ぬいぐるみパニック

作者:天木一

「ここ、どこ?」
 パジャマ姿の少女が周囲を見渡す。パステルカラーの可愛らしい部屋には、数々のぬいぐるみが飾られていた。
「わー! すごいすごい! 大きなぬいぐるみ!」
 その中でも一際大きな2mはある茶色いクマのぬいぐるみが中央に鎮座していた。小さな少女がぼふんとクマに飛び込む。体当たりしたお腹は羽毛の布団のように少女を優しく受け止めた。
「なにこれ、なにこれ! マシュマロみたい!」
 その感触を気に入ったのか、少女はクマのお腹をぷにぷにと押す。
「いいなっこのクマほしいな!」
 少女がもふもふとクマのお腹を堪能している時だった。突然クマのお腹がガバッと大きな口のように開いた。
『クマー!』
 クマが吠え、少女の体を丸々呑み込む。
「ひゃっ!?」
 驚き悲鳴を上げようとした少女の体は中の綿に包み込まれ身動きが取れなくなる。
「く、くるし……」
 ぎゅうぎゅうに詰められた綿に圧迫され、少女は意識を手放した。

「あれ? 朝……そっか、夢かぁ~」
 ベッドで目覚めた少女は安堵の息を吐く。その時、胸の中央から鍵が突き出た。いつの間にか背後に立っていた魔女が手にした鍵で貫いたのだ。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 魔女が告げると、少女はベッドに崩れ落ちる。その横には夢に現われた大きな茶色いクマのぬいぐるみが存在していた。
 

「子供の頃というのは突拍子もない夢を見たりするものです。そんな驚くような夢を見た少女がドリームイーターに襲われてしまい、『驚き』を奪われてしまうという事件が起きるのです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が集まったケルベロス達に事件の詳細を説明する。
「『驚き』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しています。ですが、奪われた『驚き』を元にして現実化したドリームイーターが新たな事件を起こそうとしているようです。このドリームイーターを被害が出る前に撃破して欲しいのです。
 今ならばまだ被害が出る前に止める事が出来るかもしれない。
「ドリームイーターを倒す事ができれば、『驚き』を奪われてしまった少女も、目を覚ますと思います」
 このままでは少女は眠ったまま目覚める事はない。救うには『驚き』から生まれたドリームイーターを倒す必要がある。
「生まれたドリームイーターは大きなクマのぬいぐるみの姿をしています。その爪や牙、そして体に飲み込む能力を使って戦うようです」
 基本的には熊のような身体能力を持っているようだ。
「敵は被害者の家付近の市街地を徘徊し、道行く人を驚かせようと行動するようです」
 敵の視界に入るようにすれば、相手から近づいてくるだろう。
「夢を奪われた少女はずっと眠り続けることになってしまいます。何としてもドリームイーターを倒し、眠れる少女を助けてあげてください」
 よろしくお願いしますというセリカに、ケルベロス達は頷き少女の家周辺の地図に目を向け相談を始めた。


参加者
リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)
星野・優輝(戦場は提督の喫茶店マスター・e02256)
相良・美月(オラトリオの巫術士・e05292)
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
フォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)
ケーシィ・リガルジィ(幼き黒の造形絵師・e15521)
神山・太一(弾丸少年・e18779)
エリカ・アルゲントゥム(風に舞う白銀の花・e24421)

