ある初秋の昼。鈴なりに実をつける栗の木の間を、7人の若者たちが歩いていく。ただ、彼らの身なりは、ゴロツキのそれで、明らかにその場の雰囲気とはかけ離れていた。
「何だぁ、アキトのヤツ? こんな所に呼び出しやがって……」
ザク、と地面を踏みしめる音がし、7人の前に立ちふさがる影があった。それは、彼らと敵対するアキトの取り巻きの3人だった。
3人は薄ら笑いを浮かべると、突如、7人に向かって唾を吐きかけた。
「この野郎、ナメやがって!」
1人が激昂して相手につかみかかったのを皮切りに、全員が入り乱れての乱戦となる。さすがに7対3では数の多いほうが優位。形勢がほぼ決まったかに思えた、その時。
「な、な……!」
そこに現われたのは、アキト――いや、アキトだったもの、だった。体はこげ茶色の幹へと変化し、緑色の葉が生い茂っている。幹の中心に見える目と口が、かろうじて人間であったことを感じさせる程度であった。
ひい、と声にならない音を出しながら怯えて後ずさりする若者たちを見下ろすと、アキトは愉快でたまらないといった調子で口の端をつり上げる。
「主役ってのは、遅れて登場するものなんだよ」
言うが否や、容赦なく太い枝となったその手を振り下ろす。
悲鳴と殺戮のおぞましい音が辺りに響き――再び林に静寂が訪れたとき、そこに残っていたのは、アキトと敵対していた7人の若者たちの無残に変わり果てた姿だった。
「皆さん、お集まりくださって感謝っす。今回は、茨城県かすみがうら市に向かってほしいんっす」
軽く会釈し、ダンテは続ける。
「皆さんもご存知かとは思うんすけど、最近、かすみがうら市で若者のグループ同士の抗争事件が多発してるっす」
ケルベロスたちが頷くのを見て、ダンテはさらに言葉をつないだ。
「ただのケンカなら皆さんが関わる必要は無いんすけど、実は、自分の予知で、その中にデウスエクスがいることが分かったんっす」
デウスエクス――その単語で一瞬にして場に緊張が走る。
「そのデウスエクスっていうのは、攻性植物っす。どうやら、あるグループのリーダーが、力欲しさに攻性植物の果実を体内に受け入れて異形化してしまったみたいなんすよ。で、その果実っていうのが『栗』なんで、ヤツらは自分たちのことを『チェスナッ党』って呼んでるっす」
……そのネーミングセンスに先ほどとは違う意味で場が凍りついたが、ダンテは気にせず続ける。
「今回、皆さんにお願いしたいのは、攻性植物と化したチェスナッ党のリーダー・アキトの撃破っす。こいつを撃破すれば、事件発生は食い止められるっす」
ダンテはパラパラと手元の資料をめくる。そして、事件の予知された場所はチェスナッ党のアジトにほど近い郊外の栗林であることをケルベロスたちに告げた。
「それで、アキトの使ってくる攻撃のことなんすけど、まず1つ目は『捕食形態』。これは、一部の枝や葉を巨大化させて、目の前の敵に噛み付いた上で毒を注入するっす。次に、2つ目が『埋葬形態』で、地面に接する体の一部を大地に融合させて、敵をガバーッと飲みこむっす」
『埋葬形態』で侵食された大地は戦闘後にヒールで治すことができるんで、できればそうしてもらえると助かるっす、とダンテは付け加えた。
「で、最後が『イガグリ爆弾』っす。枝に実った実に光を集めて、真っ赤になったらイガグリごと投げつけてくるっす。……聞いただけで痛そうっすね」
左手で軽くぽりぽりと頭を掻く。
「ちなみに、現場にはアキト以外の若者が10人ほどいるんっすけど、こいつらは普通の人間なんで、危険を感じたら勝手に逃げていくと思われるっす。皆さんはターゲットとの戦いに専念してもらって大丈夫っすよ」
パタン、とファイルを閉じると、ダンテはケルベロスたちに向き合った。
「この攻性植物は、鎌倉の戦いとは関わってないんすけど、見過ごすこともできないんでよろしくお願いしたいっす」
それに、とダンテは続ける。
