「皆、今更だけどケルベロスウォーお疲れ様!」
大神・ユキ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0168)は番犬達に微笑みながら、手元の資料をぺらり。
「皆も大変だったと思うけど、ケルベロスウォーは世界経済にも大きな打撃になったみたい……」
資料じー、ぽいっ。
「なんやかんやあって、この経済状況打破の為にイベントで収益を上げようって事になったんだって!」
カッコよく説明しようとして、やめたユキは資料をブン投げてにぱっ。番犬達の苦笑も気にせず彼女は突っ走る。
「皆に普通の手段じゃダメージは入らないよね? それを利用して、世界のその業界の偉い人たちが『ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション』とかいうスリルを求めすぎてむしろ危なくなっちゃった物をインドに持ち寄って、スリリング通り越してリスキーなスポーツ要塞を造っちゃったんだって!」
何故にインド? って顔する番犬達に、にゃふふ、と含みのある笑みを浮かべるユキ。
「実はインドで、第一回ケルベロス大運動会が開催されちゃうんだよー!!」
『な、なんだってー!?』
驚愕する番犬一同に、少女はウィンク。
「インドを巡って、皆でアトラクションに挑もう、っていうのが今回集まってもらった理由だよ!」
そこで! とユキは番犬達に人差し指を突きつけた。
「ケルベロス大運動会の前夜祭的なイベントとして、インダス川遠泳大会が行われるんだって! 速さや距離、パフォーマンスを競うっていういかにも大会っぽいこともあるけど、近くの住民と交流する事もできるの。ケルベロス大運動会の前日で、八月十日に行われるイベントだけど、運動会会場までの交通機関は準備されてるから、思いっ切り楽しんじゃってオーケー!」
「もちろん、泳げなくても水辺で遊べる場所があるみたいですから、のんびりするのもありですよ」
四夜・凶(オラトリオのウィッチドクター・en0169)がニコリと微笑み、地図を広げて丸をつけた。
「ここに海水浴場……のような物が用意されています。浜辺もありますから、本当に海のように楽しめますよ。近所の子どもも多く遊びに来ていますから、彼らと遊んだり、水遊びを教えてもいいですね」
「凶は泳ぎを教えに行くんだよね。私も泳げないのに」
ジトー、とした猫娘の視線に苦笑する強面。
「ユキはまた今度な」
グリグリと少女の頭を撫でると、彼は部屋を出て行き解散になった……はずだった。
「さて、集まってもらったのは他でもない」
何かの司令官風? な口調でゴゴゴ、という音が聞こえそうな覇気を纏うユキは残った番犬達へ拳を握る。
「私をほっぽって現地の子どもと『だけ』遊ぼうとしているあの強面天使モドキに立場というものを教えてやるためだよッ!」
寂しいのか、目の端に涙を浮かべるユキが取り出したのは機関銃……っぽい、水鉄砲。
「って言っても、本来の目的はインドの子どもと遊ぶことだからね。もちろんメインはそっち。みんなも水鉄砲に限らず、水辺で遊べるオモチャがあったら持ってきて欲しいな。私の勝手なイメージだけど、インドってこういう物がないイメージがあるんだ。これを機に珍しい物を見せてあげられたら喜んでくれる……かな?」
ちょっと不安なのか、上目遣いに聞く少女に、番犬達は静かに微笑みを浮かべるのだった。
●
「一点でも取れたら君達の勝ちでいいよ」
説明を終えたカタリーナは子ども達に合わせてボールを打つ、が。
「勝った方にはご褒美をあげますよー」
(何それ勝ちたい。でも大人げないし……)
瑠璃の声にフラフラ。その隙にボールが落ち、瑠璃は子どもたちへアイスを配ると、最後の一本を二つに割る。
「ほら……半分こしましょ?」
「管理人さんと……いいの!?」
落ち込んだ彼女は瞬く間に笑顔になっていた。
さぁ始まりました刀響・水中リボン争奪戦!
