●ケルベロス大運動会
度重なる「全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)」の発動により、世界経済は大きく疲弊した。
この経済状況を打破する為、おもしろイベントで収益を挙げようという事に。
そして企画されたのが、ケルベロス大運動会。
だがケルベロス達に通常のダメージは効かない。
そこで、世界中のプロモーター達が、危険過ぎる故に使用できなかった「ハイパーエクストリームスポーツ・アトラクション」の数々を持ち寄り、開催国の各地に、巨大で危険なスポーツ要塞を造り上げたのだ。
その栄えある第1回ケルベロス大運動会の開催地は――『インド』だ。
世界からの挑戦――インド各地に用意されたアトラクションはケルベロス達の挑戦を待っている。
●スペシャリテ
「ケルベロス大運動会の当日、日本とインドの国際交流の一環として、ケルベロスによる日本屋台村を運営する事になったんだけどねー」
料理の腕に覚えがある人、いるー? と夜浪・イチ(サキュバスのヘリオライダー・en0047)はその場にいたケルベロス達へ尋ねた。
日本屋台村は四つ設置される。そのうちの一つについて話をしたいのだと。。
「料理上手さんとか、面白い企画とかそういう案がある人は声かけてほしいんだ。屋台村の……あー、これは屋台と言って良いのかってのもあるけど」
と、言うのも。
イチが募っている屋台村の客層は『インドの有力者や、運動会に招かれたVIP』なのだ。
警備上の理由から、あまり派手なパフォーマンスなどは出来ないのが欠点なのだが、その分味で勝負する事になる。
ちなみに1人分の予算は10000円~30000円程度だ。
「日本政府の協賛だから、食材の準備は日本政府が責任を持ってやってくれるよ。それに店長の人が競技に出ている間は、日本からきた料理人が代わりに仕切ってくれるから、運動会に参加する予定の人でも大丈夫」
一人での参加でもいいし、複数でグループを作ってもいい。友人同士や旅団の仲間と一緒になどそのあたりは自由だ。店に誰もいない時間もあるだろうが、政府からのフォローが入るし、得意料理などあれば気軽に参加してほしいということらしい。
「ただ、相手は有力者や海外のVIP……舌は肥えてると思うんだよね。だからちゃんとおいしく食べれるものをふるまうのが絶対のお約束」
そう言って、イチはさらに詳しく説明をする。
日本屋台村という事だが『日本食に限らなくても良い』こと。創作料理でも良く、和食というものにこだわらなくて良いのだ。
たとえばだが、地元のおいしい野菜、果物を使った料理やデザート。
郷土料理をふるまうというのもありだろう。
なお、ここの屋台村は客が選びやすいようにと食事部門、デザート部門、飲料部門と三つにわかれる予定らしい。
当然ながら食事部門が一番数が必要となる。デザート部門と飲料部門は少なくても問題はない。そういった店の数はケルベロス達の企画によって変わってくるだろうが、食事部門が多い方が好ましいとのこと。また、デザート部門と飲料部門は企画がなければ、無しとなるようだ。
そして屋台村が置かれるのは、招く人達が十分に満足してもらえる場所。宮殿を模したインドの超高級ホテル、その広い庭園にだ。庭園は芝生が生い茂り、低い木々が植えられ花々も咲いている。
調理ブースとなる店を庭園の四方に巡らせ、中心には客席用のテントを。
テントといっても、客席用のものは四方に支柱をたて、お洒落で高級感ある柄の天幕を張られたものだ。ゆったりと座れるようにソファやクッション、ローテーブルなどが用意される。また、ホテルの庭園に面した所はロビーとつながっており、テラス席もあるのでそちらも解放するとのこと。