「ケンカばかりしている迷える子羊たちに、ケルベロスの皆さんからカッコよくガツンと喝を入れてもらう、っていうのもいいかもしれないっす!」
目を輝かせながら、自分、皆さんの活躍信じてますから! とダンテは締めくくった。
参加者 | |
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レクシア・クーン(ふわり舞う姫紫君子蘭・e00448) |
アマルガム・ムーンハート(フェイトスピナー・e00993) |
桐ヶ谷・李音(空に焦がれる・e04781) |
ミーム・イロウシェン(絡繰リ仕掛ケノ白イ剣士・e05583) |
虎丸・勇(スタンピード・e09789) |
立嶋・虎太郎(純情で自由な豆柴猛虎・e14570) |
笑天宮・命(変態仮面・e14806) |
麻里・烏子(空虚な夢の器・e14898) |
●遭遇
茨城県かすみがうら市の郊外の栗林。その木々の間をぬって、8人のケルベロスたちは予知された現場へと向かっていた。麻里・烏子(空虚な夢の器・e14898)と虎丸・勇(スタンピード・e09789)の防具特徴『隠された森の小路』の効果で、植物が次々と曲がり道が作られていく。
「栗拾い…じゃなくて、栗退治だっけ? 俺、昔は体が弱くて外に殆ど出られなかったから、初体験なんですよね~。楽しみだなぁ~」
戦闘前とは思えないほどのんびりとした口調の桐ヶ谷・李音(空に焦がれる・e04781)の横では、がおぅ? がおぅ? と色々な物に興味を示しながら子犬の様な姿の虎が無邪気に駆け回っている。立嶋・虎太郎(純情で自由な豆柴猛虎・e14570)だ。
「がおぅ♪ 俺 山好き! 栗好き! モンブラン、うまい!」
その横では、うんうん、と烏子が頷いている。
「栗の木。栗の実。うん、モンブランも甘くて美味しいね。――彼の魂も、同じくらい美味しいといいけど」
その赤い瞳を怪しく輝かせながら、うっとりと話す彼女の横で、勇は少し曇った表情を浮かべていた。
「『栗の木人間』か……正直おっかない。でも、そうも言ってられないよね」
「はい。戦争があったそばから人同士の争いなんて馬鹿げてるッス。しかもデウスエクスの力まで借りるとは愚かの極み。お灸を据えるためにもちょっと痛い目を見てもらうッス!」
仮面でその目元は見えないが、口調からその熱意は十分に感じ取れる。そんな笑天宮・命(変態仮面・e14806)の言葉にアマルガム・ムーンハート(フェイトスピナー・e00993)も同意する。
「ああ、自分で頑張って力をつけなきゃ、結局は身を滅ぼすだけだ。……俺も力が欲しいけど、自分の手で掴み取るものだって思ってるから……ネーミングセンスには共感するけど、お灸すえないと、な」
「ええ。もっとも、彼の決断も許しがたいですが、真に許せないのは、そうさせてしまったデウスエクスの存在、ということは忘れないようにしないと」
厳しい表情を浮かべながら話すレクシア・クーン(ふわり舞う姫紫君子蘭・e00448)に、最後尾を行くミーム・イロウシェン(絡繰リ仕掛ケノ白イ剣士・e05583)も、黙って頷く。
『隠された森の小路』のおかげでかなり近道ができたのか、8人が到着した時、若者たちは乱闘していたがアキトはまだ現われていなかった。ただ、今彼らを避難させてしまうと、予知した内容と異なる結果になってしまう。もう少し、もう少し――。じりじりした気持ちを抱えながら、息を潜めて見守ることしばし。
「――来た!」
異形と化したアキトがずり、ずりと若者たちへ近づこうとしているところに、命、烏子、勇が素早く間に割って入る。
「一応念には念を入れて、と」
やや後から到着した李音は、これからの戦いでアキトを見失わないように、ウォンテッドで手配書を作成する。