仁王立ちのマキナと、ゆかり。たゆん、な二人が睨み合う。
「覚悟なのですよー!」
迫るゆかりへ手で作った水鉄砲で迎撃するが、撃破できず衝突。二人の胸が柔らかに形を変えた。
「んっ、触られると感覚と心が刺激されるわ」
「肌で自然を感じるのも良いことよ?」
ゆかりの背後から迫るカナタ。
「リボンは違うよ!?」
水着を解き、両手が塞がる二人からリボンを奪う。
「勝負に情けはかけないぜー!」
カナタへ隼人が真正面から突撃するが。
「正々堂々は程々にね!」
「ぎゃー!?」
避けられ、リボンを剥される。
「悔しいけど負けかー……」
落ち込む隼人が見たのは、カナタを狙う番犬達。
「カナタ君、水着がズレとるぞい!」
「あら、どこ?」
隙を作るはずがチラ見せの反撃にあうペイン。
「ちょ!?」
その隙にリボンを掠めるクオン。カナタの髪のリボンも狙うが避けられ、柔らかい物をガシッ。
「ク・オ・ン・君?」
「いや待て、他意はない……」
ぶんぶん首を振るクオン。そして背後からミルカがハント!
「手元が狂うのも仕方ない!」
膨らみを鷲掴みにするミルカに、カナタが絶叫。
「これは私が仕掛けるはずだったのにぃ!!」
「先手必勝!」
リボンを狙うミルカだが。
「足元がお留守~?」
ミセリアに足首のリボンを奪われ倒れ、カナタも巻き添えに。ノリでダイブするクオンと騒ぎにコッソリ混じるミレイ。
「んむ」
「む、離れろ……」
大混戦の中、クオンの背中に張りつき完全防御のミレイ……そのままタイムアップ!
「逃げ切った……」
ミレイはさりげなく最も多いリボンを掲げた。
「男の約束じゃ、命令には何でもしたがうぞい」
頷くペインにミレイが応えたのは。
「思い出が欲しい……皆で打ち上げ、しよ?」
刀響の面々がまたも皆で騒ぐのは、後のお話である。
「ボサ犬、何故そんな暑苦しい格好を……」
「ノリよ!」
尾びれで仁王立ちした鮫……の着ぐるみ着たコルチカムに対して、巨大な葉の陰に隠れるリブレ。
「ホットドッグになってしまえ……どこ行くです?」
川へ入っていく彼女は、ニヤァ。
「ナマズの蒲焼って美味しいんだけど、アンタが来ないならここらのナマズは独り占めね!」
「何故それを早く言わないです」
飛び蹴りで鮫を蹴り倒し引きずるリブレ。
「馬鹿舌のボサ犬に絶品料理なんてもったいない。私がいただきます」
「ちょ、待って、顔に水がっ!?」
凸凹狩人は獲物を求めて水の中へ……。
「なんで俺がこんな事……」
日陰に座り込む睦之がボソリ。
「おじさまも楽しんでますか? 愛、とっても楽しいです!」
川の中で無邪気にはしゃぐ愛へ、睦之は一言。
「あちぃ……」
気怠そうにため息をつき、ポケットを探れど煙草はなく舌打ち。
「……足、滑らせんなよ」
「はい、けがしないように気をつけますね」
太陽のような笑顔を前に、煙草を恋しく思いながらも腰を上げようとはしない睦之なのだった。
「だーんちょー!」
際どいビキニで胸を上下させ、静夏が手を振るのは回天。
(葉月の水着……超似合って、るっ!?)
