目隠し狐の戯

作者:志羽

●目隠し狐の戯
 それはある神社に伝わる不思議な話だ。
 夕暮れ時、神社の鳥居をくぐる。石段を上った先に見える御神木。
 その前に少女は立って口を開いた。
「だれかいらっしゃいますか?」
 もしその時に『目隠し狐さん』がいたならば、気まぐれに返事があるらしい。しかしそこで姿は見えない。返事の後に、『目隠し狐さん』ですかと尋ね、一緒に遊びませんかと誘わなければいけないのだ。
 すると姿を見せ、しばらく一緒に遊んだ後に『目隠し狐さん』は一緒においでよと誘う。そしてその声に一緒にいくと応えると、この世ではないどこか違う世界に連れて行ってくれるのだと。
 そんな都市伝説を信じ少女は神社を訪れた。しかし返事はない。
 やっぱりただの噂話、おとぎ話の類かと少女が一つ溜息ついたその時だ。
 胸を、心臓を貫く鍵の一突き。その鍵の持ち主は第五の魔女・アウゲイアス。
「私のモザイクは晴れないけれど」
 ずぶりと引き抜かれる鍵、その場所からは血などは流れない。
「あなたの『興味』にとても興味があります」
 しかし言葉落ちたその後、少女は意識失い崩れ落ちた。
 そしてその傍に生まれる影がある。
 人の容、その顔、目上には布が一枚巻かれ、目隠し状態の子供。頭の上に狐面を斜めにつけてくすくすと笑っている。だがそれは人ではない。まふまふとした狐の尾がゆらゆらと揺れているのだから。
 目隠し狐は御神木に寄りかかり、遊び相手をくすくすと笑い零しながら待っている。

●予知
「不思議な事っていろいろあるんだけど、その不思議な物事に強い『興味』を持っている人が襲われる事件が起こるんだ」
 不思議な物事に強い『興味』を持って、実際に自分で調査を行おうとする。そこでドリームイーターに襲われ、その『興味』を奪われてしまうのだと夜浪・イチ(サキュバスのヘリオライダー・en0047)は話を続けた。
「その『興味』を奪ったドリームイータ―は既に姿を消しているみたいなんだけど、奪われた『興味』をもとにして現実化したドリームイータ―がいるんだ」
 だからそのドリームイータ―による被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してほしいのだ。
「このドリームイータ―を倒すことができれば『興味』を奪われた被害者も目を覚ますだろうから」
 そう言って、イチは現れるドリームイータ―について説明を始める。
 現れるのは一体、狐の尾を持ち、目隠しをした子供の姿をしたものだ。
 場所はとある神社。その御神木の辺りにいて、時間は夕方頃が良いらしい。
 それは誰かを見つけると『私が誰かしっている?』と問う。それに『目隠し狐さんです』と答えなければならない。
「もし、ここで『目隠し狐さんです』って答えられないとその人は殺されてしまうんだ。遊びに誘わなくても、同じ」
 そしてしばらく遊ぶと、最後にもう一つ。
 一緒にいくかと尋ねてくる。そこで頷くとまた殺されてしまう。しかしいいえと言うと無事にかえれるようなのだ。
 都市伝説では、一緒に行くといえば神隠しにあってしまうと言われている。ドリームイータ―であるこの『目隠し狐さん』は、それが殺すことに変質しているのだ。
「けど、皆はこの敵と戦いになるから……どう答えてもいいと思う」
 このドリームイータ―は、自分のことを信じていたり噂をしている人が居ると、その人の方に引き寄せられる性質がある。
 うまく誘きだせば有利に戦えることになるだろう。
「例えば、一緒に遊ぶ事を選んで、その遊びの中で戦いやすいように囲める遊びを選んでみるとか」
 色々、作戦のたてようはあると思うとイチは紡いだ。
「人の興味は色々だけどそれを糧とされるのはね……」
 けれどケルベロスさん達なら無事解決できるだろうから、任せるよとイチはヘリオンへと誘った。


