金蚕

作者:baron

「蟲毒というものが、毒の洗練や寄生虫だというのは判る。ここで疑問になってくるのが、後の金蚕である……と」
 男が机に向かってペンを走らせていた。
 机の上には、当然ながらノートを始めとした筆記用具。
 そして……ガラス製の虫籠が鎮座していた。中には色鮮やかな緑色の繭がある。
「この金蚕に関して、蟲毒の一種だとか不明とされているが、幾つかの説を立てて、ネタにしてみよう。1つ目はこの天蚕の様に、時代の変遷で忘れさられたモノ。2つ目は日本と中国で鬼の意味が違うように、意味が異なる別のモノ。3つ目……」
 男は小説家か何かなのだろう。
 脇に置いていた虫籠に目を向けた後、ノートに色々書きこんでは、ゴシゴシと斜線で消したり、その上から丸で囲んで再利用したりする。
 そして、ノートというよりはメモ書きと化した紙片の上から矢印を引っ張って来た。
「3つ目はこれらの技術を伝える、渡来人とするか! よし、良いぞ。かなりアイデアが固まって来た。矛盾と驚きを両立させるためには、この辺を伏線に……誰だ?」
 秘密の・洗練された・レアリティの高い技術で、金を稼ぐ。
 雇い人であるなら、精算が……と次々に書きこんだあたりで、書き物に没頭していた男は振り返った。
 そこには……。
「随分と興味深そうですが、面白いのですか? 私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 フードを被った女が、鍵を手にしてこちらを見て居た。
 そして感情を載せない表情のまま、鍵を物書きの心臓に突き立てたのである。
 男が崩れ落ちると、そこには鮮やかな碧の繭が存在していた。
 繭はドクドクと高鳴るように鼓動していたという。


「不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が、このところかなりの範囲で起きているようです」
 セリカ・リュミエールが、幾つかのレポートを手に話始めた。
「この事件でも『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようですが、奪われた『興味』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターにより、事件を起こそうとしているようですね。生まれ出た怪物型のドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい」
 セリカはそう言うと、類似例のレポートの他、新しい事件の起きる地図を隣に置いた。
 そして三枚眼に白紙のメモを並べると、ペンを取って絵を描き始める。
 このドリームイーターを倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるでしょう
「敵は今にも孵ろうとする緑色の繭で、天蚕または山繭と呼ばれるモノに似ています。このドリームイーターは、自らが何者であるか質問し、異なる姿の幻影を見せる用です」
 セリカは繭の絵を描いた後、3つの図を付け加える。
 1つは蛾、2つ目は鬼、3つ目は旅人の様な姿。
「そのまま戦いになりますので、大きな差は無いのですが、相手の対応が多少異なるようです。うまく扱えば、有利に戦況を左右する事が可能でしょう」
 そしてメモの隣に、異なるポジションを記載して行く。
 蛾ならジャマー、鬼ならクラッシャーというように、説によって立ち位置が変わるらしい。
「興味を奪うことだけでも問題ですが、それを使って他の人々を虐殺するようなことは到底見過ごせません。是非ともドリームーター退治をお願いしたします」
 セリカはそう言うと、地図やメモ書きを手渡し、出発の準備を始めるのであった。


参加者
朔頼・小夜(東天紅に浮かぶ月・e01037)
ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)
アトリ・セトリ(緑迅疾走・e21602)
キルスティ・キトゥン(災猫・e27775)
北條・計都(神穿つ凶兆の星・e28570)
レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)
セレンフィール・セイツェマン(デュナミスの残照・e29009)

