空飛ぶ折り鶴を見た子の驚きが奪われる

作者:フェザー

●空飛ぶ折り鶴
 少女が空を見上げると、一羽の巨大な折鶴が羽を広げて飛んでいた。
 宙を滑空するように風を切り、翼を大きく羽ばたかせ……それはまるで生き物のようだった。
 その光景を目にして、少女は驚愕に瞳を見開き……そして、飛び起きた。
「夢だったの?」
 いまだバクバクと早鐘を打つ心臓を押さえ、少女は乱れた掛け布団を引き寄せる。 
 ――と、突然、少女の横合いから細い腕が伸び、その手に握られた鍵が少女の心臓へ鋭く穿ち込まれ……少女は瞬時で意識を失い、布団へと崩れ落ちた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 穿たれた傷もなく、眠るように昏倒した少女の横から、魔女・ケリュネイアは呟くように言い……その背後に、巨大な折り鶴の形をしたドリームイーターが突如として出現した。その片翼には、大きなモザイクが掛かっている。
 ケリュネイアと新たなドリームイーターは、その場を音もなく立ち去り……後には意識を失った少女と、眠る前に少女の折った折鶴が残されていた。

●状況説明
「近頃、驚くような夢を見た子供達が、ドリームイーターに襲われる事件が多発しているようです」
 ヘリオライダーのセリカ・リュミエールは、意識的に冷静さを保って説明を続ける。
「この子供達は、ドリームイーターに『驚き』を奪われて昏倒しています。この奪われた驚きが、新たなドリームイーターとなって人々を襲うようなのです。更に、元となったドリームイーターを倒さなければ、昏倒した子供は目を覚まさないようなのです」
「子供達を襲うなんて……許せない」
 灰縞・沙慈(小さな光・e24024)は怒りを押し殺し、軋んだような声を出す。
 セリカ・リュミエールは、沈痛な面持ちとなって頷き……そして、ケルベロス達を見回した。
「今回現れるドリームイーターは、全長が二メートルほどの巨大な折鶴の形をしており、夜の住宅地で人を驚かせているようです。……まあ、いきなり巨大な折鶴が現れて、目の前で空を飛んだら驚きますよね」
 セリカ・リュミエールは、首をゆるゆると振って続ける。
「戦闘ですが、このドリームイーターはモザイクの掛かった羽の群れを複数人に投げつけてきたり、鋭いくちばしで突き掛かって来たり、モザイクの掛かった翼で打ち据えてくるようです。モザイクの攻撃は、精神に影響する効果があるようですね」
 セリカ・リュミエールは、ケルベロス達に小さく頭を下げる。
「この折鶴は人を驚かせたくて仕方ないようで、現場を歩いていれば向こうから来ると思います。また、折鶴が出現すれば騒ぎになると思いますので、その場合は急いで向かってください。……これ以上、犠牲者を増やさずにドリームイーターを撃破して、被害者の子供を目覚めさせてあげてください。よろしくお願いします」
 セリカ・リュミエールは頭を下げたまま、状況の説明を終えた。


参加者
玖々乱・儚(参罪封じ・e00265)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
唯織・雅(告死天使・e25132)
ロボ・シートン(オオカミ王の末裔・e27756)
ソウ・ミライ(お天気娘・e27992)
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)
ヴァーノン・グレコ(エゴガンナー・e28829)
栗花落・悠(シャドウエルフの刀剣士・e30554)