参加者
レーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)
アリッサ・イデア(夢夜の月茨幻葬・e00220)
雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)
道玄・春次(花曇り・e01044)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
汀・由以子(水隠る竜・e14708)
寺乃宮・綾成(本に生きる・e17243)

■リプレイ

●遊び相手
 件の怪異を呼ぶ前に、戦いの起こる神社の関係者へレーグル・ノルベルト(ダーヴィド・e00079)と疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)、そして寺乃宮・綾成(本に生きる・e17243)は事を説明する。
 戦いが起こる事、そして後の少女の事。
「犠牲被害が出ねえよう努めるんで……まァ、どんと構えてくれりゃ良いのさ」
 綾成は笑みと共に伝える。ケルベロス達の話を神社の者達はちゃんと受け止め、戦いの間は外には出ないことを約束し、少女についてフォローが必要であればと承知してくれた。
 話の後には、ここに祀られている神へも参拝を。
「目隠し狐は過去の実話か誰かの願望か。確かに興味は尽きねえわ」
 なんかこう、本とか残ってないのかねと綾成は言う。
 どこからか聞こえてきて、消えていくような、そんな都市伝説ひとつ。
「……歪められた噂、か」
 この手の話題が実体化すると性質が悪ぃとヒコは零す。早急に片を付けようと零せばレーグルもそうだなと一つ頷く。
「こういう不思議なことって、まあ興味はひかれるわよねぇ。でも実際に被害を出させるわけにはいかないもの、頑張りましょうか」
 御神木の見えるあたり、境内を汀・由以子(水隠る竜・e14708)は散策している風を装って合流する。
 現れる目隠し狐さん――ドリームイータ―は『興味』を元に生み出された存在だ。
(「嫌悪、驚き、後悔――そして、興味」)
 魔女達の集めているもの。それをベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)は思い浮かべる。
「魔女達が求める感情とはどれも人に必要なものばかりですね」
 好奇心は猫をも殺す、と言うのでしたっけとアリッサ・イデア(夢夜の月茨幻葬・e00220)は紡ぐ。
「かといえど、都市伝説への興味や憧れなんて誰もが持つものだわ」
 それが命の代償になるのは、少々結末としては戴けないわねとアリッサは思う。
 御神木の傍、周囲を確認した雨月・シエラ(ファントムペイン・e00749)は近くにいた仲間達へ声かける。
 石段に座っていた道玄・春次(花曇り・e01044)とボクスドラゴンの雷蔵。
「綺麗やなぁ、夕陽……蜜柑みたいとか思うとる?」
 口が僅かに開いていた雷蔵に笑み零し、お呼ばれやねと立ち上がる。
 都市伝説は恐ろしいもののイメージ。それに興味を持つなんて、困った子やねと春次は零す。
 けど、それより。
「命を奪うのはもっと困るわ」
 だから、そうさせないための戦い。
「よくある神隠し的な伝承、だね」
 狐なんかは神様のお使いで、替わりに神隠しをしたりだとか。
 似た様なお話は結構あると。
「不思議な話ってあたしも少し興味あるわ」
 由以子は声かけて、その話にするりと入り込む。
「此処の伝承も、きっとそんな中の1つ……案外、もう直ぐ近くに居たりして?」
 シエラはくるりとあたりを見回して、小さく笑い零す。春次は相槌打ってそうかもしれんねと面の下で零した。
「誰か、いらっしゃいますか? なんてね……」
 現れるかどうか、それはわからないけれどというような声色。
 しかし、その声に誘われるように現れた気配。
 狐の面を頭の上に、その目は布で覆われ、そして狐の尾を持つもの。
「私が誰かしっている?」
 その問いにシエラは『目隠し狐さん』ですか、と返す。
 するとその通りというように嬉しそうな様子。
「一緒に遊びませんか」
 続けて誘えば、そうしたいと言うように歩み寄ってくる。
 誘った遊びはかごめかごめ。
「リトヴァ、遊びましょうか」
 傍らのビハインドの手をアリッサはとる。
 こうしてふたり、人の輪に混じって遊ぶのはいつぶりかしらと小さな笑みと共に。

