スイカお化け現る!!

作者:白鳥美鳥

●お化けスイカ現る!!
 さざ波立つ、夜の砂浜。そこに博也はいくつものスイカ、目隠し、木刀を用意してやって来ていた。
「まずはスイカを置いて……」
 汚れないようにブルーシートを敷いてスイカを中央に置く。
「……それから、目隠しをして……やり方はスイカ割り。ここまでは準備OKだ。失敗しても予備のスイカもあるし」
 持ちこんだスイカは複数。それを確認した。
「……夜の浜辺。ここでスイカ割りを成功させると……巨大なスイカのお化けに変身する筈なんだ。この手で本物のお化けを出現させる! 絶対だ! スイカのお化けとか面白すぎる! 絶対、この目で見るんだ!」
 そう言って気合を入れた博也はスイカ割りと同じ要領で目隠しをして、木刀を手にスイカに向かっていく。
「いでよ、お化けスイカ!!」
 だが、思いっきり木刀は空ぶってしまった。
「……失敗だ。しかし、挑戦あるのみ!」
 再び、スイカ割りをしようとしている博也の前に、第五の魔女・アウゲイアスが現れた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 そう言うと、彼女は博也の心臓を一突きにする。崩れ落ちる博也。彼の傍から目と口のついた巨大なスイカが現れたのだった。

●ヘリオライダーより
 デュアル・サーペント(ウェアライダーのヘリオライダー・en0190)は説明を始めた。
「不思議な物事に強い『興味』をもって、実際に自分で調査を行おうとしている人がドリームイーターに襲われて、『興味』を奪われてしまう事件が起こってしまったみたいなんだ。『興味』を奪ったドリームイーターは既に姿を消したみたいなんだけど、奪われた『興味』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターが事件を起こそうとしているみたいなんだ。だから、怪物型ドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターをみんなに倒して欲しいんだ。それに、このドリームイーターを倒せば『興味』を奪われてしまった被害者も目を覚ましてくれるよ」
 デュアルは状況を説明する。
「場所は夜の砂浜。今回の被害者の博也はスイカ割りに関して、何かをしようとしているみたいなんだ。そして、人間を見つけると『自分が何者か』というような質問をして、正しく対応出来なければ、殺してしまうようなんだよ。で、このドリームイーターなんだけど、自分の事を信じたり、噂をしている人がいると、その人の方に引き寄せられる性質があるから、上手く誘い出せれば有利に戦えると思う。場所は夜の砂浜だから、そんなに人はいないと思うし、広いから更に有利だと思うよ。今回のドリームイーターは巨大なスイカの形をしていて、種を飛ばしてくる『種鉄砲』と、蔓を使ってくる『巻き蔓』、それから縞を光らせる『すいかフラッシュ』を使ってくるよ。みんな、気をつけてね」
 ミーミア・リーン(オラトリオのウィッチドクター・en0094)は、首を傾げる。
「お化けなスイカのドリームイーターなの? 凄く不思議なの。だけど、すっごく興味があるの! みんなでお化けなスイカを割って、博也ちゃんを助けたいの! みんな、スイカ割りなのよ!」


参加者
ヴェルナー・ブラウン(オラトリオの鹵獲術士・e00155)
天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)
テレサ・コール(ジャイロフラフーパー・e04242)
草壁・渚(地球人の巫術士・e05553)
滝・仁志(みそら・e11759)
隠・かなめ(霞牡丹・e16770)
愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)
軋峰・双吉(悪人面の黒天使・e21069)

