テレビの砂嵐への『興味』

作者:なちゅい

●何も映らぬテレビ画面
「本当に出るのかな……」
 普段、携帯のソーシャルネットワークなどに夢中で、テレビをほとんど見ない、小学生の竹久・真由花。だが、彼女は今、暗い部屋でテレビの前にかじりついていた。
 ネットの掲示板で語られる噂話によれば、『真夜中、砂嵐のテレビを見ていると、何かが浮かび上がってくる』というもの。
 真由花はそれを確かめようと、両親が寝静まるのを待ってこっそりと起き、居間までやってきてテレビの前へとやってきて、スイッチを入れて黙って待っていたのだ。
「うーん……」
 しばらく待っていたのだが、何も起きる気配は無い。それほど頻繁に起きる現象ではないそうなので、根気との勝負となりそうだ。
 そんな彼女の後ろからゆらりと現れたのは、ぼろぼろの黒い衣装を纏い、ひどく病的な肌をした魔女だった。
 第五の魔女・アウゲイアス。それが魔女の名だ。彼女のそばにはモザイクに包まれた腕が見える。この魔女はドリームイーターなのだ。
 そいつは希望の背後から、手にした鍵で彼女の心臓を一刺しした。真由花は言葉すら吐くことなく、意識を失って倒れてしまう。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 鍵で心臓を貫かれたはずの真由花。しかし、その体には血どころか、傷すらついていない。
  ただ、彼女の体のそばには、何やら怪しげな影が立っていた。全身を砂嵐……いや、それに似たモザイクに包んだ人影。それは人型をしてはいるが、灰色の獣のようなフォルムをしている。
「ザーー、ザザーーー」
 テレビの砂嵐のような鳴き声を上げたそいつは、何かを求めて周囲を見回していたのだった。
 
 とあるビルにやってきたケルベロス達。
 屋上にいるはずのヘリオライダーの姿が見えず、建物内探していると、詰め所でリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)の姿を発見する。
「あ、皆、ごめんね。すぐに戻るよ」
 そこはビルの事務所のようだったが、なぜか留守番を任されたらしい。彼女はそこに設置されていた古いテレビを見つめていた。
 程なく、トイレから管理人が帰ってきたことで、リーゼリットは屋上へと戻ってくる。
「テレビって不思議な感じがするよね」
 今や、見向く若者が減りつつあるテレビ。関心が薄くなりつつあるこのメディアに対し、一つの都市伝説が真しやかにささやかれている。
「曰く、『真夜中、砂嵐のテレビを見ていると、何かが浮かび上がってくる』とのことだよ」
 それは、単なるネットの掲示板に出回る根も葉もない噂話でしかない。
 だが、それに強い『興味』を持って、実際に自分で試してみようとする少女がドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまうようだ。
「奪われた『興味』を元にして、怪物型のドリームイーターが現実化してしまっているよ。この夢喰いが事件を起こそうとしているようだね」
 すでに 『興味』を奪ったドリームイーターは姿を消している。こちらも気にはなるところであるが、今は被害が出る前に、怪物型のドリームイーターを討伐して欲しいとリーゼリットは語る。
「このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ますはずだよ」
 今回、『興味』を奪われたのは、竹久・真由花という名の女子小学生だ。彼女は感情を奪われて自宅の居間に倒れている。無事にドリームイーターを倒したのならば、何かフォローがあってもよいだろう。
 現場となるのは、福井県某所の住宅地だ。
「『興味』から生まれたドリームイーターは、何かを求めるように自宅周辺を彷徨っているようだね」
 ドリームイーターは、自分の事を信じていたり噂していたりする人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。そうして相手をうまく誘い出せば、有利に戦うことができるはずだ。
 現れるドリームイーターは怪物型1体のみ。配下などはいない。
 そいつは二足歩行で歩く灰色の獣のような怪物で、モザイクのような嵐を纏っている姿をしているという。
「怪物型のドリームイーターは、人間を見つけると『自分が何者であるかを問う』ような行為をしてくるよ」
 場合によっては相手を殺そうとするようだ。もちろん、ケルベロスとしては見過ごすわけにはいかないので、早々に討伐してしまいたい。
 ドリームイーターはモザイクを飛ばして攻撃することがほとんどだが、場合によっては直接爪や牙で襲ってくることもある。その点を留意の上で、戦略を組み立てたい。
「『興味』を持つ対象は人それぞれだと思う。ただ、その『興味』を利用するドリームイーターを許すわけにはいかないよ」
「少女の『興味』……か。子供の成長には欠かせぬ感情。下手をすると、無尽蔵に奪われてしまいかねんな……」
 話を聞いていた雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)が呟く。集まっていたケルベロス達もまた自身の胸のうちを語り合う。
「そうだね。どうか、『興味』を奪われた少女に救いを」
 それらをリーゼリットは肯定しつつも、ケルベロス達へ少女の救出を願うのだった。


