●深夜の復讐者
ある深夜の事である――。
かすみがうら市市街地。赤と青の鎧をまとった人影があった。
彼らは種のようなものを振りまくと、まるでそれに誘われるように、10にも及ぶ攻性植物たちが姿を現したのだ。
その内の一体。
蜘蛛のローカストのようであった。
瞳は何処か濁っている。また、強固な外装の所々に傷や、切断されている箇所があったが、ツタや黴、苔の様なものが傷を修復し、繋げていた。
そのローカストは、まるで操り人形のような動きで、よろよろと、よろよろと歩いている。いや、実際に、その蜘蛛はあやつられているのだ。
その蜘蛛は従。主は体中にその姿を見せる、苔やツタのような植物の方だ。もはや蜘蛛に、自らの意思はあるまい。
それは、強制された共生。蜘蛛に寄生し、活動する攻性植物。その名をエニィプスと言った。
さて、エニィプスを始めとした、10体の攻性植物――オーズ兵器を見ながら、赤と青の鎧をまとった2人、エインヘリアル・スタールージュとスターブルーは満足げに頷いた。
「やっと準備が整った。長かったな、ルージュ」
「あぁ長かった。だが、今こそ、仲間の仇をうつ時だ!」
2人の瞳は、憎悪のままに昏く燃えている。
やがて、2人の復讐鬼に率いられ、十の災厄が進軍を始めた。
●オーズ兵器迎撃作戦
「た、大変っす! 緊急事態っすよ!」
黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は大慌ての様子で、集まったケルベロス達に向かって口を開いた。
5人組のエインヘリアル『星霊戦隊アルカンシェル』との戦いが起こった事は記憶に新しい。さて、この時『アルカンシェル』のうち3体を撃破する事には成功していたが、残り2体の討伐はかなわなかった。
生き残った彼らは、白刀神・ユスト(白刃鏖牙・e22236)が危惧していたように、オーズの兵器化を以て戦力を補充。打ち倒された仲間の復讐のため、行動を開始したようだ。
現在、オーズの種を埋め込んだ10体の攻性植物を支配下においた彼らは、かすみがうら市を起点として、隣接する土浦市、つくば市を目指し、市街地を破壊しながら進軍しているようだ。
「つくば市に到着した後は、つくばエクスプレスの線路伝いに都心部を目指す可能性が高いっす」
現在、かすみがうら市から市民は脱出しており、土浦市の避難も間に合う予測だ。
「これ以上、被害が広がる前に、かすみがうら市と土浦市の間で、エインヘリアルと攻性植物の軍勢を迎え撃ってほしいっす!」
2体のエインヘリアルは言うまでもなく、攻性植物達はオーズの種によって強化されており、かなりの強力な相手だ。激戦が予測される。
「幸い、各チームの戦場は近いっす。標的を撃破出来たら、他のチームの援護に回ってあげて欲しいっすよ」
しかし、各チームの戦場が近いという事は、敵の軍勢もまた、同様の利を得ているという事である。
仮に戦闘で敗北してしまったチームが出た場合、その相手が別の戦場に乱入してくることは想像に難くない。
そうなった場合、連鎖的に此方が崩されていってしまう可能性もあるのだ。
戦場は、かすみがうら市から土浦市に向かう、国道6号線土浦バイパス周辺の市街地だ。
攻性植物は市街地を破壊しながら進んでくるので、無人となった市街地に潜んで、進軍してくる攻性植物に一斉に攻撃を仕掛ける、という作戦になる。
「皆さんに相手をしてもらうのは、オーズの種を埋め込まれ強化された攻性植物、エニィプスと呼ばれる相手っす」
なんでも、蜘蛛のローカストに寄生した攻性植物であるという。ローカストとしての能力は失われているようだが、相手はローカストすら食らい操る攻性植物だ。決して油断は出来ない。
また、今回のスタールージュやスターブルーの復讐は独断での動きのようだ。戦いが長引きすぎると、彼らを連れ戻しに来た新たなエインヘリアルが現れる可能性がある。長期戦となるのは避けた方が良いだろう。
「仲間を殺された復讐……気持ちは分からないでもないっす。でも、彼らのやってる事はただの八つ当たりっすよ。関係ない人達を巻き込むなんて許されない……っすよ、ね?」
ダンテはそう言って、ケルベロス達を送り出した。
参加者 | |
---|---|