■リプレイ

●スイカお化け現る!!
 夜の海。波の音。潮の香り。
「まあ、海って色々人の興味を誘うものがあるわよね。それで海難事故とかにあう人が多いのも事実だけれども……」
 愛沢・瑠璃(メロコア系地下アイドル・e19468)は海を見つめる。
 一方では人払いを行った後に、念を入れて誤って入って来ない様に軋峰・双吉(悪人面の黒天使・e21069)とミーミア・リーン(オラトリオのウィッチドクター・en0094)の二人で周囲にキープアウトテープを貼っていき、安全を確保した。
(「何が彼をそこまで駆り立てたんだろう……。傍から見ると凄いシュールな光景だし」)
 草壁・渚(地球人の巫術士・e05553)は、それが極めて不思議で仕方が無い。
 天尊・日仙丸(通販忍者・e00955)は用意して来たスイカ割りセット一式で、スイカ割りの準備を整える。
「ここにスイカを置いて……棒も用意してござる。このスイカ割りセット一式は拙者が通販で買ったのでござるよ」
「ふふ、楽しみだね。じゃあ、僕はランプとか明かりで危なくない様に置いておくから」
 日仙丸のスイカ割り一式を見てヴェルナー・ブラウン(オラトリオの鹵獲術士・e00155)は嬉しそうに微笑むと明かりで周囲を照らしていく。
「ネット知識では知っていますが、やるのは初めてです」
 テレサ・コール(ジャイロフラフーパー・e04242)は、アンニュイな表情をしているから分かり難いが、本人はワクワクドキドキしている。
「全員揃ったでござるな。さあ、スイカ割りを始めるでござるよ」
 日仙丸は仲間達に大きな声で呼びかけた。
「わー、スイカ割りです!」
 隠・かなめ(霞牡丹・e16770)は、にこにこして走って来る。
「スイカ割りって言ったら目隠しね」
「そして、回って目を回してから、棒でスイカを割る! ですよね!」
 瑠璃とかなめはスイカ割りをこれから始める事を強調しながら話す。そんな二人の中で日仙丸が話し始めた。
「そういえば、夜の浜辺でのスイカ割りにはある噂が存在するでござる。それは――」
「何々? どういう話なのかな?」
「俺も聞いたことあるよ。確か何でも――」
 わくわくとヴェルナーが続きを促し、滝・仁志(みそら・e11759)も噂話に乗っかって、他のケルベロス達を巻き込みながら話が進んでいく。
 そんな事を話していると、何やら不思議な気配がやって来た。振り返ると、そこには大きなスイカに目と口が付き笑っているドリームイーターがいた。
(「お化けらしくなんだか不気味なようで、ゆるキャラとかにもいそうで、不思議な外見なの」)
 ヴェルナーはそんな事を思う。確かにどちらにも当てはまりそうな気がした。
「みんな、みんな。私が何か分かる?」
 ドリームイーターは解答を心待ちにしているらしい。
 その問いにテレサの頭の中には表情は変えないものの世紀末な三男を脳裏に浮かんでいるようだ。そんな中で仁志が戦闘開始と言わんばかりに答える。
「特殊な条件でのみ現れるという伝説の巨大スイカ!」
 そう言うと仁志は煌めきを放つ重たい蹴りをドリームイーターへと向かって放った。
「スイカ割りも叩く場所が重要でござるからな」
「人の興味ってのはね! 人がロックに、パンクに生きる為のモチベなのよ! それを奪って弄ぶなんて許せないわ。覚悟しなさい!」
 続けて日仙丸が急所を突く一撃を放ち、瑠璃はバスターライフルを構えるとドリームイーターへと凍てつく光線を放つ。続けてヴェルナーが重力を乗せた蹴りを、渚が渦巻く炎を放った。
「ブチ割んのにちょうど良いスイカッ! テメェが自分をどう思おうが、俺たちにとってはそれが答えだぜ!!」
 双吉はハリボテのケイオスランサー7本と本物のケイオスランサーを放つケイオスランサー・張を使ってドリームイーターに向かって攻撃を叩き込む。
 ドリームイーターも負けじと攻撃を繰り出す。種を飛ばして、かなめに向かって攻撃を放つ。種が次々とかなめを襲い、意識がぼんやりとしてきてしまった。
 テレサは攻撃を続ける。
「当たれっ!!」
 彼女のジャイロフラフープという名前のアームドフォートからドリームイーターへ次々と弾丸を放った。