■リプレイ


「そういえば蟲毒って?」
「一口に毒と言っても鉱物・植物・生物の三毒に分類されるが、生物毒の一種で主に昆虫を使う」
 敵が居るとされる家を目指す間に漏らした、アトリ・セトリ(緑迅疾走・e21602)の質問に、後ろから声が掛った。
「蒸留技術の無い時代でも同種同食の暗黒面、共食いによる精錬が『古代における』蟲毒だ」
「古代において?」
 ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)があえて前置きを置いたことで、アトリはその続きを尋ねた。
 材料的にも毒と言うより、染料の作り方を聞いている気がする。
「中世に時代が下ると、常設の生贄をコストに、富をもたらす良い面もあるとされた。呪術は白黒を兼ねると言うがね」
「伝奇小説だと、相手に押し付けるのは嫁金蚕とかあったかな。説は沢山あるけどね」
 データベースから呪術の知識を引きだすジゼルの言葉は、実にレプリカントらしい冷静な物言いだ。
 レスター・ストレイン(デッドエンドスナイパー・e28723)はその様子にウイッチドクターというより探偵だな、と思った。
 話題の方はますます染料か何かの様で、放っておけば虫や幽鬼を使うのではなく、戸籍の無い浮民や移民を使った暗殺と労働とか言いだしかねない。
「ふーん。それで姿が一定してないんだ。回答によって姿を変えるなんて面白そうだね。自分は誰か、ね」
「己が何者か……難しい問いだね。咄嗟にそう問われても答えは出ないけど、それでいいんだと思う。……己が何者かだなんて他人に決めつけられるものじゃない」
 話を聞きながらアトリは虫という単語が出るたびに嫌な顔をし、翼猫をモフって気を紛らわせる。
 レスターは気の無い返事には気がつかず、『符蟲道という術の一種で、古代では……』と何かの小説を思い出した。
 彼の肌に刻まれたソレと同様、蟲を使った古代の術かと思うと心が少し昏くなる。
 気を紛らわせるために、お気に入りの誌を口ずさむことにした。
「(自らが何者か……面白い問いだ。もっとも、それを他人に求めたところで正解など無いだろうが)」
 その様子を声も無く眺めながら、ジゼルは苦笑して敵を見つけることに専念する。

 しかし、それも遠い話では無い。
 なにせ敵の初期状態は繭、家から動かない以上は言うほど時間が掛る事も無い。
「居ました。ドリームイーターとは初めて戦うのですが、なんとも個性的ですね……」
「ドリームイーターですかぁ~。コレは繭だけど黒幕がいて、それも魔女。たっくさん居ますね~」
 最初に北條・計都(神穿つ凶兆の星・e28570)が見付け息を呑んだとき、キルスティ・キトゥン(災猫・e27775)は楽しそうに笑顔を浮かべた。
「多分キルの知ってる人じゃないけど、まぁ仕事だしちゃっちゃと潰しちゃいたいですねー」
 キルスティはくつくつと笑いながら、歩くペースは変えずにブラブラ。
 質疑応答を兼ねた前衛を先に行かせるためだが、一度ペースを落とすと再加速に時間が掛るからだ。
 と言えば聞こえは良いが、単にキルスティがマイペースで動きたいだけかも。
「なるほど、何気なく不自然でない様に陣形を作り上げるわけですね」
 対象的に戦い慣れない計都は、妙な所で感心しつつ自身も習ってキャリバーを停車させるフリで後方に位置した。
 そして懐にしまった仮面の堅さを確かめ、いつ戦いになっても良いように待ち構える。


『ノゾミを叶えよう。汝の望みを我が前にシメセ』
 ドクン、ドクンと心臓の様に高鳴る緑色の繭。
 異様な大きさの繭は、不気味な声を放ってきた。
 問いに対し、二人の女性が颯爽と現われる。
「力、が欲しいの。わたし、と力比べ……しよ?」
 朔頼・小夜(東天紅に浮かぶ月・e01037)は先ほどまで抱えていた大鎌を、仙人の金剛力にも似た力でヒョイっと抱え上げた。
 殺意なくただ、ぼんやりと月でも眺めて居るかのようにノンビリと微笑みながら。
 超自然的な力の判り易い判例、彼女の答えにどう反応するのか? 
『チ、力が欲しいカ? チカラならば……』
「力ってのは強くないと意味がねぇ。あたしは力も強さも戦いも大好きだぜ? ……さぁ、おめーはどんな強さをあたしに見せてくれる?」
 繭が完全な反応を示す前に、シュリア・ハルツェンブッシュ(灰と骨・e01293)が牙を向く。
 力を求める者が辿りつく、具体的な希求する闘う強さを示し、ニヤリと獰猛な笑顔を浮かべた。
 その表情と力は弱さを力で覆い隠す為か? それともただ、楽しさを追求した結果で強くなったか?

