●夢に噛まれし愛の裏切り
『ふふ……うん、かわいいなー……』
小学2年生位の少年が、愛犬と戯れている。
愛犬は小さな小さなポメラニアンで、少年の頬をペロペロと嘗めたり、高い鳴き声でじゃれてきたり。
そんないつもの触れ合いの光景……それが、突如。
『グウウ……ウグウウ……』
と、その小さな体に似つかわしくない、唸り声を上げる。
『え、ど、どうしたの……ねえ?』
と、少年が言うと……その小さな体はみるみる内に巨大化。
そして……少年に馬乗りになり、襲いかかるポメラニアン。
じたばたと手足を動かし、振りほどこうとする……と、その時。
『はぁ……はぁ……あ、あれ……ゆ、夢だったの……?』
と、飛び起きた少年。
そんな少年に、横から……手に持った鍵で、その心臓を一突きする、ケリュネイア。
……そのまま少年は、また眠るように臥せる。そしてケリュネイアは。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
と、言うと共に、その驚き……巨大化したポメラニアンを、その傍らに生み出すのであった。
「皆さん、集まりましたね? それでは、早速ですが、説明を始めさせて頂きますね」
と、セリカ・リュミエールが、集まったケルベロスらに向き直り、説明を始める。
「皆さん、子供の頃に夢、を見た事がありますよね? ……その夢に、子供心にとてもびっくりした夢見た事がある人も居ると思います」
「そういった夢、今思えば脈絡が無く、突然だったりするのですが……とにかくびっくりして、夜中に飛び起きたりした事が有る人も居ると思います」
「そのびっくりする夢を見た子供が、ドリームイーターに襲われて、その『驚き』を奪われてしまう事件が起きているようなんです。この『驚き』を奪ったドリームイーターは、既に姿を消しては居ますが、奪われた『驚き』を元にして、現実化したドリームイーターが事件を起こそうとしているのです」
「現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してきて欲しい……というのが、今回の依頼です。このドリームイーターを倒す事が出来れば、『驚き』を奪われてしまった被害者も、きっと目を覚ましてくれるはずですから」
と、そこまで言うと、更にセリカが。
「このドリームイーターは一体のみで、少年の家を出て、市街地を歩き回っています。そして、相手を驚かそうと、ゴミ箱を倒したりするなど、ちょっとした音を立てて人を呼び寄せようとしている様なのです」
「恐らく、ドリームイーターは、相手を驚かせたくてしょうがないんだと思います。そして……自分の驚きが通じなかった人を、優先的に狙う様です」
「つまり、皆さんが驚かなければ、それを優先的に狙う……という具合になるでしょう」
「その姿形は、巨大化したポメラニアンで、唸ったり、接近してかみついたりしてきます。唸り声には混乱の効果があり、接近噛みつきには、毒効果があるようなので、それぞれ注意が必要だと思います」
「幸い巨体が苦して、動きはさして素早くありませんが……体力は多い様です。又、周囲に対する人払いも恐らく必要になりますので、その辺り考えて頂けるよう、お願い致します」
そして、最後に。
「子供の夢を奪い、ドリームイーターをそこから作るなんて許せませんよね。被害者の子供が、再び目を覚ますには、ドリームイーターを倒さなければなりません。皆さんの力で、事件の解決を、宜しくお願い致します」
と、頭を下げるセリカであった。
参加者 | |
---|---|
アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426) |
源・那岐(疾風の舞剣士・e01215) |
キサナ・ドゥ(メルティッジプラクティス・e01283) |
ガナッシュ・ランカース(マスター番長・e02563) |