 ミーミアは眠りに落ちかけているかなめに施術を行って回復させ、プロデューサーさんは双吉達へと加護の風を送り込む。カポはバールを取り出すとドリームイーターを殴りつけ、シフォンはリングを飛ばして攻撃を続けた。
「叩き割って攻撃すると、本当にスイカ割りみたいだよね」
「じゃあ、僕の攻撃は……焼きスイカになるのかな?」
 仁志は輝く斧を構えるとドリームイーターへ向かって上から下へと叩き斬る。続けてヴェルナーが炎の竜を放った。
「一極集中……貫き、穿つ!」
 日仙丸は中指と人差し指の二指に螺旋を込めてドリームイーターへと強烈な一撃を放つ。続けて、瑠璃の輝きを伴う蹴りが叩き込まれた。
「動けなくするよ」
 渚はゲシュタルトグレイブに稲妻を纏わすと、ドリームイーターへと突きを放つ。
 ドリームイーターの身体が輝きだす。そして縞の部分から光線が双吉へと向かって放たれた。余りの眩しさに目がくらんでしまう。
「私にお任せですよ!」
 直ぐにかなめはオーラを溜めると双吉に向かって放ち、彼を癒していく。
「助かった。内部から破壊するぞ」
 双吉は螺旋を纏わせた拳をドリームイーターへと叩き込み、内部から破裂させた。
「あなた様がスイカ割りの前哨戦でございます」
 テレサはドリームイーターに向かって高速の蹴りを叩き込む。カポは画面を光らせ、シフォンは引掻く。プロデューサーさんはヴェルナー達へと加護の風を送り、ミーミアはきらきらと輝くベールをテレサ達へと送った。
 仁志が肘から先を回転させてドリームイーターへと強力な一撃を与える。そこに日仙丸がオーラの弾丸を撃ち放った。
 ドリームイーターは蔓を動かしてテレサへと向かって攻撃を開始するが、双吉がそれを庇った。
「ありがとうございます、双吉様」
「いや、無事で何よりだ」
 その間に出来た隙を見てヴェルナーは稲妻を纏わせドリームイーターへと突き貫く。そこに瑠璃が凍結の光線を、渚が稲妻を伴った突きを放った。
「私も攻撃しますよ!」
 かなめは冷気を纏った一撃をドリームイーターへ与える。続けて双吉のケイオスランサー・張が放たれ突き貫いた。
「覚悟して下さいませ!」
 テレサのシャイロフラフープが弾丸を撃ち放つ。ミーミアは回復に動き、先程傷を負った双吉へ向かって施術を施した。シフォンとプロデューサーさんは共にリングを放って攻撃する。カポもバールを用いて攻撃していった。
「そろそろ本物のスイカ割りをしたいよね」
「そうでござるな」
 仁志と日仙丸は、そう言葉を交わして攻撃を繰り出す。仁志の輝きを放つ蹴りが叩き込まれ、日仙丸は螺旋掌・穿を使って突いた。
「丸いスイカ型は形を把握しやすいよね」
「そうね。終わったら打ち上げ花火もやるつもりだから……このドリームイーターも花火の様に散ってくれたりしないかしら」
 そんな会話を交わしたヴェルナーと瑠璃。連携を取りながら、ヴェルナーは稲妻を纏った鋭い突きを、瑠璃はルーンを纏わせて煌めく斬撃をドリームイーターへと与えていく。
「これが草壁流の真髄、とくと味わいなさい!」
 渚は伝家の宝刀に膨大な霊力を宿し、特殊な歩行を取るとドリームイーターへ次々と斬撃を放った。
 ドリームイーターは次の攻撃に入る。複数の種が再びかなめに向かって飛んでいくのを双吉が庇って入った。
「ありがとうございます。直ぐに回復しますね!」
「ああ、ありがとう」
 かなめはオーラを放って双吉を回復していく。その間にテレサが急所に向かって蹴りを放った。
 ミーミアは輝くオーラをテレサ達へと送り、シフォンとプロデューサーさんの爪がドリームイーターを引掻く。そしてカポは画面からフラッシュを放った。
「よし、一気に叩き込もう!」
 仁志がそう声をかける。
 まずは仁志がルーンを輝かせた斬撃を上から下へとドリームイーターへと放つ。そして、日仙丸が内部から爆破し、瑠璃の凍結の光線を放った。
「天に遍く星々の煌きよ ここに集いて 彼の者を打ち砕け」
 詠唱時に一瞬足を止めて、ヴェルナーはドリームイーターの周囲に恒星に模したエネルギー体を展開して一斉に起爆、爆破する。
 その攻撃で、ドリームイーターは夜空に輝く星の様にきらきらと光を放って消えていった。

