化生の桜

作者:baron

「この桜はいつも時期外れの花を咲かせるんだよな。その秘密を解き明かさなくちゃ」
 男はスコップを手に、花の散ってしまった桜の木に向かった。
 そこは北面だからか山影が広い上に、山風で涼しい場所だ。
 ゆえに時期遅れの桜で知られているのだが、男はソレを信じなかった。
 その理由にも一応根拠は在る。
「育ちが悪いだけなら、あんな見事に咲きゃあしないっての。ってことは、下に何か埋まってるってもんだろう」
 この樹は狂い咲きの化生桜として有名だった。
 それはそれは、とても見事なつやを出すのだ。
 何か足元に、特殊な栄養でもない限り、ありえないと男は信じていた。
「やっぱりナニカある。へへ、桜の下には死体が埋まってるって言うっけ、ナムアミだぜ……」
 男のスコップが、コツンコツンとナニカに当たり始めた所で、ソレがやって来た。
「幽霊……? いや、女か」
『私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります』
 男が振りかえった時、どこからかやって来た女は、鍵で胸元を突き刺した。
 もんどうりを打って転げる男が最後に見たのは、双子の様に咲く二本目の樹と……夏に狂い咲く見事な花弁。
 そして、根元に埋まっている骸骨であった。


「不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人が、ドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったようです」
 セリカ・リュミエールが、最近になって増え始めた事件の事を語り始めた。
「聞いたことある方は知っていると思いますが、『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようで、奪われた『興味』を核にして現実化した怪物型のドリームイーターにより、事件を起こそうとしているようです」
 怪物型のドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい。倒す事ができれば、『興味』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるでしょう。
 セリカはそこまで告げた後、みなが話を呑みこむまで少し間を開けた。
「狂い咲く化生の桜は、足元に死体が埋まっているという噂を聞いたことは在りませんか? 今回の敵は、そのような姿をしています。そして、幾つかある定義の内、何者であるか問うた答えを持って、対応に当たり始めると言う事です」
 化生の桜には、何種類かの付随するパターンがある。
 例えば、鬼門を守る護国の桜。
 例えば、死に別れた恋人を待つ悲恋の桜。
 例えば……。
「安全な正体もあると言う事ですが、残念ながらあまり意味がありません。強いて言うならば、最初に使う技の傾向を特定できるくらいでしょうか? ただ……」
 セリカはそこまで言って、皆の顔や装備をグルリと見渡した。
「ドリームイーターは、自分の事を信じていたり噂している人が居る、あるいはそれを象徴するような物があると、引き寄せられて狙う対象とする性質があるので、うまく誘き出せば有利に戦える可能性は在ります」
 そう言った話題や、持っている場合は噂話や伝承の本などを用いることで、囮となったり、対象から外れることはできるようだ。
 作戦で話でもするか、たまたまそんなメンバーが参加するなど偶然が重なるかすれば、試してみるのも良いかもしれない。
「何に興味を持つかは人それぞれですが、その興味を使って、化け物を生み出し、人を襲わせるなど許せません。是非とも対処をお願いしますね」
 セリカはそう言って、簡単な地図や相手の姿をメモとして手渡し、相談を見守るのであった。


参加者
ノア・ノワール(黒から黒へ・e00225)
ガーネット・レイランサー(桜華葬紅・e00557)
筒路・茜(赤から黒へ・e00679)
フィオレンツィア・エマーソン(ハウンドチェイサー・e01091)
ヴェルセア・エイムハーツ(無法使い・e03134)
クラム・クロウチ(幻想は響かない・e03458)
マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)
ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)

