晴れた空の下に広がる、春色の草原。
そこに、どこからともなく駆けてきた一人の少年が、わぁっ! と転がり込んだ。
大の字に仰向けになってから、少年はぱっと起き上がる。
「あははっ! 楽しいね、こてつ!」
少年の呼ぶ声に、少年の後を追うようにぴょこぴょこと跳ねてきた灰色のうさぎが、ぴん、と耳を立てた。
辺りを探るようにひくひくと鼻を動かしながら、少年の方へ近づいていくうさぎ。
「ねえ、今日は何して遊ぼ……っ、えええっ!?」
少年はうさぎの方を振り返り、そして驚きで目を丸くした。
少年の方へと近づいてくるうさぎが、愛らしい姿はそのままにどんどん『大きく』なって――。
「こ、こてつ!? ちょっ、ちょっと待っ――!!」
やがて大人のゾウくらいの大きさになったうさぎに全身で体当たりをされたところで、少年は夢の世界から帰還した。
「……ったぁ……、……ゆ、夢……?」
夢の中のうさぎから逃げようとしたのだろう、ベッドから転がり落ちた少年が、よろよろと身を起こす。
「こてつ、大丈夫かな……ほんとに大きくなってたりしないかな……」
眠い目をこすりながらペットのうさぎを案じていた少年が、不意に身体を強張らせた。
「……えっ……?」
「――私のモザイクは晴れないけれど……」
少年の心臓から突き出た鍵。
それを確かめるより早く、少年の意識は再び夢に囚われる。
「あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
そう言って、第三の魔女・ケリュネイアは微かな笑みを浮かべた。
――そして。
崩れ落ちた少年の傍らに、新たなドリームイーターが誕生したのだった。
●夢うさぎとワルツを
「夢って時々とんでもないことになるよね、色々と」
身に覚えがあるのだろう、トキサ・ツキシロ(レプリカントのヘリオライダー・en0055)はそう言って、あはは、とぎこちなく笑ってみせた。
「色々ととんでもない内容なんだけど、とにかくびっくりして夜中に飛び起きちゃったりすることもあって。……で、そんな風にびっくりするような夢を見た小さな子が、ドリームイーターにそのびっくり……『驚き』を奪われてしまう事件が起きているんだ」
『驚き』を奪ったドリームイーター自体は既に姿を消しているようだが、奪われた『驚き』を元に現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしているのだという。
その前にこのドリームイーターを撃破してほしいというのが今回の依頼だとトキサは言った。さらにドリームイーターを倒しさえすれば少年も目を覚ますだろうと続けてから、ほんの少しばかり考えるような間を挟み――。
「で、そのドリームイーターなんだけど、見た目はうさぎそのものなんだ。どうやら、夢を奪われた男の子が飼っている灰色のうさぎがモデルになっているみたいだね。こてつという名前らしい。……ただ、大きさが大人のゾウくらいある」
ここで、ヘリオライダーの青年は何となく真顔になった。多分、特に深い意味はない。
それはそれとして、と青年は説明を続ける。
ドリームイーターが現れるのは、夢を奪われた少年の家からさほど遠くない住宅街の一角にある小さな公園だ。ドリームイーターはとにかく誰かを驚かせたくてたまらないようで、付近を歩いているだけ――この場合は現地に向かうだけで向こうから姿を見せるらしく、最初は普通サイズのうさぎだが、驚かせたい相手を見つけると巨大化するのだという。
「あと、驚かなかった相手を優先的に狙ってくるという性質があるようだから、その辺も戦い方の参考になるかもしれないね」
俺はうさぎがでっかいだけでも結構びっくりだけどね、と冗談交じりにトキサは言ったが、敵が現れるという心構えさえしっかりしていれば、それほどびっくりすることもないだろう。
一通りの説明を終えた所で、トキサは小さく息をついた。
