ケルベロス大運動会~突撃、隣のインドランチ!

作者:林雪

●ケルベロス大運動会開催!
 ケルベロス・ウォーで疲弊してしまった世界経済を、元気にしよう!
 これをスローガンに開催されることになったおもしろイベント、それがケルベロス大運動会。普通の人間には危険すぎるハイパーエクストリームスポーツ・アトラクションも、ケルベロス達なら世界を興奮のるつぼに叩き込む、興奮のエンターテイメントに!
 栄えある第1回ケルベロス大運動会、インド各地で行われた午前の部が終われば、お楽しみのランチタイムが始まります! 

●お昼休みはウキウキインド料理!
「せっかくインドで運動会をするんだから、本場のインド料理を楽しまなきゃ。というわけでね、インドのごはん系バラエティ番組に参加したいと思うんだ。僕はあんまり辛いの得意じゃないけど、地域によって色んなごはんがあるみたい。ちょっとドキドキだけどね」
 ヘリオライダー、安齋・光弦がそう言って誘うのは、インドのテレビ局が放送しているバラエティ番組の企画。内容は、ケルベロス達がインドの一般家庭に突然お邪魔してお昼ご飯をごちそうになる、というものだ。
「突然お邪魔して、っていうのがミソだけど、人気番組だからみんな結構こころよく迎え入れてくれるみたい。美味しい家庭料理で体力つけて、最後まで運動会楽しもう!」


■リプレイ

●住宅街近く、某所(※テロップ)
 当番組の人気企画『突撃! 隣のインドごはん』に今回なんとケルベロスが参戦。その数なんと50名以上! 放送開始前、と見せかけて待機中の彼らを何の前触れもなくカメラが直撃した!
「えっもうカメラ回ってるの? インドの皆さんナマステ~☆」
「お父さんお母さん見てますかー!」
「こんにちはぁ……お昼どきに、お邪魔しますなぁ」
「日差しにも負けないくらいの、ねるっ、熱気を届けよう!」
「団長噛みました?」
 咄嗟に笑顔の者、恥ずかしげにする者、ニコニコ手を振る者、一言反応する者、噛む者、ケルベロスもそれぞれ。
「やっぱりインドの夏は暑いですね」
「テディにフィリーそしてタバサが送る『突撃☆インドの昼ご飯』だよ!」
「ハピバスデーマヒナ嬢ちゃん、なんじゃよー」
「さぁ、待ちに待った昼飯タイムだぜ!」
「面白そうだね! 頑張るよー」
「突撃でありますよー!」
 ということで、放送スタート!
 まずは絶品『バターチキンカレー』を作るアミおばさん宅に行った面々を追ってみた。
「実はボク、お店でお客さんに出すカレーを研究してるんです」
 カメラに向かって笑うGCのティクリコティク。かなみもしきりとメモをしている。
「バターとスパイスを炒めるんですねー。とてもいい匂いがしてきましたー」
 近所から大勢手伝いが来ているが、ケルベロスの手も借りている。
「ふんふん、バターでスパイスを炒めて……トマトはその後っすね」
 料理上手の蘭丸がかまどの前で鉄鍋を振るうのを、同行のつのと光莉、それにシルディがじっと見ている。
「えへへ、作り方を覚えたら喫茶店の新メニューにするんだー」
「カレーのルーってないの? へ~、生クリームやヨーグルトを入れるんだ」
 皆さんすごく、研究熱心。
 裏庭でテーブル準備を手伝うのはGCのモモとレヴィン。カメラを向けてみた。
「私、辛い物が苦手なんだよね……でも、バターチキンカレーなら私でも安心かな?」
「やっぱり夏はカレーだよな! あ、すげえ良い匂いがしてきたぜ!」
 言いながらふたりが運んだテーブルは、みるみるうちにご近所からの差し入れでいっぱいに。
 その中のひとつ『青マンゴーのアチャール』に目を輝かせたのはハル。彼女これが今回一番のお目当てだったとか。現地の人も混じって、食べ比べ。
「こっち酸っぱい……あ、辛くなってきた! でもくせになる美味しさです」
「皆様、各ご家庭ご自慢のお味なのですね……個性的でおいしゅうございます」
 同行のフェオドラは辛いのが少し苦手だが頑張って一緒に試食。
「これきっと『オフクロの味』よね♪」
「タビ―、ホント激辛はダメよ」
 タバサは好奇心旺盛、フェリシアとテディは辛いのが苦手ということで、ちょっとドキドキ。
 アミおばさんがバターチキンカレーのお盆を抱えて庭に現れる。スパイスの香りに、トマトたっぷりの赤い色が食欲を刺激する。
「さぁー、お待ちかねのお昼ごはんっすよー!」
「うん! 鶏肉はジューシーで、バターもコクがあって、めっちゃ美味いぜ!」
「やっぱりバターチキンカレー美味しい」
 と、舌鼓を打つラセンと、笑顔で見守る利勝。
「これなら……私みたいに辛いものが苦手な人でも安心して食べられる美味しさです!」
 光莉が笑顔で言えば、
「スパイシーで辛さはあるんだけど、なんかすごい甘くてマイルド」
 とシルディも大喜び。同じく真剣な表情で食べていたティクリコティクが顔を上げる。
「これ、ナンだけじゃなくて白いご飯にもぴったりじゃないかな?」
「ナンと言えば……うわ!」
 出た!アミおばさんの千枚ナン投げ! ヒュンヒュン空飛ぶ、焼きたてナン!
