星霊戦隊の復讐~熱砂の覇王樹

作者:雷紋寺音弥

●赤と青の復讐
 深夜、かすみがうら市の市街地にて。
 街に降り立った二つの影。赤と青の鎧を纏ったそれは、無言のまま周囲を見回すと、種のような物体を放り投げた。
 刹那、その種に呼応するかのようにして、異形の植物群が姿を現す。筍、サボテン、他にも何らかの生き物に寄生しているような個体から、正体不明の植物種まで、その姿は実に多種多様。
「やっと準備が整った。長かったな、ルージュ」
「あぁ長かった。だが、今こそ、仲間の仇をうつ時だ!」
 互いに言葉を交わす二人の戦士。スターブルーとスタールージュ。星霊戦隊アルカンシェルの生き残りだ。
 集結した攻性植物の数は、合わせて10体。それらを率い、正に進軍を開始しようとしたその時……慌てた様子で、緑色の鎧を纏ったエインヘリアルの少女が現れた。
「先輩達、なにやってるんですか! オーズの種の反応が大量に出てきたので見に来てみれば……。勝手にオーズの種を使用してオーズ兵器を生み出すなんて、契約違反になりますよ!」
 だが、そんな言葉も、今のスタールージュとスターブルーには届かない。
「これは、俺達の復讐だ、お前もアルカンシェルならわかるだろう? スターヴェール」
「わかりませんよ! そりゃ、先輩達が倒されたのは悲しいけど、だからといって、こんな……」
 諭すように告げるスターブルーだったが、スターヴェールと呼ばれた少女もまた、退くことをしなかった。
 対峙する二人と一人。しかし、ここで足止めを食らうわけにもいかないと、スタールージュが、スターヴェールに威嚇するような攻撃を繰り出した。
「ルージュ先輩! しょうがありません、今は退きます。でも、マスターブランに報告しますからねっ!」
 最後に、それだけ言って、スターヴェールは二人の前から撤退した。
 後に残されたのは、スタールージュとスターブルー、そしてオーズ兵器と呼ばれた10体の攻性植物達。
 これでもう、邪魔をする者は誰もいない。同胞の制止さえも振り切って、二体のエインヘリアルは、改めてオーズ兵器と共に進軍を開始した。


●オーズ兵器、進軍!
「招集に応じてくれ、感謝する。実は……先の戦いで仲間を撃破されたエインヘリアル、『星霊戦隊アルカンシェル』の生き残りに、新たな動きが見られたようだ」
 状況は一刻を争うと、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に向かい、いつになく険しい口調で告げる。
「白刀神・ユスト(白刃鏖牙・e22236)が危惧していたように、オーズの種の兵器化をして戦力を補充していたようだな。敵の戦力は、生き残りのエインヘリアルが2体と、オーズの種を埋め込まれた攻性植物が10体だ。連中は、かすみがうら市を起点とし、隣接する土浦市、つくば市を目指して市街地を破壊しながら進軍しようとしている」
 つくば市に到着した後は、つくばエクスプレスの線路伝いに都心部を目指す可能性が高い。幸いにして、かすみがうら市からは市民の脱出に成功しており、土浦市の避難も間に合いそうだ。
「かすみがうら市と土浦市の間で、エインヘリアルと攻性植物の軍勢を迎え撃つ。これが、現状で考えられる最適な迎撃地点と言えるだろうな」
 もっとも、2体のエインヘリアルは勿論のこと、オーズの種によって強化された攻性植物達もまた強敵だ。かなりの激戦が予測されるため、敵の撃破に成功した場合は、苦戦しているチームの援護に回るなどの連携が要求される。
 反対に、戦闘で敗北してしまったチームが出た場合は、その敵が他のチームの戦場に乱入する場合もある。そうなれば、連鎖的に危機が拡大する可能性もあるので、周囲の状況には常に注意を払わねばならない。