■リプレイ

●夢の中から
 子供ならばもう寝静まっているだろう夜の時刻。人の少なくなった道にケルベロス達が姿を見せる。
「可愛いクマさんの姿なら戦わずにお友達になって、一緒に遊んだりもふもふしたいところですが」
 おっきなぬいぐるみに抱きつくのを想像し、相良・美月(オラトリオの巫術士・e05292)は頬を緩める。
「女の子を助ける為に頑張らなくちゃ、ですね」
 ぷるぷると首を振り、これから相手をするのは悪いぬいぐるみだと気合を入れる。
「でっかいぬいぐるみかにゃ。ぼくはでっかいドーナツの夢が見たいにゃ」
 ケーシィ・リガルジィ(幼き黒の造形絵師・e15521)は大きなドーナツに齧り付くのを想像し、思わず出そうになる涎を堪えた。
「可愛いぬいぐるみか……」
 無表情ながらもラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)の足取りは軽い。懐中電灯を点けて3人が囮として道を進むと、離れたところから仲間達が姿を隠して辺りを警戒していた。
「新たなドリームイーターが動き出したようだな。真の目的を探り出すためにもこの依頼を成功させねばいいけないな」
 黒いジャケットを着た星野・優輝(戦場は提督の喫茶店マスター・e02256)が、闇夜に紛れるように様子を窺う。
「……また厄介な敵が現れたんだね。女の子を助けるためにも頑張らないと」
 同じように黒い上着を羽織ったエリカ・アルゲントゥム(風に舞う白銀の花・e24421)は、いつでも行動出来るように周囲の地形を確認する。
「ぬいぐるみが動くなんて、小さい子が大喜びしそうな夢よね……凶暴なのが問題だけど」
 動くぬいぐるみを想像して、リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)は微笑ましい気持ちになる。
「ドリームイーターには女の子の夢から退場してもらいましょう」
 ぬいぐるみといえでも敵だと気を引き締め、進む仲間の後を追う。
「『驚かそうとする』って字面は可愛いけれど、デウスエクスの基準はアテにならないからね……」
 闇に紛れるような黒っぽい服を着たフォトナ・オリヴィエ(マイスター・e14368)は、いつでも戦えるように手でケミカルライトを確認した。
「ぬいぐるみのドリームイーター……きっと可愛いんだろうなあ。でも、急に出たらやっぱり僕、びっくりしちゃいそうだよ……」
 神山・太一(弾丸少年・e18779)は不安そうに暗闇に包まれた周囲を見渡す。
「まあ、てっくんがいれば怖くはないけどね! ……本当だよ?」
 テレビウムのてっくんが心配そうに見上げると、太一は誤魔化すようにその頭を撫でた。
「こういうのはお約束だよな」
 前を歩いていたラギアは路上駐車している車の横で立ち止まり、懐中電灯で自分の顔を下から照らし、車のミラーに映る怖い顔を確認した。その時だった、背後で『クマ!?』と驚いた声がする。
 振り向けばそこには2mはある大きな茶色いクマのぬいぐるみが尻餅をついていた。