●かごめかごめ
 周囲には誰か立ち入らぬようにしてある。
「にしても、懐かしい」
 昔、遊んだ記憶を思い出し、ヒコは笑い零す。
(「かごのなかのとりはいついつでやる……か」)
 今はわかる、その歌に含まれたもの。俗説含め、吉凶孕んだ歌詞は深いものだ。
 ヒコの言葉に春次も懐かしい遊びやねと。その傍らでふよふよと雷蔵は飛んでいる。
 雷蔵はルールはわからない。だからただ着いてくるように飛んでいるだけだ。時折、鬼役の様子うかがうように近づいては、春次の傍へと戻ってくる。
「ふふ、この歳になってかごめかごめってちょっと気恥ずかしい気もするけれど、折角ならしっかり楽しんでやっちゃいましょうか」
 その気持ち現れるように由以子の足取りはとても軽い。
 逆に初めての遊びはぎこちなく。レーグルは時折尻尾を地にあて音立てる。
 それは意図的に、目隠し狐さんの位置を教えるためだ。けれど意図的に、という事はない。
 ぎこちない、というのはレーグルだけでなくベルノルトもだ。
 日本の遊びは知らない。けれど皆を倣ってやってみればどんな遊びかはすぐわかる。
(「かごめかごめ、とは……本当に相手を囲む遊びのようで」)
 歌いながら鬼を囲んでくるくる回る。歌の終わりに、鬼は後ろにいる者を予想して名を紡ぐ。
 あたることもあれば、そうでないことも。
 笑い声と共にただ、目隠し狐さんを満たすための遊び。
 遊びの時間は、童心に帰るように。
 何の歪さも無くただ本当に楽しいだけだ。
「この遊びってこんな感じなのな」
 ガキの頃は無縁だったもんで新鮮だわ、と綾成は笑う。
 狐さんも楽しいかい、と問えば頷き一つ。その問いはちょうど、レーグルが鬼のとき、真後ろでの事だ。
「後ろの正面は、狐さんとみた」
 鬼となったレーグルはその声聞いて、歌の終わりに応える。
 あたりと楽しそうな声で鬼は交代。
 そこでふと、鬼となった目隠し狐さんはくるりと皆を見回して誘ってくる。
 一緒においで、と。
「いや~俺は遠慮しとくわ。まだこっちで遊びたいんでなァ」
 綾成はからりと笑って最初にお断りを。
 続いて、その誘い掛けにシエラはそうだねと頷いた。
「一緒にいってみるのも楽しいかも……なんて、ごめんね。嘘だ」
 私はまだ、向こうへは行けない、行かない。
 シエラはそう呟く。
 目隠し狐さんは他の皆もまた見回した。
 あやかしのような、其の姿はとても惹かれてまうな、と春次は思う。
「往く先は黄泉の国やろうか。神域であれば興味はあるんやけど……其れは勘弁願いたいな」
 春次はそう言って、言葉続ける。
「せやから……目隠し狐さん、もう少し遊びたくはない?」
 それはかごめかごめの終わり。
 囲われた円の中心で目隠し狐さんはころころと笑い零し、飛びかかった。
 ここからはかごめかごめとは違う遊び。