「実際の戦場になるのは、かすみがうら市から土浦市に向かう、国道6号線土浦バイパス周辺の市街地だ。無人となった市街地に潜んで、市街地を破壊しながら進軍してくる攻性植物に一斉攻撃を仕掛ける作戦になるぞ」
 その際、こちらで相手をしてもらいたいのは、巨大なサボテン型の攻性植物だとクロートは告げた。
 覇王樹サンドストーカー。先端に顎門を形成した触手状の腕を持ち、強力な熱光線や大地を侵食する術も持つ難敵だ。ダルマのような見た目に騙されて油断をすれば、瞬く間に猛毒と熱波による波状攻撃の餌食となる。
「エインヘリアルの連中にとって、今回のことは仲間を殺された復讐なのかもしれん。だが、如何なる理由であれ、罪もない無関係な人々を巻き込むようなやり方が許される道理はない」
 無差別な殺戮が招くのは、憎しみが憎しみを呼ぶ悲劇の連鎖。ならば、それを食い止めるのもまた、ケルベロスとしての使命ではないか。
 最後に、それだけ言って、クロートは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
ミューシエル・フォード(キュリオシティウィンド・e00331)
ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)
水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)
佐久間・凪(地核の護り・e05817)
柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)
カティス・フォレスター(おひさま元気印・e22658)
アレイシア・アルフヘイム(ハイパー小学生・e26995)
五十嵐・崇仁(わん公・e27210)

■リプレイ

●劫火
 国道6号線土浦バイパス。大規模商業施設や物流センターが立ち並ぶ、当該地域唯一の南北方向の幹線道路。
 だが、街に降り立ったケルベロス達の前に、昼夜を問わず走行する自動車の群れはない。代わりに現れたのは、赤と青のエインヘリアルに率いられた緑の軍勢だった。
 道の広さからして、こちらから奇襲を仕掛けることは不可能だ。身を隠して攻撃しようにも、こちらが姿を見せた瞬間に、敵もまたこちらの姿を捉えてしまう。互いに有効射程が変わらない以上、正面から仕掛ける他にない。
 蠢く緑色の復讐者達。その内の一体、覇王樹サンドストーカーを前にして、アレイシア・アルフヘイム(ハイパー小学生・e26995)は思わず愛用のウィザードハットを握り締めた。
「サンドストーカー……。あの日の悲劇は繰り返させません……」
 それ以上は、何も言うことができなかった。大好きだった父と母、そして形見の帽子を残してくれた祖母は、もういない。
「だいじょうぶ! ミューのところにはこんなにいなかったけど、何とかなるなる!」
 アレイシアの抱く悲しみと不安。それを察してか、ミューシエル・フォード(キュリオシティウィンド・e00331)は敢えて楽観的な言葉を掛けた。
 たった1歳の差ではあるが、年上として頑張りたいという気持ちもあったのだろうか。敵はオーズの種によって強化された攻性植物。だが、あまり色々と背負い過ぎれば却って動きが固くなり、いつも通りの戦いができなくなる。
「復讐とは感心しませんね。絶対に侵攻を食い止めるのです!」
「ええ。市民の虐殺を見逃すわけにはいきませんのでね。ここで食い止めさせてもらいましょう」
 佐久間・凪(地核の護り・e05817)の五十嵐・崇仁(わん公・e27210)も軽く頷いて答える。しかし、そんな彼らが仕掛けるよりも早く、先に動いたのはサンドストーカーの方だった。
「……っ! アンクさん!?」
 頭頂部の花より放たれし光線が水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)へと直撃したのを見て、思わず息を飲むカティス・フォレスター(おひさま元気印・e22658)。