ケルベロスの出現により、アキト以外の若者達は一目散にその場を逃げ出していく。彼らが無事に安全な場所まで逃げられるように、レクシア、ミーム、アマルガムもそれぞれ武器を構え、虎太郎も、その姿を人虎へと変換させ、アキトと対峙する。可愛らしい柴犬サイズの生き物は一転、屈強な巨漢になり、その様子は、今にもその内臓に牙を突き立ててやろうとでも言いたげな虎そのものであった。
そして、あっと言う間に、その場にいるのはアキトとケルベロスだけとなった。これからの殺戮の楽しみを奪われたアキトは、みるみる内に激昂していく。
「オレの邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!!!」
●暴走栗の木との戦い
怒り狂ったアキトは、枝と化した自らの枝葉を巨大化させ、ケルベロスたちに襲い掛かってくる。その攻撃を受け止めたのは、虎太郎と、勇のライドキャリバー・エリィだった。
すると、虎太郎は素早くアキトの背後に回りこみ、彼のお尻(だったと思われる部分)を思いっきり2、3発引っぱたいた。強烈な『オシリペンペン』である。
「――?!」
一瞬、意表を突かれてアキトは動きを止めるが、我に帰ると今まで以上に激しく怒りながら腕を振り回しはじめる。ダメージは与えなかったものの、上手く挑発して注意を引きつけることができたようだ。その隙に、
「ライトニングウォール!」
命が唱えたグラビティが近くの仲間を包みこむ。
「命さん、支援感謝です。――参ります」
毅然とした口調で呟くと、レクシアは翼のような獄炎を背中から噴き上げ、それを推力にエアシューズで一気にアキトとの間合いを詰め、ブレイズクラッシュを放つ。続けざまに、やや離れた場所から勇が螺旋手裏剣を投げる。
「……螺旋射ち」
戦いのスイッチが入ったその声には、先ほどまでの気の弱い様子は全く感じられない。
炎と螺旋手裏剣の連続攻撃によって、右の枝の一部にダメージを受けたアキトは、地面と自分の大地を融合させた。そして、
「邪魔をするなぁ――!!」
耳をつんざくような激しい声と共に、近くにいたレクシア、ミーム、虎太郎、命を飲み込む。
「みんな――!!」
そこまで大きくはないものの、ダメージを受けた仲間たちを、すかさずアマルガムは黄金の果実で回復する。
その様子を確認した李音は、二丁の銃の照準をアキトに合わせる。
「まったく……忙しないね。キミは少しゆっくりするべきだよねぇ」
言い終わるが否や、放たれたのは時間を凍結する弾丸。その攻撃を受け、怯んだ敵を、ミームはき、と睨み付ける。
「鬱陶しい、大人しく伐採されろ」
低い声で言い捨てると、武器を握り締めた。
「不変なる力よ、邪を縛れ! ――金剛縛鎖!」
その瞬間、きらめくダイヤモンドの結晶がアキトを束縛し、その体に重みを与え、動きを鈍らせる。
アキトは反撃すべく腕を振り回すが、当たらない。そこに、音もなく烏子が忍び寄る。
「栗は美味しそうだけれど……」
顔を近づけ、じ、と下からアキトの目を見つめる。すると――。
「……キミの魂は、味が薄そうだ」
『闇に囁くもの』。あっと言う間に、体中から黒い液体がゆっくり染み出し、突如鋭角の牙のような形へと変化する。それは、動きの鈍っていたアキトをぐわっと捕食した。
その攻撃を受け、アキトはよろめいたが、体勢を立て直すと枝に力をこめ、真っ赤に変化した『イガグリ』を投げつけてきた。すかさず、ディフェンダーの命が仲間をかばってその攻撃を受ける。
「おー、危ないッスねー」
けらけらと笑いながら、少し焦げた服をパンパンと払う。
「……これは、うーんとキツいお灸を据える必要があるッスね。ドレインスラッシュ!」
刹那、大鎌がアキトの左枝を激しく斬りつける。痛みから言葉にならない声をあげるアキトとは対照的に、命はみるみるうちに回復していく。
戦いは大詰めを迎えていた。
冷静さを欠き、なおかつ枝を失って威力が減少しているアキトの攻撃は、もはやケルベロスたちの脅威ではなく、侵食が進み既に言葉すらも失ってしまっている様子は、見ていて哀れなほどでもあった。
「さて、そろそろ本格的に剪定させていただきましょうか。スカルブレイカー!」
