星霊戦隊の復讐~生命濯ぐ杯

作者:黒塚婁

●誘われしモノ
 何処でもなく、何処でもある……力ある種子に誘われ、ソレはゆっくりと姿を現した。
 深夜、かすみがうら市のとある市街地――。
 闇においてなお瑞々しく輝く艶やかな葉。無数の蔦が寄り合い、無数の葉が覆い作り出すのは、清浄なる水湛える器。
 見上げる程に大きいが、蔦を這わせながら地を滑るように真っ直ぐ移動してくる。
 人にも獣にも似ぬその姿が堂とそこにあれば、何処か神聖な気配すら感じるが――攻性植物の例にもれず、人々の生命を汲み上げ屠る存在に相違ない。
 他に居並ぶものたちと同じく、オーズの種に引き寄せられ、現れたもの。
 赤と青の鎧纏うエインヘリアルは如何なる目的でそれらを呼び集めたのか。
 諦観も怨恨も飲み干し、その杯は、ただ佇むのみ――。
 
●生命濯ぐ杯
「集まったか――星霊戦隊アルカンシェルに新たな動きがあった」
 雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は僅かに目を細め、ケルベロス達へ告げた。
 奴らは白刀神・ユスト(白刃鏖牙・e22236)が危惧していたように、オーズの兵器化で戦力を補充していたようだ。
 現在オーズの種を埋め込んだ十体の攻性植物を支配下におき、市街地を破壊しながら進軍しようとしている。
 二体のエインヘリアルと、十体の攻性植物――それらはかすみがうら市を起点とし、隣接する土浦市、つくば市を目指して進軍してくると見られている。
 その後は、つくばエクスプレスの線路沿いに都心部を目指す可能性が高いだろう。
「かすみがうら市には避難勧告が出され、市民は脱出完了とのことだ。土浦市も、間もなく完了する――つまり、その二市の間でそれらを迎え撃ってもらうことになる」
 よって、周囲への気を遣う必要はないわけだが、同時に、なんとしても此処で食い止めねばならぬという事でもある。
「二体のエインヘリアルの強さは無論のこと、攻性植物もオーズの種によって強化されている。順調に倒せたのならば、他の戦場へ援護へ向かうなど、連携した策が必要となる――そして万が一、敗北した者達があれば、余所の敵がやってくる可能性もあるということだ」
 さて、その攻性植物が一体、グロウリングゴブレットについてであるが――。
 外観は、葛の蔦と葉が密集して杯を模ったような攻性植物である。
 下部の植物部分で吸い上げた生命力を変換した水で、上部に満たしているという。杯が零れるほどに満ちた時、水面を覆うように無数の花が咲くのだが――それが、凶悪なる一撃を放つ。
 攻撃は三種――生命力を吸い取ってくる蔦と、そのための贄を縛り上げる蔦、強力な一撃を誇る花弁による攻撃となる。
 大きさは四、五メートルほどか。蔦を伸ばせばゆうにその倍に届くであろう。
 常に射程範囲で戦うことになるだろう、と辰砂は語った。
「戦場はかすみがうら市から土浦市に向かう、国道6号線土浦バイパス周辺の市街地。奴らは市街地を破壊して進軍するように命じられている。よって、貴様らはそちらに潜み待つ、と段取りになる」
 他の注意事項は先に語ったとおりだ――そこまで語り、彼は強い視線でケルベロス達を一瞥した。
「奴らからすれば相応の報復、となるのだろうが。さりとて、こちらにしてみれば言いがかりに等しい――全力でもって、此処で止めろ」


参加者
大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)
戯・久遠(紫唐揚羽師団のヤブ医者・e02253)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
古牧・玉穂(新涼・e19990)
レイラ・クリスティ(氷結の魔導士・e21318)
ステラ・アドルナート(明日を生きる為の槍・e24580)