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524) |
メーリス・サタリングデイ(一斉送信完了しました・e10499) |
鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699) |
ジゼル・アリオール(ヴァルキュリアの鹵獲術士・e24299) |
●驚きの夢
「ポメラニアン……巨大ポメラニアン……ったく、なんたってそんなピンポイントなのを出してくるかねぇ……」
と、キサナ・ドゥ(メルティッジプラクティス・e01283)が肩を竦めてぽつり呟く。
第三の魔女・ケリュネイア。
驚きの夢を具現化させて、ドリームイーター化させる彼女。
でも……驚きの夢が、よりにもよって巨大な巨大なポメラニアン。
「ポメラニアンとはいえ、巨大なのは見た事ないですねぇ……」
「ええ。ポメラニアンさんは、とってもかわいいですけれど……びっくりする程大きいのは……それに、子供さんの夢を利用して、ドリームイーターさんを生み出すなんて……」
「何じゃろうのう……巨大ポメラニアンと戦うなら、まだ巨大Gと戦う方が精神的に良さそうな気がするのじゃ」
と、源・那岐(疾風の舞剣士・e01215)、アリス・ティアラハート(ケルベロスの国のアリス・e00426)、そしてガナッシュ・ランカース(マスター番長・e02563)に源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)も。
「巨大Gは、本当夢に出そうで嫌だね。でも、巨大ポメラニアンは……怖いような、そうでないような……とは言え僕もまだ子供だから、大好きなひとが襲いかかってくると考えると嫌だなぁ」
……そんな仲間達の会話を聞いて、ジゼル・アリオール(ヴァルキュリアの鹵獲術士・e24299)は。
「確かに、ポメラニアンは地球上で指折りの癒やし系可愛い動物だと聞いているのだけど……まだ実物は見たことないのよね。だから、今回は対面するのが楽しみ」
そう言い、こくりと頷くとメーリス・サタリングデイ(一斉送信完了しました・e10499)と鏡・胡蝶(夢幻泡影・e17699)も。
「そうだね。可愛い可愛いポメラニアン! 食べられそうもないし、ぱぱっとやっつけちゃおー!! それと驚かないように頑張るぞー!!」
「ふふ……そうね。私も実は、可愛いものが大好きなの。ポメラニアン……大きくなっても可愛そうね……」
妖艶に微笑む胡蝶、その前でメーリスはうんうん、と。
「そうだねー! あ、そうそう、ポメラニアンってなんだか技名みたいだよね! ポメラニアンアターック、とか!」
そんなメーリスを見てると、なんだか可愛い小動物の様。
……それを見ている胡蝶の視線も、何処か……。
「まぁ、何だ。愚痴っててもしょーがねーしな。前準備前準備、っと」
と、キサナが割り込むように言葉を紡ぎ、そしてそれに促されるように那岐と瑠璃も。
「子供さんの夢を利用するとは許せません。子供の敵は世界の敵です。瑠璃、行こう」
「うん、許せない。だから倒そう。頑張ろう、那岐姉さん」
と言葉を交し合う。
「……犬、好きなんだよなー……小型犬も大型犬も。この巨大ポメはその両方を兼ね備えた完全体って感じなんだよなぁ。まぁ、戦闘となれば油断はしねーけど……でもなー……」
……一部、巨大ポメラニアンにとっても心引かれているにせよ、ケルベロス達は夜の町へ急ぐのであった。
●驚きと共に
そして、ケルベロス達は町へと到着する。
少年の家からほど近く……ガタン、とゴミ箱が倒れる音が、夜の町に響き渡る。
……そんな音のする方向に歩を進めて行くケルベロス達。
幸い深夜の頃なので、周りを歩く人は殆ど居ない。
とは言え、そんな深夜の町中を急ぎ……巨大ポメラニアンの姿を、闇の中に発見。
