ＵＦＯは丘の上に現れる

■リプレイ

●ＵＦＯは丘の上に現れる
　夜の丘の上、空が開けて星が綺麗に輝いている。
「念のために殺界形成を張りますね」
　サラ・エクレール（銀雷閃・e05901）は、用心の為に人を寄せない様にする。場所が場所とはいえ、星空が美しい場所となると天体観測に現れる人達もいるかもしれないからだ。
「やっぱりドリームイーターは好きになれないかな。他人から色々と奪いすぎだね」
　ロベリア・エカルラート（花言葉は悪意・e01329）は呟く。
「今回は倒せば被害者の彩夏も助かるからね」
「ええ、見過ごしても後味悪いし、早いところ助けないとね」
　周囲に置き型ランタンを設置していたセルジュ・マルティネス（グラキエス・e11601）がそう声をかけ、ロベリアもそれに肯定する。
「では、ＵＦＯを呼び出す儀式を始めましょう」
　御堂・蓮（刃風の蔭鬼・e16724）は、ＵＦＯ関係の本と手持ちのランプを掲げる。そして、ビーツー・タイト（火を灯す黒瑪瑙・e04339）は見えるように双眼鏡と手帳、筆記具を傍から見えるように腰に吊り下げ、相棒の白橙色の炎を纏ったボクスドラゴンのボクスが儀式の炎点火を行った。
「『アメリカの軍事基地の上を舞うUFO』。未知のデウスエクスか……？」
　怪しげなオカルト雑誌から適当な記事を読んでいたハートレス・ゼロ（復讐の炎・e29646）は、とぼけた所見等を述べてみる。
「そうだな。地球外生命体は他に居てもおかしくないからな。ＵＦＯの正体もデウスエクスと同じようなものなのかもしれない」
　ビーツーもそれに同意する。
「もし本当にUFOが現れたらアタシ達、さらわれちゃうかもね。全身の血を抜かれたり……なーんてのもあったっけ？」
「未確認飛行物体……時に流星や、宇宙ステーションなんかと見間違えられたりするが、俺はやっぱりいると思うんだよな」
　ランジ・シャト（舞い爆ぜる瞬炎・e15793）は、そんな噂話を始める。それにセルジュが乗っかった。
「呼び出す時は確か……ベントラーベントラーと唱えるといいらしいよ」
　鉄・冬真（薄氷・e23499）が、そんな話をする。無表情に等しい彼だけれど、本当はＵＦＯが現れると瞳を密かに輝かせていた。……これが本当だったら面白いんだけれど、そんな事を思いながら。
　そんな風にＵＦＯの話や儀式らしきものをしているうちに、ぼんやりとした発光体が近づいて来た。
　綺麗に輝くその発光体は不思議な光を放ち、何か不思議な言葉で語りかけて来る。
「……ワタシガナンダトオモイマスカ？」
　それに一斉に言葉が返って来た。
「何者……って、アンタどこからどう見てもUFOでしょ？」
「化け物」
「さて、君は自分を何だと思っている？」
「決まっている、お前はただのデウスエクスだ。そうやって人の夢を、恐怖を、食い物にするしか能の無い存在だ」
　ランジ、蓮、冬真、ハートレスの言葉が同時に飛んで来たので、言葉の判別が難しかったのか何やらおろおろしている。
「それじゃ、次はコイツをバラして中身を引きずり出してやらないと……ね？」
「神秘は尊いが、デウスエクスがやっちゃただの悪行だ。というわけで、退治させて貰うぜ」
　そんなドリームイーターにランジはニヤリと笑い、セルジュが構える。そして、ドリームイーターとの戦いが幕を開けた。