■リプレイ

●急行
「「「うっ、うわぁぁああぁぁぁっ!?」」」
 見上げた空は陽が沈み切り、辺りは夜の闇に覆われている……そんな時間。閑静だった住宅街の一角で、絹を裂くような驚愕の悲鳴が響き渡った。
「くそっ、あっちか!」
 エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)は、悔しそうに言い捨てて、光の翼を大きく広げて飛び立つ。
「……敵は、三時方向。距離は、百メートルほど。こっち、です…着いて、来てください」
 ほんの一瞬遅れて、唯織・雅(告死天使・e25132)も同じく飛び立ち……上空から周辺の地形や敵の位置を把握後、素早く降りて先導するように駆け出した。エメラルドは宙を滑空するように、そのまま現場へ向かっている。
「いくよ、てれ。驚きのない日々なんて悲しいことにならないように、夢を守るよ。そのはさみの出番は今日はないけどね」
「子供の想像力と言ったら、たまにとんでもない物を考えるもんだよな」
 玖々乱・儚(参罪封じ・e00265)が即座に反応、真っ先に雅を追走しながらサーヴァントへ指示を出し、ロボ・シートン(オオカミ王の末裔・e27756)は呆れと感嘆の入り混じった声音で呟き、それに続いた。
「他が狙われるとは、運が悪かったか。……全く。鶴は優雅に舞うもので、邪悪に牙剥くものじゃないというのに」
「本当、運が、悪かった……ですね」
 なるべく目立ち、折鶴の注意を引こうとしていたレスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)が、ほんの僅かに悔しそうに眉をひそめ……同じく一般人より先に遭遇しようと頑張っていた栗花落・悠(シャドウエルフの刀剣士・e30554)は、駆けながらも肩を落とす。
(折鶴は願いを込めて折るもの。そして、その願いはきっと空を飛んで叶うもの)
 ヴァーノン・グレコ(エゴガンナー・e28829)は、自分にそう教えてくれた小さな女の子を心に思い浮かべ……被害者や、その子の『止めて欲しい』という願いの為にも、必ず倒してみせると駆ける足先へ力を篭めた。
「大きな折鶴、乗ってみたいの!」
 ソウ・ミライ(お天気娘・e27992)が、期待と好奇心に赤い瞳をキラキラ輝かせ、夢見るように叫ぶ。
 そししてケルベロス達は、急いで現場へ向かった。

●戦闘開始
「お前達、さっさと逃げるんだ!」
 エメラルドは巨大な折鶴と、三人の一般人を目にして一声叫び……生命を賦活する紫電の稲妻を己へ飛ばし、そのショックで肉体を活性化、戦闘能力を向上させた。
「この、デウスエクスは…引き受け、ます。どうぞ、早々に…ご退去を」
 雅が数秒遅れで到着し、直ぐさまパニックテレパスを発動……一般人達はほんの一瞬、パニックに右往左往するも『ご退去を』という雅の言葉に反応し、折鶴から遠ざかるように駆け出した。
「クエェェエエェェエエェーーッ!」
 折鶴は奇声を発し、逃げた三人を追おうとするも、
「今まで戦ってきた敵にはもっとでかいのもいたからね、驚くには値しないよ」
 巨大な折鶴を視界に収めつつ、儚が挑発的するように淡々と言い……次の瞬間、生命を賦活する雷撃を己に落とし、その衝撃で肉体を活性化、戦闘能力を向上させた。
 折鶴は己を目にして驚かない、どころか僅かな動揺すら見せない儚に怒りを覚えたのか、そちらへ首を巡らす――が、
「キミの相手はこっちだよ!」
「ここからは俺達が相手だ」
 突如、レスターの構えた巨大な銃口から、眩いばかりの白光が爆発するように迸り……白光に驚いたのか、微かに硬直した折鶴の懐深くまで飛び込んだヴァーノンが右掌を突き出し、魂を喰らう降魔の一撃を繰り出した。
 瞬間、宙を駆け抜ける巨大な白光が折鶴の右翼を呑み込み……ヴァーノンの触れた右脇腹がメギメギィと耳障りな音を立てて軋み、折鶴は僅かに魂を喰らわれる。
 右翼と右脇腹を襲った突然の衝撃に、折鶴は強制的に動きを阻害された。そこへ、
「そぉれ、壊アップ向上なの~!」
 ソウが満月にも似たエネルギーの光球を生み出し、ロボヘ投げ放った。投げ放った光球はロボへぶつかり――ロボの全身に溢れんばかりのエネルギーが行き渡り、その攻撃性が高まる。ほぼ同時、ダンタツの口腔から火炎が大きく膨れて折鶴へ襲い掛かり……セクメトが清浄の翼を発動、前衛達に不思議な加護が宿った。
「こんなもんで驚いてちゃ、もっと厄介なものを見た時に対処できねぇからな!」
「ここから先は、見ないでください……ね?」
 ロボは地を這うように地面を蹴り抜き、いまだ動きが阻害されたままの折鶴へ瞬時で肉迫し……悠は一般人が集まって来ないよう殺界形成を発動、逃げ去る三人に聞こえないと解りつつも、祈るように口にした。
 刹那、ロボは視界一杯に映った折鶴の顎先へ向けて掬い上げるような拳撃を撃ち放った。重力を纏った豪拳は轟音と共に折鶴の顎先を強かに打ち据え、その頭蓋をぐらりとよろけさせる。
 てれは、誰が怪我をしても直ぐに回復できるよう、油断なく目を光らせていた。
 ――と。折鶴は傷付いた翼を威嚇するように大きく広げ、
「クッ、ググギャェエエエェェェェェッ!」
 奇声のごとき咆哮を吐き出して、完全にケルベロス達へ向き直る。ケルベロス達は『標的が完全に自分達へ移った』と確信し、油断なく身構えた。 