■リプレイ

●蹂躙者
「戦争に比べたら規模は小さいけどよ。それでも大規模作戦なんだよなぁ」
 どこかのんびりと戯・久遠(紫唐揚羽師団のヤブ医者・e02253)は唐揚げを頬張り、周囲へ視線を送る。
 夜間であらば、この静けさは然程不自然な事ではない。だが街に一切の灯りが灯らぬとなれば、よく知った場所に似た、与り知らぬ虚無の中に放り出されたような――廃墟とはまた違った空虚さがある。
「集めたオーズの種は、このように使用するつもりだったのですね」
 殆どひとりごつように零したレイラ・クリスティ(氷結の魔導士・e21318)の言葉に、片目を閉じ、他班らと連絡を取り合っているレッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)が頷いた。
「星霊戦隊もしぶとい連中だが楽園樹の残した禍根……文字通り何とも根深い事だ。此処は確実に潰しておかなければな!」
 皆を鼓舞するように強く言い放ち、赤いゴーグルの下の両目を開く。
 各班の準備と位置取りの確認が終わったのだろう。一瞬場を支配した沈黙が、周囲の緊張をますます高める――。
「ぶーちゃん、大丈夫?」
 大弓・言葉(ナチュラル擬態少女・e00431)は己のボクスドラゴンに問いかける。
 臆病でビビりな気質の相棒は、全身で否定する――小刻みに震えながら。紛うこと無く、強がりである。
 それもいつものことであるため、言葉は思わず笑みを浮かべる。
 ふと、祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)が顔を上げた。視線をひとどころへ向けて、そのまま微動だにしない。
 長い黒髪の間から覗く赤い瞳には感情の色は無く、彼女が仲間だと知らねば、出たか、と思わず呟いてしまいそうな存在感だが――彼女と同じ方へ視線を向けたカジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)が、小さく唸った。
「皆、あれを」
 指し示された市街地が『壊れていく』――そして、どんどんと近づいてくる。
 瓦礫と土埃の間にうっすら見える輪郭で、ケルベロス達は確信した。あれこそ、葛の蔦で編み上げられた杯の形をした攻性植物――グロウリングゴブレット。
 本体そのものは道の真ん中を悠々と滑るように移動しているが、その左右にある建物があわせて壊れていく。恐らくは、移動のために蔦を伸ばし、押しつぶしているのだ。
「おいおい、なんだありゃ? デカ過ぎねえか?」
 呆れたような声を発したのは久遠だ。声音こそまだ少し戯けていたが、眼鏡を外した眼光は鋭く強くそれを見据えていた。
「みんな、行こう!」
 止めなきゃ、とステラ・アドルナート(明日を生きる為の槍・e24580)が声をかけると、古牧・玉穂(新涼・e19990)がええ、と柔らかな笑みを浮かべて続く。
 ケルベロス達に迷いは無い――だが、それの姿を遠目にした瞬間、言葉の胸の奥にもやもやとした何かが浮かんで、消えなかった。

