般人がいる事も無いのだが……まぁ、これでひとまずは安心だろう。
 そして、取りあえず初っ端の一撃、菊狸がスターゲイザーを発動すると、冬汰も。
「幾重にも斬り刻まれる快感に目覚めてみる? 魔女の力を秘めた剣技を御覧あれ♪」
 と【☆Niflheimr★】の一撃を叩き込む。
 攻撃を受けた落ち武者……余り動きは素早く無い様で、見事に喰らう。
 が……ケケケケと笑うと共に、反撃。
 刀を翳し、そして斬りかかるドレインアタック。
「させん!」
 と、その攻撃をカバーリングするムギ……血を吸う一撃が、受けたダメージを回復していく。
 しかし受けたダメージをば、雅がすぐにスターサンクチュアリで回復を施す。
「サンキュ!」
 とムギは言葉を投げかけつつ、前衛列にサークリットチェインを掛けて、盾アップを付与。
 そしてタクティが戦術超鋼拳、彼のミミックがガブリングで噛みつく一方、セイヤ、風露、シェーラのクラッシャー陣が攻撃。
「さあ……容赦はしないぞ」
 とシェーラが先陣を切って、殺神ウイルスでアンチヒールを付与すると、セイヤがスターゲイザー、そして風露が。
「ドレインは素敵に面倒じゃからのう……これでもくらうのじゃ」
 と死天剣戟陣で武器封じを付与。
 そんな、立て続けの連携攻撃に……落ち武者、ほんの僅かではあるが、怯む。
 が、そんな落ち武者に。
「ほら、どうした? 亡霊は亡霊らしくあの世に帰りな」
 と、ムギが挑発を飛ばし、タクティも。
「そうだぜ? 武者の亡霊は落ち武者らしく、さっさとあの世にお帰り下さいなのだぜ!」
 と。
 ……落ち武者が、人の言葉を解するかどうかは分らないが、そんなケルベロス達の挑発のスタンスは認識できた様で。
『クク……コロスコロス……!!』
 と、一際気合いが入り、攻撃。
 モザイクを頭部へと飛ばして、考える力を失わせる攻撃を仕掛けたり、ドレインの刀攻撃を嗾けたり。
 ……何にしても、死を得ようと望む落ち武者は、ケルベロスを殺そうと、前へ、前へと攻撃し続ける。
 そんな落ち武者の攻撃を躱しながら。
「幽霊の類いに生気をわれるのもぞっとしないものじゃからな……ほれ、喰らうのじゃ」
 と風露がフォートレスキャノン、シェーラがスターゲイザーを叩き込むと、セイムギが。
「死椋殲団のコンビネーションを見せてやる。行くぞセイヤ!!!」
「ああ、ムギさん! 悪いが……その首級、貰い受ける……っ!!」
 と、セイヤとムギは息の合ったコンビネーションアタックで、落ち武者を左右から一閃。
 タクティ、ミミックもコンビネーションで、更に落ち武者の体力を削る一方、スナイパーの菊狸、冬汰は。
「もぐもぐ!!」
「喧嘩吹っかけておいて、逃げ果せられると思った……? させないよ」
 とぶらっくほーると、二刀斬空閃を叩きつけていく。
 そして、最後に雅が。
「大地よ轟け、我築きしは悠久なる城壁!」
 と、『幻想組曲第8番・呼吸する大地』で盾アップを付与為つつ、回復を継続していく。
 連携の取れたケルベロスらの攻撃……対し、落ち武者は一体。
 かなりのエンチャントが積み重なると、さすがに……落ち武者の高い攻撃力も、中々厳しい状況となり、段々と押されていく。
 そして……遭遇から十数分。
「そろそろ終わりだ。亡霊は亡霊らしく、あの世に帰りな」
 と、ムギの言葉と共に放たれた激昂斬。
 その一閃が、落ち武者の利き腕を叩っ切る。
『ググアアアアアアア……!!』
 と、響く絶叫……それに、更に。
「これで終わりだ! 我が左脚は暴風!その蹴りは全てを撃ち抜く!」
 と、シェーラの放つ、『暴風の左脚』が、落ち武者の体中を撃ち抜くと……落ち武者は、身体の組成を維持出来なくなったかの如く、其の場から崩壊していくのであった。

●美しさに
 そして……無事にドリームイーターを倒した後。
「ふぅ……どうやら終わったようだな。セイヤ、お疲れさん!!」
 と満面の笑みで手を差し出し、セイヤも。
「ああ、ムギ。ナイスコンビネーションだったぜ!」
 と、ハイタッチ。
 そんな二人を横目に、死して姿を消したドリームイーターの影を見下ろしながら、風露が。
「まぁ、不思議なことに興味をもつのも悪くはないが、わしらの手を煩わさぬ様によろしく頼むのじゃ。何せ面倒臭いからのぅ?」
 と言うと、それにタクティも。
「そうだぜ。しかし不思議なことをケルベロスがしたら、パッチワークの一人釣れたりしないかなーだぜ」
 と。
 ……多数のドリームイーターの魔女達。
 そんな魔女達の行動は、まだまだ良く解らない事ばかり。
 とは言え、今はこうして一つ一つに対処していく事しか出来ない訳で。
 ……そして、周りに出来た、戦闘の痕跡を見下ろしながら。
「よーし。それじゃー壊れた所を直すかー。八王子だし、たぬきがいれば手伝ってもらうぞー!」
 と、拳を振り上げる。
「ん……? 狸なんて、居るのか?」
「いるよー。きっといる!! 高尾の方には居る筈だから、こっちにもいるはずだー!」
 たぬみみと、たぬしっぽをぴくぴくとさせながらたぬきをさがしにちょっと鳴いてみたり。
 ……そんな彼女の動静に、周りの仲間達はくすり、と笑ったりして……そして破壊された建物、建築物をヒールして回るケルベロス達なのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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