「ソーヤ・ローナ(風惑・e03286)が竜牙竜星雨でゴールデン釘バットの欠片を1000個集めた話は聞いていると思う。でね、遂にそれを元にした打撃武器の試作品が完成したの」
集ったケルベロスを前にリーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)が告げた言葉。それは彼らを色めき立たせるのに充分な内容だった。
リーシャは彼らに、8本の棒状の鈍器を見せる。歓声を上げる彼らの声に、リーシャは微笑すると、「でも……」と表情に憂いを覗かせる。
「さっきも言った通り。今は試作品の段階で、完成には程遠い。……何かが足りてない。そんな感じ」
首を振る彼女は断言する。今のままでは新たな武器は完成しない、と。
限定的とは言え、ヘリオライダーには未来予知の能力がある。だが、それを用いても完成迄の道筋を立てる事が出来なかったのだ。
「でも、完成しない未来が見えている訳じゃない」
落胆の表情を隠し切れないケルベロス達は、次にリーシャが告げた言葉に顔を輝かせた。
「これから貴方達は『竜牙竜星雨』の探索に繰り出して欲しいの。勿論、この試作品を持って、ね」
実はこの試作品に『竜牙竜星雨』の探索を繰り返していたケルベロスが近付くと、微かな反応があったと言うのだ。その後の解析の結果、この試作品が完成に至る為には『竜牙竜星雨』にある勇者の力が必要だと判明したらしい。
「……それも、可能性があるってだけだけどね」
勇者の力と言う文言は確かに曖昧で、それが具体的に何を指すのかは不明。だが、机上の空論では限界がある。ならば実際に探索すれば道は開けるのではないか。
実に乱暴な結論だったが、彼女らしい結論にケルベロス達は苦笑を浮かべた。
「この中には何度も潜っている人もいるだろうけど、一応、掻い摘んで『竜牙竜星雨』のおさらいをするわね」
伊豆大島三原山の東側斜面に存在する飛翔竜牙体と竜牙爆撃兵によって穿たれた穴。そこから繋がるのが『竜牙竜星雨』と呼ばれる領域だ。深層領域を除けば、地下四階からなるこのダンジョンへ進入する為には、飛翔竜牙体と竜牙爆撃兵の攻撃を掻い潜り、或いは迎撃する必要がある。
無事、ダンジョン内部に進入出来たとしても、数多くのデウスエクスがケルベロスを待ち受けている。そして、今回の一番の難関はそれだと推測された。
「試作品はあくまで試作品。エフェクトすら発揮出来ず、与えるダメージもかなり弱い、そんな武器よ。でも、みんなは試作品で戦って貰う必要があるわ」
試作品で行う戦闘は厳しい物になるだろうが、こればかりはケルベロス達の頑張りに期待するしかなかった。
「ま、探索が進んで完成が近付けば、本来の力を発揮するかもしれないから、それに期待するのも手ね」
多少楽観的な予測かも知れないが、今はそれに縋るしかなさそうだった。
「それと、デウスエクスの対処以外にも考える事はあると思うから、それは注意して欲しい」
鍵の掛けられた扉や地下二階に設置されたバリケード等の事だろう。落ち着いて行動すれば対処は簡単な筈、とのリーシャの忠告にケルベロス達はコクリと頷く。戦力は八人と充分に思えるが、皆が持つ武器が試作品である以上、力押しで突き進むのは厳しそうでもあった。
「だから、普段の探索とは勝手が違うと思う。だから、それは気に留めて欲しいの」
慣れない武器での戦いは普段より体力と精神力を消耗する。ならば双方の温存を図るのも一つの手かも知れない。余力があれば余裕が生まれる。それは決して悪い事ではないのだ。
「私の出来るアドバイスはそれぐらいね」
それ以上は現場の判断なのだ。それがケルベロス達には可能だと、リーシャの瞳には信頼の色が輝いていた。
「新しい武器が完成すれば、みんなの新しい力になるわ」