●激闘
 一般人を逃がし、戦闘開始から数分後……。
「こいつでどうだ!」
 エメラルドは鋭く腕を振り抜きざま、迸る雷を切っ先に纏わせ、弾丸の勢いで突き出した。超高速の雷突きが、ブレるような紫電の残像を描いて折鶴の胸元へ伸び上がるも……折鶴は咄嗟に身を捌き、槍先をいなすようにして回避した。
「おとなしくしなさい」
 ほんの微かに折鶴が回避行動で重心を崩し……その隙を突き、儚が身を落としつつ地を滑るように接近、超高速振動する刃の群れを唐竹割りに斬り下ろした。猛々しく唸りを上げる刃の群れが、折鶴の首元から胸板へ襲い掛かり、引き裂かれた紙屑が宙を舞う。
「この程度では、私達の…意表、付くには。力不足、です」
「まったく、その材質は紙だよな? 破けろ!」
 雅が呟くように言ってヒールドローン多数を操り、前衛達を護るように散開させ……ロボが紙とは思えない強度を目の当たりにし、目を丸くしつつも、右手に握った惨殺ナイフを一直線に走らせた。紫電を帯びた切っ先が宙を駆け、神速の突きと化して折鶴の腹腔へ深く突き立ち……突き破られた腹腔から舞った小さな紙片が、迸る稲妻に焼かれて消し炭となった。
 手先が感じる、とても紙を貫いたとは思えぬ硬質の感触に、ロボの顔が小さく歪む。
 次いで、ロボの一撃を追うようにセクメトがキャットリングを飛ばした。宙を滑空するキャットリングが、折鶴の翼を打ち据え……折鶴は堪りかねたように、怒号を爆発させる。
「ギギゲギャァアァァァアアァァァァッ!」
 耳に痛い怒号を吐き出し、折鶴は大きく両翼を広げ……次の瞬間、激しく吹き抜ける突風を生み出し、十を超える羽の群れを散弾の如く撃ち放った。モザイクの掛かった羽の群れの標的となったのは、折鶴の間近まで接近していた、雅、セクメト、ロボ、ダンタツ、ヴァーノン、悠。
 狙われたケルベロス達は攻撃を視認すると同時、どうにか身を捌いて避わそうとする――が、間に合わない。間に合わず、モザイクの掛かった羽の群れが鋭い風切り音を巻き上げて、嵐のように降り注ぐ。
 標的となったケルベロス達の全身に、刃物のごとき鋭さで羽の先端が突き立ち、鮮血が滴り落ちる。雅はそれだけじゃなく……過去のトラウマが鮮烈に蘇ったかのように顔を青褪めさせ、自身を強く抱き締めるようにガタガタと震えていた。
「ソウが直ぐに回復するの!」
 ソウは一声叫んで「ブラッドスター」を演奏……大気を震わせる力強い旋律が、前衛達の鼓膜から全身へ浸透し、開いた傷口を癒していく。てれは雅に応援動画を流し、ダンタツも雅へ属性インストール……開いた心の傷ごと癒していった。
「やらせないよ。キミの相手は俺だ」
「折鶴の翼は、傷つけたり驚かせる為のものじゃない。これ以上は許さないよ」
 追撃を仕掛けようと動く折鶴……その右側面へ回り込んだレスターが巨大な銃口を掲げ、ヴァーノンが光の翼を暴走させ、全身を光の粒子に変えて地を蹴り砕く勢いで突撃した。
 一瞬後、紅蓮に燃え盛る地獄の炎弾が折鶴の右半身へぶち当たって燃え上がり……折鶴は燃え上がりながらも、必死に羽ばたいて身を捩り、ヴァーノンの突進を紙一重で回避した。
 重なるダメージと無理に避けた反動で、折鶴はどうっとたたらを踏む。
「もっと、燃えて、燃え尽きてください」
 たたらを踏んだ折鶴へ向けて、悠が呟きざま、半透明の御業を顕現させた。顕現した御業が、凄まじい熱量を孕んだ炎弾を撃ち放ち――いまだ獄炎に身を焦がす折鶴を、空間ごと爆ぜたような熱波の衝撃が呑み込んだ。
「グギャァァァァッ!?」