ハァハァ、と舌を出して呼吸するポメラニアン。
……小さい姿なら、とても可愛い仕草かもしれない。
でも、人並み以上に大きい姿のポメラニアンは……ちょっと驚いてしまう。
「っ!? ……お、大きいとはお聞きしてましたけど……こんなに大きいなんて……!?」
と、明らかに驚いた風を取るアリス。
しかし、一方那岐に瑠璃。
「確かに……巨大化したポメラニアンですね。ですがいつもクマや猛獣と森で逢っている私達には、全く驚きもしませんよ」
「そうだね。那岐姉さん。むしろ可愛い位だよ」
と言葉を交し、更にガナッシュも。
「むぅ。本当にポメラニアンが巨大化しただけの姿の様じゃな。だが無駄じゃ。その程度ではわしは驚かんぞ!!」
と、威風堂々たる言葉で宣言。
……そして、その間にジゼルが凛とした風を発動し、ちらほらと残る周囲の一般人を礼儀正しくさせると、更にアリスが。
「みなさん、私達はケルベロスです……ご指示に従って、こちらに避難して下さい……!」
と避難誘導を呼びかけると。
「よし。誘導は頼むぜ!」
とキサナが言うと、ガナッシュが頷いて。
「うむ。暫しの間、足止めを頼むぞい!」
と頷き合って、避難誘導班と、ポメラニアン引き付け班に分かれる。
ポメラニアンを囲う様に、那岐、キサナ、瑠璃、メーリス。
ディフェンダーに属する那岐、キサナ、メーリスが周囲包囲し、一歩後ろに瑠璃が立つ。
そして取りあえず、絶空斬で斬りかかり、キサナが華麗な身のこなしでリボルバー銃を撃ち放ち、『星を駆ける青春』。
そしてメーリスもデストロイブレイドで、ポメラニアンの注意を引き寄せて行く。
対するポメラニアンの攻撃……包囲網をかいくぐるかの様に、ケルベロス達に至近距離での噛みつき攻撃を喰らわせる。
大きな身体から繰り出す勢いで、ばくっ、と噛みつく。
下手すると、小さな身体は全身丸呑みされそうにも見える位、ポメラニアンは大きい。
でも、その動きはやっぱりポメラニアンで、くりくりっとした瞳でケルベロスを見つめてこられると……なんだか罪悪感をも覚えてしまう。
……そんなポメラニアンから受けたダメージを見極めるようにしながら、瑠璃がライトニングウォールで回復と、BS耐性を付与する。
そして、次の刻。
ディフェンダーに属する那岐、キサナ、メーリスはそれぞれ黒影弾、地裂撃、フレイムグリードと、次々に放ち、ポメラニアンに傷を付けていく。
キャンキャンと、甲高い悲鳴を上げるドリームイーター。
可愛い犬を虐めているが如き、罪悪感。
それを振り払うように首を振って、そして瑠璃がまたオラトリオヴェールで回復する。
……そして、3ターン目
あらかた避難誘導を完了し、皆が戻ってくる。
「お待たせいたしました。避難誘導、完了致しました……」
「了解。それじゃ、これからが本番ね」
とアリスの言葉に頷き、那岐が更に殺界形成を発動し、一般人の立ち入りを封鎖。
そして、アリスはジャマーにつき、ジゼルはスナイパーの配置に。
そしてそれぞれ。
「ポメラニアンさんを攻撃するのは……気が引けますけど……甘くて鋭い……槍の一突きを、受けて下さい……!」
と、稲妻突きでパラライズを多重付与すると共に、ジゼルも。
「流星の如くの突き……とくとご賞味あれ」
と、千烈光槍獄。
又、ガナッシュと胡蝶は最前線のクラッシャーについて、。
「さて、回復を使いたい時に回復出来んのも困る。何より味方を攻撃してもまずいからのぅ。まぁ転ばぬ先の杖って所じゃ」
とガナッシュが紙兵散布でBS対策を取ると、胡蝶も。
「そうね……それにしても大きいわね。それにあんな動きをして……本当可愛い。大きい体って事は……絶倫、なのかしら? ふふ、なら大技をガンガンお見舞して、可愛がってあげるわ」
と妖艶に微笑みながら。
「欲の侭に踊り狂って、そのまま果てるなら――それはとても、幸せだと思わない?」
と、淫蕩の饗宴。
ポメラニアンは猛々しく叫び、そして腕をジタバタと振るわせてくる。