その為に頑張って欲しいとリーシャははケルベロス達を送り出す。いつもの様に。
「いってらっしゃい」
参加者 | |
---|---|
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550) |
コロッサス・ロードス(金剛神将・e01986) |
ソーヤ・ローナ(風惑・e03286) |
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313) |
レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411) |
シマツ・ロクドウ(ナイトバード・e24895) |
シエラ・ヒース(シャドウエルフの降魔拳士・e28490) |
エルガー・シュルト(クルースニク・e30126) |
●黄金の輝きを求めて
凄まじい衝撃と爆音が辺りに響く。もうもうと上がる土煙は、連続して飛来する竜牙竜星雨の為、まるで地面から沸き立つが如く、絶え間を見せない。
「大事になってきたなぁ」
息を切らせながら、ソーヤ・ローナ(風惑・e03286)が愚痴の様に零した文言は、遙か後方に流れていく。爆撃の中を、ケルベロス達は駆け抜けていたのだ。立ち止まる暇は無かった。地面ではなく、自身らが穿たれないよう、全速力で駆ける。駆ける。駆け抜ける。
目標は竜牙竜星雨によって穿たれた大穴。地下一階へ向かう唯一の通路。
そこに到達する為、無駄な交戦を行わない。それがケルベロス達の考えだった。
だが――。
「来たな」
足を止め、くるりと反転した相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)は己の得物、試作品の棒状鈍器を身構える。
後方より飛来する竜牙爆撃兵は大量の焼夷弾をまき散らしながら、ケルベロスの頭上へと接近していた。普段ならば叩き落とす筈の敵は、しかし、試作武器での戦闘は心許ない。せめて愛用のバトルガントレットがあれば、と思うがその言葉を飲み込む。
此処に集うケルベロスは皆、試作武器の完成の為、『勇者の力』を求めてやって来たのだ。頼りなくとも、今はこれで切り抜けるしか無い。
「泰地?!」
「殿は俺が務める! 行けっ!!」
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)の声への返答は強がりにも似た咆哮。
「無理はするな! 俺達が飛び込んだらお前も直ぐに飛び込め!」
防御役としての役割を全うしようとする彼の心意気を汲んだコロッサス・ロードス(金剛神将・e01986)は大声を上げると、息切れを起こすシエラ・ヒース(シャドウエルフの降魔拳士・e28490)、エルガー・シュルト(クルースニク・e30126)の両名の手を掴み、更に走り出す。
「もう少しだから頑張って」
自身の言葉に頷く二人に、レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411)は「いい子だね」とその背を押す。
「――!」
光の翼で仲間の後を追うシマツ・ロクドウ(ナイトバード・e24895)が見た光景は、火砕流によって焼け爛れた焦土を無数の焼夷弾が更に焼いていく、まさしく地獄の様な光景だった。
●勇者の力
竜牙竜星雨と呼ばれるダンジョンにある勇者の力が必要。それがヘリオライダーから告げられた新武器完成の条件であった。
勇者の力とは何か。
泰地やコロッサスは戦い続ける精神的な物と仮定し、数汰とレオンは仲間との絆や傷付く事を恐れない勇気と考えた。
この地に徘徊する偽造勇者型竜牙兵の名を上げたのはエルガーである。彼しか起動出来ない装置を勇者の力と称しているのでは、と?