デレッとする回天に水を飛ばす静夏だが、回天とて負けていない。
「オラオラウォーター! ラッシュの如く水をかける必殺技!」
「こっちも必殺技!」
静夏は派手な水柱を上げて回天をずぶ濡れに、その反動で水着がシュルリ。
「きゃ!?」
慌てて胸元を隠す静夏に、回天がタオルをかける。
「団長さんは水もかけるがタオルもかけてあげれる紳士なんだぜ?」
彼は静夏を庇うように連れていくのだった。
「ヴァルカンさんも早くっ」
川へ駆けていくさくらにヴァルカンが苦笑。彼に水を飛ばす彼女の脚が、水に攫われる。
「ひゃっ、ここ深いっ!」
「っと!? だ、大丈夫か?」
ヴァルカンにしがみき、恋人の温もりに心臓が早鐘を打つ。けれど鼓動が高鳴るのは、彼もまた同じ。
離れる二人はそれぞれ子ども達と遊び始めるが。
「あのおにーちゃんはね、強くて優しくて、ピンチの時には守ってくれる、おねーちゃんの王子様なの」
「夫婦ではないのだが……いつか、そうなりたいと思っている……彼女には内緒にしてくれよ?」
子ども達と語り合う内容はお互いの事なのだった。
ロディはエリティエールのビキニ姿に感動。
「楽しみにしてたけど、想像以上……!」
「涼しくて気持ちいいですね!」
ロディも川へ飛び込んで二人で泳ぎ、水面を叩く。
「やっぱりはしゃいじゃいますね! ロディさんが一緒だからますますです!」
嬉しくもこそばゆく、ぷいっ。
「ここまで楽しい気分になれるのは、やっぱ好きな人と一緒だからなんだろうな」
照れくさくも、ロディは向き直る。
「これからもよろしくな、エリィ!」
「はい! ずっとずっと、一緒にいたいです!」
彼に飛びついて大きな水柱をあげるのだった。
ジゼルが細い筒から膨らませるのは虹色の球体。
「ふふ、気に入った?」
専用のストローや液を配り、更には特殊な玩具も用意。降り注ぐ小さなシャボン玉に子ども達の目が輝く。
「さ、大人も寄っといで」
また遊べるように保護者達にシャボン玉の作り方を伝授するジゼルなのだった。
川辺にエルルの歌声が響く。穏やかなせせらぎのように繊細な音色に、優しい声色。皆遠巻きに耳を傾ける。一人だけど、孤独じゃない、幸せな一時を……。
●
砂浜にも番犬はおり、莉緒もその一人。
『楽し、い、です……♪』
人形を口元に、莉緒は砂の戯れにいそしむ。
「ふふ、莉緒くんお上手です……」
母のように微笑み、イリアが反対から砂山に手を通す。
『通っ、た……ひゃっ!?』
莉緒の頬に冷たい物が触れた。
「熱中症に気をつけなさい」
『あり、がと……♪』
不機嫌そうなクロエだが、心中はこちら。
(あーもー可愛いっ! 熱中症で倒れたら、私が口移しで飲ませてあげちゃう!!)
そんな本音を知るイリアが微笑み、莉緒がけぷ、とボトルから口を放す。
「やっぱり莉緒くん可愛いです……っ♪」
「ホント可愛いっ」
『あうっ……!?』
二人に抱きしめられ、谷間に沈む莉緒なのだった。
砂浜の一角に砂の城が建築中。自身とみんなの部屋を作るメアリベルの設計に基づいて、シロンは相棒が入れる部屋を作り始める。
「インドでもスタイルのいいお姉さんがいるんだニャあ……」
通りがかった女性に見惚れるシロンの視界が、メアリベルの笑顔で埋め尽くされる。
「ミスタ・バルザックは胸の大きな女性がお好きなの?」
「え、あ……」
シロンを押し倒し、大量の砂を被せて何かを造形。
「夢を叶えてあげたわよ、メアリってばとってもいい子!」
首から下が巨乳美女に! この日の為に水着を新調したのに目移りされては悪戯したくなるのが乙女心。
「さあ、さっきの女性とメアリどちらが魅力的かしら?」
「メアリベルさんの方がかわいいから! 許してニャー!!」
プライド・ワンが砂をかきあつめ、真理が城の基盤を作る。その隣でマルレーネが無表情ながらも、どこかキリッとした雰囲気。
「砂にコーンスターチを混ぜると長持ちするよ」
「おぉ、本当だ!」
やがてできた西洋風の煉瓦造りの壁に、インドの寺院のような屋根。二人は城を挟んで記念撮影。思い出を記録に残し、城を眺めて肩を寄せ合う。
「……こういうお城に、いつか二人で住めたりしたら良いですね?」
「うん」
微笑んでくれる恋人に同じ表情は返せないけれど、マルレーネは幸せそうに頷いた。
「さて……休憩所を開いてみましたが……」
心優はクーラーボックスに頬杖をつき、ため息を一つ。
「とても……暇です……」
そんな彼女の隣、エルルが心優の為に旋律を紡ぐ。が、エルルは演奏の集中力により一般人を近づけない雰囲気を纏っており、心優がそれで誰も来ない事に気づくのは、もう少し後の事である。
「あなたの関心を惹くために、ビキニを買ったわけじゃ……ない」
顔を背けるノーザンライトの大胆なビキニを見てクスクス笑うフィーユ。
「う……」
照れて砂を集め始めるノーザンライトの指先がフィーユの指に触れる。もっと触れたくて隣に寄るも、恥ずかしくて離れて。そんな彼女をフィーユは愛しげな瞳で見つめていた。
やがて完成した砂の魔王城からチラと覗くノーザンライト。
「綺麗……誰かに譲るとか、絶対嫌……」
「安心して良いですわ、ノンちゃんから離れませんから♪」
フィーユは彼女を抱きしめて、幸せそうに笑う。
「あぅ……」
離れたくないけど、赤面を指摘されたくもなくて。
「城、完成できるかな」
「二人ならきっと出来ますわ♪」
そっと、二つの影が交わった。
●
「さすが外つ国。何もかもが新鮮です」
鼓太郎は感慨深げに頷き、準備運動するなり駆けていく。
「私は……もう、ダメだ……」
生まれが曇りの多い国であるカジミェシュはKO済。
「カミル、日焼け止め貸しましょうか?」
「ありがとう……これできっと、大丈夫だ」
彼に日焼け止めを渡し、アイラノレはゆったりと水辺を行く。ふと見ると、鼓太郎がシャチフロートに乗ってぷかぷか。
「……えいっ」
ゴロン、どっぽーん!