■リプレイ


「人の『興味』を奪うとは、変わった事件が起こったものね」
「興味、か。関心と興味とは違うのだろうか?」
 フィオレンツィア・エマーソン(ハウンドチェイサー・e01091)は戦場となる公園が見え始めると、周囲を軽く見渡した。
 彼女の呟きを広い、ガーネット・レイランサー(桜華葬紅・e00557)が首を傾げる。
「同じようなものだとは思うけど……まるで純粋に人の夢に興味を持ってそれを力に変えて僕にしているようね。それじゃまた」
 黒豹に身を転じながらフィオレンツィアは軽く判れを告げると、近くにある高い木に登って寝そべった。
 そして、その『夢の収穫』が向かう行末に思いを馳せる。
 視線の先には、それはみごとな……。

 いや、恐ろしい程に美しい桜が咲いていた。
 真夏の夜の夢というには、寂しげに。

 公園に入った段階で仲間達は三々五々に、陽動をかね何気ない会話を始めた。
「オォ、さすが国樹ってだけあって見事なもんだナ」
 フンと鼻を鳴らしてヴェルセア・エイムハーツ(無法使い・e03134)は陽気に笑う。
「この時期に桜が見られるなんてちょっとラッキーじゃねぇカ? まァ、どうせすぐに散っちまうんだけどナ?」
「一夜の夢に狂い咲く、そんな桜の木の下には屍体が埋まっている……なぁ。どこかでそんな話を聞いた事がある気もするけど……さて、実際はどうだかな」
 ヴェルセアの声こそ陽気だが、どこかシニカルな響きが含まれていた。
 そんな彼の意図に気付いて、ルト・ファルーク(千一夜の紡ぎ手・e28924)は溜息をついた。
 足元を見れば、あの桜が偽りである事に気づくのは容易い。
 そんな風に理解して樹を見上げれば、もとの枯れた桜が見えるような気がする。
「まぁ、桜はデリケートな植物だから、根元に妙なものを埋めると枯れるが」
 ガーネットは近くにランタンを置くと、花見客を装って会話に加わった。
「(何にせよ……許す訳にはいかない。その興味もまた、その人を形作っているものなのだから)」
 言葉には出さないがその思いは一つ。
 夢失い倒れた人を救う為、ドリームイーターの野望を挫く為に。


「この暑い中随分と派手に咲いたもんだが……桜と言えば、恋人が心中したッて話は知ッてるか?」
「興味深いな、その話」
 クラム・クロウチ(幻想は響かない・e03458)はケルベロスコートの下に武装を隠し、できるだけ温和な表情で話しかけた。
 仲間達が息を呑んで僅かな間が空いた所で、マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)は真面目腐った顔で頷く。
 知っているのかクラム? と続きを促した。
「気になってこの辺りの噂話を調べたらな。2つの城が近くに合って戦国武将の……対立する家があったそうなんだ」
 クラムは町で調べた逸話を話し始めた。
「段々読めて来たぞ。会ってはならぬ二人が出逢い、惹かれあったと。だが悲劇的な事に……」
「ああ。家族の反対を受けた二人は……仮にロミ夫とジュリ江としておこうか。手に手を取って心中したって寸法だ」
 二人は街に伝わる話を膨らませて、悲恋の桜としての確定を狙った。
 マサヨシは感心しながら相槌をうち、調べて来たクロムが積極的に話題を進める。