●克つ
 グロウリングゴブレットはケルベロス達を認めると、四方へ張り巡らせた蔦をひとたび戻し、侍した。
「……今までに相手してきた雑多な植物とは訳が違うか。……だが、関係はない。……ワタシはただ、祟るのみ」
 既に瓦礫の山が積み重なり、もうもうと土埃が立ちこめ、その中心において素知らぬ顔で座する緑の杯へ、イミナはじろりと感情の無い瞳を向け――色を帯びた爆風で、仲間の背を押すと、自らも踏み込む。
「……祟り尽し、その水を涸らし、死の底へ」
 低い声音で告げ、傍にある蝕影鬼へ命じる。
 怖じ気づくこと無く、極自然に、玉穂がするりと前に出る。戦場にあっても、彼女の足取りは散歩でもしているかのように軽やかだ。
「ごきげんよう、後ろが詰まっていますのでなるべくお早いお帰りをお願いします」
 スカートの裾を軽く摘んでそれへ挨拶すると、己の幻影を纏い二重映しに構えた。
 それとほぼ同時、幾重にも束ねられた葛の蔦がしなり襲いかかる――それは通常の蔦の何十倍かの太さで、建物を容易く破壊する威力も納得できる――咄嗟に後衛を庇った久遠を捉える。
 そう認識した時には腕から胴をひとまとめに、ぎりりと締め上げられていた。みしりと身体の内側から何かが響くほどの力だが、それ以上に内側から力を吸い上げられていくような感覚に、彼は苦笑を浮かべた。
「なるほど、手強い……だが」
 風を切る鋭い音を立て朱き蔦が走り、大きな蔓に巻きつき、食い込むほどきつく縛り上げた。そこへ、流星の煌めきが宙より一閃、根元から蔦を断ち切った。
 真朱葛を手元に戻すレッドレークが不敵な笑みを浮かべる傍ら、カジミェシュは先祖伝来の具足と身の丈ほどの大楯を構え堂と立ち、
「怨恨と報復、か。散々人間を害しておいて、今更被害者面しようというのはな。あんな連中の勝手にさせて置く訳にもいくまい、お前もまた、ここで討ち取らせて頂こう」
 サーベルの鋒をそれへと突きつけ告げる。
「とにかく、ここから先は通すわけにはいきません! 私にできることを……全力で!」
 叫んだレイラの身体から、光輝くオウガ粒子が放出し、仲間達の感覚を奮い起こす。
 戦場は動き出した――しかし、言葉だけは、ゴブレットを茫然と見つめていた。
 ……思い出した、と漸く絞り出した声は細く。
 破壊を尽くす巨大な敵、その姿に憶えた不安の正体。
 失われた両腕。それが地獄化した時の事を、彼女はずっと忘れていたが――そう、このグロウリングゴブレットこそ、九年前、言葉の腕を奪った仇敵。
 突如、糸のように細いケルベロスチェインが高い音を立てて、正面より迫る蔦をぶつかり、搦め捕る。
「言葉さん! 大丈夫?」
 ステラの声で、現実に引き戻される。自分よりも先に、ぶーちゃんが封印箱ごと突進していく姿を目にし、なすべき事を思い出した。
 簒奪者の鎌を構え直し、
「絶対ここで仕留める……! 犠牲は出さないから!」
 決意を口に、鎌を横薙ぐ。
 放たれた時空凍結弾が足下にぶつかれば、ひとつの蔦を凍らせていく。何も出来なかったあの頃とは、違う。
「さてと……好き勝手はさせないの!」
 いつも通りの明るい口調で言い放ち、それへと改めて刃を向けた。