レクシア・クーン(ふわり舞う姫紫君子蘭・e00448) |
リコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164) |
フェル・オオヤマ(焔は白銀の盾へと至る・e06499) |
暁・歌夜(ヘスペリアの守護者・e08548) |
スズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079) |
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587) |
皇・ラセン(地を抱く太陽の腕・e13390) |
九音・マルガ(不可逆の落水・e17326) |
●断つもの、エニィプス
敵の進軍ルート上で待ち伏せをしながら、レクシア・クーン(ふわり舞う姫紫君子蘭・e00448)は何処か落ち着かない面持ちで周囲を見渡していた。
「……大丈夫ですか?」
暁・歌夜(ヘスペリアの守護者・e08548)が声をかける。
苦笑を浮かべながら、レクシアは、
「覚悟してきた……つもりでした。でも、いざとなると、緊張するものですね」
自身の手を見つめながら、言った。
必ずエニィプスを倒し、仲間を守る、そう誓ってこの作戦に参加した。だが、相手は一筋縄ではいかぬ強敵だ。それに。
「まだ……怖いのかもしれません……またすべてを断たれてしまうのではないのかと」
「因縁ある相手だもんねぇ……正直ウチも、かなり不安でいっぱいだよ」
皇・ラセン(地を抱く太陽の腕・e13390)が、答えた。手にグローブを装着し、握ったり開いたりを繰り返し、装着感を確かめる。
「だけどね。背中に守る仲間がいるんだと思うと、怖くないんだ」
にっ、と笑う。
「背中は守るから……思いっきり、飛んじゃってよ」
ラセンが言った。
「そうですよ、レクシアさん。貴女は1人ではありません」
歌夜が続ける。
「貴女が皆を守りたいと思っているように……私も、私達も、貴女を守りたいと思っています。共に戦いましょう。大丈夫。上手く行きます」
「……ありがとうございます……」
そうだ。自分には守るべき、そして頼るべき仲間がいる。レクシアは頷くと、
「一緒に、頑張りましょう」
言って、2人に微笑んだ。
「過去との決別、かぁ……」
3人のやり取りを見ていたアトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)は、武器飾りを手に取り、見つめた。アトリもまた、彼女達と同じように過去と相対し、決別した身だった。その決意の表れとして、長かった髪をバッサリと切っていた。
「かこ……ですか。わたしは、おぼえてないです。いつかおもいだすのでしょうか?」
連絡機のテストをしていたスズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079)が言う。
「すこし、ふあんです……なんだか、こわいことのようなきがして」
不安げに呟くスズナに対して、アトリは優しく、
「どうかな……でも、もし、その過去と戦わなきゃならなくなっても、必ず、皆助けに来てくれるよ」
「かならず、ですか?」
小首をかしげるスズナ。
「うん。私も、色んな人に助けてもらったの。だから、スズナさんも」
スズナは、はい! と力強く返事をした。
「いずれ対峙する可能性がある過去、っすか」
九音・マルガ(不可逆の落水・e17326)が、何かを思い出すように目を閉じながら、言った。
だが、軽く頭を振り、すぐに気を取り直すと、
「……まぁ、今はエニィプスの対処を優先っすね」
「そうでござるな、ここで拙者達が食い止めないと、被害が広がってしまうでござるよ」
フェル・オオヤマ(焔は白銀の盾へと至る・e06499)が答える。オーズ兵器は、確実に近づいている。まもなく決戦の時だろう。
「しかし、エニィプス、寄生する攻性植物でござるか。気持ち悪い奴でござるよ」
「寄生された蜘蛛の意識は、もはやないと聞きます。意志を無くした有様は、生きていると言えるのでしょうか」
周囲を警戒しつつ、リコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164)が言った。