参加者
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
立花・恵(カゼの如く・e01060)
ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)
リュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)
ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)
神居・雪(はぐれ狼・e22011)
ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)

■リプレイ

●奪われし『興味』
 福井県某所。
 とある住宅地を、ケルベロス達が歩いていた。
「『興味』を、まして子供のそれを奪うなんて酷い話ですね」
 ダリル・チェスロック(傍観者・e28788)は、ドリームイーターに対して怒りを覚えている。
 すでに、『興味』を奪った夢喰いは姿を消しているそうだが、少女の『興味』から具現化した怪物型の夢喰いが、この付近をさまよっているのだという。
「テレビの砂嵐、か。子供の頃、意味もなく眺めてたわね。そのうち何か起こるんじゃないかって」
「砂嵐への『興味』ですか、『興味』を持つ事は良い事だとは思いますけど、あまり危険な事に首を突っ込むのはどうかと思いますね。」
 ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)が後方でぼそりと呟いたのに、ルピナス・ミラ(黒星と闇花・e07184)が反応する。
「テレビの砂嵐って、最近はあんま見んよな」
「そういえば……、そうだな」
 そこで、ガド・モデスティア(隻角の金牛・e01142)が記憶をたどって何気なく口にしたことに、雛形・リュエン(流しのオラトリオ・en0041)が同意していた。
「テレビのサンドストーム。デジタル化以降、見ることは無くなったはずだが……。都市伝説など、そういうものか」
 それに対して、ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)が淡々と語る。それもそのはず。砂嵐……スノーノイズは基本的に、アナログテレビで起こる現象だ。
 テレビがデジタルに完全移行して久しい。居間にアナログテレビがある家も珍しくなってきているが、現場となった家はチューナーの変更で対処し、アナログテレビが現役なのかもしれない。
「昔は色々都市伝説があったけども、そういうオカルトに興味が湧くのはよく分かるし、うちも好きやで」
 ガドが語るのは、何かがテレビから出てくるとか、0時丁度に翌日死ぬ人の名前が出るといったと都市伝説。オカルト自体は苦手なガドだが、好奇心が余ってつい耳にする程度に好みなので、理解を示す。
「だから、そういう好奇心を利用して悪事を働く輩がおるっちゅうんなら、キッチリ成敗! ……したらんとな」
 ガドの言葉に同意するメンバー達。その傍らでリュートニア・ファーレン(紅氷の一閃・e02550)が思う。
(「今はまだ出てきたものしか叩けないけど、いつかは本体にたどり着けるのかな」)
 彼が気にするのは、今回の事件を引き起こした魔女のことだ。
 とはいえ、今は『興味』を奪われた少女、竹久・真由花の救出を。リュートニアは自身と同世代の少女を救うべく、意気込みを見せるのだった。