 折鶴を中心に爆音が響き……折鶴は苦悶の絶叫を爆発させ、狂ったように地面を転がって燃え広がった炎を掻き消した。炎の消えた全身は黒く煤け、黒煙を巻き上げている。
「そろそろ…終わって、ください」
「その子の夢、醒めさせて貰うぞ!」
 黒煙を巻き上げている折鶴へ、雅とエメラルドが左右に別れて襲い掛かった。
 雅は身を落とした体勢から地を蹴りつつ高速演算、潜り込むように折鶴との距離を詰めてバトルオーラを纏った拳を跳ね上げ……エメラルドは雅を巻き込まぬ立ち位置へ移動し、ロッドの先端に雷光の煌めき生み出した。
 数瞬の後、跳ね上がった拳撃が折鶴の顎先を痛烈な勢いで打ち据え、ロッドの先端に生まれた雷が大きく膨れ上がり、折鶴へ向かって一直線に弾け飛んだ。
 ほんの一瞬、眩いばかりの白光が夜闇を明るく染め上げ……紫電に迸った雷を折鶴はまともに浴び、プスプスと更なる黒煙を巻き上げた。
「……全く。千羽寄れば奇跡も叶える希望の象徴だというのに。悲しいね」
「我は、茨を蒔くもの。その茨に捕え、自由を奪え」
 雅とエメラルドの攻撃で動きの鈍った折鶴へ、レスターと儚が入れ替わるように攻撃を仕掛ける。
 レスターの全身が輝く白光に包まれ、儚は折鶴の周囲へ投げるように素早く種を撒いた。刹那、全身が光の粒子と化したレスターが折鶴の胸元へ神速で突撃し……ほんの僅かに遅れて、儚の撒いた種が鋭い棘を備えた茨へ急成長し、折鶴を拘束するように絡み、巻き付いた。
 轟音と擦過音が鳴り響き、折鶴の全身は切り裂かれ、その胸元が大きく陥没した。
「グッ、ゲギャギャギャアアアアアアアァァァーーッ!」
 折鶴は最後の力を振り絞るように滅茶苦茶に暴れ、己の身体が引き裂かれるのも構わず、強引に茨の拘束から抜け出す。次いで奇声を発し、モザイクの掛かった大きな翼を振り翳してヴァーノンへ襲い掛かった。
 ヴァーノンは咄嗟に飛び退こうと足先へ力を篭めるも間に合わない――が、反射的に反応した悠が横合いから身体ごと飛び込むように割り込み、ヴァーノンを庇う。瞬きの後、モザイクの掛かった巨翼が烈風を纏い、苛烈な勢いで悠を打ち据え……悠は錐揉みしながら後方へ大きく吹っ飛ばされった。その全身からは鮮血が飛び散り、真っ赤な滴となってアスファルトを叩く。
「大丈夫、直ぐに回復するの!」
 ソウが大きく叫んで、ルナティックヒールを発動、掲げた掌から生まれた光球を力任せに悠へ叩きつける。てれも悠へ応援動画を流し……数秒後、悠の開いた全身の傷口から、新たな肉が盛り上がるように再生した。
「ありがとう、ございます……ソウさん、てれさん」
 まだふらつく身体を叱咤し、悠は礼を言いつつ、折鶴へ向けて疾走する。
 悠は彼我の間合いを一瞬で詰め、右脚を軸に低く旋回し、眼前の傷口へ狙いを定めて横薙ぎの一閃を繰り出した。銀の弧を描く斬撃は――しかし、悠のまだ覚束ない足と、必死で跳躍する折鶴によって狙いが逸れ、切っ先が空を切った。
 折鶴は無理な体勢からの回避行動と、満身創痍なのもあって身体を支えられず、どうっと地面へ崩れ落ちる。
「さようなら。素敵な夢を壊そうとした罰だよ」
「これで、終わっちまいなぁ!」
 崩れ落ちた折鶴へ、ヴァーノンが瞬時で銃を抜き放ち、ロボが疾走しつつ右手に構えた惨殺ナイフを鋭く振り抜いた。瞬間、銃口が火を噴いて折鶴の頭部を正確に射抜き……弧を描いて伸び上がる斬撃が、折鶴の開いた傷口を押し広げるように駆け抜けた。
「グギャァァァァ、ァァ……ァ」
 折鶴は断末魔の絶叫を上げて、最後にくたりと力なく地へ倒れ伏し……そして決着した。