「我虎牙口呑和恩! 食べる! のむ! いただきます! ワオォオン!」
高々と飛び上がり、アキトの頭上から大きく斧を振り下ろしたレクシアに続いて、虎太郎も攻撃を仕掛ける。
「ちょっと熱いよ、気をつけて。『焔獄』!」
2人の攻撃の間に暗器に熱を纏わせた勇が、強烈な一撃を放つ。そしてその炎は、傷口からアキトの中へと侵食していく。
「本当の英雄とは見ただけで敵を粉砕するんスよ! 奇怪で奇妙な真紅の閃光、食らえっ!」
続けざまに命から放たれた閃光は、アキトの目を直撃する。痛みと幻影に苦しむ彼の目の前に、アマルガムが立ちはだかる。
「変わり果てた姿だな。そんなになってまで力が欲しかったのかお前は!」
叫びながら、アマルガムは秘剣焔星を叩き込む。
その炎はアキトの体を焼き尽くし、そして――彼は消滅した。
「……バカ野郎が。お前がそんなになって、悲しむ人がいなかったのか?」
密かに、できれば元の姿に戻したい、助けたい、と願っていたアマルガムにとっては、この結末は非常に悲しいものだった。
その傍に、す、と烏子が近づく。よく見ると、手のひらでリンゴの形の黄金の果実を弄んでいる。
皆の気を紛らわすように、彼女はぽつりと呟く。
「うん、栗もいいけれど、私は甘いリンゴの方が好きかな」
そして、烏子はリンゴを大きく空へと投げた。それがきらきらと金色の光へ変化するのを、皆はじっと見送った――それぞれに想いを抱きながら。
●親心
アキトを撃破して、しばらくの間彼を悼むようにじ、と立っていたケルベロスたちだが、不意に虎太郎が皆の後ろに駆け出し、がさ、と茂みに分け入った。
そこには、チェスナッ党の取り巻きたちと、対立していたグループの7人の若者たちがいた。恐怖から多少青ざめてはいるが、どうやら怪我はないようだ。
「――お前たち、これを見ても、まだ今までと同じことをしようと思うか?」
鋭い牙を見せながら近づく虎太郎に怪我の影響が見られないことに、ひぃ、と若者たちは驚きと怯えで声を上げた。――ただ、実際は怪我の痛みはペインキラーで誤魔化しているだけだったのだが。
そこに、つかつか、とアマルガム歩み寄り、チェスナッ党の3人にぐい、と顔を寄せたが、その右目の炎は心なしか憂いを含んでいるようにも見える。そして、ぽつり、ぽつり、と語りかけた。
「何で、お前達はアキトを止めなかったんだ? 仲間、だろう? 俺は……アキトのことだけじゃなく、それも悲しくてたまらない」
友達なら友人が道を違えたら止めるべきだろ? という彼の言葉に、3人はうなだれる。
「……喧嘩するなとは言わない。でも過ぎた力を求めるのは……やめといて」
その時は俺達がまた相手するよ? と呟いて立ち去ったアマルガムと入れ替わるように、勇が続ける。
「うん、アマルガムの言うとおりだね。――これに懲りたら、喧嘩はもうやめなよ?」
武器をちらつかせながら、にっこりと。でも、その目は笑っていなかった。
「自分も、キミたちにはあんな風になってほしくはないッス。……あ、えーと、ちょっと離れてもらえると嬉しいんッスけど……」
ラブフェロモンが効きすぎてしまったのか、今にも襲いかかりそうな勢いで若者たちに懐かれてしまった命が少し引きつった笑顔で対応している。その様子を見たミームが、両手に1人ずつチェスナッ党の取り巻きの首元をぐい、と持ち上げ、命から引き剥がした。
「これ以上暴れるな……次にやろうものなら貴様らの命、無いと思え」
その声は決して大きいものではなかったが、重みのある声は取り巻きたちに強く響いたようで、しゅんとした表情を浮かべている。
一方、烏子も残り一人のチェスナッ党の取り巻きをラブフェロモンで魅了していた。
「キミもデウスエクスになったら、教えてね」
優しい口調とは裏腹に、パキパキ、と不気味な音を立てて、烏子の黒いスライムと攻性植物が若者の周囲に広がっていく。そして――。
「私が、魂を食べてあげるから……こう、やって、ね?」