 さて、住宅地を徘徊しているドリームイーターと戦うに当たって。
 メンバー達は真由花の家の周囲、そして、地図で確認して発見した近場の公園を戦場と想定し、ガド、立花・恵(カゼの如く・e01060)がキープアウトテープを張り巡らせてその周囲の人払いを行う。
 その上で、メンバー達はその公園に集まり、夢喰いをこの場に引き付ける為に噂話を始める。
「ふうん、面白い話があるならば、聞かせてもらいたいものね」
 大きな態度で仲間達へと告げるユスティーナ。暑い時期だから、背筋が寒くなるようなものでもいいと、仲間達の後方から主張した上で耳を傾ける。
 話を切り出したのは、神居・雪(はぐれ狼・e22011)だ。
「夜中にテレビの砂嵐を見てると、何かが浮かび上がってくる、か……。本当かよ?」
「砂嵐のテレビになにか浮かび上がる? 自分の顔が映ってるだけじゃないのかい」
 信じていないけれど、興味は惹かれているという体でダリルは話を広げた。それに加わるリュートニア、リュエンも相槌を打っている。
「夜中にテレビの砂嵐から何かが見えるって話、あれ見えるだけでなく出て来るらしいですよ。ナニかが」
「真夜中に砂嵐のお化けが、この辺りをうろついているらしいな」
 ウルトレスが情報を付け加えると、恵が周囲を見回しながら、さらに話を広げていく。それを、身を震わせつつも興味ありげといった演技をして、ガドが話に耳を傾けていた。
「なんでも、真夜中に興味いっぱいの少女から生まれたらしい」
 砂嵐テレビの噂の他、現状の獣の情報からも噂にしたいと考え、恵がさらに話を口にしていると……そいつは現れた。
 灰色の体毛をした人型の怪物。しかも、モザイクの砂嵐に身を包んでいる。こいつこそ、少女の『興味』が具現化したドリームイーターだろう。
「出ましたね、ドリームイーター、わたくしにも砂嵐を見せて下さるのでしょうか?」
 ルピナスが身構えると、怪物が何やらケルベロスへと問いかけてくる。
「ザ、ザザ、ワレハ、何ゾ……?」
 夢喰い自らに対する問いかけがあることを聞いていたケルベロス達は、口々に考えていた答えを口にしていく。
「そんなもの、誰も教えてあげられないのよ。それにどうせ、答えられたところでそれに納得なんてできないものよ」
「お前はお前以外の何者でもない」
 真っ先に返答するユスティーナ。ダリルも前に立ちながら、仲間を庇うように、そして、敵を逃がさないようにと位置取りを行う。
「あんたはアナログ時代の過去の遺物……ここで消えて忘れ去られる存在だ」
「みんなのトラウマってヤツかね?」
 ウルトレスはケルベロスコートの下から武装を取り出す。ガドを少し唸ってそう返答していた。しかしながら、いずれも相手が望む答えではなさそうだ。
 雪も手前に躍り出て、敵へと高らかに告げる。
「てめぇが何者かって? さぁな、化け物かそれ以外か知らねぇが……アタシにとっちゃ倒す相手ってだけだ!」
 他にも答えを用意しているメンバーはいたが、敵はすでに戦闘態勢に入っている。
 モザイクを纏って襲ってくる怪物に対し、ケルベロス達は次々にグラビティを行使し始めたのだった。

●『興味』から生まれた怪物
 接近してくる怪物型のドリームイーター。
「ザ、ザザッ……」
 微弱な電波を受信したような音を発する夢喰いは、自身を中心としてモザイクの嵐を撒き散らす。
 荒れ狂うモザイクを浴びる雪と、ライドキャリバーのイペタム。イペタムはエンジンをふかし、激しいスピンで怪物の足を轢き潰す。
「まだまだ、ここからだ。しっかり、狙いつけて行けよ」
 アイヌの巫女の血を引く雪。彼女はカムイ……高位の霊の力を借りる。この場で選んだのは、集落を守るシマフクロウの加護だ。それを自身を含めた前列メンバーへと雪は与え、獲物を逃がさぬ鋭い視覚を仲間達の目に宿す。
 リュートニアはバトルオーラを使い、物質の時間を凍結する弾丸を左手から撃ち放つ。それにより、命中した怪物の腹を凍らせる。
 同時に、彼はボクスドラゴンのクゥに指示を出す。それは、前へ出ていたユスティーナへと、クゥが纏う風の属性を注入することだった。
(「姉さんの大切な友達……傷つけさせはしない」)
 また、ユスティーナは自分達の店に来てくれる大切な常連客でもある。だからこそ、リュートニアは彼女を守ろうと意気込んでいた。
(「自分が何かなんて、こちらが教えてほしいくらい。けれど、納得できる答えなんて誰もくれやしないわ」)
 そのユスティーナは、魂と肉体に、ユスティーナは流れ出す旋律をシンクロさせる。
「果てなく譲れないこの思いを胸に。さあ、はじめよう」
 言いたい答えが途中になっていたこともあり、ユスティーナは攻め入りながら自身の本音をぶちまけると考える。幼い頃より共にあった音楽とダンスの力を借り、彼女は拳を振り上げた。
「ただ一つ答えてあげられるとすれば、私達はあなたをここで終わらせに来ているということだけよッ!」
 力強く拳を叩きつける彼女。だが、怪物は獣のように跳躍し、距離を取ってすぐに構え直す。
「お前はただの借り物でしかねぇ。その『興味』、返してもらうぜ!!」
 間髪入れず、恵が叫びかけて攻め入る。オウガメタルを纏わせた拳を鋼と化し、敵の体を力強く砕いていく。
 さらに、後方にいたルピナスが自身の周囲にエナジー状の闇の剣を無数に創造する。それは、彼女の魔力によって作られたものだ。
「闇の剣よ、敵を切り裂け!」
 その闇の剣はルピナスの呼びかけに応え、夢喰いの体に斬撃痕を次々に与えていく。そして、その傷口からは痺れを付与して動きを封じんとする。
「よォし、盛り上がってきたァ!!」
 その間に、前線のガドが咆哮を上げる。それによって周囲に螺旋の風を巻き起こし、前に立つ仲間達の戦意を向上させた。
 さらに、ウルトレスがオウガ粒子を飛ばして前線メンバーの感覚を覚醒させ、リュエンも雷の壁を構築し、前線メンバーの援護に回っていた。
 その援護を受け、ダリルは体に痺れを走らせた敵へ、電光石火の蹴りを急所に浴びせかけることで夢喰いの体の痺れを強めていく。
「ザ、ザザ……!」
 体に痺れを走らせるドリームイーターの目は爛々と光り、獲物……ケルベロスを捉え続けていた。