「というわけで、男の子が無事に目を覚まして現実のこてつ君とまた逢えるように、一仕事、頼んだよ」
そう締め括り、ヘリオライダーの青年はケルベロス達に後を託した。
参加者 | |
---|---|
コーデリア・オルブライト(地球人の鹵獲術士・e00627) |
安曇野・真白(霞月・e03308) |
リィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723) |
ノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320) |
左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634) |
クラエス・ヘリオット(星纏夜想曲・e28309) |
黒岩・白(お巡りさんは働かない・e28474) |
皆守・信吾(激つ丹・e29021) |
住宅街の路地を抜け、ドリームイーターが潜むという公園へ足を踏み入れたケルベロス達は、早急に戦いの準備に取り掛かった。
「人を驚かせたりするのってちょっと楽しかったりするけど……でもそうやって奪うのは絶対ダメ、だよね」
しっかり止めなきゃ、とリィンハルト・アデナウアー(燦雨の一雫・e04723)が『気』の結界を作り上げる中、左潟・十郎(風落ちパーシモン・e25634)とクラエス・ヘリオット(星纏夜想曲・e28309)が手分けをして、設けられた二つの入り口を塞ぐようにキープアウトテープを貼り付ける。
「何時来るか、分からない。手早く済ませる……」
その間に、ノーザンライト・ゴーストセイン(のら魔女・e05320)は、公園の内部が見渡せる場所にビデオカメラを設置していた。
ついでに茂みの中に例のうさぎが隠れていたりはしないかと探してはみたが、どうやら発見には至らなかったようだ。
全ての準備を終え、公園の中央に集まるケルベロス達。
より一層の静けさに包まれた戦場を、昼間の暑さを忘れさせてくれるような涼しい夜風が足早に駆け抜けていく。
「夢でくらい楽しくいきたいっスよね。のんびりお昼寝とか……」
黒岩・白(お巡りさんは働かない・e28474)がやれやれというように小さく肩を竦める。
「ゾウサイズねぇ……夢だから何でもありか」
大きくなってももふもふの毛並みがそのままであるというのなら、それは悪くないかもしれない。想像を巡らせながらコーデリア・オルブライト(地球人の鹵獲術士・e00627)が傍らのミミックに視線を落とすと、いつでも戦えると言わんばかりに光る鋭い牙。
ブランコや滑り台など少しの遊具があるだけの、決して大きいとは言えない公園だ。見通しが悪いわけでもなく、ケルベロス達が――おそらくは彼らの気配につられて現れたのだろう小さな来訪者の姿に気づくまで、さほど時間は掛からなかった。
うさぎが近づいてきやすいようにとスマホを弄っていた手を止め、皆守・信吾(激つ丹・e29021)が顔を上げる。
ぴんと耳を立て、鼻をひくひくと動かし――周囲を確かめるように見やりながら、小さな灰色のうさぎはぴょこぴょことケルベロス達のいるほうへやってきた。
「お前、迷子になっちゃったのか?」
警戒心を悟られぬよう、信吾は気安い調子でうさぎに声を掛ける。掛けられた声にうさぎの耳がぴんと立ち、ケルベロスたちの方を向く。
そして、次の瞬間――両手で抱きかかえられるくらいの大きさだった灰色のうさぎが、急速に巨大化し始めた。
「わああ……!」
心の準備はしていたものの、風船のように大きくなっていくそれにはやっぱりびっくりして、リィンハルトは思わず声を上げる。
「わわっ……!」
クラエスもまた、お化け屋敷のこんにゃくよりも怖い、大きなうさぎさんにびっくりしていた。
「……深夜だと、普通にホラー」
ノーザンライトは肩を跳ねさせ、頬を引きつらせながら軽く尻餅をつく。