無数の牙が出現し、舌なめずりをする。
囲まれた者だけでなく、周囲で見ていた仲間もひいい、と震え上がってしまっていたが、無理もない。
「まあ、皆さん、もうその位でよろしいのではないのでしょうか?」
レクシアは、がたがた、と歯の根が合わないほど震えている一人の若者に銀色の髪をたなびかせながら近づき、ゆっくりとかがみこむと、そっと彼の手を握った。
(「皆さん人々を守りたい一心なんです。本来守るべき人々に刃を向けるなんて、誰も望んでいません」)
接触テレパスによって、若者の中に直接言葉が流れ込む。若者は、はっとした表情を浮かべた。
震えが収まったのを確認して、今度は、自分の口でレクシアが語りかける。
「――どうかアキトさんの様に、誘惑に負けないでください」
レクシアが立ち上がると、その横にミームが並んだ。
「力を求めるのも、仲間の力に頼るのも構わん……だが、力によって取り返しのつかない事態にならないか、これからはよく考えろ」
がくがく、と首を激しく縦に振ると、若者たちはその場を逃げるようにして離れていった。
蜘蛛の子を散らすように帰って行った10人の若者たちを見やりながら、そういえば、と勇は口を開いた。
「李音君は、彼らに特に何も言ってなかったけれど、それで良かったの?」
うーん、と軽く首をかしげたのち、にっこりと笑顔を浮かべて李音は答える。
「俺は、そーいうの興味ないんだよね~。だから、アキトの攻撃で侵食された大地を元に戻すことに専念しようかなと思って」
「あ、そういうことなら、私も手伝おうかい?」
「はい、それはもうぜひ」
烏子の申し出に少し甘えた調子の声で答えると、李音は表情を引き締め、目の前に広がる大地の『傷』に向き合った。
「さぁ、君たちの本当の姿を取り戻すんだ」
真っ白な羽を広げ、彼がオラトリオヴェールを唱えると、その暖かい光が優しく地面を包み込み、傷ついた地面や木々を癒していった。
●皆で栗拾い!
李音、烏子のヒールにより、暴走した栗の木が荒らした地面は元通りに回復したが、アキトの攻撃によって地面にはたくさんの栗の実が落ちてしまっていた。
それを見て、あ、そうだ、と李音がぱん、と手を叩いた。
「せっかくだから栗拾いもやりましょうよ! 俺、栗ご飯食べたいです~」
「がうがう! 俺も、栗大好き! いっぱい拾う!」
先ほどまでとは打って変わって、かわいらしい豆柴サイズに戻った虎太郎が無邪気に駆け出していく。
「よし、じゃあ俺も沢山拾って……今夜は栗パーティーだな!」
美味い栗きんとんが食べられそうだな! とほくほく顔でアマルガムも栗を集めていく。
「では私も……旅団の仲間への土産にでもするか」
大きな体を折り曲げて、ミームも一つ、二つと手近に落ちている栗を拾っていく。
その光景を微笑ましく見守っていたレクシアが、不意に口を開いた。
「ここで焼き栗というのもいいかもしれませんね」
「うん、私もお腹空いたし、焼き栗食べたいなー。頑張ったし、ちょっとぐらいご褒美で……ね」
戦闘中の張り詰めた状態の反動か、へたりと疲れて座り込んでしまっているものの、勇は笑顔で同意した。
その横で、命も大きく頷く。
「そうっすね。ヘリオンが来るまでもう少し時間もありそうッス」
「じゃぁ、焚き火をしてみんなで焼き栗、食べよっか?」
烏子の言葉に、賛成! と声を揃えた7人は、そそくさと焼き栗の準備を始めた。
爽やかに晴れた空の下、穏やかな時間を取り戻した栗林に、8人のケルベロスたちの明るい声が響いていた。
作者:東雲ゆう |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2015年10月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 10
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