ここを訪れた人々は自分の食べたいと思った料理をもらい、自分の隙な客席へと向かうことになる。
希望があれば、調理ブースと客席をひとつのテントにまとめることもできる。たとえば、流しそうめんをしたり、目の前で調理をしてすぐに食べてもらいたい場合だ。だが警備上の都合からあまり派手なことはできない。
「あと、これはとても大事なことなんだけど、インドっていう場所柄、牛肉と豚肉はダメって人もいるんだ」
そんなお国柄事情で、牛肉と豚肉は使う事ができないということになっている。その条件を含んだ上で上手に食事を作ってほしいのだ。
「世界中からくる人達に日本のおいしい物をふるまってあげてね」
そうそう、とイチは他のイベントについても付け足した。
前夜祭的なイベントとしてインダス川遊泳大会が行われる。速度や距離を競ったり、地元のテレビ局とタイアップしてパフォーマンスを競ったり、インダス川流域の住民と交流する事ができるようだと。
「ケルベロス大運動会の前日、8月10日に行われるみたいだけど、イベント終了後の、運動会会場までの交通機関は整備されてるから、運動会参加に影響はないみたい」
泳ぎが得意であったり、前夜祭から楽しみたいというケルベロスさんは参加してみてはどうかとイチは笑んだ。
「料理人さんたちも一緒に参加して手伝ってくれるし、皆が不在の時でも屋台村の運営については心配ないよ」
だから良かったらおもてなしも楽しんでね、とイチは言う。
楽しい大運動会になると良いね、と。
●たくさんのお店
会場となる超高級ホテルの庭園。準備万端であるその場へと人々を迎える時間がやってくる。
「インドでメイデンバーガー宣伝してこよって思ったけど……牛肉も豚肉も使えないじゃん!」
と言う芍薬がたどり着いたもの、それは。
「ぐぬぬ、でも私は諦めないわよ! 牛も豚もダメなら鶏肉があるわ。しかも、ドーンと高級フォアグラよ!」
和風の照り焼き風味で柔らかなバンズで挟み、付け合せに有明産の利塩風味のポテトとグリーンティー。
茶屋の娘風に着替えてそれをふるまえば、新しい味だと大人気だ。
日本の豊かな海の恵みにインドの風を添えて――と銘打ったGattaca。
「頑張れよ、営業部長!」
地デジは船頭スタイルで呼び込み任されたと鈍器をプラカードに変えお誘いを。
その姿を提案したアラタは可愛いと零す。隼もうんうんと満足げに頷いた。
隼は極上の海の幸を切り分け、舟形の器に持っていく。
ドライアイスの雲海を渡る舟に高級な海の幸。鯛や鮪、鮑や雲丹、イクラなどなど。
鯛の尾頭と菊の花を添えれば。
「日本伝統舟盛りの出来上がり!」
素材の味をそのまま楽しみたいならルイベで、日本の寿司の興味があるならそれを。
寿司は一口サイズの手毬寿司。土鍋炊きの米にワインビネガーと赤酢。砂糖加えに斬りで酸味を抑えた酢飯だ。
作る過程もアピールのひとつ。
「土鍋としゃもじが荒ぶるぞっ」
アラタは手毬寿司に色んな味を用意する。薄焼き卵の海老入り巾着と蒸烏賊は兎に見立て、花と野菜の細工切りも。
出来上がったそれを律が客のもとへ。産地などかいたリーフレットも用意し皆、珍しそうに、そして美味しいと喜んでいる。
その笑顔を目にして。
「『美味い!』って喜んでくれたら嬉し~よね」
国境を越える笑顔こそが何よりの報酬と隼が言うと律は確かにと頷く。
「隼君は好い事を言う……お代も勿論いただきますが、食を通しての交流も、重要な事です」
そしてお見送りも忘れずに。
「是非日本へお越しの際は当店へご予約を」
また別の美味しい物を振る舞いましょうといつかの来店の約束を。
インドも暑い。それならばさっぱり冷たい麺類が最適。
「麺は任された!」
と、リティアは一生懸命麺を打つ。
「そぉい! そぉい!!!」