 前衛を多めに配置したケルベロス達の布陣。
 回復役が少なめではあったが、そこはサーヴァント含めた手数の多さでカバーする。
「ほら、耳を傾けて。何が聞こえるか僕に教えて」
 そんな中、盾役となるリュートニアはドリームイーターの耳元に嗤いを囁く弾丸を掠める。
「ザ、ザザ……!」
 それによって平常心を失った敵は、リュートニア目がけて食らいつく。敵の牙に含まれる麻痺成分が彼の体を苛んだ。
 怒りによってリュートニアに集まる夢喰いの攻撃をダリル、雪らディフェンダー陣がカバーする。さらに、その盾となるメンバーへクゥが風の属性をインストールさせて、1人ずつ癒やしていく。
 その後ろ、ウルトレスはジャマーとして敵にガトリングガンを連射させ、あるいはオウガメタルを纏った拳で殴りつけていた。
「演(や)りながら殺(ヤ)るのが流儀でな」
 さらに、ウルトレスは攻撃の合間にアクセサリーとして持ち込んだベースギターを弾いていた。彼の希望もあって、リュエンがバイオレンスギターで合わせ、セッションを行う。リュエンは回復役として『紅瞳覚醒』を演奏し、仲間を奮起させていた。
「怪我してる子いないー? 大丈夫ー?」
 メインで戦うメンバーのサポートをと、アルベルトはオーロラの光を放つことで、癒やしてくれていた。
 そうした後方支援もあり、前線メンバーは気兼ねすることなく次々に敵へと攻め込んでいく。
 モザイクの嵐と食らいつきは面倒だが、懐にさえ攻め込めば本体は思ったよりはもろい。そう判断したユスティーナは飛び込んだ上で敵のボディへと惨殺ナイフを突き入れる。それにより、灰色の毛がボロボロになってしまう。
 続いて、ダリルが燃え上がるエアシューズで怪物の体を蹴りつける。反撃にと怪物が爪での連撃、かぶりつきで応戦するのをダリルが抑えているところへ、雪が惨殺ナイフを軽やかに操り、敵の体を切り裂いていく。その傷口からはグラビティ・チェインを十分に含んだモザイクが噴き出し、それを浴びたことで、雪は力を取り戻していた。
 雪のイペタムも、機体に炎を灯して敵へと突撃していく。正面からそれを受けた敵は、胸や腰を燃え上がらせる。
 ガドも隙を見て夢喰いを拳で殴りつけ、相手にプレッシャーを与え続けていた。敵は盾役メンバーが抑えてくれている。おかげで、基本的には攻めこむだけでいい。ガドもまたモザイクの嵐をかいくぐり、マインドリングから具現化した剣で力の限り斬りつける。
 度重なるケルベロスの攻撃。夢喰いはモザイクを嵐のようにまた飛ばしては来るものの、その勢いは徐々に弱まってきていた。
 敵の体力が少ないことを見極め、恵はリボルバー銃の銃口を差し向ける。
「炸裂しろ! 灼熱の星の衝撃よ!」
 恵は銃弾に闘気を篭め、高く跳躍した後でその弾丸を連射していった。それらは超高速で夢喰いの体へと着弾し、急所を確実に貫いていく。
「興味があるなら覚えておけよ。俺達は、ケルベロスだ!」
 続けてルピナスも仕掛けていた。ルピナスが呼び出したのは、暴走ロボットのエネルギー体。夢喰いのモザイクの嵐や爪牙を意とも介することなく、敵の体を蹂躙していく。
「ザザ……ザ…………」
 ロボットが夢喰いの体を強引に引き裂くと、その体は弾けてモザイクに成り果ててしまった。
 ウルトレスのベースの音が止まる。彼はベース弦を自ら引きちぎり、ライブに幕を下ろす。
 完全にモザイクが晴れて消え去ったのを確認し、恵はリボルバー銃をくるくると回してからホルスターへと収めたのだった。