「デウスエクスに死を与えるケルベロスの力そのものが勇者の力」との推測はシマツの弁。
さて、その答えは果たして。
黄金に輝く釘バットが一閃する。その一撃をエルガーが受け止め、間隙を縫ってシマツの放つ氷結の螺旋、そしてシエラの蹴撃がゴールド・ドラードの身体を吹き飛ばす。だが。
「しぶといな」
悠然と立ち上がるゴールド・ドラードに対し、感嘆とも厭気とも付かない言葉がコロッサスから零れた。
続けざまに叩き込まれた彼の痛烈な一撃と数汰の研ぎ澄まされた一撃によって、ようやく竜牙兵の動きが止まる。
さらさらと光の粒と化していくゴールド・ドラードを見送りながら、数汰は荒い息を吐いた。
「やっぱり、厳しいね」
得物に纏わせた地獄の炎を消去しながら零すレオンの言葉にこくりと頷く。
完成に至っていない試作品の性能が、武器としてはかなり劣悪な物であるとは聞いていた。だが、実際に振るえばそれが想像以上の物だったと思い知ってしまう。
先程、コロッサスの弁は一部正しく、それ以外は誤っている。ゴールド・トーラスがしぶといのではない。ケルベロス達の攻撃力が低いのだ。
攻撃力が低ければ戦闘は長引く。それに応じ、被弾の回数も増えてしまう。
未だに道程は地下一階も半ばだった。だが、それでもケルベロス達に与えられた負傷、疲労の色は濃い。
「熱中症に気を付けろ、どころじゃねーな」
既に温くなったスポーツドリンクを、それでも栄養と塩分補給に使ってくれと仲間に配りながら、泰地が零す。竜牙兵による爆撃を食い止めた彼の合流は早かった。無茶の代償で身体中に火傷を負っていたが、それはシマツのヒールによって全快していた。
「ちょっとだけ、輝きが増している気がするんだけどなぁ」
試作品を凝視しながら、ソーヤが呟く。戦闘を重ねる毎に試作品に灯った輝きは、強くなっている様に思えた。しかし、その差違が僅かであり、気のせいと言われればそんな気がする。或いは、期待がもたらす錯覚か、と。
「やはり、戦いを続けるしか無さそうね」
シエラの言葉に一同は頷く。それが、完成に近付ける為の術だと推測する以上、異論は無かった。
バリケードの破壊による警報が響く中、集う竜牙兵達を打ち砕く。
三度に渡るバリケードの攻防、そして竜牙サムライとの死闘の末、地下三階へ向かう階段に到着した彼らは小休止と決め込む事にした。
周囲の竜牙兵は掃討した。それでも安全の確保に、と見張りを買って出たシマツに戸口を任せると、ケルベロス達はどかっと地面に腰を下ろした。
「闇雲に戦うのは蛮勇。……と言いたい所だけどね」
皮肉げにレオンが呟くものの、しかし、手の中の試作品を一瞥すると、「仕方ないよね」と肩を竦める。
勇者とは勇気ある物。そして、この場合の勇気とは困難に逃げずに立ち向かう事なのだろうか。ソーヤの推測通り、戦闘回数を重ねるにつれて試作品の輝きが増しているのは事実。そして、それ以上の変化はあった。
「……ソードメイス」
彼の掌の中で、試作品は少しずつ形を変えている。ただの棒状武器に思えた筈のそれは、明らかに大きく、そして剣を思わせる形状へと姿を変えている。
この変化があったからこそ、ケルベロス達は安全な隠し通路ではなく、三層のバリケードを突破する事にしたのだ。
だが、その代償は安くなかった。
「『勇者』か」
泰地に心霊手術を施しながら、ソーヤは独りごちる。自身は勇者――ヒーローに成れているだろうかとの自問は尽きない。勇気を示す事が勇者の条件ならば、身を盾にして仲間を守る目の前の青年はどうなのだろうか?