●生命、毀れ
 蔦が踊れば、舗装された道は容易く陥没した。ひとつ躱しても、別の蔦がケルベロス達を待ち構えていた。
 奔放な蔦とは裏腹に本体そのものは殆ど動かぬ――ゆえに一方的に仕掛けられるかと思えば、素早く伸びた蔦に攻撃を叩き落とされる。
 そして、ひとたび脚や身体に絡みついた蔦はなかなか解けず、行動を阻んでくる。
「搦め手が多い相手か……厄介だな」
 改めて、久遠が零す。彼は仲間を庇う立ち回りの中でも特に疲弊していた。
「陽を巡らせ陰を正す……万象流転」
 乱れた呼気を整えながら、体内の陽の気を高め自らの傷を治す――されど、癒やせぬ疲労を強く感じる。
「負けないの!」
 メタリックバーストで鼓舞しながら、言葉は蔦の動きを仲間へ伝える。
 互いの激しい攻撃の中心、悠々と振る舞うゴブレットを一瞥し、レッドレークはひとりごつ。
「俺様の真朱葛にもオーズの力を宿せば格段に強化……いや、手に負えなくなりそうだな」
 今だって充分に気性は荒いと口の端を軽く歪ませ、左手を敵へと向ければ、その通り真朱葛は獰猛に食らいついていく。それを追う容赦ない斬撃、放つ玉穂の表情は相変わらずだ。
 一進一退の状況、されどケルベロス側が常に一歩優勢であった。皆が注意深く立ち回っていることもあるが、殊にレイラが細かく仲間を支えていたことが大きい。
「ここは、絶対に通しません!」
 レイラが展開したサークリットチェインが強く輝く――守護の力を借りながら、イミナは淡々と蔦を斬り裂いて逃れるが、一度捕らわれればかなりの体力を奪われる。
「……まだいける、次だ」
 言い捨て、平然と振る舞うイミナの実際の状態を見抜き、すかさずボハテルに回復を指示したカジミェシュは、敵を見やる。
「少しずつ削っていくしかないのだろうが……む」
 見上げた杯の頂が淡い光を放ってる。
 いよいよ花が満開になった徴だと気づき、先に散らさんと彼はスターゲイザーを仕掛けるも、間に合わぬ。
 命を吸い上げ咲いたそれが命屠る力へ変換し、放出した瞬間――世界が、白く染まった。
 空気が震えるほど、凄まじい力の放出を感じた。
 目を開けたステラは、飛び込んできた光景に息を呑む。
 真っ直ぐ一直線にあった瓦礫が消えていた。放射された力が全て塵と化したのだろう、地を抉り土が剥き出しになった地点の果て、白衣を真っ赤に染め久遠が膝をついていた。全身に焦げたような臭いを纏い、片目は血で濡れて満足に開かぬ。それでも敵を見据えたまま、言い放った。
「仲間は俺が守る。簡単にはやらせはせんぞ――俺達には仲間がいる。この場所にも別の戦場にも、そして帰る場所にもだ」
 そして仲間達へ言外に行け、と促す。
 一瞬の沈黙より、時を動かすは凛と清涼なる声。
「火精の加護……その力を、皆さんへと!」
 透明感のある水色の髪を踊らせ、レイラは青紫色の瞳で強く前を見据え、祈る。
「炎の精霊よ。すべてを焼き尽くす、炎の加護を与えたまえ」
 赤く燃えさかる魔法陣から、翼竜の姿をした火精を召喚する――サラマンドラヴェールの加護を受け、イミナが相棒を連れ、前に出る。
「……蝕影鬼、往くぞ。……奴を幽世へ引き摺り込む」
 受けた傷も何もかも、イミナにとってみれば祟るための糧にすぎぬのか。
 無数の蔦が彼女を止めようと襲いかかってくるが、意に介さず。手足の動きが鈍くなろうが、白い衣が更に赤黒く染まろうが、省みず。
 辿り着いたゴブレットへ――杭を、打ち込む。
「…弔うように祟る。祟る。祟る祟る祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……封ジ、葬レ…!」
 祟『贄穿ちの弔杭』で、止め処ない苦痛を返すかのように何度も何度も叩きつけた。
 猛攻に危機を感じたか否か、受けた傷を癒やそうと贄を求める蔦を、カジミェシュが叩き落す横で、言葉が動く。
「可愛くなあーれっ!」
 掛け声と共にリボンやフリルや花で久遠をぐるりと覆う。華やかな技であるが、今は必死であった。その命を溢さぬために強く力を籠めた。
「その身に刻め、全力全開の一撃……!」
 叫び、後方より一気にステラは駆け抜ける。
(「数多の敵を殺して奪い、身体に刻んだ魔術と魂……今それを、大事な命を護る為に振るう槍へと変える。虫の良すぎる話かもしれない。けれど、迷いは無い」)
 背後で暴走した光翼が強く輝いている。裡で降魔の力と鹵獲魔術を融合させ彼女自身が光の槍と化す、突き穿つ閃光の闘志。
「ボクはこの右手で、全てを突き穿つ――!」
 振り抜いた右の拳。立ち塞がる全ての蔦を、膨れあがった光の槍が一掃した。
 その光が静まると、闇が一段と濃くなったような――静寂。
 鍔鳴りの小気味よい音が戦場で妙に高く響いた。
「せっかくこんな夜ですから、月の光の中に虹をお見せしましょう」
 玉穂が落ち着いた声音で囁き、ゆるりと微笑んだ。戦場において、こんなにも穏やかな微笑みを浮かべられるだろうか。
 そのまま彼女は柄に指を滑らせる――流麗な所作で、僅か、変じた居抜き。解き放たれた白刃に、月の光が描く虹が鮮やかに宵闇に浮かんだ。
 それはケルベロスが放つものだから、見た目通りの斬撃ではない。
 巨大な蔦で造られた杯、それは斜めにずるり、とずれると、ゆっくりと滑り落ちていく。彼女は巨大な攻性植物を、見事両断してみせた。