 光の残滓が未だ残る舗装道路には、黒く焼け焦げた線が軌跡として爪跡を刻んでいた。掠めただけで、あの威力。爆炎に包まれたアンクの安否までは、こちらからは分からない。
 真昼の国道で、煌々と燃える赤い炎。だが、その火勢を吸いとり、己の力に変えるかの如く、爆風の中から右腕を白炎に包んだアンクが姿を現した。
「なるほど、先手必勝の火力特化型ですか。それでも、搦め手を攻められて粘られるよりはマシですね。クリスティ流神拳術、参ります……!」
 身体に纏わり付く炎を物ともせず、アンクは焼け落ちた袖口の残滓を軽く振り払う。それに続け、他の者達も武器を手に取り、一斉にサンドストーカーと対峙する。
「何の因縁かは知らんが仲間の宿敵。ここでキッチリ決着つさせてやろうじゃないか」
「まぁ、こっちはこっちで、割り当てられた仕事しっかりこなしますかねって」
 迫り来る巨大なサボテンの王に、立ちはだかる柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)とヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)の二人。熱砂の覇王の異名を持つ攻性植物との、壮絶な戦いの火蓋が切って落とされた。

●侵食
 先手を許してしまったケルベロス達であったが、そこから体勢を立て直すのもまた早かった。
「まずは、早々に退路を断ちたいところだが……」
 半透明の『御業』によってサンドストーカーを抑え込む史仁。もっとも、さすがはオーズの種で強化された存在だけあり、この程度では動じる様子を見せようとしない。
 それでも、ほんの一瞬だけ生まれた僅かな隙を突き、今度はアンクが一気に間合いを詰めた。
「壱拾四式……炎魔轟拳(デモンフレイム)!!」
 自らの身体を覆う闘気に白炎を重ね、それを右拳に集めて叩き付ける。白く煌く炎に混ざり、敵の攻撃によって受けた紅炎もまた火勢を増しながらアンクの身体を包んで行くが、彼がそれを気に留めることはない。
 この程度の業火で怯んでいては、地獄の炎を駆る者の仕事は務まらないとでも言わんばかりに。だが、初めは小さな炎でも、やがて広がれば脅威となる。
「ミューがうごけなくするから、今のうちだよ!」
「ええ、分かりました。後方支援は、お任せください」
 攻性植物には、攻性植物。深緑の蔓をミューシエルが敵の身体に絡み付かせたところで、崇仁が高々と長剣を掲げ、守護星座の紋章を広げて行く。星辰が作り出す聖域の力が、アンクの身体を覆う炎を一瞬にして取り払う。
「足りない分は、こっちでフォローするのです! 応用編リバース・ペイン……力を再生に集中! 皆さんに耐性と癒しを!」
 その身から霧状のオーラを発し、凪もまた味方のフォローへと回った。個々の回復量では劣ってしまうが、この際、細かいことを気にしてはいられない。
 敵は、確かに攻撃力の高い相手だ。が、しかし、純粋な火力以上に危険なものが何か、口にせずとも彼女達は、しっかりと気付いていたのだから。
「仕掛けます! タマオキナ、援護を!」
 戦いの準備が整ったことを確信し、カティスが大地を蹴って高々と飛翔した。それに合わせ、ビハインドのタマオキナが周囲に散らばっている瓦礫を念力で操り、一斉に敵へと飛ばして行く。
 降り注ぐコンクリート片の雨。大小様々な岩塊に混ざり、カティスもまた自身の脚に重力の力を込めて蹴撃を放つ。その光景は、さながら降り注ぐ流星群の如く。狙い澄ました一撃は、敵の頭頂部に咲いた白い花を、真上から容赦なく踏み潰した。
「同じ花を持つものとして、黙って見過ごすわけにはいきません。サボテンの棘は、他人を傷つけるためにあるんじゃないんです!」