 別種の力を誇示する二人は、互いが囮となるべく言の葉を舌に載せ、怪しき繭が変化するを待ち構える。
 いいや、少しだけ違う。
 一人目は軽く飛び出し、二人目を庇う為にその立ち位置を変えた。
『力が欲しいカ? ならば贄を捧げよ!』
「鬼さんこちら、手の鳴る方……へ鬼退治、ってやつ……だね」
 繭を内側から破って、異形の鬼が現われる。
 そこへ小夜が割って入り片手で金棒を受け止め、まとった幻覚が解れると、金棒も束ねた糸に代わって行く!
 優れた戦闘力を持つであろうシュリアを狙ったのか、それとも単に消去法で一番になれるからと判断したのか判らない。
 いずれにせよ、戦いは始まったのである。
「さぁ、……骨の髄まで楽しもうぜ? 骨の髄まで楽しめば待つのは灰となるだけさ!」
 シュリアは弾丸に限度を超えるグラビティを込め、黒煙すらあげる一撃を放つ。
 空を裂く黒き煙は、世界を焼き焦がす煉獄の炎の道だ。
「援護は任せて下さい! ―――来ます!!」
 セレンフィール・セイツェマン(デュナミスの残照・e29009)はロッドで法陣を描き、トンと息(意気)を放った。
 吐き出した言魂は、雷鳴と成って仲間達を包む。
「この力をもたらしたのは奪われた感情だとか。興味……好奇心は時として災いを呼び込むと聴きます。それでもせめて、ケルベロスの一員として被害者を救わなければなりませんね」
 セレンフィールの放った雷は、彼女の決意と共に防壁となった。
 例え遠因があったとしても捨ててはおけない。ならば罪も無い今回の犠牲者ならばなおさらではないか。
 そう思えばロッドを握る手にも力が入る。もう……誰も失うだけの道など、進ませたりはしない!
「(あんな小さな子まで必死になって……。このままでは何も守れない、あの人に届かない……だから、俺の強さの礎になれデウスエクス!)」
 決意に満ちたその姿に、計都は思わず拳を握りしめた。
 先のローカスト・ウォーで痛いほど分かった。……自分は弱いと。
 だがそのままなのか? 小さな子すら頑張っているのにと、今までの自分を乗り越える決意を固める。
「見せてやる、俺の精一杯を……!」
 フードを下ろし懐のマスクを装着すると、計都はキャリバーと共に一気に走りだした。
 地面すれすれを滑空するツバメの様に、鋭い踏み込みの蹴りを放ったのである。
「おーう。みんなノリノリだねっ。さぁて鬼退治しますかにゃー」
 ペタン。
 キルスティは猫の手型の障壁を、自分の周囲に創り出した。
 猫の手も借りたいと言うが、流石に貸してはくれない。
 だからこうして……突撃の前に張っておくのである。
 何しろ戦いは、始まったばかりなのだから。