 仲間達は少し離れた位置から取り巻き、あるいはベンチに座って見守っていた。
「さぁ、話題は佳境だね。これが終わったら茜は何がしたい? それとも――何をして欲しい、かな?」
「えぇ? 何をして欲しいってそれは勿論……♪」
 ノア・ノワール(黒から黒へ・e00225)と筒路・茜(赤から黒へ・e00679)はキャッキャウフフしていた。
 嫉妬に狂った二月や十二月の集団なら、末長く爆発しろと言うだろう。
 右目を閉じてノアはウインクしながらこの先を予測すると、茜の反応とナニカの反応が混在する。
「―――、ノアに抱き付いたり、撫でて貰ったり、お話したり……『いつも通り』たくさん可愛がって貰うんだよっ」
『私は誰だったの? 私たちは何処へ……?』
 んー。と目を閉じて唇を突き出す茜の姿と、自分すら見失ったナニカが観測される。
 無論、細部は違うのだろう。
 枝葉に別れた未来の内、良くある一風景を予想したに過ぎない。
 クスっと笑って、ノアは呟いた。
「美しいものだよね、満開の桜って。けれど美しさは畏敬を呼び、畏敬は恐怖を呼び起こす。そして恐怖は興味を惹きつけ、興味は命を喰らう。はてさて。それじゃあ、夢喰い君その次は何だろう?」
 ノアが桜を見上げながら手串で撫でて来るのを心地良く受けながら、茜は猫のように喉を鳴らした。
「―――? 季節外れに咲く桜。そんな寝坊助桜の下には死体が埋まってる? 生物の生誕と終わりは表裏一体とか、そういう噺かな。興味深いよね、『物語』が終わっちゃった夢喰い君はどんな姿をしてるのかな?」
 鳴ると言っても、ソレは唄のように紡がれる言葉だ。
 猫を殺した好奇心は、果たして何者の糧になるのか――試してみるのも一興、ってね?
  二人は詠うようにその刻を待つ。

 興味深く見つめる仲間達の視線の先には、ドラゴニアン達の話題が佳境に至っていた。
「そうか死に別れても来世でこの桜の下で再び夫婦になろうと誓ったのか……」
「悲恋どころか恋そのものが俺にャ縁が無さ過ぎて、ここで話してるのが場違いに思えてくるがな」
 増大するグラビティにマサヨシが最後の感想を切りあげ、クラムは肩をすくめた。
 必要だから話題を作ったものの、戦闘がメインの二人には恋など専門外。

 だが、その苦労はしかりと現われる。
『私たちの一生は誰の為だったの? 私たちは貴方は何処へ……? 未来は花香る望ましの……』
 二つの家が憎しみ合ってさえ居なければ、政略結婚という形ですら幸せで居れたはずだ。
 それすらも叶わなかった二人が求めたはずの理想郷なのだろうか?
 しかし、その物語も彼女たちの望みも、全てが、今やドリームイーターに利用される存在である。
「てめェは結ばれなかった恋人共の成れの果てだ」
「故にそこに眠る者は女性であり子供である、と。ならば俺はもしかしたら君の待ち人かもしれんぞ?」
 マサヨシとクラムは幽霊のシーズンにはぴったりだが、桜にはちと遅ぇよなぁ? と牙を向いた。
 悲しき夢を終わらせる為の戦いが、此処に始まる。


『二世を契ったアナタなれば、共に黄泉路へ参らなむ』
「自分で言っといてなんだが、悪いがオレは間違いなくテメェの待ち人じゃあねぇな」
 最初に断っとくぜ?
 マサヨシは襲いかかって来る『女』に対して、穏やかに告げた。
 だが、それも最後だ。ここから先は血に飢えた獣となる。
「これから始末する相手が前世の嫁さんなら、ちったぁ情が来るはずだろうからなァッ!!」
 コーン!
 甲高い音を立てて、二つの籠手が打ち鳴らされた。
 着物の柄よりい出る桜吹雪が絡みつき始めるのを、蒼き炎が焼き払い威力を半減させるが、残念ながら直撃を避けられてしまう。
 チっとマサヨシは舌打ちした後、簡単にはいかないねえと獰猛な笑顔を浮かべた。
「目標を確認。状況を開始する」
 戦闘開始を告げたガーネットの耳辺りからアンテナが起き上がり、ゴーグルが装着され、瞳が赤く輝く。
 そして味方前衛、特に攻撃を受けたマサヨシとクラム周辺にミサイルを撃ちだしたのである。
「耐性を付与する……ないよりはマシだろう。……斉射!」
「援護か、そいつァありがたい。さあ、こいつで『粉々になりやがれ…!』反撃開始だ!」
 ガーネットが周囲に張った力の正体は知らずとも、クラムは感謝の意を返した。
 そして右手から怒りと共に暴力的なグラビティを放出すると、その衝動を抑えるように左手からもコントロール重視で放出する。
 両の拳を合わせ右手と左手で異なる力の渦を制御し、感情の奔流が桜の花びらを呑みこんで行った!