飛び散る汗、力強い麺のコシ、全身全霊を籠めて魅せますとも!! という思いの籠った元気な声に、なんだろうかと足を止める人達がいる。
そこを狙って、今度はカノンの出番だ。
「いきますよカノンさん! そいやぁぁぁ!!!」
カノンめがけてリティアが放つ麺、そして野菜。
それを空中でカノンが見事に切断してゆく。そしてその具材は受け止められると同時に皿に綺麗に盛り付けられているのだ。
「これが日本の、包丁捌きです……!」
彩も鮮やかなその一品へ、タレを掛ければ完成。
「じゃじゃーん!! 完成です!!」
温泉同盟冷やし中華、めしあがれ♪
ドラゴンステーキと銘打って、悠乃の掲げるテーマは『日本における戦い』だ。
調理、肉の切り分けは舞うような動作で正確に。
焼き上げはぎりぎりの焼き加減、味付けは素材を活かす為にシンプルだ。
価格は高めに設定、海外の客は興味を示したが、インド人達は何の肉かわからず訪れることはなかった。
日本といえばこの料理を知っている客もいて、TEMPURA Stand≪J.G.≫の前には人だかりも。
「テンプーラ!」
目の前で揚げてもらえる。それにわくわくといった様子。
ギヨチネは浴衣を纏い、定番のアスパラ、茄子。それに高級食材の牡蠣と車海老を。その他にも色々と用意してある。
オペレッタからは人参、オクラ、雲丹、穴子の籠盛りを。
「どれも日本最高級の山の恵みだぞ」
ティノからはとうもろこし、枝豆、甘芋。
調理機能は未搭載。けれどみなさまとなら、とオペレッタは鍋の前に。
「! ティノ、おけがはないですか」
「大丈夫だ。だけど、やっぱりプロにお願いしよう」
油のはね、びくりと驚く。ティノは調理をプロにお願い。けれど食材を出す順番を整えるのは仕事だ。
十蔵も、セレブにならと調理はプロへお任せ。と言っても見てるだけじゃつまらない。
「役得役得、カッカッカッ!」
味見と称したつまみ食いも醍醐味だ。ビールももちろん忘れずに。
「十蔵爺さんはそこサボらない。と言うかアンタビールって仕事中さね! ずるい!」
と、アウリィに言われて十蔵は接客へ向かう。
アウリィが出したのは大葉をはじめとしたハーブ、それにアイスも。アウリィは声かけて、客引きを。
「アイス天ぷらなんてどうだい。コーンでアイスを包んでその上にてんぷら粉をまぶしてさっと揚げた物さね。これは珍しい!」
どうだいお客さん、と声かける傍でティノは。
「アウリィ、帰ったら作ってくれ」
アイスの天ぷらは食べてみたい。
そして接客もしっかりと。
「良くぞ参られた。日本伝統のテンプ~ラを思う存分堪能なされるが良い。ゴザルっ」
ザ・サムライといった様子で十蔵が振る舞うと、サムラーイと楽しそうな声だ。
それを見ていたオペレッタは十蔵に。
「十蔵せんせい、ご教授ねがいます」
ござるプレゼンを参考にティノは姿勢を整え。
「素材本来の旨味と歯ごたえ、とうもろこしの黄、枝豆の緑、甘芋の紅。それぞれの彩も活かした天ぷら、召し上がれござるだ」
天ぷらを客へ。
ケルベロス・ウォーで支援してくださるみなさまへと、目の前の彼らへと伝えたいものがオペレッタの中にはある。
「『これ』はありがとうを、伝えたくて」
おいしかったと、その言葉になんだか胸の辺りがあたたかくともる。
「……エラー」
これは、何でしょう? とそっと自分の胸に手を当ててみるが答えはまだ、わからない。
オペレッタは仲間の元に駆け寄って。
「『おいしい』と、言っていただけました」
それは良かったと皆は言う。
浴衣姿にオモムキを感じつつ、しかし何処か日本らしさがあるような、ないような。
「思えば日本人は十蔵だけだな」
けれど皆で和の装いで参加とは奇縁だなとティノは零す。
ギヨチネもそうでございますねと頷いて。
目の前で客達はおいしそうに食べている。