●スイカ割りを楽しもう!
「スイカ割り、僕、初めてなんだよ。楽しみ」
「私もそうでございます」
「実は俺も初めてなんだよな」
 初めてのスイカ割りにヴェルナー、テレサ、双吉は人一倍わくわくしている。
 そして、カポがバールを振り回してやる気満々、とても楽しそうだ。……振り回しているのがバールというのが危ないのだけれど。それを慌てて仁志が捕まえる。
「さて、運動の後のデザートと行くでござるか。ほれ、ミーミア殿」
「ありがとうなの! ……じゃあ、一番年下のテレサちゃんから……はっ!」
 日仙丸から棒を受け取ったミーミアはテレサに棒を渡しつつ目隠しを渡そうとして衝撃を受けている。
「ミーミア様、どうしたのでございましょうか?」
「テレサちゃんの方が背が高くて目隠しが出来ないの……!」
「分かった、分かった。こうやって目隠しをすれば良いのか?」
 双吉がテレサに目隠しをしてやる。
「それで、棒を支えにして10回くるくる回るでござるよ」
「くるくる……」
「回るんだな」
「回るんだね」
 テレサが回っているのを見ながら、双吉とヴェルナーが見ている。目隠しの上に回るとなると余計にバランスを崩しそうだ。
「……ねえ、若干、俺、避けられている様な気がするんだけど」
 カポを抱えた仁志がそう訴える。
「うーん、何というか……」
「……その、言い難いんだがな」
「……どこか危ない様な気がしなくもないのでござるよ」
 渚、双吉、日仙丸の言葉に仁志は言葉に詰まる。何か心当たりがあるらしい。
「それでは参りましょう……」
 棒を構えたテレサ。
「テレサちゃん、真っ直ぐ、真っ直ぐだよ~!」
 そうやって渚達が声をかけてスイカへと誘導しようとするのだが……テレサは何故かきちんとスイカへと向かっている。
「……何か変よね」
「……もしかして……GPS機能使っているんじゃ……」
 不思議そうな渚に、同じレプリカントの仁志が気付く。
「テ、テレサちゃん! それはズルなの! 最初からやり直しなのよ!」
「それじゃあ、スイカ割りは楽しめないよ?」
 ミーミアと渚がテレサを確保して、正しいスイカ割りについて説明する。
「やっぱり難しいんだね。どきどき」
「しっかり見ておかないとな……」
 ヴェルナーと双吉は、再挑戦するテレサをしっかり見ておく事を決める。
「テレサちゃん、もっと右だよ」
「今度は左すぎるでござる」
「スイカまで後もうちょっとなの!」
「む、難しいでございます~!」
 テレサへと渚達が声をかけて誘導し、ふらふらするテレサはそう声を上げつつ、それがスイカ割りの醍醐味である。それから順番に続いてわいわいとスイカ割りが続いていった。
「さて、切り分けたでござる。美味しくてもお腹を壊さない程度にするでござるよ」
 日仙丸に切り分けて貰ったスイカを各々取って渡していく。
「うん、美味しい」
「美味しいね!」
 渚やヴェルナー、他のケルベロス達も受け取ると微笑みながらスイカを頬張った。楽しく割って遊んだスイカはとても美味しい。
「花火も持ってきましたよー!」
「打ち上げ花火もあるわよ。スイカを食べながら見る花火は素敵だと思うわ」
 かなめと瑠璃は持って来た花火を広げる。
「花火だ!」
「スイカに花火……夏という感じでございますね」
 ヴェルナーとテレサは誰より顔を輝かせている様だ。
「かなめちゃん、瑠璃ちゃん、ありがとうなの! えっと打ち上げ花火は誰かが火をつけないと駄目なの。そうだ、シフォン、宜しくなの!」
 そんな訳でシフォンが火付け役で回る事になる。
 打ち上がる海辺の砂浜で花火を見ながらスイカを食べる。これも一つの夏の過ごし方だと思った。
「双吉ちゃんはスイカ食べないの?」
「いや、スイカは味が苦手なんだ」
 スイカを食べず、缶コーヒーを片手に花火を見ている双吉にミーミアが話しかける。そして、その答えを聞いたミーミアは日仙丸の所へ走っていくと、再びスイカを持って来た。
「あのね、『おいしくなあれ』を日仙丸ちゃんにしてもらったの。これで、双吉ちゃんも食べられると思うのよ。スイカ割りを折角したんだから、食べないと勿体ないの」
 ほぼ強制的にスイカを押しつけられた双吉は、苦笑いしながら頑張って挑戦せざるをえなくなってしまった。
「花火を見ながらスイカを食べるのも良いもんですね。今度はお昼辺りに来て、皆で海水浴するのも良さそうです」
「そうね。それも良いわね」
 一緒に並んでスイカを食べているかなめの言葉に瑠璃もにっこりと微笑んだ。
 勿論、スイカも花火も片づけて帰るけれど……今は綺麗な花火を見ながら美味しいスイカを食べ、潮風を感じる……。
 夏を感じる、そんな時間が過ぎていくのだった。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年8月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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