 飛散した花弁をその身に受けつつ、カティスは反動で再び宙へと舞い上がり、距離を取る。同じ花を持つオラトリオだからこそ、あの敵の存在は許すことができない。親近感を抱こうにも、あの巨大サボテンの存在は腹に据え兼ねると。
「まぁ、あれよな。サボテンは水分補給に良さそうだ。こんな街中じゃなく、砂漠に帰って遭難者の糧にでもなって来い!」
 蠢く葉針の隙間を縫って、指先で敵を貫きつつヤクトが叫ぶ。瞬間、文字通り噴水のように体内の水を溢れ出させたサンドストーカーだったが、その勢いは直ぐに静まり、心なしか動きも鈍くなって行く。
 敵を倒すのに必要なのは、純粋な力技だけではない。気脈を見切り、その流れを断つ。獲物を仕留めるのに必要なのは猛り狂う野獣の力ではなく、急所を狙って繰り出される、性格無比な狼の牙だ。
「私たちも行くよ、ジェミニちゃん!」
 硬直し、動きを封じられたサンドストーカーへ、アレイシアもまた古代語の呪文を詠唱し、魔法の光を解き放った。続けて、ボクスドラゴンのジェミニが二つの口を交互に開き、強烈なブレス攻撃を浴びせ掛けた。
 圧倒的な集中砲火。並みのデウスエクスであれば、これだけで追い込まれていたかもしれない。
「……オォォォォッ!!」
 だが、そんなケルベロス達の猛攻を受けても、サンドストーカーは戦う意思を、本能を捨てようとはしなかった。
 荒ぶる触手を大地へと叩き付け、覇王樹は自らの根を地に宿す。それは瞬く間に周囲の土地の水分を奪い取り、見るも無残な砂漠へと変えて行く。
「……っ! 砂がこっちに来るのです!」
 そう言って凪が身構えるのと、侵食されて砂漠と化した大地が唸りを上げて襲い掛かってくるのが同時だった。
 戦場を侵食するサボテンの根。それは砂の津波を巻き上げて、周囲の道路諸共に、ケルベロス達を容赦なく頭上から飲み込んだ。

●塵埃
 気が付くと、戦場と化した街の中は、そこかしこが砂で覆われていた。
 サンドストーカーの根による侵食効果。あらゆる土を粉砕し、熱砂の波として放出するだけでなく、時に飲み込んだ者の肉体と精神さえも侵し、蜃気楼の如き幻影を見せて翻弄する。
「……っと。さすがに、ちょっとヤバい感じか、これ?」
 額の汗を拭いながら、ヤクトが辺りを見回して言った。
 味方の盾となったサーヴァント達は、既に砂山の中へとその姿を消していた。敵の攻撃は、いつしか後衛にまで被害を齎しており、味方が纏めて倒されるのも時間の問題と言えそうだった。
「ここで……私が倒れるわけにはいかないのです……」
 そんな中、たった一人で仲間達を支え続ける凪だったが、彼女もまた辛うじて立っているのが限界である。時に自分も狙われながら味方の攻撃まで庇い続けるのは、想像以上に負担が大きい。ともすれば、予想していた以上の攻撃が一度に自分の身体へと降り注ぎ、抵抗空しく倒されてしまう危険性さえ在り得るのだ。
「シャァァァァッ!!」
 寄生を発し、先端に巨大な口を備えたサンドストーカーの触手が、史仁の腕へと食らい付いた。傷口から猛毒を注ぎ込まれ、急激な血圧の低下に一瞬だけだが視界が歪む。が、それでも苦悶の表情を浮かべることはなく、史仁は落ち着いた様子で自らの生命力を周囲の砂へと宿して行った。
「その命、どこまで輝くか」
 侵食により砕かれた砂から、形勢されるは数多の星形多面体。それら全てを自らの手足の如く駆り、史仁はサンドストーカーへと殺到させる。
 連戦により、追い込まれているのは敵も同じ。ならば、その好機は決して逃さない。言葉にこそ出さなかったが、それは戦場に立つ全ての者が、等しく感じていたことであり。
「決めます……! 外式、双牙砕鎚(デュアルファング)!!」
 飛翔する砂の結晶の合間を縫うようにして、アンクもまた敵の懐に飛び込んだ。