●誘う先
「興味、関心、好奇心。これもまた誰かの夢なのですね」
 ベルノルトは目隠し狐さんを静かに青い瞳に映し小さく呟く。
 けれど、目の前の目隠し狐さんは――ドリームイータ―は見続けて良い夢ではない。
「悲しい夢は此処で終わらせましょう」
 ベルノルトはここで終わるべきものだと思い、仲間たちの助けになる力を振るう。
「刻の音を、生命の狂騒を」
 心臓を脈打つ鼓動にも似た鐘の音。感覚を研ぎ澄ますその音は癒しを与えると共に持ちうる力を底上げする。
 その恩恵を受け、由以子はその身に纏うアームドフォートの主砲を目隠し狐さんへと向けた。
 主砲より放たれる一斉砲撃。その衝撃は身に響くものだ。目隠し狐さんはその影響を痺れとしてその身に受ける。
「頼りにしているわ、わたしの『いとし子(リトヴァ)』」
 アリッサは前列で仲間の守り手の一角を担うリトヴァに声向ける。皆をしっかり守ってねと声色に含めて。
 そしてアリッサもまた、仲間達を支えるために癒し手を担う。
 支えてくれる仲間がいるからこそ、戦いの一番前で戦える。
 シエラの身を包むのは自身の纏う炎。右手から身体を覆うそれはシエラ自身の力を高めるものだ。
 まだ楽しそうに遊んでいるかのような目隠し狐さんへとシエラは金の瞳を向ける。
(「なるべく、早く倒れて……子供が傷付けられるのは好きじゃないんだ」)
 ひらりと舞う紙兵。地獄化した両の腕を飾る巨大な縛霊手。レーグルが放ったそれは仲間達の守りの助け。
 とんと地を蹴って、その足に流星の煌めきと重力纏いヒコは飛び蹴る。
 受けた衝撃に、目隠し狐さんは動き鈍らせながらも歌を紡ぐ。
 童歌は幼いころに聞いたことがあるような、そんな不思議な響き。その響きは攻撃したすぐ後のヒコへ。
「童歌もあやとりも人殺めるもんじゃねぇ」
 くらりと眠気が襲い来る感覚がそこにある。けれどそれは、仲間達によっていずれ取り払われるものだと解っている。それに戦いの中で払うべく、すでに対策は巡らされているものだ。
「涯て無く空ろな、ユメを視てみたい?」
 春次は一歩下がって紡ぐ。
 どこまでも白い魚の形をした『ユメの精霊』を喚ぶ。魚はその身を白刃に変え、目隠し狐さんへと向かった。貫く、その傷口。そこより浸食し、ユメに依って僞夢を齎す。
「雷蔵と目隠し狐さん、御揃いやね」
 可笑しそうに雷蔵に紡ぐ。それは頭の上にある狐の面を指しているのだ。すると、対抗するように雷蔵はその吐息を目隠し狐さんへ向けて噴出した。
「やっぱ戦闘も狐さんにゃ遊びの延長なのかい?」
 戦って傷を負ってもきゃらきゃらと余裕と、楽しそうな雰囲気。綾成はそれならこっちも楽しくやらせて貰うわと続ける。
「しかし催眠は頂けねえ、正気に戻りやがれ!」
 癒し手達が動くより、自分が行うほうが早い。綾成は溜めた気力をヒコに向けて放つ。
 綾成の持つ恩恵。それもありヒコから催眠の気配はすっかりと消え去った。
 重なる攻撃に目隠し狐さんは笑い零す。するとその傷は癒えてゆく。だがそれも微々たるものだ。
 手数はケルベロスのほうが勝る。その癒しが追いつかぬことを感じ攻撃に力を入れ始めた。
 その攻撃をレーグル、そしてリトヴァがいくつか受けて仲間達を守る。
 童歌の響き、あやとるその指から伸びる赤い糸が武器を絡め取る。その攻撃は、目隠し狐さんにとって遊びの延長線上のよう。
 それに応えるように、放たれた糸をその縛霊手でレーグルは絡め取る。仲間には向けさせないと、盾の役目を為すためにも。
「我はあやとりは下手でな」
 これではうまく遊べぬのだとレーグルは縛霊手に地獄の炎を纏わせ叩き付ける。
 けれど、我より上手な者が相手をしてくれるだろうとレーグルは視界の端にその姿を映す。
 その瞬間、目隠し狐の身へと他方から鎖が伸びて戒めるように巡った。
「これでなら、あたしともあやとりできるだろ」
 目隠し狐さんが操るのは赤い糸。由以子が操るのは、ケルベロスチェインだ。
 攻撃重なり、動きがとどまる一瞬のうちに。
「Vir lu craret, Ren le rezaret la Dieu――天上の薔薇よ、遍く満ちよ」
 その間にレーグルをはじめとする前列の仲間達に満ちる癒しの力。
 アリッサの詠唱を言葉の鍵として、真白き薔薇の花弁が虚空に満ちる。刹那、視界を満たす純白の花嵐は然して瞬きの間に溶け消える。
 その幻想は消えゆくと共に痛みを持ち去っていくのだ。
「遊び疲れて今日の夜は貴方も、深く眠れると良いですね」
 アリッサが回復を担った直後にまたベルノルトが回復に回る必要はなさそうだ。
 そう判断して、空の霊力を帯びた武器を抜き放つ。目隠し狐が負ったその傷の上をなぞるようにベルノルトも攻撃仕掛けた。
 一層深く広がる傷跡、目隠し狐さんはすでに、追い込まれている。
 とんと、懐に踏み入って。
「――キミに、此の花を贈るよ」
 纏う武器、それぞれに黒焔が踊る。それらを持って繰り出す素早い連続攻撃。シエラの向けるそれは、全力の一撃には劣るものの、手数の多さが補う。
「もう充分、楽しんだだろう。キミの『興味』はキミのじゃない」
 与えた傷口から吹き出す焔。その軌跡はまるで、花が咲いたかのようだ。
「それは在るべき所へ、還されるべきだから。戯れはお終い……キミも元の場所へお帰り」
 そう言葉向けるが、まだ遊び足りないとでもいうように目隠し狐さんは立っている。
「楽しい時間は、いつか終わるものやから」
 そうだと言うように、雷蔵も一声無く。
 春次の掌から放たれるドラゴンの幻影。それと合わせるかのように、雷蔵も竜の吐息を目隠し狐さんへと向ける。
「――……往け、お前たち」
 模した折り紙を掌に鈴音ひとつ、ふたつ。祝詞に呪式、魔を籠めれば本物相違ない獣たちが動き出す。従順でいて気まぐれ。遊ぶように無邪気にとびかかる神獣たちは目隠し狐さんへと向かう。
「ストイックに行こうじゃねェか」
 続けざま、神獣たちが目隠し狐さんの視界から消えたすぐ後だ。
 地獄の炎纏う綾成の脚。片足蹴りが繰り出され、そのまま硬い拳骨の一発も繰り出される。
 それは綾成が若かりし頃から世話になっていた喧嘩技がグラビティとして昇華されたもの。
 地味な挙動ではあるが、その一撃の威力は強烈で重い物だった。
 それをくらった目隠し狐さんはよろりとよろめいて地に倒れ伏した。
 それが遊びの時間の、終わり。