『ニャッハー!』
 キルスティは駆けだした後、腕に付けたワイヤーを伸ばす。
 ソレは猫の手を形をしており、庭の木をしっかりホールド。急激にワイヤーを巻き上げることで横から上へ変化した。
 アッパーかと思うほどの勢いで膝蹴りを放ち、そのまま一回転してカカト落しを決める。
「鬼退治か……。鬼退治など、柄でも無いがね。だがしかし、放置はできまい」
 ジゼルは規則正しい足取りで前に出ると、仲間達の周囲に重力の鎖を伸ばす。
 本来は見えないはずのソレは、セレンフィールの雷を揺らめかせることで、一時的に姿を現した。
 そしてステッキ……いや折り畳んだ鎌を展開すると、斜に構えて攻防一体の構えを見せる。
『か、雷? ならば堕ちよ神鳴り!!』
「力には技で翻弄する。一発が重い分、隙が大きいね……そこ!」
 仲間が張った結界に、音もなく稲妻が落ちる。
 弾かれるたびに金色の粉が飛び交い、その隙間を縫ってアトリは流体金属で拳を作り上げると殴りかかった。
 そして態勢を入れ換えると、仲間達の攻撃に合わせて今度は下段回し蹴りを放つ。
「繭を破って出てきたものが鬼で良かったかもね。虫だったらと思うと……ゾッとするよ」
「繭から生まれるのが鬼だなんてぞっとしないね。俺の……」
 アトリが苦笑するのを見て、レスターは言葉を呑みこんだ。
 そして自らの実を焼きそうなほどの炎を熾すと、ライフルの銃弾代わりにありったけ詰めこんだ。
「(俺の背中にも蝶を模した光の翅がある。繭から孵化したのが蝶なら空を高く飛べたのに、そうじゃなかった。少し鬼が哀れになる、でも手加減はしないよ)」
 言葉には出さずレスターは呟くと、緋色の光線を放って鬼の形をした幻影を薙ぎ払って行った。
 繭から生まれたのが飛べない鬼。それはある種の幻影ではあるが、本体は本体とて殺されて毒となるのだから飛べはしない。
 そんな的に僅かな同情を抱きながらも、迷いをかき消し、そして哀れな敵の苦しみを終わらせる為にも決して手は抜きなどしない。

「随分と揺らいでるじゃないか。お前がなりたいのは悪役の赤鬼か? ……それとも、泣き虫の青鬼かな?」
 シュリアは悪業にまみれた鬼と、友人の為にあえて悪役と成った哀れな鬼の逸話を思い出していた。
 蟲毒に使われる虫達に罪は無いし、所詮は技術、白も黒もあるまい。
 全ては受け取る人の心次第だとか思いながら、今は闘うだけだと専念する。
「いずれにせよ、あとは一心不乱に蹴散らすのみだぜ! 痛みを感じる前に終わらせてやるぜ」
 どちらにせよシュリアは手加減などしない。
 両手に構えたガトリング砲をぶっ放した!
 周辺全体をぶっ壊せる量の弾丸を、殴られたにも構わず、鬼が居る方向に集約して放つのである。
 とうてい避けられるはずもないではないか!
「間にあわなかった……。なら、癒しの雨を……」
「一気に治療しましょう――祝福あれ」
 小夜の降らせた薬剤の雨を、セレンフィールが左手に込めた光が彩る。
 煌めく空には虹が射し翼猫の清らかな羽が飛び交い、傷ついた前衛陣を癒し始めた。
 それは心も体も浄化し、いにしえの呪術の災いを退けるかのよう。


「あんがとよ。どうだ、あたし『ら』の強さと力がわかるか? てめえにもあるなら、あたしにも見せてくれてもいいんだぜ!?」
「黒幕が援護して来るならそれもいいですにゃー」
 シュリアが顔についた血を拭き取りつつ再び黒煙弾を放つと、まるで猫が飛んでる物を追いかけるようにキルスティも追随した。
 爪先にグラビティを込めて叩きつけ、空いた手で招き猫の様に敵を挑発する。
「そうか、黒幕が援護しに来てくれば……いや。俺は俺に出来ることをする! せっかくここまで追い詰めたんだ!」
 計都は咆えると己の迷いを振り切り、一点に向かって連続で撃ち込み始めた。
 流石に全弾ワンフォールショットとはいかないが、それでも諦めることなく、愚直に同じ場所を狙い続ける。
「そうそう。だいぶ削れてきたかな? でも避けようったってそうはいかないよ!」
 彼に協力して銃弾を撃ち込んで居たアトリは、先ほどまで使っていたナイフを仕舞い、終局に向けて走り出した。
『裂けろ幻影、塵も残さず朽ちて逝け!』
 アトリの足に赤黒い血の様な影が隠れ、蹴りあげた瞬間に、三層の刃と成って襲いかかる。
 だがそれだけではない、反動で繰り出した二撃目にも追随し、鬼を切り刻んで行くのだ。
 下降時に放つ三撃目を放った時には、足元には血にも涙にも見える麟粉が零れて居た。