●『興味』を抱く少女へ
 ドリームイーターを倒した一行。
 戦場となった公園への被害も気になるが、まずはと、リュートニアはユスティーナの元に駆け寄る。
「お怪我はありませんか?」
「す、すまないわね……」
 無事を確認したリュートニアが気力を撃ち出すと、ユスティーナは小さく礼を告げた。
 その傍で後片付けを行っていたウルトレスは、リュエンへと声をかける。
「魂がこもったクールなギタープレイでした。また一緒に演りたいもんです」
「ああ、実にいいライブだった」
 2人は言葉の後、ハイタッチを交わしていた。
 ある程度ヒールを済ませたメンバーは、被害者の少女、竹久・真由花が気になり、竹久家を訪れる。
 玄関に出た真由花の両親へとルピナスがケルベロスだと素性を説明した後、ユスティーナが夢喰いの討伐について説明した。
 真由花の部屋を訪れたメンバー達。事件の経緯から解決までを、雪が目覚めた真由花へと話し聞かせる。
「ま、気になる気持ちは分かるぜ。ちょっとわくわくするもんな。それが悪い事だとも思わねぇよ。……まぁ、親にばれたら怒られるけどな」
 その上で、運悪くドリームイーターから狙われた彼女に、雪は『興味』自体は悪いことではないと説明した。もっとも、夜中起きていたことと、両親に心配をかけたことに関しては、真由花は謝らねばならないだろう。
「興味を持つ事は、大事な事だとは思いますけど、危険な事を見分けられる様にこれからはお気をつけて下さいね」
「噂を追うのはすごく良いことだけど、夜はちゃーんと寝ないと大きくならないぞ?」
 ルピナス、恵が一緒になり、真由花を窘める。
「ごめんね、お姉ちゃん達……」
「ははは、よーく見な、俺はお兄ちゃんだぞー?」
 恵は女性に間違われたことに内心傷つきつつ、作り笑顔で訴える。女性に間違われるのは彼女、もとい、彼のコンプレックスなのだ。
「『興味』から全てのことは始まるわ」
 ユスティーナがさらに、フォローの言葉を口にする。
「今回はこんな事があったけれど、『興味』を持つことを決して恐れないで、何かを始めることは……とても、ステキなことだから」
「うん……」
 そこで、何気なく真由花が窓の方に目を向けると、ダリルが外で広げた翼から光を発しようとする。光は、窓を開けた真由花を包み込んでいく。
「走れ! 振り返らずに 脇目も振らず逃げ続けろ……」
 同時に、ダリルからの依頼で、リュエンが立ち止まらず戦い続ける者達の歌を歌う。もう少し打ち合わせできていたらセッションも出来たろうが、今回はリュエンのみで弾き語りを行う形をとっていた。
 音楽は人を癒やす。それを知っていたからこそ、ダリルはこのような演出を行ったのだ。
「もし何かあっても、ケルベロスがいるわ。ね、安心でしょう?」
 演奏が終わった直後、ユスティーナが大きな胸を張ると。真由花はうんと大きく頷いた。
 その時、居間のテレビから砂嵐のような音が聞こえたような気がして。
 ガドが居間へと確かめに向かうと、何事もなかったかのようにテレビは静まり返っている。
 本当にオカルトかもしれないが、ガドは奇跡が起こったのかもしれないと考えることにしたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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