気に入っていただけたようで何よりですとギヨチネは笑み零す。
天ぷらの盛り合わせを振る舞うのは狐火亭も。
和小物で彩られたテントの入口に。
「おっとこいつも忘れずに」
寂燕が置いたのは招き猫だ。
目の前で揚げるのを見られるようテントを作ってもらい、真白は故郷の田舎で習いましたから大丈夫ですのと笑む
国津さまとご一緒ですから心強くもありますのと真白は準備を。 寂燕はきのこ類、大葉などアクセントになる天ぷら。真白は野菜や魚だ。
「お客様へ食べて頂く前に味見して頂けますか?」
「味見させてくれるのかい?」
真白が揚げた天ぷらを一口。
「うん、カラッと揚がっていて美味しいよ」
表情は緩み、寂燕は真白に笑いかける。
「真白は良い嫁さんになるね。どうだい、俺んとこくるかい?」
「いやだ、真白お嫁に行くにはまだ修行も経験も年も足りませんのー」
褒め言葉に照れて、真白は寂燕の腕をぺちんと叩く。
それと同時に客の訪れ。
出張レストラン黄鮫亭inインド。そこではジビエ料理をミシェルが用意していた。
「運動はからっきしですが、料理でしたら負けませんよ」
ミシェルは試食を手に客へおすすめ。そしてここに人が集まるのは、真空パウチされたお土産がついてくるからだ。
ミシェルはぽんと自分の服をはたく。人の波が途絶えて、次の波が来る仕切り直しだ。
大衆食堂 暁天龍インド支店のおもてなしは豪華中華ラム肉料理だ。
「屋台村と聞いては出店しないわけにはいかぬな!」
花琳はやる気満々。
「この機にインドの皆様にもうちの店を猛烈アピールじゃ!」
と、一緒に来てくれた店員の皆には会計や客引きをお願い。
お店には、日本の中華飯店風の飾りつけ。これは大衆食堂 暁天龍に興味を持ってもらえるようにとシグルーンが提案したのだ。
花琳は羊肉を目の前に調理を開始。
羊肉串、背中肉のステーキ、酥椒鴻羊腿という羊もも肉のスパイシーローストの盛り合わせだ。
スパイシーローストは唐辛子とクミンの特製スパイスをたっぷり。
「中華料理ではあるが、上野のアメ横等では古くから親しまれているのじゃ」
地元の味と言っても過言ではない。
そして接客などを託されて。
「暑い時はラム肉食べて元気いっぱい! 皆さんどーですかっ!」
ミニ丈のピンクのチャイナ服でお店の名前と料理の写真をいれた看板を掲げるのはロージー。
店の周辺、そして人目に付きやすいところを歩いて宣伝だ。
アイドル活動で鍛えた声はよく通る。笑顔を向け、目線向けた人には声をかけてゆく。
男性客はロージーの胸に目をやる人もいるのだが、それもそれでよし。逆にそれを逆手にとって。
「寄ってくれたらサービスしますよ♪」
それは勿論、料理のことなのだが囁きは意味深に聞こえる。
「やるからにはきっちり盛り上げていくわ」
セルショは客引きを。
「地球に帰化して初めての国外、はじめてのお祭りじゃ。存分に楽しませてもらおうかのう」
仕事ももちろんだがこの雰囲気がシグルーンにとっては初めてのもの。楽しげな雰囲気に気持ちも踊る。
ちなみに店長方針で水着姿だ。
「インド風の水着とかあるかのう?」
と、この場に合わせた水着をシグルーンは纏う。
目の保養になるけれど刺激が強いかもしれない――ということでセルショはラッシュガードを羽織っている。
「美味しい羊肉はいかがかしら? スパイシーで美味しいわよ」
がっつり行ける肉料理。羊と聞けばインド人も安心だ。
「お買い上げありがとうね、熱々だから美味しいわよ」
言葉の壁に問題がないシグルーンは通訳なしでもばっちり。
また一人、お客を案内し料理を渡す。毎度なのだが、良い匂いが空腹を刺激してくるのだ。
「……それにしても美味そうな串焼きじゃのう。チャンスがあったらわらわも一口……」
と、見ていると優しき客はそっと一本。