普段から表情の変化に乏しいノーザンライトだが、これでも頑張って驚いているほうだ。
「え? 大きくなった!?」
事前に知っていることだから案外難しいと思いながらも、作戦通りにコーデリアは手で口元を覆い、大きく口を開けるミミックと共に驚いてみせて。
「大きいうさぎは見慣れてると思ったっスけど、スケールが違うっスね……」
あっという間に大人のゾウと同じくらいの大きさにまで達してしまったうさぎを見上げ、驚愕の声を漏らす白の傍ら、
「大きいですの……!」
と、安曇野・真白(霞月・e03308)は素直に驚きをあらわにしたが、すぐに感嘆の息をついた。
(「……これならもふっとぎゅむっと思い切り飛びついても怪我させたりしない、素敵なうさぎさん……」)
大きなもふもふを前に、敵であることを忘れてしまいそうになったのはここだけの話だ。
驚きから生まれたドリームイーターは、『驚かない』相手を優先的に狙う傾向があるという。そこで、ケルベロス達はディフェンダーを務める者達に、同時にその役目を務めてもらうという作戦を立てていた。
「……銀華、びっくり堪えて下さいね」
真白はボクスドラゴンの銀華にそっと呼びかける。真白の言葉に応えるように、銀華はいつもと変わらない様子でじっとうさぎを見上げていた。
(「でかいウサギ……可愛いとしか」)
そして、うさぎが大きくても別段驚くこともなく、驚いたとしても大きなリアクションは出来ないだろうと自覚していた十郎は、表情一つ動かさずにうさぎを見つめ。
巨大化しても想像通りの姿に動揺することもなかった信吾は、可愛いもふもふが大きくなって逆にお得だと思いつつ、挑発するように笑ってみせた。
「大した手品だな。――さあ、俺達と遊ぼうぜ?」
夢喰いうさぎが言葉を理解したかどうかまではわからない。
だが、うさぎは応えるようにふんと鼻を鳴らし、ケルベロス達目掛けて地を蹴った。
列ごと巻き込む体当たりの衝撃に、思わず身体が吹き飛ばされそうになる。
ガントレットで全身と仲間を庇うように攻撃を受け止めた信吾は、見た目の愛くるしさにそぐわぬ凶暴な一撃に僅かに顔を顰めたが、すぐににっと歯を見せて笑った。
「さすがだな夢喰い。だが、俺達はそう簡単にやられはしない!」
ケルベロス達は素早く散開し、夢喰いうさぎを取り囲む。
「――危ないもふもふは退治!」
びしっと槍の穂先を突き付け、リィンハルトはうさぎの元へと駆け出した。
夢を奪われた少年も、自分の『友達』がこんな風に大きくなったら、いくら夢でもびっくりしてしまうだろう。その驚きを奪って悪いことをさせようなんて――。
「えーと、ごんごどーだん!」
だからこそ、このびっくりドリームはしっかりとやっつけて、男の子の夢に平穏を取り戻してあげたい。
繰り出されるのは、稲妻を帯びた超高速の突き。
「僕とマーブルならどんな相手にも負けないっスよ! ――変身!」
白は縛霊手に封じられた愛犬の魂を開放し、自らと合体させた。二つの心を一つにすることで白自身の身体能力が高められ、研ぎ澄まされた心が奮い立つ。
シベリアンモード――その名の通り、白の身体からは生前の愛犬、マーブルを連想させる耳と尻尾が生えていた。
「こんなに大きいと、攻撃もとっても痛そうでございます、ね。……ですが、ご主人がこてつさまと楽しく遊べるよう、ドリームイーターには退場頂きますの」
真白は真っ直ぐにうさぎを見つめながら小さく頷き、歌うように言の葉を風に乗せた。
――晴るか遥か、夜の星か、河辺の螢か、翔け往け、彼へ彼へ。
力ある言葉に乗せて瞬いた彼方の煌めきが、銀華が吐き出した息吹と共に悪夢を深き星海の袂に導いてゆく。
他人と関わる時にも、自分自身と向き合うためにも、感情というのは凄く大切なものだと信吾は思う。
それを無碍に奪われるなど、到底許せることではない。
「必ず夢食いに打ち克ってみせるぜ!」
少年と、彼のうさぎのためにも必ず。