その手元は、巨大な肉球。
「肉球……」
とそれを見たキサナが身を翻し、その攻撃をカバーリング……というか、自分から受けに行く。
結構痛い攻撃の筈だが、でも肉球の柔らかさにちょっと幸せ。
「へへ……ほらほら、カモン肉球!」
と少し血を流しながらも、不敵な笑みを浮かべるキサナ。
……そして次のターン。
前衛に立つ五人が、微塵の隙も無く包囲網を築くと共に、左から、右から攻撃。
キャンキャンと悲鳴を上げつつ、今度は唸りの鳴き声での混乱効果を付与しようとするが、バッドステータスを喰らったらすぐに瑠璃が後方から気力溜めやオラトリオヴェールを飛ばしてキュア。
そして。
「可愛いからって、手加減すると思った? なんて、そんな訳ないわよね」
と胡蝶がライトニングコレダーを叩き込み、ガナッシュも。
「何とも戦い辛い相手じゃが、攻撃せん訳にもいかんしの……これでも喰らうのじゃ!」
と、可愛いポメラニアンを攻撃する罪悪感を覚えつつ、更に強力な攻撃を叩き込む。
又、一歩後ろの位置からアリスが。
「女神さんの虹の花の力……使わせて頂きます……!」
と、フラワリープリンセス・ハートスタイルを叩きつけ、爪を落としつつ、ジゼルがヴァルキュリアブラストの強烈な一閃を穿つ。
また、適度にポメラニアンの動きに驚いたりして攻撃を逸らすようにしていく。
……経過する事十数分。
巨大化ポメラニアンの身体は血の赤色に塗れ……赤いポメラニアンになる。
うううう、と唸り声を上げるポメラニアンは、中々に恐怖だが。
「ふふ……そろそろ、終わらせてあげるわ」
と微笑み、胡蝶が叩き込むのは戦術超鋼拳。
その一撃、ポメラニアンの鼻っ柱に叩きつけられ……キャイイイン、と、更に悲しげな鳴き声を上げる。
そして……。
「そろそろトドメじゃ。これでも喰らえい!」
と、渾身の双掌裂界撃を叩き込むと……巨大化ポメラニアンは、断末魔の叫びを上げて……そして、夢乃如く、姿は消え失せて行くのであった。
●夢の合間
そして……ポメラニアンの姿が完全に消え失せた後。
「やれやれ……何とか終わったのぅ」
と溜息と共に、息を吐くガナッシュに頷く瑠璃。
「うん。姉さん、お疲れ様」
「瑠璃もお疲れ様。どうだった? ああいう巨大化したのって」
「え? うーん……僕にとっては、猛獣や巨大なポメラニアンより、姉さんの拳骨の方が一番怖いから」
「そう……拳骨、喰らいたい?」
笑顔で拳を握りしめる那岐に、瑠璃はあはは……と乾いた笑いで、ちょっと距離を取る。
……まぁ、それはさておきとして。
「しかし、敵の容姿の所為か、何だか何時も以上に疲れた気がするわい」
と、ガナッシュが言うと、それに頷く胡蝶。
「そうね……それに何だか、ペットショップに行きたくなっちゃったわね……夜は閉まってるから、帰ったら行こうかしら。可愛い子、愛でたくなっちゃったわ」
と。
「別に……ウェアライダーの子でも、良いのだけれどね」
……くすくす笑う胡蝶は、何だか少し怖い。
ともあれ……戦いも終わり、後に残るは、ポメラニアンの暴れた痕跡。
「しかしポメラニアン……想像以上の破壊力、そして癒しね……」
とジゼルが言うと、それに頷くメーリス。
「そうだねー。確かに可愛くて、そして強かったー。こんなのが夢の中に突然出て来たら、そりゃー驚くよねー」
「そう思います。普通は、そんなに大きい姿をしていないのでしょうから……」
と笑い合いながら、壊れた所を修理していく。
そして……一通り片付けた後に。
「……少年さんも、無事にお気がつかれますといいですね……」
とアリスがぽつりと呟き、皆も頷き……そしてケルベロス達は、真夜中の中、帰路へとつくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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