シグルーンの表情はその瞬間輝きを増す。
暑さに負けず、肉を食べたい人達の足は途切れる事がない。
胡蝶窟が振る舞うは特製精進料理。
貴重な高級食材を大陸と日本の技を融合し昇華させた健康と美容に大変良いフルコース。
「――……悪りぃな、客人。此処は前払い制だ……っと毎度アリ」
客から金額受け取ってご案内。
「此方は日本でもなかなかお目にかかれない特別な料理さねぇ」
その言葉に此れを好んで喰う奴は俺知る中じゃ嫣然ぐらいだとヒコは思う。
紳士淑女に喜んでいただけるようひとつ腕と言わず尻尾まで振るおうかと嫣然は言って。
「さぁ、ヒコ! 運んだ運んだ!」
「……味が悪くない事は保証する。だが、心弱いのなら何も聞かず目隠しをすることだ」
前菜の素揚げ物はパリッとした食感。乳白色のスープは美肌成分を多く含んでおり、効果は嫣然を見れば納得というもの。
主菜はハンバーグ。特別配合の解毒ソースを一緒に。
「ああ、ご安心おし。此れには牛も豚も使ってないよお客人」
それでは何の肉か――その答えは。
「この可愛い蛇と新鮮な蛙のお肉さねぇ」
素揚げは蝉。スープはころころの幼虫を丁寧に、というところで客は席を立ってしまう。
「……おや? デザートがまだなのに席を立ってしまった」
支払は済ませてもらったかい? という声に最初にとヒコは答える。
「……誰一人其処まで辿りつかねぇなあ」
溜息零す。最後の蜂蜜の甘味はヒコが作ったもの。
鴉の宿り木亭のおもてなしは素材にこだわる日本の国民食。
和の心のおもてなし、浴衣を着た姿はやはり目をひく。それぞれ思い思いの隙ながらの浴衣だ。
「鴉の宿り木邸海外進出ってやつだね! インドでもウエイトレスがんばるよ」
ぐぐっと気合いいれ、イチカは翌桧へ視線を。
「ところで社長さん出張手当ては」
その言葉に翌桧は作業をしていた手を止める。
「うそうそ、ジョークだよ!」
翌桧はほっとして、肉の味付けを。醤油ベース、にんにく、林檎、ハーブなどにイカスミを。黒さを引き立てる為に衣にも黒ゴマ、イカスミ粉を。
ソース二種の準備もばっちりだ。
「おにぎりっ、からあげっ。日本の食べ物はついついたくさん食べちゃうくらい美味しいよね」
ルルは楽しげに笑って、私のオススメはパイナップルだよ! とにぎにぎ。
「……パインはどうだろう。いやでもチャレンジしてみるのも一興……?」
「温かい食べ物にパインは意外と合うの。騙されたと思って寄ってらっしゃい食べてらっしゃーい!」
ルルは最初の一個目を紡の手へ。受け取った紡はおにぎりを手に唸っている。
「高級、高級……やっぱり拘りのそざいが良い。かな」
ジゼルが握るのは黒毛和牛。大トロむすびもいいかなと他の素材も準備だ。
「ライカもおにぎりぎゅぎゅって頑張ってる? 愛を詰め込むんだ、よ」
「優しく優しく……ジゼルさん良いアイデアであります、愛をこめてぎゅってするっす」
ライカが握るのは梅干し、おかか等の定番の具。それに加えて煮卵入りやじゃこチーズなども。
「インドはスパイスの国と聞いたであります。酸っぱさやしょっぱさのある梅干しはライカのイチオシであります」
ピクルスとはまた違う美味しさとライカは笑む。
厳選された日本のお米と海苔、手作りの具はとっても美味しいのだから。
フェクトもせっせとおにぎり作り。
「海老天グイっと入れて塩振ってー」
尻尾はちょんと飛び出るように。
それにおいしくなーれと念を込めているとおなかも空いてくるもので。食べちゃダメ? と見つめあいつつここは我慢。
「これぞ神様の握ったおにぎり……ゴニギリだよ!」
神の加護がいっぱい詰まった天むす。ゴッド・おにぎりをフェクトは差出し食べると良い事あるよーっと勧める。
「む、もしかして信じてない? まぁまぁ、試しに一個食べてみてよ!」