「どうでござるかな……拙者がそうなったら、と思うとゾッとするでござる」
「意識、意思……心の有無っすね。心がなければ――それは人ではなくなってしまうっすよ」
「ふむ」
リコリスが唸った。
「心……ですか」
胸元に手を当てるリコリス。胸元には、地獄化した心臓がのぞく大きな傷跡。果たして、彼女は、その心で何を思うのか――。
その時。
「……来たでござる!」
フェルが叫んだ。前方、薄暗闇の中に、ゆらゆらと動くシルエット。
「皆さん、戦闘準備を!」
リコリスの言葉に、ケルベロス達は戦闘態勢に入った。
間もなく、ケルベロス達はエニィプスと接敵する。
●断たれしモノ、繋ぐモノ
「エニィプス……!」
レクシアが叫んだ。
エニィプスはレクシアへと視線を向ける。ざわざわと蠢く体中の攻性植物が、彼女を新たな獲物と認識した事を表していた。
「もう二度と……おまえに大切なものを奪わせない!」
地獄化した翼が大きく羽ばたく。一筋の蒼い閃光となって、レクシアは駆けた。レクシアはエニィプスに肉薄、勢いそのままに飛び蹴りをお見舞いする。
「――!」
エニィプスの口が開いた。悲鳴か、或いは、雄叫びだろうか? だが、寄生されたままロクに治療もされていない蜘蛛の身体は、その声帯すらボロボロだった。声にならない声――まさしくそう言ったものが口から零れる。
「ここをとおすわけには、いきません!」
間髪入れず、スズナも速度を乗せた跳び蹴りの一撃。二打を受けたエニィプスは思わずよろめくが、致命打には程遠い。
リコリスは黄金の光を以て味方前衛を援護。
「友の道を切り開くこの双極……!」
エニィプスへと突撃しつつ、ラセンが叫ぶ。
「天を鳴らすは右の剣。地を裂くは左の槍。天地を震わし穿ちゆくは我が双極。散逸した力を束ね、重ねて、重ねて、重ね――解き放つッ!!」
それは、達人へと到達した者のみが扱いうる技の極み。解き放たれるその力は一撃必殺の双掌底。
必殺の一撃はエニィプスの胸部へ直撃。たまらず後方へ吹き飛ばされるエニィプス。数mの距離を吹き飛び、全ての脚部と、両手、全身を使って着地。
「今でござる! 飛べ、ドローン!」
その隙をつきフェルのヒールドローンがケルベロス達の援護を開始した。
「――――ッ!!」
突如、エニィプスが叫んだ。四つん這いのまま走りつつ、まるで蜘蛛の糸のような細く強靭な蔓を、レクシアへ向けて放つ。
レクシアは翼を羽ばたかせ、空中へと退避。だが、それを追う様に複雑な軌道を描きながら、蔓は彼女へと向かう。
「(やっぱり、私を狙っている……!?)」
高速飛行を続けながら、レクシアが胸中でつぶやく。やがて蔓がレクシアを捕らえた――瞬間。
「させないでござる!」
フェルは叫び、レクシアを庇った。
「フェルさん……!?」
レクシアが驚きの声を上げる。
「拙者は大丈夫! ……レクシア殿! 貴女が敵を討つでござる!」
「フェルさん、助けるよ!」
アトリは雷の壁を展開、レクシアのサポート行った。
「援護します!」
歌夜が叫ぶ。と、同時に、複数の剣が現れ、ケルベロス達の周囲を舞う。彼女のサポートグラビティ、残影の剣戟(ザンエイノケンゲキ)だ。
「アンタはただの復讐の道具っすか。哀れなモノっすね」
憐れむように……或いは、蔑むように。マルガが呟く。
それは、オーズの種欲しさに、走狗となり下がったエニィプスへの侮蔑か。それとも、エニィプスに寄生された名も知らぬ蜘蛛へ哀れみか。
いずれにしても。
「望んでそうなったのなら、まぁ結構。ただ、道具なんかに負けてはやれないんっすよ」
言いながら、爆破スイッチによるケルベロス達へのサポートを行う。
――接敵から一分が経過した。
ケルベロス達は自身の強化、そして相手への行動阻害を確実に行い、彼我の戦力差を着実に開いていった。
途中、エニィプスからの行動阻害を受けるも、これも的確に処置する事で対処。
ケルベロス達は着実にエニィプスへのダメージを蓄積させていき、4分が経過する頃には、エニィプスの被害は甚大な物へとなっていた。
そして、決着の時が訪れた。
エニィプスの身体はすでにボロボロであった。足の何本かはすでに無く、蔓を使って接続する事すら困難な様子だ。