「こらー! アイラさんの悪戯っ子ー!」
川に落ちた鼓太郎が報復攻撃、しかし強力な水の反撃に振り向くと、水鉄砲を構えたカジミェシュ。
「二人とも楽しそうじゃないか。私も混ぜてくれたまえ」
三人の間で、水かけ合戦が始まる。
エフィーはリーズレットに髪を結われ、胸に手を添える。
(何故だ、嬉しい気持ちが溢れてくる……)
答えを出す前に、リーズレットが手をブンブン。
「ゼノさん! 浮き輪固定しててくれ!」
それはフラミンゴっぽい大型の浮き輪。
「ゆっくりと乗るのだぞ?」
端っこを支えるエフィー。リーズレットは慎重にストン。
「念願の浮き輪乗り! ゼノさんも次やる?」
「私がか?」
リーズレットの隣に座り、流れ始めるフラミンゴ。遊覧浮輪を楽しんだら、浜でリーズレットは手作り弁当を広げる。
「大して手はかけてないが……どう?」
「美味しいよ。毎日食べたいと思えるくらいに、な」
「やたっ! お腹を満たしたらまた遊ぶぞー!」
照れ気味に水着姿を披露する涼子にバジルが微笑む。
「涼子さんの水着、良く似合ってますよー♪」
「そ、そう? えへへ……じゃ、夏を満喫しちゃうんだよ!」
バジルの手をとり水へ入る涼子。
「涼子さんはどんな泳ぎ方が得意でしょうか? 僕はクロールが一番速いですね」
「お、その質問は勝負のお誘い? ……まー、さっき泳いできたところだからもうスタミナないけど!」
「おや、そうでしたか。ではゆるりと……」
二人のゆったりした時間が流れ、思い出の一ページが刻まれていく。
「ぜ、絶対に、放さないでくれ!」
ルークが浮輪をつけてチャロットに両手を引かれる。
「大丈夫、五m泳ぐまでびしびし鍛えちゃうからね」
五m……るーきゅん……!
「あ、足がっ!」
「足付かなくても焦っちゃだめー」
姿勢が崩れるルークに対し、ゆらゆらと浮かぶチャロット。
「た、助けて……チャロットお姉さん……!」
「えっ?」
その一言にチャロットは破顔。
「お姉さんに任せなさい!」
胸を張るチャロットだが。
「ふぎゅ!?」
「ぎゃぁああ!?」
そら沈むわな。
「う、浮き輪がなければ死んでいた……!」
チャロットに手をとられ、沈みかけるルークなのだった。
「水泳は不慣れで……教えてもらえると嬉しい」
水着姿で目を逸らす沙葉と、水着に紫シャツを着てる凶。
「では、基礎から?」
沙葉の腰と肩を支えて、逆お姫様抱っこ。
「四夜、その、背中は……」
背には大きな刀傷。察した凶は微笑む。
「女の子ですものね。でも、気にすることないと思いますよ?」
「う、うむ……」
沙葉は水に顔を沈め、凶が彼女を水上へ。
「まずは顔を上げましょ?」
「わ、分かったから戻してくれ……!」
少し強めに抱きしめられ、空中でジタジタする沙葉を水に戻し、バタ足。体の基礎はできている、知識さえ与えれば泳げるのは当然だった。
「世話になってしまったな……ありがとう」
微笑みをかわす二人。この後凶を悲劇が……。
●
【KHD】の面々は、ほぼ全員が水鉄砲装備。
「はいはーい、どうぞどうぞ」
通訳に唯奈の言葉を伝えてもらい、子ども達に水鉄砲を配る。
「まずは……練習……」
アリアの生み出す薄氷の的が宙を舞い、子どもたちに狙わせるが、唯奈の周りは高速移動。
「これを撃てと!?」
狙う唯奈と制御するアリア。二人まとめてバシャン! 視線の先には高笑いする昌親。
「纏まっていると俺の餌食だが……宜しいかね?」
しかし弾切れ。長い注水中に迫る影。
「ばしゃーん」
氷の盥から凍結寸前の水が昌親を襲う!