「スマイルは有料?」
ふとジゼルが零すとライカはにこっと笑う。
「スマイル0円、沢山の方々にお料理を食べてもらいたいっす!」
その通り、というように足元で小麦粉が頷いていた。
「ルルもスマイル、スマイル」
スマイルスマイルと呟いて。
「おいしい食べ物はいかがー。おいしいよー、高級だよー」
「みんなの想いがぎゅぎゅーってつまったおにぎり。暑いインドもこれで乗り越えちゃお!」
美味しいものを食べたら元気いっぱい! ルルはにこにこと笑みながら声かける。
明るい呼び声が響けば人も誘われる。
料理も大事だが、おもてなしも大事。
「メインの黒鴉揚げは店長こだわりの逸品なのですよ」
どんな内容なのかという問いに答えるサヤ。
「複雑玄妙なお味は、そのままとソースで三度美味しい。ぜひゆっくりと噛みしめてお召し上がりください!」
ソースはトマトケチャップとさっぱり柚ねぎポン酢なのですよと付け加える。
それに盛り付けだって渾身の素敵さ。目でも楽しんで頂けるのですというサヤへ客は人数分の注文を。
おにぎりの具は自由に選べるのでお腹とご相談、と伝えればおすすめをとお任せで。
「おにぎりは、おむすびとも申しますゆえ。ここでお会いしたご縁や思い出も、やさしくぎゅっと結びましょーねえ」
その言葉に客達はおいしい縁だねと笑いかける。
注文と同時に翌桧はじゅわっと良い音させて揚げていく。
料理は職人が作り上げた一点ものの陶器へ。その盛り付け担当は紡だ。
「紡は盛り付けふぁいおー」
ジゼルの声に紡は任せてと最初に揚げたての黒鴉唐揚げを。それは名前の通り、海苔の黒翼を添えて。
「大きめのを揚げてあるからカラスっぽく見える気がする……!」
そして笹の葉敷いておにぎり。付け合せの漬物と一緒に飾り切りの野菜を添えて。
質素過ぎず上品に。彩りを加えて見た目から和の心アピール。
「どうだろう、可愛いかな?」
イチカがばっちり! と笑ってその皿を受け取り席へ運ぶ。
「おにぎりはにぎりたてのほかほかだよ。日本茶はおにぎりに良く合うんだぁ」
どうぞとイチカが差出す皿の上の唐揚げとおにぎりには笑顔も一緒に。
それを食べた客達はまだお腹に余裕があると追加。それを見た新たな客も増えていく。
鴉の宿り木亭のブースは大忙し。
今はまだ人の少ないデザート部門の一角にある『薔薇の小径』。
エディプルフラワーを使った綺麗で可愛く美味しいスイーツは色々な種類がある。
朝摘み薔薇の花弁を生地に折り込みクリームにローズ水を加え仄かな香りがする上質な甘さの薔薇のロールケーキを初め、目にも鮮やか。
「お客様来てくれるかな」
ロゼはアレクセイへと笑いかける。お菓子作りは趣味で得意、ワクワクしながらロゼはこれらを作ったのだ。
ミルクや粉、卵はもちろんのこと、朝摘みの薔薇にパンジー、菫の砂糖漬けと食材はすべて、オーガニックで最高級のもの。
「ロゼ、お店も綺麗に花で飾ろうか」
二人で花の色どりを。
花を食べる――それに驚かれるかもしれないが、ロゼが一生懸命気持ちを込めて作ったもの。
「美味しく楽しんでほしいな」
ロゼも和やかに積極しながら笑み零している。
アレクセイは微笑み、客へ対応する。彼女と一緒に過ごす時間の幸せを噛みしめながら。
人々に食をふるまい縁は繋がる。
そして楽しくおいしいとあふれる笑顔はも明日に繋がっていく。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月11日
難度:易しい
参加:31人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 2
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