「ありがとうな。だいぶ、楽になった」
ヒールでの回復を受け付けなくなった負傷も、ソーヤのお陰で治癒する事が出来た。疲労は相変わらず身体を蝕んでいたが、それは持ち前の体力でカバーする。千回以上、この地を踏破している。その経験は無駄ではないと今は信じるしかない。
一方で、泰地と同じく防御役を担っていたエルガーは、目を閉じ穏やかな呼吸を繰り返す。体力の回復を計っているのだ。負傷はシエラの心霊手術によって完治したが、如何せん、失われた体力が多すぎた。
泰地との差違は経験値の差。そして、対策の差でもあった。
戦闘の疲労は皆に蓄積されている。防御を担う二人の負担が最も大きいのは事実だったが、それ以上に彼らを蝕んでいるのは溶岩からの熱であった。
ケルベロスだからこそ、灼熱地獄と化した溶岩洞窟を踏破出来る。だが、その熱量が彼らに害を及ばさない訳ではない。
エルガーと同じく戦闘経験の薄い筈のシマツ、シエラについては防具特徴による温熱適応の為、幾分か余裕を残していた。シマツが見張りを買って出たのはその為だ。回復役の為、体力を温存出来ている、との理由もあっただろうが。
「必ず、試作品を完成させよう」
不意に発したコロッサスの言葉に顔を見合わせた一同はしかし、次の言葉に強く頷く。
「竜牙サムライは何人たりとも志を奪う事は出来ないと言った。俺らもそれは同じだ。決意を誰にも奪わせない」
サムライの言葉は武人にも強く響く。決意を奪われなければ、心が折られなければ、必ず試作品は完成に導かれると、強く思う。
決意の言葉と共に、手の中で試作品の輝きが増した事に気付かなくても。
●黄金の守護者
「竜の強さとは『力に非ず』。強さ、生存、勝利の全てを求める求道の事よ」
ドラゴンスレイヤーの言葉は強くケルベロス達に響いていた。彼らの求める勇者の力もまた同じ。強くなければ勇者ではない。だが、戦闘力だけでは勇者と認められない。
勇敢さ。勇猛さ。勇気。勇を冠とする言葉は無数にあるが、今、彼らに求められている物はおそらく一つ。
「逃げずに戦い続ける勇気だろうな」
そして、コロッサスの宣言と同じ。何が何でも試作品を完成させる。そんな求道の心得だ。
数汰の一撃を前に、ドラゴンスレイヤーは消滅する。常時ならば彼一人で為せる所業はしかし、これまでの戦闘同様、試作品の威力故、困難な物だった。
それが叶えられたのは、一重に仲間達との連携の賜物。彼が思う勇者の力――仲間との絆だった。
「この武器は、俺達は未完成だ。だからこそ無限の可能性が広がっている」
これが完成に至った時、それはどのような物になるのだろう。その未来を思うと、心が躍る。おそらく、無限の未来は自分達も同じ――。
「もう少し、と言った感じだよね」
輝く試作品を振るうレオンの瞳もまた輝いていた。それが反射によるものか、それとも心を躍らせている結果か、判らなかったけども。
「……休憩を」
おそらくこれが最後。滅望兵団の最後の一体を打ち払ったシエラの宣言に、皆が頷き、床に腰を下ろす。
見渡す仲間は誰もが手酷い傷を負っていた。ヒールで治せる傷は全て完治している物の、癒せない負傷の方が多い。最優先で防御役の二人、泰地とエルガーに心霊手術を施したが、此処に至ってはそれも使い切っている。
本来なら撤退を視野に入れる場面かもしれない。
「黄金の欠片が元になった武器だから、ドラゴンを倒せば完成するのかな?」
悲観的に染まる空気をソーヤの声が吹き飛ばす。そうだな、と頷く仲間達は皆、撤退の選択肢は無いと笑う。
ライン川の黄金に然り、八岐大蛇然り、竜を倒して大切な物を手に入れる神話は世界各地に存在する。困難を乗り越えた先にこそ、得る物があると笑う彼らは。
(「強いよね」)
それが勇者の条件かも知れないと、シエラは思うのだ。
「竜は狗より力強けれども、驕る程の余裕を持たざるが故に……」
巨大なドラゴンの首、天地殲滅龍の口上と共に、洞窟内に無数の竜牙兵が沸き立つ。恐るべきドラゴンとの決戦。だが、それは今のケルベロス達にとっては別の意味も持つ。
それは即ち、新武器の完成。
「ここで終わらせる!」
試作品に宿る輝きは既に眩いばかりだった。困難を打ち払う勇者の力は充分に満ちている。そう判断した泰地は鬨の声の如く咆哮する。
「目覚めろ、鬼の金棒!!」