 結晶体の爆発する中、冷たく鋭いアンクの脚が、敵の身体をボールのように蹴り飛ばす。瞬間、舞い上がる砂塵に双方の身体が包まれ、続けて敵の身体だけが砂煙の中から飛び出して来た。
「……ッ! ハォォォッ!!」
 燃え盛る白炎に焼かれながら、サンドストーカーが宙を舞う。遅れて、アンクもまた砂煙の中から姿を現すが、手応えとは裏腹に、その表情は未だ険しい。
「まだ、たおれないの!? だったら……!!」
 未だ生への足掻きを捨てない覇王樹の姿を前にし、ミューシエルが大鎌を投げ付ける。回転する刃は美しい三日月のような軌跡を描き、敵の触手を切断するが、それでも本体は未だ健在だ。
「なんとしぶとい! やはり、ここで倒しておかねば、少々厄介ですね……」
「殴ると痛そうですねー! でも、そんなこと言ってる場合じゃないです!」
 崇仁のリボルバーから放たれる弾丸が驟雨の如く敵の身体へと降り注ぎ、その隙に間合いを詰めた凪の拳が、棘と棘の合間を縫って本体である球体部分を貫いた。そんな中、カティスもまた自らの銃に弾を込めて狙いを定めるが、彼女の発射したものは単なる鉛の弾ではない。
「覚悟してください……少しばかり痛いですよ?」
 サボテンにはサボテンで勝負する。彼女の放った銃弾の正体。それは弾丸の形へと姿を変えた、サボテンの攻性植物に他ならず。
「……ッ! ゴブッ……!?」
 その身を内部から棘で貫かれるのは、さすがの覇王樹も堪えたようだ。最後の最後で、流れは完全にケルベロス達へと傾いた。ならば、もう遠慮をする必要もない。
「テメェの臓腑。その全て、貪り喰らう餓狼の顎門に沈め!」
 両手に宿した地獄の炎。それを狼の頭を模した姿へと変え、ヤクトが残る片方の触手を食い千切る。完全に達磨のような格好にされてしまったサンドストーカーは、もはや覇王樹としての貫録もない。
「パパ、ママ、グランマ……。力を貸してください……」
 祈るように言葉を紡ぎ、『氷河期の精霊』を呼び出すアレイシア。最後は、そんな彼女の想いを乗せた吹雪に飲み込まれるようにして、サンドストーカーは静かに砂山の中へ崩れ落ちた。
「……やっつけたの?」
「どうやら、そのようですね」
 ミューシエルの言葉に、崇仁が頷く。熱砂の覇王樹。オーズの種の力を得て強化された攻性植物を、ケルベロス達が討ち取った瞬間だった。

●収暑
 戦いが終わった砂の上。氷漬けになった覇王樹の残骸を横目に、アンクと史仁は、改めて周囲の様子へと目をやった。
「さて、こちらは終わりましたが……」
「どうやら、他の敵も片付いたようだな」
 敵の増援が現れる気配も、どこからか応援を要請される気配もない。少なくとも、自分達が担当してた一角は、無事に守り通すことができたらしい。
「皆さん、ここで立ち止まっている暇はありませんよ」
「そうそう! 急いで他の班と合流しましょう!」
 それでも、どこかに救援を待つ班があるはずだと主張する崇仁と凪だったが、こちらの被害も馬鹿にできない程に大きかった。下手に向かって足手纏いになるくらいなら、まずは自らの傷を癒すところから始めなくては。
「他に戦闘中のチームがあるようなら、ヒールで一気に回復させてから向かいたいところですが……」
「まあ、その頃には戦いも終わってんだろ」
 カティスの問いに、ヤクトが大きく伸びをしながら答えた。とりあえず、割り当てられた敵は撃破することができたのだから、それで結果オーライなのだと。
「皆さん、お疲れ様でした」
「ありがとー! よくがんばったねー!」
 侵食によって砕かれた舗装道路にヒールをかける仲間達へと、アレイシアが栄養ドリンクを配って回る。受け取るミューシエルの笑顔もまた、清涼剤の代わりとなる。
 復讐の意思は果たされず。仲間を失った星霊戦隊の暴走は、こうして一先ずの決着を見た。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。