「行こう、姉さん。一緒にあいつを……倒そう」
レクシアが呟く。瞳を閉じ。一時だけ、心を落ち着けた。
「絆を束ねたこの翼なら、きっとどこまでも飛んで行ける」
地獄化された翼を大きく広げた。蒼い炎はその輝きを増し、燐光のような羽が舞い踊る。それはやがて彼女の右手に集まり、蒼い光の玉となった。ひと際大きな輝きを放つと、その輝きの中から、一丁の、細身で、シンプルなアームドフォートが現れた。
それは、彼女が生みだした、記憶と想いの具現。
繋いだ想いを以て敵を断つ、彼女のグラビティ。
『共に翔ける(スタンド・バイ・ミー)』。その名のままに。彼女は想いと共に翔ける。
「エニィプス……! もうおまえに、命を断たせはしない!」
レクシアが、トリガーを引いた。
銃口から、蒼い光の束が放たれた。
それはまっすぐに、エニィプスへと迫る。エニィプスは回避を試みようとするが、ダメージを受けたその体では、もはやそれすらかなわない。
「――!」
壊れた声帯を震わせ、声にならない声を上げるエニィプス。射出されたレクシアの光はエニィプスの胸に直撃。貫通。
エニィプスの背中側から、爆発するように青い光の奔流が走る。同時に、さながら血液が飛び散るように、赤い、美しい花々が傷口からほとばしった。それはまるで、エニィプスが今まで奪い取った命が、その支配から逃れていくかのようだ。
ぐらり、とエニィプスの身体が揺れた。そのまま前のめりに倒れる。
蜘蛛の体を覆っていた苔やツタが急速に枯れ始めた。エニィプスが力を失い、死滅していく姿だった。
その姿を見つめていたレクシアは、ふと、蜘蛛が顔を上げた事に気付いた。蜘蛛はレクシアを見ている。
にやり。と。
その蜘蛛が笑ったような気がした。
蜘蛛が力を失い、完全に地に伏した頃には、その体中を覆っていた植物群は消滅していた。
寄生植物エニィプス。その最期の瞬間であった。
レクシアは思わず、その場に座り込んだ。
「レクシア!」
「レクシアさん!」
ラセンと歌夜が思わず駆け寄る。
「大丈夫……です」
レクシアが、答えた。
彼女の頬に、一筋の涙がこぼれた。その手には、先ほどエニィプスの身体からほとばしった、一輪の赤い花があった。
「……戦いでの決着はついた。心の決着も、つけられたかい?」
ラセンが尋ねる。レクシアは、その問いに答えようとした。
その時。
戦場に、新たな危機を告げるアラームが鳴り響いたのだった。
●突然の連絡
『モデルダインと交戦中のアーニャ・シュネールイーツです! どなたか応答願います!』
エニィプスの討伐により、一時とは言え安堵を得ていたケルベロス達に、再び緊張が走った。
リコリスはケルベロス達に一度頷くと、アイズフォンを用いて通話を開始する。
「こちらエニィプス討伐班、リコリス・ラジアータです。何かありましたか」
努めて冷静に、リコリスが答えた。こちらも慌てていては、相手がさらにパニックに陥りかねないとの判断である。
「二名が戦闘不能に追い込まれ、敵の撃破が難しい状況にあります! すみませんが救援をお願いします!」
リコリスは内心の驚きを相手に悟られぬように息をのんだ。
「……! 了解しました、少しだけ持ちこたえてください。方角は――」
リコリスが顔を上げると、そこには体のあちこちに炎を纏いながらなお進撃を止めぬ巨大な攻性植物の姿が見えた。
間違いない。モデルダイン。こいつがそうだ。
「いえ、確認しました。すぐに救援に向かいます」
リコリスはアイズフォンの通話を終えると、ケルベロス達に向き直った。
「聞こえていたと思いますが……救援要請です。それも、かなり急を要するものです」
「場所は……あの、大きな攻性植物がいる戦場なんだね?」
アトリが言った。
「分かってるなら、早く行くでござる! この作戦に参加した全員で無事に帰らなければ意味がないでござるよ!」
フェルの言葉に、ケルベロス達は頷いた。
ケルベロス達は簡単な治療を終えると、すぐに新たなる戦場へ向かって走り出したのだった。
●連戦・モデルダイン
ケルベロス達が新たな戦場へ到着する。
戦場では、傷つき倒れた一人の少女の姿が見えた。彼女はモデルダインに今にも踏みつぶされそうになっている!