 スタッフ、ここでタバサにお皿を渡してみる。
「え? お皿? わっ!」
 慌てながらも皆の分を受け取り、次々に渡していくタバサ。同行のふたりも大喜び。
「タビー、すごい。上手だよっ」
「ふふ。テディ、応援してあげて下さい」
「えーい! わぁ、アツアツですー美味しそうですー!」
 かなみも、ナイスキャッチ!
 ゴハンの後には、スイーツも。
「世界一甘いと言うグラブジャムンでございますか? どのような激甘も甘党のわたくしなら平気でございます♪」
 フェオドラの表情が輝くが、ハルは。
「わ、私はこれ歯が軋みます……! 甘い!」
 皆がデザートに移る中、激辛おばちゃんことヒーナさん宅から差し入れられた辛酸っぱいスープ、ラッサムを何気なく試食したレヴィン。
「うまっ、でも辛ッ、ていうか痛っっ!」
「あわわ、レヴィンさん!? ヒール、ヒール!」
 午後の競技に差し障りがないといいが……。
 その激辛おばちゃんの家に突撃している猛者たちの模様をお送りしよう。
 まずは『激辛カレートリオ』東西南北、零、保。
「~~~~~~~~~~~っ!!」
 一口目を食べた東西南北、忠告を送ろうとするも間に合わず。
「―――ッ!?」
 同じく食べてしまった零も悶絶、警告を発しようとしたが時すでに遅し。直前までにこやかだった保は汗の吹き出す顔を押さえて歩き回っている。辛うじて貰えたコメントをお聞き下さい。 
「一口目は辛うて……二口目も辛うて……五口目ぐらいに、慣れて来る……てこともないね。美味しゅう……美味しゅう……ございます」
 続いて巌、小百合コンビ。
「イケる口だと自負していたのだが……コレは中々……!」
「ぜ……全然余裕だし……! む、むしろ甘いし……!」
 涙目になりながら強がる小百合を遠慮なく抜くカメラ。
 そう、ヒーナおばちゃんの激辛料理は、大丈夫な人ほど踏みにじるジョロキアンな辛さなのだ!
 ボクスドラゴン連れで参加は、ルゥとクライヴ。激辛好きはクライヴだけらしいが、ルゥの方がなんだか嬉しそうだ。
「え、クライヴさん、なんだかそれ……真っ赤、に見えるけど?」
 クライヴの皿を見て驚愕しつつ、ボクスドラゴンのアラクネとこっそり頼んだ辛さ超控えめサグチキンカレーを半分こして堪能するルゥ。
「一口交換……は死んじゃいそうだから、やめておこうかな」
 ここからは『鮮血』のメンバー。
「あ、スパイスマシマシでお願いしま~す☆」 
「虹さんがマシマシなら夕衣さんも負けてられません。マシマシのマシでお願いします」
 激辛ネジの飛んでしまってふたりの後ろで、呆然とするエヴァンジェリン。
「藍待って……? ゆ、夕衣……! 待って、待って……!」
「おぉ! 本場のカレーは真っ赤ですね」
「違うわあなたたちが真っ赤にしたの!」
 こちらも涙目で二口食べるエヴァンジェリンを、遠慮なくカメラが抜く。
 えらいえらいと彼女を褒め、残りの皿を引き取るルビーク。
「インドの民よ、見よ、俺の本気を……!」
 一気にかき込み、火を噴くバラエティをわかってる男。
「流石、団長。ビームの代わりにファイヤーですね」
 そんな光景を後目に、笑顔のヴィルフレッドと、若干不安げなクリス。
「ジャッポネで築き上げたグルメリポート術を披露する時が来たよクリス!」
「や、やったことないんだけど……」
「大丈夫僕もだから! まぁ何とかなるって!」
 ふたり揃ってカレーをぱくり。
「いい辛さだ……クミンとかのクローブの風味? あ、美味しい俺これ好きだな」
 クリスは思ったことをそのまま。一方。
「……辛い!」
 ヴィルフレッド、情報屋としての渾身の一言。 
 〆を決めたい激辛カレートリオも頑張った。
「げっ現場からレポーター八王子東西南北が……」
「上野が……お送り……」
「……しました」
 ガクリ。戦士の戦死。
「あれうちの団長も死んでる?!」
「カレーは辛ー」(※当番組プロデューサーは日本文化『ダジャレ』を愛しています)
 食後。
「……私たちもなにか作りましょうか」
 実はヒーナおばちゃん自身は甘いものも大好き。
 巌に緊張をほぐしてもらいつつ小百合が作ったプリンを美味しく完食。ふたりがレシピも置いていってくれたそうなので、次から激甘おばちゃんになる可能性が?