●驚いたのは
 じーっとラギアは表情を変えずに相手をガン見する。対するクマもつぶらな瞳で見つめ返し、何処にでも居るただのぬいぐるみアピールをしていた。見つめ合うラギアはクマの可愛らしさに内心、胸をキュンキュンさせながらも、それを表には出さないように堪えていた。
「ああやってると可愛いなあ……。いや、気を引き締めていかないと」
 首を振ったエリカは物陰から飛び出し風を巻き起こす。一陣の風は呼び水のように激しい風を誘い、嵐となってクマの自由を奪う。
 そこへビハインドのヘザーは落ちてある石を浮かせてクマにぶつけた。
「ミッション・スタート!」
 ジャケットを脱ぎ捨て、白い旧日本海軍姿となった優輝が突っ込み、オーラを纏った拳を胸に叩き込む。
『クマーー!』
 ぬいぐるみの振りを諦めた大きなクマが立ち上がる。そして威嚇するように両手を広げて吠えた。
「ご、ごごごご、ごめんなさいっ」
 その大きな声に萎縮し謝りながらも、美月は2つの弓を束ね漆黒の巨大矢を放つ。飛翔した矢はクマの腹を貫いた。
「近隣住民のみなさん、ご迷惑をおかけしますっ……!」
 周辺に住む人達に謝りながら、駆け出したリリアは勢いよく跳躍し、飛び蹴りを浴びせた。
『クマックマッ』
 よろよろと電柱にぶつかったクマは、ナイフのような爪を振り回して電柱を斬り飛ばし突進してくる。
「まずはこっちの防御を固めないとね!」
 ケミカルライトをばら撒いて光源を確保したフォトナが、味方の前に雷の壁を作り出し仲間を守る障壁とする。クマがその壁にぶつかり勢いを弱めた。
「モフモフにゃ! モフり倒すにゃ!」
 そこへ獲物を見つけた猫のようにケーシィが跳び掛かり、そのふわふわした感触を楽しむ。
 クマが驚かせようとお腹を口のように開けると、ケーシィは冷静に飛び退いて躱した。
 追おうとクマが踏み込むと、ぴょこぴょこっと割り込んだてっくんがクマの攻撃を体で受け止める。そこへクマは振り上げた腕を叩き込もうとする。
「いくら見た目がかわいくたって、ヨーシャしませんよ!」
 太一が精神を集中してクマの腕をじっとみると、突然その腕が爆発した。反動で振り下ろそうとしていた腕が上に上がる。
「パッチワーク。恐ろしい敵だが、好きにはさせないぞっ!」
 隙だらけのところへ槍に雷を纏わせたラギアが突っ込み、体ごとぶつかるように槍を突き出し腹を貫いた。貫通した背中から綿が溢れる。
『クマ!』
 お返しとクマも腕を振り抜き、槍で防ごうとしたラギアの体を薙ぎ倒す。肩には4本の爪痕が赤く刻まれていた。
「大丈夫ですか? 今回復しますねっ」
 すぐに美月が体内で溜めたオーラを放ち、ラギアの体を活性化させて爪跡を癒す。
「まずは手堅くいくにゃ」
 ケーシィがミミックのぼっくんを投げつけると、空中からぼっくんが偽物の財宝をばら撒く。
『クマッ♪』
 クマがそれに気を取られている内に、ケーシィは真に自由なる者のオーラでラギアを包み込み耐性を上げる。
「夜は静かにするものよ」
 リリアが手を向けると、ドラゴンの幻が出現しブレスを放つ。巻き起こる炎がクマを燃やしていく。
『ク、クマーー!?』
 クマは大慌てでゴロゴロと転がって火を消した。
「みんなねてるんだから、うるさくしちゃメーワクだよ!」
 太一の腕に巻きついた黒い鎖が伸び、クマの体に巻きついた。
「まずは俺を驚かせてみろ」
 動きが止まったところへ優輝は手に生み出した地獄の炎を弾丸のように撃ち出す。弾丸はクマの足に穴を空けた。
『クッマーーー!』
 全身の力を籠めたクマは鎖を引き千切り、4つ足で突っ込んでくると牙を向ける。ヘザーが金縛りを掛けるが、その突進は止まらない。
「それじゃそろそろ、行ってみよっか!」
 フォトナが時を操り次元の間を駆ける純白の獣と交信して力を得る。力は縛鎖となって敵の周囲に現われその体を拘束した。クマは時間感覚を狂わされ、その足はゆっくりとしか動かない。
「狙った敵は必ず当ててみせるよ」
 銃を構えたエリカは引き金を引き、弾丸は狙い通りに飛びクマの右爪を砕いた。
『クマ? クマー……』
 失った爪を悲しそうにクマは見下ろし、拾い上げる。
「くっ、その愛らしさで攻撃を防ごうというのか!」
 思わず手を緩めそうになるラギアは、心を鬼にして戦斧を振り下ろした。その一撃をクマは左の爪で受け止める。互いに渾身の力で押し合う。
「足元が隙だらけよ」
 鍔迫り合いの間に接近したリリアが足払いし、クマをごろんと仰向けに転ばせた。
「あ、あわわわ、当たってっ」
 クマを震える手で指差して美月は光線を放ち、光を浴びたクマの右腕が石に変わった。
「可愛いからって容赦はしない……!」
 エリカが弓を引き矢を放つ。クマはごろごろと地面を転がって避ける。だが矢は空中で曲がりクマを追う。ヘザーが念力で軌道を曲げたのだ。止まったクマのお尻に矢が突き立つ。
『クーマー!!』
 ダダをこねるように暴れたクマが地面を叩いた反動で起き上がる。
「パワーはあるようだが、スピードはそれ程でもないか」
 目の前に迫った優輝の掬い上げるような拳がクマの腹を抉る。だがクマも負けじと腕を横殴りに振り抜き優輝の体を民家の塀に叩きつけた。
「さあ、次は順繰りに弱らせていくよ!」
 フォトナが手にしたスイッチを押す。するとクマの背後に貼り付いた見えない爆弾が爆発した。
『ク、クマーー!?』
 クマは振り向くがそこには何もない。
「こっちも行くよ! てっくん!」
 手にオーラを溜めた太一が腕を振り抜き、オーラの弾丸を撃ち出す。クマは爪で迎撃しようとするが、てっくんが顔からフラッシュを焚き、目を眩ませたクマの腕は空振りしオーラは顔面に直撃した。
「んー、まさにドリームイーターって感じにゃね。寝てる時の夢をぱっくり奪っていくにゃんて……」
 ケーシィがまじまじとクマを見る。
「その結果の置き土産がこんななんて、あんまりだにゃ。とりあえずボコるにゃ、慈悲はないにゃ」
 ぼっくんが足に噛み付いたところへ、ケーシィが両手の二挺のライフルを同時に撃ち、束ねられた光線がクマを包み込む。