 その頃には仲間達の態勢も整い、次々と集結し始める。
「旦那の居る処へ送ってやるヨ!」
「おや、気の早い事だね。まあいいか」
 ヴェルセアは前衛達の間を抜け敵影に迫り、ナイフを軽快にジャグリング。
 右手に持ったナイフを左手に回し防御を迂回する動きに、ノアは出番かとベンチから立ち上がる。
「―――も~う? 面倒くさいなあ。でも御褒美のためなら仕方無い、ねっ」
 膝枕をおねだりしていた茜は、ノアが先に立ちあがったことでベンチから崩れ落ちる……かに見えた。
 落下ギリギリで翼の力を起動し、脚力だけで立ちあがる。
 下から上への急加速、妙にやる気になった茜は翼の炎で撫でる
「佳い塩梅だ『見せておくれ、君の全てを――』全座標の可能性を君はさらけ出している事を思い知るがいい」
 ノアは閉じた右眼にありえた他の運命を垣間見て、左目で現在の姿を観測し続ける。
 太樹の様に拡がりゆく『全て』を見つめることで、送り込む消失の魔力をの精度を限りなく高める。
「みんな景気良くやってるな。んじゃ、もうちょっとやり易くしてやるか」
 ルトが指を弾くと、待機していた重力の縛鎖が仲間達の周囲を覆い始めた。
 それは何重にも周囲を取り巻き、彼らを守る結界と成ったのである。
「これで封鎖完了っと。みんな、思いっきりやって良いわよ」
 敵の後ろを封鎖し包囲網を完成させる形で、フィオレンツィアは黒豹の姿を解いた。
 そして恐るべきスピードで駆ける。
 ただのステップであるのに、まるで全力疾走であるかのようだ。
『わが脚は光の如く戦場を駆け、わが拳は風の如く敵を打ち抜く。』
 同じように見えて、僅かにスピードの異なるステップ。
 高速機動による残像を残し、フィオレンツィアの爪先が桜を抉ったのである。
 死角より迫る一撃は、何者にも避けることを許さない。
 こうして狂い咲く桜とケルベロスとの戦いが、始まったのである。