確かな誓いを胸に抱き、信吾は地を蹴った。
急所を貫かんばかりの電光石火の蹴りが炸裂する。その反動を利用して空中でくるりと宙返りをしてから地面に着地する信吾の姿は、さながら戦うヒーローのよう。
「大丈夫。僕達が一緒だから、こわくないよ」
「――うん、頑張る……!」
リィンハルトの声に頷いて、すーはーと深呼吸を繰り返すクラエスは、初めての戦いに緊張を隠しきれずにいた。けれど、少年のために頑張ろうという確かな決意を胸に、臆病な自分を押し込めて駆ける。
うさぎの巨体に呑み込まれるクラエスの拳。瞬時にして縛霊手から放射された網状の霊力がうさぎを縛り付けると、うさぎはぶうと苦しげに呻いた。
「うさぎも、鳴くの……」
小さく呟き、ノーザンライトは続けて古代語を吟じる。放たれた魔法の光線はうさぎを貫き、もふもふの体を石化させてゆく。
超巨大なうさぎ――それはそれで、割と可愛いとは思うのだけれど。
「でも、目つき怖い……」
本物の小さなうさぎだったなら、きっとそんなことは感じなかっただろう。
だが、このうさぎは、歪んだ夢が形になったある種の魔物だ。
愛らしい見た目とは裏腹に、更なる夢を貪り喰らおうとしているドリームイーター。
つぶらな瞳に映るケルベロス達は、おそらくこの夢うさぎにとっては膨大な夢の力を蓄えた獲物でしかない。
「……ぬいぐるみだったらよかったのに」
凛とした外見ながらも、ぬいぐるみが好きな一面を持つコーデリアがぽつりと零す。あれだけ大きなうさぎならばさぞやもふもふしがいもあるだろうと想像して思わず顔を綻ばせたけれど、それも一瞬。紅玉の瞳はすぐに、敵を見据える猟犬のそれに変わっていた。
伸ばされたケルベロスチェインがうさぎの体を覆うように巡り、きつく締め上げる。傍らですっかり臨戦態勢のミミックに、コーデリアは微かな笑みを浮かべながら呼びかけた。
「好きなだけ、食べていいわよ。元よりそのつもりでしょうけれど」
その声に、好戦的なミミックは嬉々として自分よりも遥かに大きなうさぎへと飛び掛かっていく。そして、噛み付きなら負けないと言わんばかりに、もふもふの体に鋭い牙を突き立てた。
(「もふもふ……可愛い……」)
十郎の心の声がこだまする。
抱き付きたいとか埋もれたいとかちょっと思ってしまったりもするほどのもふもふを前に、けれど相手はドリームイーターだと、十郎は心を鬼にして攻撃へと転じる。
激しい炎を纏った蹴りが叩き込まれ、もふもふの一部がモザイクの欠片となって散っていった。
――夢から現実へと迷い込んだドリームイーターを、再び夢へと還すために。
ケルベロス達は互いに声を掛け合い、うさぎを取り巻く包囲網を崩さぬよう注意しながら、攻撃を重ねていった。
不意にうさぎは体をふるりと震わせ、徐ろに後ろ足で立ち上がったかと思うと、前足で顔をごしごしと洗い始める。めまぐるしく動く戦いの場においては若干早送りのように見えたかもしれないが、顔の次は両耳をそれぞれ片方ずつ洗い、最後に前足をぺろぺろと舐めてうさぎは毛づくろいを終えた。
「かわ……っ、いえ!」
その姿に真白がときめいたような素振りを見せる。ちょっぴり元気になったようにも見えるうさぎがつぶらな瞳を向けてくるから尚更だ。
しかし、どんなに可愛い姿であっても、ドリームイーターであることに変わりはない。
「いいえ、心を鬼にして攻撃ですの!」
真白は声を振り絞り、前衛の仲間達に色鮮やかな癒しの風を届ける。爆ぜた風の勢いに背を押され、リィンハルトが星の重力を宿した剣を振りかぶった。
「おっきいもふもふ、攻撃してこないならちょっと夢だった、かも!」
毛づくろいによって整った毛並みへ、あらゆる守護を無効化する重い斬撃を放つリィンハルト。全身で飛び込んだら、どんなにか楽しいだろう。そんなことを思ったりもするけれど、夢は夢のまま、悪夢に変わる前に終わらせなければならない。
「よくも僕に仕事をさせたな!」