「させませんッ!」
レクシアが背中の羽を開き飛び掛かった。鋭い蹴りが突き刺さり、バランスを崩すモデルダイン。彼女に続き、スズナが蹴りで、リコリスが攻性植物で、ラセンが拳で、モデルダインへと飛び掛かる。
一方、フェルとマルガはヒールドローンを展開。モデルダイン討伐班の治療を開始する。
呆然と少女――祝部・桜が事態を眺めていた。アトリは大慌てで、桜のもとに駆け寄る。
「少し、我慢してね……!」
緊急時のショック療法であるグラビティを使いながら、彼女は桜の治療を行う。
「とりあえず、もう立てると思う……助けに来たよ」
「ありがとう、ございます……」
ふらふらと立ち上がりながら、桜は礼を言った。
そこへ、歌夜の残影の剣戟が舞い降りる。
「まだ立てる方はいらっしゃいますか? 可能なら、助力を、お願い致します」
歌夜の言葉に、モデルダイン討伐班のメンバーが次々と立ち上がり、再び戦意を表した。
そして、ケルベロス達の、この夜最後の戦いが、幕を開けた。
合流した2班のケルベロス達による総攻撃が始まった。
モデルダインは未だ強大なまま健在であり、ケルベロス達の消耗も激しい。
だが、ケルベロス達の士気は高く、モデルダインの巨体を以てしても、その意志を踏み潰すことは出来なかった。
モデルダインの一撃が、ケルベロス達を飲みこむ。
だが、モデルダイン討伐班のケルベロス達、そしてフェル、アトリらの迅速な援護により、傷は癒されていく。
「あと一息です! 押し切りましょう!」
モデルダイン討伐班、糸瀬・恵が叫ぶ。
彼の言う通り、モデルダインはあちこちに深い傷を負っている。畳みかけるなら今だ。
彼の叫びを合図に、両チームのケルベロス達が、最後の一斉攻撃を仕掛けた。
そして、モデルダイン討伐班の桜が短刀を閃かせ、ボロボロになった蔓を刈り取り、無防備な肉体をさらけ出させた。
そこへ、スズナが刀を構え、飛び掛かる。
「オーズの種のちから、すごいです……けれど!」
一閃。
モデルダインの身体を深くえぐる刃。
それが、最後の一撃となった。
モデルダインは、ついにその巨体を大地へと横たえた。そして瞬く間に枯れ、塵となって消滅する。
ケルベロス達は、モデルダインの討伐に成功したのだった。
●明ける夜
「……すまない、助かった」
モデルダイン討伐班のヤクトが、ケルベロス達に声をかけた。
「いや、無事でよかったっす。間に合って、よかったっすよ」
それに答えるマルガの声には、確かな安どの色が見て取れる。
ケルベロス達はすぐさま治療に移った。幸い、命に別状のあるメンバーはいないようだ。
リコリスが、他班の状況を確認している。どうやら、他のケルベロス達も作戦を無事完了したようだった。
ケルベロス達に、再び安堵の空気が漂い始めた。
ケルベロス達の長い、長い夜は、今ようやく明けようとしていたのだ。
作者:洗井落雲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 8/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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