●未確認物体ドリームイーター
　第一手はビーツー。星の光がロベリア達へ守護を与える。ボクスはサラ達へと属性インストールを、ランジは紙兵を放って護りを更に固めていった。
　サラはドリームイーターの動きを抑えるように銃弾を放って足止めを図る。そこへセルジュがウイルスを撃ち込んだ。
「空木、頼むぞ。奴が襲ってきたらすぐに皆を守れ」
　蓮はオルトロスの空木を一撫でして送りだす。そして、自らはもう一方の相棒である古書を撫で開きドリームイーターを見据えた。蓮が繰り出すのはオウガ粒子。それを冬真達に放ち命中率を上げる。続いて空木が神器の剣を用いてドリームイーターを切り裂いた。
「その光の中はなんだろうね？」
　冬真の拳による攻撃はドリームイーターの内部を爆破させる。
　攻撃に転じたドリームイーターは光り輝き、眩いばかりの光がランジの視界を奪っていった。
「応急処置だ、少し待て」
　ハートレスは直ぐにオーラの力によってランジを癒していく。一方でハートレスのライドキャリバーのサイレントイレブンは炎を渦巻かせてドリームイーターへ突進していった。
「さあ、さっさと終わらせるよ！　イリスも続いて！」
　攻撃が当たりやすくなる様にイリスがポルターガイストを使って足止めする。そこにロベリアは地獄の炎の弾丸をドリームイーターへと撃ち放った。
「ハートレスさんに助けて貰ったし、アタシも良い所、見せるわよ！」
　ランジはドリームイーターを縛り上げていく。そこにサラの高速の弾丸が撃ち込まれた。
「ボクス、サポートをしっかり頼むぞ」
　ビーツーの言葉に、ボクスはこくりと頷く。ビーツーは再び星の輝きによる加護をロベリア達に与えていく。それをサポートするようにボクスも動いていった。
　セルジュによる音速を超える拳がドリームイーターを吹き飛ばす。しかし、ドリームイーターは弾き飛ばされながらも何とか体勢を立て直した。球体の光は赤く染まっていく。その赤き光はロベリアを狙って来るが、それを双子の姉でもあるビハインドのイリスが庇った。
　蓮はハートレスと自身に紙兵を放って護りを高める。空木はドリームイーターへ向かって炎を渦巻かせ、続いて冬真が爆破攻撃を喰らわせた。
「オレの地獄に付き合ってもらう」
　ハートレスはチェーンソー剣の刃で斬り裂き、ロベリアが鋏を分解した形の二刀流の剣に地獄の炎を纏わせて斬りつけた。サイレントイレブンは轢き潰し攻撃を更に加える。
「動きを奪うわよ」
「続きます」
　ランジの弧を描く斬撃がドリームイーターの急所を切り裂き、動きが捕らわれた所をサラの放つ爆炎の魔力の弾丸が降り注ぎ燃え上がった。
「もう少し、動きを抑えた方が良いか」
　戦闘状況を見ながら、ビーツーはそう判断して輝きを伴う重い蹴りをドリームイーターに放つ。それにセルジュが続いた。
「なあ、少し遊んでくれよ」
　鮮やかな貝紫色の魔力エネルギーを纏った拳がドリームイーターへと殴りかかり、そして撃ち抜く。
　ドリームイーターの方も攻撃に向けて輝き始めた。その輝きはビーツーを眠りへと誘おうとする。だが、空木がその光を代わりに受けた。
「空木、良くやった。……それにしても、その光の中はどんな姿なのか……否、違う、あれはただのドリームイーターだ」
　相棒の行動の労い、同時に浮かんできた自らの好奇心を思い正すと、蓮はドリームイーターへ具現化した「黒太陽」からの黒光を照射させる。そこに冬真がナイフを使って激しく斬り裂いた。
　ハートレスがドリームイーターへと凍結光線を放つ一方でサイレントイレブンは炎を巻き上げて突進していく。続けてロベリアが地獄の炎の弾丸を撃ち放ち、イリスは麻痺を与えていった。
　ドリームイーターは輝く。眩い光は冬真の視界を奪った。
「直ぐに回復しよう」
　ビーツーの星の輝きが冬真だけでなく動きが厳しいサーバント達も回復されていく。ボクスは更に冬真へ属性インストールを行って護りを高めていった。
「……いきます」
　サラは静かにそう言うとガトリングガンを両手に構える。その銃弾はドリームイーターへと容赦なく降り注いでいった。
「こんのっ……逃がすかっての！！」
　ランジは空中へと飛び上がり、地獄化した翼の炎を爆破する。エネルギーへと変換されて次々とドリームイーターへと喰らわせていった。
「……吹き飛べ！」
　セルジュの音速の拳がドリームイーターを思いっきり吹き飛ばす。そこを蓮が捕らえると、冬真の攻撃が内部を爆破させた。
　ドリームイーターは相当弱っているが、それでも動き続ける。放っている光が赤い光へと変わりハートレスを狙う。それを、身を呈して空木が受け止めた。
「……感謝する」
　自分を守ってくれた空木に感謝を述べると、ハートレスはチェーンソー剣を構える。そしてドリームイーターへと刃で容赦なく斬り裂き、サイレントイレブンが続いて轢き潰した。
「後少し……！」
　イリスのポルターガイストがドリームイーターの動きを止め、ロベリアは地獄の炎を纏わせた剣で次々と斬りつけていく。
「……凍れ！」
「ちょこまかと動かないでよ！」
　ビーツーは冷凍光線を放ち、ランジの弧を描く剣がドリームイーターの急所を突いて動きを奪った、
「我が弾丸の豪雨、その身に受けよ！」
　サラは豪雨の様な無数の弾丸を立て続けにドリームイーターに撃ち込んでいく。続いてセルジュによるTyrian Roseがドリームイーターを撃ち抜いた。
「夢は夢へ、興味は興味へ……彼女の心へ還るんだ。帰り道が分からないなら、僕達が君を在るべき場所へと誘おう」
　冬真は惨殺ナイフを構え、そしてドリームイーターを斬り裂く。その攻撃を受けたドリームイーターは光の球体が弾けると、星のようにキラキラと輝きながら消えていった。