「冷たっ!? お、覚えていろよ、装填が終わっ……」
昌親に、唯奈が子どもたちと水鉄砲を突きつける。
「やっちゃえー!!」
「待って数の暴力は酷過ぎぐぁあああ!?」
的役として逃げる青いビルシャナことビスマスがトテトテ、追い回す子どもたちが水鉄砲を放つ。
「わー! 助けほぶっ!?」
「いくぜぇ!」
二挺水鉄砲のさやかがビスマスを狙撃&追撃、一緒になって子どもたちも狙い撃ち。
「見事な腕前じゃねぇか!」
子どもの頭を撫でるさやかの前で、ビルシャナの外装が大型拳銃へ。
「わたし達も受けて立ちますね……なめろうフルバーストっ!」
五本の水がさやかを襲う!
「ぶっ!?」
強烈な反撃に水浸しのさやかは豪快に笑うのだった。
「合戦と名が付く以上は容赦いたしません」
紺の放つ二挺拳銃を前に、間をすり抜ける影士。距離を詰められ、後退する紺に合わせて飛び退き、射程から逃れ……空中で撃墜された。
「さすがに全部は避けきれないな」
浜に転がる彼の視線の先、見事に撃ち抜いたファティマが得意げに薄く微笑んで……伏せる。その上を水の弾幕が駆け抜けた。
「意識高い装備の面々が多いなあ」
くすくす笑う玲央だが、得物は電子制御の機関砲。満面の笑顔で辺り一面を薙ぎ払う彼へ水風船が投げ込まれ、頭からバシャア。
「俺の武器は水鉄砲だけじゃないぞ?」
水風船を弄ぶゼフトへ駆けてくる子ども達へゴムをくくり、ヨーヨーにして渡してやる彼の背後で、ガコン。
「私に当てたね、なら更に受けてもらおう♪」
「待て、今は卑怯……」
バシャシャシャ!
「あたいの的を水で崩した奴は西瓜をやるぜ!」
「巨乳は消毒だァーーー!!」
狐っぽいコスに油揚げ型の的を掲げる流華めがけて、ガドが半ば狂いながら襲いかかる!
「火力こそが正義です!」
更に両脇に機関砲構えたエルディスも援護。
「オイオイ、手加減しなくて良いんだぜぇ?」
避ける流華の胸がたゆん。ケイトはガション、と水鉄砲を構えた。
「さぁ、戦争でございます……!」
流華のおっぱ……もとい、心臓を狙う殺し屋の目で踏み込むケイトに、ガドが並んだ。
「巨乳は殲滅だァーーー!!」
「あの巨乳を狙うでございます!」
「さぁ、どんどん撃ちまくるのです!」
ばら撒かれる水の弾幕に、子ども達の数頼みの一斉射撃。さすがに油揚げもポロポロ。
「お覚悟です!」
この乱戦を潜り抜けた菜々乃が背後から発砲。流華の顔面を強力な水圧が襲う!
「……あっ」
硬直する菜々乃の目の前、水滴が流華の頬を、首を、鎖骨を滑り……胸の谷間の中へ。
「巨乳なんて、巨乳なんてなぁ……」
「泣くな、泣いたら惨めでございます……!」
二人の戦士が涙を飲むのだった。
「凶に水をかければいいのね」
「へ?」
パァン! 吹っ飛ぶ凶に向けて水と風の第二球を構えるアーティアに子どもたちが寄ってくる。
「もう一回見たい?」
微笑んで第二投、投げた!
「ぶっ!?」
顔を出した途端に再び沈む強面。
「かけまくっちゃうよー!!」
追い討ちの如く勇華のストレートな水流がシューッ!