 完全に敵を取り囲み、ケルベロス達は逃げることを許さない。
 いいや、ここで逃げられては失われた興味を取り戻せない、だからこそ逃がすわけにはいかなかった。
「いつもは恋愛小説を読むけど……傑作が書かれる前に未完で終わるのは一読者としても残念だ。だから必ず助ける」
 レスターは痛む心に鞭を打ち、自らの肉を抉るように爪を立てた。
 その指先は刻み込まれた隷属の痕に辿りつき、刻み込まれたタトゥーは容赦なく魔力を引きだして行く。
「金、力、技。どれも生きていく上で欠けてはならないものだ、それは否定しない。でも一番大切なものを忘れてるよ。それは……『心』だ」
 彼の心臓、五行を束ねる回廊より連なる魔力の回路。
 それは痛みを越えるつらい記憶すら呼び起こすが、それを意思でねじ伏せてレスターは刺青を鬼に転写した。
 一瞬幻の力がかき消えて元の繭に戻るが、おそらくは誰からも必要とされないことがトラウマなのだろうか?
 毒として殺されるのも地獄、煮て絹糸になるのも地獄、しかし忘れさられることが何よりの地獄かもしれない。
「詰みだ『parallel processing……起動。』残るは数手も必要としない」
 ジゼルは逆襲に来るところを投げ飛ばし、重力の縛鎖を手繰り寄せ、離れたはずの距離を一気に詰める。
 柔術と大鎌を併用した武術を繰り出し、体力ではなく、命運を切り取った。
「もう、苦しいのは此処で終わり『戦女神…貴方の吐息を白き闇に…』トドメを……」
 小夜は戦女神を降臨させると、その慈悲深き吐息で眠りにつかせた。
 全てが凍る真白き世界の中を、全てが冴え凍り、何もかもが終わったのである。
「あの、怪我をされた方はおられますか? でなければ、被害者の方を……」
「おっけー! 衰弱が酷いなら救急車呼んであげましょうよ。やることやったら帰りましょ」
 おずおずとセレンフィールが尋ねると、キルスティは帽子を天に投げてふかりと被り直した。
 既に傷の治療は終わっており、誰かの連れて来た翼猫がウンウンと頷いている。
「んじゃ、外を軽く見回ったら帰るか。……色んな事に興味を持つことはいいことだ、だが、自分の一番の目的を忘れんなよ」
「あ、ちょっと壊しすぎましたかね。すみません」
 シュリアが誰ともなしに呟いた言葉を、計都は自分の事だと思って自分が壊した屋敷を中心にヒールを掛け始めた。
 これでは助けに来たのか壊しに来たのか……と焦る彼の肩をシュリアはバンバンと叩いて楽しそうに笑う。
「そういえば、助けに行くなら何を書こうとしていたのか聞いてみたいね」
「そうだね。創作の構想を聞くのは悪くないかな。流石に後書きから読むようなことはしたくないけど」
 アトリとレスターは連れだって、そんな風に小説の内容を想像し始めた。
 逃亡奴隷を匿ったつもりが謎めいた移民の少女で……と連続殺人事件の話を聞いたのは、もう少し後の事である。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 2
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