 他の皆も、プリンとラッシ―でお口直し。甘党のヴィルフレッドもこれで復活。
 程よい辛さのお宅へ行ったのは『ロイヤルテント』のロイヤル、シヴ、ノーフェイス。
「やはりと言うカ、日本より味が刺激的ですネ」
 そう言いながらカレーとナンは……彼の、口の中? らしき場所に消えていく。
 シヴは辛いのが全くダメで、においをかいだだけで顔を逸らしてしまった。
「やっぱり辛いのびっくりしちゃうね」
 ロイヤルが優しく言い、ノーフェイスもフォロー。
「あララ、ほらシヴさん、こっちならお口に合うカモしれませんヨ」
「うむ、ノーフェ、気が効くのよ」
「ノーフェ、ありがとう、ね」
「ごちそうさま、と日本では言うのデスヨ」
 おみやげはナンとタンドリーチキン。かまどの前で、記念撮影も。
 一方、通りの向こうのお宅では。
 ポメラニアンを背に乗せたシヴィル、ミレイを背に乗せた凛、クーゼにぶら下がった実里、その襟首を掴むロベリア、その後ろから翼飛行でマキナ、という布陣で空から登場する『太陽の騎士団』! ミレイが撮った空からの映像、是非番組に回して欲しい……。
 全員着地を決めるとポメラニアンは一回転、こはるの姿に戻る。
「じゃーん! 突撃、隣のインドランチー!」
 どうやら我々インドの民に『ケルベロスは戦闘以外でも凄い』ところを見せてくれるための演出らしい。……本当に凄いな太陽の騎士団! 料理を振る舞ってくれるナージスさんも思わず拍手。凛は礼儀正しく挨拶し、騎士団を代表して『太陽の種缶DX』をプレゼント。
 集まった地元の人々と積極的に交流していくシヴィル。
「昼ご飯を、ご馳走なって、よろしですか」
 シヴィルが現地の言葉を話そうとする姿勢が伝わって、集まった人々は笑顔である。
 出てきたのはマトンカレーに野菜のチャツネ、たまねぎのライタなどなど。
「トマトのチャツネ? こはるトマト大好きです!」
「私はこちらの、辛そうなのを試そう……うまいな、皆もどうだ?」
 と辛党の凛。
「どれも美味しそうだね、僕らは当たりのお宅に来たね」
 皆の様子に、実里がサムズアップ。
 クーゼはひとり、何かを必死に探している様子。
「カツ、カツはどこだッ! カツカレーは!」
「ないのではないでしょうか、インドですから」
 ロベリアにしらりと窘められ、そっと諦めるクーゼ。
「甘くて美味しい……こっちのほうが好み」
 ミレイが手を伸ばしたのはカボチャのスイーツ、ペタバルフィ。食べながら、皆の様子を熱心に撮影している。
 和やかな交流がゆったり続く、ナージスさん宅でした。
 続くはたっぷりごはんのハリオムさん宅。
 ルルゥと灰は一緒に参加、だがルルゥが台所に籠りきりで料理のメモを取るのに対し、灰は庭に集まった子供たちと遊んでいる。決して料理が面倒で逃げたわけでは……と軽く言い訳しつつ台所の様子を見に行くと、そこには揚げたてのサモサが……。
「へぇ……美味いな!」
「あ、瀬戸口さんご苦労様です。ラッシーでも飲んで休憩しますか? って、つまみ食いは駄目ですー!」
 なんだか新婚さん風味。
 空礫の4人も、次々出てくる料理に大はしゃぎ。
「レクトさんみてみて葉っぱのお皿!」
 こんなに仲良しの4人、実は旅行も一緒の食事も初めて。何を見ても嬉しく、何を話しても楽しく、何を食べても美味しいのは一緒にいるからだと改めて。
「あ、これ美味しい! デザート分も残しとかなきゃっすね」
「ふふふ、哭は知りませんでしたっけ実はわたくしの胃はもう一つ、デザート専用のがあるのです」
「わたしもデザートならいくらでも、いくつでも!女の子の胃はすごいんだから、ねっ」