●帰り道
 倒された目隠し狐さんはその姿を失ってゆく。
 けれど遊びきってどこか満足しているような、そんな雰囲気だ。
 シエラはその姿へと、さよならと別れを告げる。
「楽しい時間だったわ」
 由以子は紡ぐ。それは一緒に遊んだことも含めてなのだろう。
「――……今度は正面から出逢えると良い」
 したら、気ィ変わるまで付き合ってやるよと、ヒコは言葉向ける。
 ドリームイータ―ではあったが、遊んだ時間の楽しさは本物だったのだから。
「満足してくれたやろか」
 春次の言葉に、自分は満足しているというように雷蔵は一声。
 その声に雷蔵が満足したなら、目隠し狐さんもそうやろうねと思わず笑い零れる。
 笑い零す春次に、雷蔵が言うなら間違いないなとヒコも笑って返した。
 遊び相手を探して、そして連れて行く目隠し狐さん。
 ドリームイータ―となって歪められた存在はもうここにはいない。
「狐の伝承はいくらでもあるし、奴等の良い餌になんだろうなァ」
 綾成はそう言って、神主へ挨拶してくるという。終わったということを伝えるためだ。
 ついでに、今後の験担ぎまでに参拝してくかと。
「帰りましょう、リトヴァ」
 アリッサはリトヴァに手を差し出す。リトヴァはどこか嬉しそうに、その手を取った。
 ふと視界に映った御神木。戦いの全てを見ていたそれへとレーグルは一礼を送った。
 するとその御神木の傍、起き上がる者の姿があった。
 それをみて、ベルノルトはそっと声をかける。
「目は覚めましたか? ……子供はもう帰る時間です」
 怪我をしている様子もない、目覚めたばかりでぼんやりはしているが、大丈夫そうだ。
 やがて少女も帰路につく。
 歪められた夢の形は、もうここにはないのだから。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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