「ほらエーくんも!」
「オッケー!」
勇華に重ねて威力二倍! 倒れる的をから子ども達へ振り向く二人。
「次はー、君たちだー!!」
真正面から水鉄砲を乱射する勇華に対し、翼を広げて飛び立つエーゼット。頬を膨らませる子どもたちに彼は苦笑。
「ずるくないよー……そういえば、凶は飛ばないの?」
「あっ!?」
蒼炎を背に水から飛び立ち……撃墜されてどぽーん。
「にゃははっ! ごめんね、凶!」
翼を撃ち抜いたコルティリアが銃口を上げた。
「でも水だし、ちょっとだけ我慢してね?」
「凶の癖に私を放置するなんて生意気だよ!」
銃口を向けるユキの前に小さな影が滑り込んだ。
「一発も狙わせんでっ」
水鉄砲を構える小鉄に、不敵に笑うユキ。同時に走る間合いは射程ギリギリ。
「番犬ちゃうのに、やるのっ!?」
やや前方を撃って直撃を狙う小鉄に対し後方に向けて跳ね、すれ違い様に撃つユキだが、小鉄は身を捻り避ける。
「きょーちゃん、かくご、ですー?」
「しもた!?」
離れた隙にシェスティンが強襲。注意が逸れた小鉄の背後から迫る影。
「ゆくじょー、くら……」
「ふぎょ!?」
「えー……?」
フェリアの豪奢な姿に驚いた小鉄が脚を滑らせどぽーん。獲物を失った彼女はそうじゃない感にショボン。
「きゃっ!?」
続けてシェスティンが沈み、お子さま二名を凶が抱き上げる。。
「すまん凶……俺、ここまでみたいじゃけん……」
「小鉄―!?」
小鉄がカクッ、そして。
「油断大敵、です!」
反対から零距離射撃。驚き三人仲良くドボン!
「支えるならしっかりしろじゃ!!」
「びっくりした、です……!」
二人にペチペチされる凶の前にアンジェラが立ちふさがり、ユキに水鉄砲を向ける。
「人を濡らすことができるのは、自分が濡らされる覚悟がある人だけ、です!」
「あるよ! だからこその水着だもの!」
胸を張るユキ。『普通は』二つの膨らみが強調されるが。
「……貧乳なんだから、無理すんなよ」
親心的な視点で苦笑する凶だが。
「今……何かおっしゃいまして?」
何という事でしょう。ユキ小隊には紫縁というツルペタビキニがもう一人いたのでした。
「わたくしの聞き間違いですかしら……ねぇ、聞き間違いですわよね」
末路を察した彼は小鉄とシェスティンをそっと逃がす。
「ユキ様……合わせてお願いいたします」
「オッケー!」
二人の絶壁乙女が砂を踏みしめた。
「我のどこが貧乳か馬鹿者! ちょっとないだけであろうがぁぁぁぁ!!」
「これでも大きくなったんだからぁ!!」
「ごっふぅ!?」
水鉄砲(物理)で宙を舞う凶。どぽーん、ぷかぁ……な彼をアンジェラが引き上げるが。
「今度こそ水鉄砲アターック!」
その背から迫るフェリアに、振り向く。
「そんなに目立ってたら、後ろでも分かる、です!」
そして。
「こちらフェリーク、大佐、すまない……!」
敬礼しながらパタリ。
「ひゃぅ!? あっ、あっ……!」
思いっきり水を被ってぺたん。まさかの相討ちである。
「もう守ってくれるお友達はいないね?」
ユキが指を鳴らすと、はるか上空に一機のヘリオン。
「うむ、インドの水鉄砲は格別じゃな」
スコープを覗くケルンが構えるのは速射水鉄砲と大容量タンク。もはや兵器である。
「逃げる奴は凶兄様じゃ! 逃げない奴は訓練された凶兄様じゃ!! ガンホー!!」
上空から降り注ぐ水の弾幕に、悲鳴が響き渡った。
「ほら、ちゃんと拭かないと風邪引いちゃうよ?」
「あ、でも、らめっ、耳は弱いの……!」
「だよね、くすぐったいよね……!」
人型のコルティリアはユキの頭をモフモフと拭いてやるのだった。
作者:久澄零太 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月11日
難度:易しい
参加:68人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 8
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