「ヒュウ! まともな奴相手だったラ、獲物を奪われちまった処だナ」
「誰がやっても構わないと思うのだけれどね。結果を受け入れる事さえできれば」
 対象的と言えば、ヴェルセアとフィオレンツィアもそうだ。
 彼が自分が愉しむことを良しとし罪を味わうならば、彼女は結果的に確実な救済を良しとし罪を背負う。
 今も容赦なく桜の幹へ浴びせるガトリング砲は、一発一発が彼女の心すらも削る。
「まー、成るようになえばどっちでも良いんだがネ。さて、もうひと踏ん張りだゼ!」
 今度はナイフを逆手に構え、ヴェルセアは背より教習する。
 もう片方の手を柄に添え、ズブリと深く抉った。
『あの方はいずれに……我が身はあの方のもの、失せよ!』
 女が護身用の短刀を抜くと、背後に巨大な太刀が現われ桜吹雪の剣圧を放つ。
「(探しているのは、てめえの後ろに居る奴じゃねえのか?)」
 そう思いつつも、マサヨシは声を掛ける気は無かった。
 いずれにせよ、この幻は全て偽りなのだ。
 さっさとトドメを刺してやるのが幸せというものであろう。
「今度こそ『魂すら残さない極炎の中で――滅べ!』生まれ変わるがいい」
 回し蹴りを放ったあとの態勢を整えたマサヨシは、再び地獄の炎をまとった。
 蒼白き火焔を強引に拳に集中すると、今度そこ確実に直撃したのである。
「……引き裂く。散滅せよ、デウスエクス!」
 ガーネットは直線的な動きから、手元に踏み込む鋭い連撃に切り換えた。
 両腕のブレードを交差させ、一手目の刃に二本目を叩きつけ深くエッジを立てる。
 そしてバックステッテプで下がった後、駆けろ……と呟き再び飛び込むために身を沈めた。
「治療は要る?」
「いや。俺らは頑丈だからな、他の連中の援護もあるし、今はいい」
 そっかとルトはクラムの返事に頷き返すと、微笑みを浮かべ開けゴマと呟いた。
 敵が続けて専門のディフェンスを攻撃し仲間の治療もあり、少し余裕がある。
 ならばと、クラムが放つ荒き炎の蹴りに続いて攻撃へ回った。
「そういえば、桜の下には桜の国へと繋がる入り口があるって逸話もあったよな」
 悪戯っぽく笑った後、特徴的な短剣……ジャンビーアを構え、詠唱を開始する。
 ルトの背後で開かれるのは、桜の国への入り口ではなく、遥か彼方の理想郷へと続く道。
 亜空に開かれし扉から吹き荒ぶ風が、偽りの桜花を容赦なく刻み、散らしていく。
「―――、いっくよー」
「了解っ」
 二条の流星が空を掛け、着地していた。
 茜は低い軌道で走り込むと、独楽のように回転しつつ精神力を刃に変換する。
 一方のノアは、再び魔眼の魔力で状況を観測し始めた。
「うん。このままトドメを刺そうか」
 そしてノアは眼光の魔力を炸裂させた後、今度は異なる軌道で天に登る。
 仲間達の攻撃の合間に蹴りを浴びせ、着地するのではなくさらなる高みへ!
 繰り出される攻撃をクラムの箱竜が防いでくれたので、微笑むことで感謝に変える。
「ハッ! こんなクソ暑い時期に桜なんざ見てもありがたくもなんともねぇゼ。儚く散る潔さも桜の魅力だロ。大人しく逝っちまいナ!」
 好機とみたヴェルセアは陰に潜み、死角を突いて襲いかかった。
 彼へと女が視線を移そうとした時、そこには別の物体がある。
「悪いけれどここで終わりよ。つらさもせつなさも、ここに置いて逝きなさい」
 跳ね返るフィオレンツィアの弾が次々に弾け、炎の力が銃口に宿るのが見えた。
 だが、その一撃が見舞われることは……もう無いだろう。
『か、彼の地へ私を、加護を……』
「それは間合わない『―――、…期待した? 今時、呪文は詠唱破棄で撃つものだよ?』見させてもらったよ君だけの物語」
 カッチカッチカッチ。
 回復を測ろうとした女の眼前に、巨大な時計盤が時を刻む。
 針は十一ノ刻を示し、敵が持つ全ての姿における座標を閉ざし、歪む時間そのものが修正しようとする力と逆行し破壊活動を始める。
 そして刃が鐘を鳴らせば、夢の終わる時が来るのだ。
「病を受けた樹は間引きしないと、ね?」
 落下するノア自身が巨大なギロチンと化し、全てに決着を付けたのである。

「……目標の殲滅を完了。……状況終了。しかし……奪った感情で……奴らは何を望むのか」
「それは数が増えたら軍隊となり、大きな脅威になるでしょうね。それはケルベロスにも通じる力かしら? だとすれば本当の脅威になるでしょう」
 ガーネットの独りごとを拾って、フィオレンツィアが呟く。
「どちらにせよ、野放しにする気はないが」
 続ける言葉に、今度は返答は無い。
 同じ思いであるならば、頷くだけで良いのだから。
「それにしても桜か……季節に合えば喜ばれるが、外れりャ魔性の花扱い。割と勝手なもんだよな、人間てのも。春さらば……で始まる唄を思い出しちまったぜ」
「まっ、いいじゃないか。来年は、本物のお前が咲いているところを見せてくれよな!」
 クラムが苦笑すると、対象的にルトは笑顔で樹を見上げた。
 来た時の偽りの姿と違い、枯れて居てなお、花咲く姿を予想させるほど生命力に満ちていたと言う。

作者:baron 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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