●戦いの後
「これは……ちょっと、酷いですね。僕は、手持ちの、グラビティがないので……お願い、できますか?」
 悠が周囲を見回した後、仲間達に向き直って小さく頭を下げた。
「お任せを。数分でも。停電、起これば…大迷惑。ですから…」
「そうですね。思ったよりも、壊してしまいましたね……」
 雅と儚も戦闘の跡を見回して、小さく息を呑む。ケルベロス達の視界に映るのは、地面がひび割れて数箇所ほど陥没し、電柱や壁は大きく抉れ、焼け焦げたような跡も所々に刻まれている、そんな惨憺たる有様。
「では、私はこちらを担当しよう」
「じゃあ、ソウはこっちを直すの!」
 エメラルドが地面へ向き直り、ソウが焼け焦げた壁に手を触れる。
 ……それから、しばらく。
 ケルベロス達は戦闘跡の修復をしていき……数分も経つ頃には、戦闘跡は復元されて、元の閑静な住宅街の姿を取り戻していた。
「これで、何とか終わったわけだが、最近はドリームイーターが多いよな。何かの前触れかな?」
「どうだろう。もしそうだとしたら、俺は人を癒して希望となる、そんなケルベロスとなって、皆を守りたいな」
 ロボが腕を組んで考え込むように言い、レスターが静かな口調で応えた。ロボや数人のケルベロス達が、レスターの言葉に小さく頷き……ややあって。
「夜はまだ始まったばかりだったね。女性は特に気を付けて帰るんだよ」
 解散の流れとなり、ヴァーノンは女性陣を見回して慮るように言った。そしてヴァーノンは夜空を見上げて一人の折鶴好きの子を思い浮かべ『約束は守れただろうか』そう、自問する。
 他のケルベロス達も、つられたように夜空を見上げ……その心中を過ぎるのは、多かれ少なかれの差異はあるが、意識を取り戻しているであろう女の子の事。
 今回の一件で、折鶴や驚く事を恐れるようにならなければいいなと願い、もう今回のような被害者を生み出したくないとも思い……だからこそ、これからも戦い続けていこう、と。
 ケルベロス達は夜空を見上げたまま、心に小さな火を灯すのだった。

作者:フェザー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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