 溢れた水が彼らの頭上から雨のように降り注ぎ、大地に還る。
 言葉はそれを見届けて、目を閉じた。かつて失われたものは戻ってこないが、更に失うことは阻止してみせた――。

「グロウリングゴブレット討伐完了――」
 レッドレークが他班に向け報告する。
 片目を閉じて、暫し何やらやりとりを確認する彼の開いている方の目が、再び厳しい光を宿す。
 皆の視線が彼へと注がれる。
 連絡はすぐには終わらない。届いている情報が如何なるものか仲間達には解らないが、ただならぬ状況であることは、彼の重い口調と剣呑な気配から、推測できた。
 何より『何か』がなければ、これほど連絡が長くなることはない。
「了解した。こちらも迎撃準備を進める」
 後半は半ば仲間達に向けて告げ、通信を一時終える。北を示して、告げる。
「来るぞ、トレントバイパーだ」

●死線を継ぎ
 6号線より北、125号線方向――市街地に道路をうねる巨大な攻性植物を捉える。
 トレントバイパーは、大蛇型の攻性植物。頭から尾までは十八メートルを超え、鎌首をもたげれば四メートルに及ぶ――尤も、今や身体には無数の傷が走り、既に満足に頭を起こす力も残されておらぬ。
 右目は穿たれ潰れ、片牙も失った不格好な姿で、それはいずこへ向かうか。
 なおも隻眼に宿る冥い光は生に対する渇望か。或いはここで終わりならば何もかも破壊せんとする意志か。
『こちら、トレントバイパー討伐班……残念……ながら、力、及ばず……』
 先程聴いたレーン・レーンの無念さを殺しきれぬ声音がレッドレークの耳に残っている。
 どうか――、その先の言葉にならぬ思い。直接聴いたのは彼だけであったが。思いは、皆共有している。
 こちらも決して万全とは言えぬ。だが、委ねられたのなら、果たさねばなるまい。
「きっちり片付けて、皆で帰りましょう」
 ふわり、微笑んでそのまま無造作に前へと進むは玉穂。
 そんな彼女に気付くなり、それはゆっくりを頭を起こし大きく開いた顎で、頭から食らいつこうとする。横から、細い鎖が音を立てて牙に巻き付く。してやったりとばかり、ステラの金の瞳がきらりと輝いた。
 そこへ、玉穂がたたん、と軽やかに深く踏み込み、緩やかであるが容赦の無い斬撃で返す――更に背後より烈風が叩きつける。
「ボハテルよ、龍(Smok)にして英雄(Bohater)の名持つ友よ、汝その名の所以を顕せ!」
 グラビティ・チェイン注がれ、一時的に軍馬ほどの大きさとなったボハテルに騎乗したカジミェシュが突撃したのだ。
 その衝撃は、朽ちかけ始めていた身体を更に痛めつけた――が、その勢いを尾へと受け流し、更なる反動で振った頭を彼らへと叩きつけ、道をこじ開ける。
「それは悪手だ」
 口の端を上げて待ち構えていたレッドレークを、それは見たか。
「その身を贄と捧げろ!」
「地徳は我が方にあるぞ!」
 YIELD-FIELD:C――大地に浸食した朱き蔦が魔法陣を描く。赤く染まった熊手状の蔦草が巨大なそれへと食らいついた。
 牙を剥き、頭を振って抵抗するも虚しく。いくつもの朱い筋がそれの頭部に走り、締め付け――ばらばらに引き裂かれた。
 頭部を失った大蛇は、ゆっくりと枯死し崩れ、土埃と共に風に舞い消えていった。
 ――トレントバイパー、討ち取ったり、と。
 再び片目を瞑り、仲間達へ報せるのだった。

作者:黒塚婁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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