それが泰地の捧げた銘だった。彼の叫びと共に試作品は遂に完成に至る。固定用の鋲から発達したと言われる棘は、彼の全力殴打に応え、天地殲滅龍を守護する竜牙兵の身体を打ち砕いた。
それはまるで、防壁を破壊する破城槌を思わせた。
共に飛び出すレオンの得物は一見、大剣にも見える無骨な刃である。だが、それは切り裂く為の武器ではない。圧壊する重量兵器なのだ。
「勇者には剣って感じだよね。これは鈍器だけど」
分厚く重く大雑把な一撃は、骨の大剣ごと、竜牙剣士の身体を両断する。
そこに続くのはシエラのフルスイング。一本足打法と呼ばれる野球のバッティングにも似た殴打が、取り巻きの竜牙魔術師の身体を壁に叩き付ける。
「ホームラン。さて、次のボールは誰かしら?」
無数の釘が刺さった木の棒――こんぼうと名付けた相棒を手にした彼女はぼそりと呟く。突きつけるその姿は、いわゆる予告ホームランの格好だった。
「荒れさせていただきます」
そして、戦場に暴風が駆け抜ける。笑顔を浮かべ、螺旋の込められた破砕棍を振るうその正体はシマツであった。戦場を縦横無尽に駆け抜け、道を塞ぐ竜牙兵を無へと帰していく。
「この武器だと使いやすいですね」
呼吸を整える為、嘆息する。眼前に広がる戦場は既に、蠢く竜牙兵の姿は存在しない。
竜の撃破も時間の問題と、彼女は微笑う。
「今、お前は産まれる。造られたんじゃない。さぁ、力を示せ。穿竜棍!!」
託された願いはエルガーの腕の中で結実する。集う力は彼ら八人の願いだけではない。彼らが背負うのは数千数万の同胞達の期待。それら全てを宿した一撃は、天地殲滅龍の鉄壁の鱗すら破壊し、その身体に傷を負わせる。
呻き声を上げる暇は与えない。大地を踏みしめるコロッサスは身体全ての筋肉をバネと換え、得物を投擲する。
「行け、天魔降伏!」
天魔を誅する大戦杵は破魔の矢の如く、天地殲滅龍に突き刺さった。鱗や皮膚、肉を破壊し、辺りに血肉を飛散させる。
「我が手に宿るは断罪の雷霆――その身に刻め。裁きの鉄槌を!」
数汰の身体を撃ったのは雷だった。暴れるそれは彼の身体を灼く事はなく、腕の中に宿る。二十万アンペアにも達する電流は神鳴りとなり、数汰の腕の中で輝いた。
それは見果てぬ黄金郷への誘い。彼の夢見る不確定の未来を実現させる絶対の力。
「EL=DORADO!!」
叫ぶ銘に呼応し、宿る金色の輝きは天地殲滅龍の竜身を焼き尽くす。
だが、度重なるケルベロス達の攻撃を前にしても、天地殲滅龍は伏す事はなかった。無敵の名を謳われるドラゴンの矜持か、開かれた口腔から炎が迸る。
「レッドフレイム・ドラゴンブレス!」
泰地の声が響く。ケルベロス達の攻略を阻む竜の息吹は、傷付き、満身創痍の彼らにとって致命的になりかねない。
だが。
風が舞った。
溶岩よりも高温の息吹は風に切り裂かれ、霧散していく。
息吹を切り裂いたのはソーヤの手にした試作品。――否、完成に至った得物に彼女は既に名を与えていた。
「Aura」
唇が詠う様に銘を紡ぐ。それはそよ風の女神と輝きの意味を持つ名。形無きにして、しかし、確かに在るものの名だった。
「完成したよ。これが、私達の新武器だ!」
そして少女は勇者に至る。得物を胸に構えた彼女の姿は、剣を胸に抱き祈る騎士の姿を思わせた。
抱くのは一つの物語。それは悪しき竜の贄となる人々の為に立ち上がり、竜の守護する至宝を得る勇者達の物語だった。
勇者達の名を、地獄の番犬ケルベロスと言った。
天地殲滅龍の目が見開かれたのは、跳躍するソーヤの姿に己の破滅を視た為か。
叩き付けられた黄金の一撃は彼の角を砕き、その首を地面へと叩き付ける。
地面に横たわったドラゴンは瞳から光を失っていく。やがて、二、三度の痙攣の後、その身体は光の粒子へと転じ、霧散して行った。
同時にケルベロス達は歓声を上げる。それが何よりの、攻略の証だった。
●その名を呼べば
ケルベロス達による竜牙流星雨を決死の踏破の上、完成した新武器。
その名は――。
作者:秋月きり |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 20/感動した 5/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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