軽やかな身のこなしで迫った白は、ジグザグに変形させたナイフの刃でモザイクの体を斬り刻んだ。
戦いが始まってどれほどの時間が経過しただろう。ケルベロス達の攻撃により、うさぎはその姿をだいぶ薄れさせていた。
モザイクの欠片を散らす夢うさぎは、まだまだ遊び足りないというようにケルベロス達へと向き直る。
「このでかさでウサギの脚力だと、本気で走られたらマズいよな……」
おそらく逃げたりなどしないだろうとは思ったが、万が一のことがあってはたまらない。
十郎は空へと手を延べ、偲月の隼(シヅキノハヤブサ)を導いた。
夜空に現れた、淡い光。月光にも似た輝きを纏う隼が高く鳴きながら旋回し、一筋の光線となってうさぎを貫くと、
「魔女ノーザンライトの名において。顕現せよ七色の聖剣……」
刹那、ノーザンライトが左の手のひらから引き抜いた極光の剣を手にうさぎへ肉薄した。
七色の光がモザイクを砕く。うさぎが苦しげに鳴いたが、ノーザンライトにも尻餅という醜態を晒したことへの鬱憤がある。
「そんなに驚かせたいのなら、戦いの全てをニコ動に上げて、本懐を遂げさせてやる……」
無論、それをうさぎが確かめることは叶わないし、カメラがきちんとこの戦いを記録してくれているかはまだわからないけれど。
「煌めけ、燦然たる光よ……!」
大きな光の翼を広げ、クラエスは空を翔ける。翼の光を星に変えて送り出せば、うさぎの元に数多の流星群が降り注ぐ。
剣を持った黒猫のぬいぐるみを作り出して果敢に飛びかかるミミックの背を見つめながら、コーデリアは再び黒鎖を操ってうさぎを縛った。
「さあ、そろそろ夢に還る時間よ」
微笑みを浮かべ、うさぎを見つめるコーデリア。
既に動けないうさぎの元へ、信吾が力強く踏み込んだ。
「――ちゃんと迷わず、帰るんだぞ!」
少年の元へ。在るべき場所へ。
想いを込めて、鮮やかな地獄の炎を纏わせた拳を叩き込む。
衝撃に響いたのは、硝子が割れるような涼やかな音。
うさぎは、まるでありがとうと言うように信吾へ鼻先を押し付けてから――静かに消えていった。
「……終わったねぇ」
リィンハルトが息をつき、ふわりと微笑む。
「終わったわね。もふもふ出来なかったのが、少し心残りだけれど」
そう言って、戦いが終わった園内を見回すコーデリア。
「ええ、わたくしももふっとぎゅむっとしたかったですの」
戦いで壊れた箇所をヒールで治しつつ、真白もどこか悪戯っぽく微笑んでみせた。
(「……びっくりしたけど楽しい夢だった、と」)
でも、夢で良かったと目覚めた少年が感じてくれたらいいなと、そう思いながら信吾は遊具にヒールを施す。
「ご近所様の夢見の時間を、これ以上邪魔するのは悪い……」
やがて修復が一通り済んだ所で、ノーザンライトが撤収を呼び掛けた。
ちなみに、戦闘の余波でカメラは壊れてしまったようで、びっくりもふもふな動画を公開することは叶わなかった。
可能ならば少年が無事に目を覚ましたか確かめておきたいと十郎は思ったが、奪われた少年の夢はきちんと取り戻したのだからきっと大丈夫だろう。
「やっぱり現実で触れ合えるのが一番っスよね」
一仕事を終え、ぐっと大きく伸びをしながら言う白に、クラエスもうんうんと頷いて。
(「……もしもまた怖い敵さんが出ても、僕たちが助けにいくから安心してね」)
そう、少年へと呼びかけるように心の中で想いを紡いだ。
ケルベロス達の手により幻想的に彩られた公園は、ここで何かが起こったことを人々に伝えるだろう。
けれども、今宵の戦いを知るのはケルベロス達だけ。
夢から生まれ、夢へと還っていった大きな大きなうさぎと過ごした、夢のようなひとときもまた――。
作者:小鳥遊彩羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 2
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