 実況しようか、と一瞬考えるレクトだが、その役目をカメラに譲る。皆の嬉しそうな笑顔こそが、何よりのグルメレポートに違いない。
 一頻り料理を楽しんだ万造が、一家の長老に訊ねる。
「インドにも『笑う門には福来る』と似た言葉は有りますかの?」
「あなたが振りまく笑みは必ずあなたに帰ってきます、ですね」
 そこへインド風ミルク粥、キールが運ばれてくる。祭りのときに食べるデザートである。
「オノ! マンゾー、これとっても美味しい。人の家に突撃してご飯食べるなんて、ドキドキだったけど、忘れられない誕生日だよ」
 マヒナが振りまく笑顔はきっと彼女に帰っていくのだろうと確信し、目を細める万造。
「はーい、サモサと、こっちはパーニープーリーです」
 とルルゥが運んでくる。
「このクルフィ、半分こしましょうアイヴォリーさん」
 灰とルルゥも頬が緩む。
「料理ってのは不思議なもんだ」
「ふふ、ちょっとだけ実家を思いだしちゃいました」
 今回一番、笑顔が溢れたお宅でした。
 最後に突撃するのは、素朴な料理と品数自慢のリヤおばあちゃんのお宅。
「ごきげんよう、ごめんあそばせ」
「まお、おいしいカレーを探しに来たの」
 礼儀正しくスカートを摘まんで上品に挨拶する、メアリベルと真音。リヤおばあちゃんも笑顔で出迎える。
 キッチンでエプロンドレスを身に着けてくるりと回って見せるのは双子の姉ルラ。
「ソラ、似合う?」
「姉君、似合っているであります! 姉君が似あっているということはルソラも似合っているということでありますか」
 と、妹ルソラもくるりと一周。ふたり揃ってナンの捏ね方の指導を受ける。おばあちゃんは優しく指導しながら、ひよこ豆のダルカレーを作ってくれる。
 カレーの他に食卓に並ぶのは皮をカリカリに焼いたタンドリーチキンにシークケバブ、パコラなど。
 ルラとルソラが運ぶのをお手伝い。
「さあ皆でいただきましょう」
「スパイスの効いたカレー、おいしそうであります」
 カレー大好きの真音とメアリベルだが、手で食べる作法には面食らった様子。それでも郷に入っては郷に従えと、恐る恐る。
「まぁ、おいしい! 一寸辛いのもインドならではよね、どんなスパイスを使ってるの?」
「メアリからいの苦手だけど、スパイシーで元気がでるお味だわ、ね、ミスまお」
 ふたりが気持ちよくぱくぱく食べる姿に、現地の人たちも笑顔に。
 先にチキンカレーを楽しんでから来たラセンと利勝のカップルは、主に副菜を。ラセンが野菜のパコラをひとつ手に取り、利勝の口元に持っていく。
「しんこんりょこー、っぽい?」
「……うん」
 照れ隠しもあってか、その後は全力ボディーランゲッジで現地の人たちと交流するふたり。その輪に混じっていた淡雪と照彦。
「なんかオッサン、インドに馴染んでへん? モテてる?」
 なじんでる!(テロップ太字)
 さらりと淡雪が殺し文句を。
「……まぁ格好良いことは否定しませんけどね? さて私たちは一杯やりますか」
「酒飲むーインドもビールなん?」
 はい、ありますよとスタッフからふたりにインド製ビールを差し入れ。  残念ながらここで時間終了!
 家庭料理、楽しんでもらえただろうか? 運動会はまだまだ続くぞチャンネルはそのままで! 

作者:林雪 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月11日
難度:易しい
参加:53人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 18
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