●未知の物へと想いを馳せて
　その後、荒れてしまった場所をヒールして、彩夏が倒れている場所へと向かった。そして、彩夏を無事に発見し、ビーツーを中心に彼女にヒールをかけて手当てをした。
「……ん……」
　彩夏の瞼が動く。
「気が付いたかな？」
「大丈夫ですか？」
　ロベリアとサラが彩夏に声をかけた。
「……あれ……私、夜空を見ていて……」
「余り無理しなくて良い、彩夏殿。俺達が送っていくから大丈夫だ」
　ぼんやりしている彩夏にビーツーが優しく声をかける。それに彩夏はこくりと頷いた。
　ドリームイーターがキラキラと消えていった光と同じような光が、空を仰ぐと広がっていた。
　ＵＦＯを探していた彩夏が仰いでいた夜空。星がとても綺麗で輝いていて……何かがいても可笑しくない、そんな気がする。
「どっかに居ないかしら、UFO……」
　ランジは腰に手を当てながら夜空を仰ぐ。ランジはＵＦＯを信じているし、面白そうだとも思っている。
「ＵＦＯか……。例え夢でも、出会えて嬉しかったよ」
　冬真もそう呟く。
「ふむ、Undifined Flyng Object、未確認飛行物体か。いないわけがないな」
　ハートレスはそう言いながら、こうも思っている。
（「――正体を確認されなければ、なんであろうとUFOになり得るからな」）
「世の中には科学的な事や推理的な事では説明のつかない物事も多い。そのうちのいくつかは、本当に神秘としか言いようのないもので構成されているんだろう」
「未知への興味は尽きない、自身で確かめたい、知りたいというのは人の欲求。好奇心とは尽きないものだな」
　セルジュと蓮もそう続けた。先程のドリームイーターは、あくまでドリームイーターだけれど。でも、未知の物は居ない訳はない。
「じゃあ、きっといるわね、ＵＦＯ！」
「そうだね。彩夏さん、会える機会があると良いね。……僕も、その機会があると良いな」
　ランジはにっこりと笑い、冬真も無表情ながらもどこか嬉しそうな雰囲気を感じる。そして、『ＵＦＯがいる』。それが聞こえたのか、彩夏も少し微笑んだように見えた。
　未知の物。それは沢山あるけれど……それに出会える事も本当にある。探さなければ見つからない、そういうものの方が圧倒的に多いだろう。
　星空の中、どこかに未知の何かがいる、そんな想いを馳せながら――。

作者：白鳥美鳥	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年8月12日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 5／キャラが大事にされていた 1
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