●怒ったクマ
『クマッ、クマックマーー!!』
 怒ったぞと、クマのつぶらな瞳が三角になり吊りあがる。そして腕をブンブン回し周囲の塀や車に自転車と、近くにあるものを吹き飛ばしながら暴風のように接近してくる。
「怒ったところでクマのぬいぐるみではな……」
 迫力が足りないと、襲い掛かる爪をラギアが槍で受け止めるが、もう一方の腕を脇腹を抉った。それでもラギアは引かずに押し返し、相手を仰け反らせると槍で胸を突いた。
「人様の家に迷惑をかけちゃダメでしょ」
 横から接近したリリアの腕を金属が覆い、その拳をクマの腹に打ち込んだ。生地が破け中の綿が飛び出る。
「皆さんの治療は、任せてください!」
 美月がオーロラの光りで仲間を包み込み、出血を止めて爪痕を消し去った。
「そろそろダメージが蓄積したか、動きが鈍ってきているな」
 冷静に敵の動きを観察しながら、優輝は炎の弾を放ちクマの顔面を撃ち抜いた。
「まだまだこんなもんじゃないよ!」
 続けて腕を鋼で覆ったフォトナは駆け出し、全力で背中を殴りつける。
『クマッ』
 その時だった、クマの瞳がキラーンと輝く。すると拳を吸い込むように取り込み、ガバッと体中が食虫植物のように開いてフォトナの体を取り込んだ。
「きゃあ! ……なんであんな風になるんだろう? って、今はそれどころじゃないな!」
 驚きながらもエリカの表情はそれほど変わらない。そして手は止めずに銃を撃ち放ってクマの傷口の穴を広げる。するとそこからズボッと腕が突き出た。
「ごほっごほっ暑苦しい……」
 クマから飛び出した綿と汗に塗れたフォトナが咳き込む。
「がんばるにゃー! クマなんかに負けるにゃー!」
 ケーシィはぼっくんから大きな絵筆を取り出し、ブラックスライムで何体もの黒い自分を描き生み出し、一緒に仲間を応戦して元気にする。
『クマックマッ!』
 ブンブンと腕を振り回しながらクマが迫る。
「僕とてっくんの協力技、かわせるものならかわしてみなよ!」
 てっくんがバールを宙に投げると、太一がそこに向かって銃を撃つ。するとバールに当たって跳弾した弾丸がクマの背後から背中を穿った。
「そろそろ女の子の夢を返してもらうわ」
 リリアが祈ると様々な生物の姿をした精霊達が召喚され、一斉にクマの上に圧し掛かった。圧迫されクマがブクブクと綿を吐く。
「無垢なる幼い夢を、悪事に利用させてなるものかっ!」
 そこへ手足を超硬化したラギアが殴り蹴りの連打を浴びせる。そして反撃しようとするクマに、至近距離から炎の息を吹きかけてクマの体を吹き飛ばした。
『クマッ……!』
 塀にぶつかったクマが牙を剥く。
「南風よ、このぬいぐるみが動けないほどの嵐を呼べ!」
 エリカの起こした穏やかな風が、やがて嵐となりクマを覆い尽くす。その風に石を乗せてヘザーはクマを攻撃する。
「ドーナツならともかく、クマに負けてられないにゃ!」
 動きが止まったクマに、ケーシィの体から伸びるブラックスライムが全身を覆い尽くす。
「食べちゃっていいよ」
 続けて太一が周囲を黒霧で包み込む。その縄張り内に黒狼がゆらりと現われ、疾走してクマに襲い掛かる。爪で布を引き裂き、牙で綿を喰らう。その満たされた腹は主である太一へと還元する。
『クッマーーーー!!』
 力尽くでクマは戒めを解き突っ込んでくる。その牙で全てを噛み殺そうとふかふかのぬいぐるみが迫る。
「これで仕上げ、かな。後はお願いね」
 そこへフォトナの放つ時空の縛鎖が空間を歪ませ、クマの認識に錯覚を起こさせる。何もないところへ攻撃し、クマの足が止まった。
「私も、頑張りますっ」
 普段なら目を閉じてしまうところを、美月はしっかりと目を見開き、腕をぐるぐる回してポカポカとクマにパンチする。可愛らしい見た目とは裏腹に、喰らったクマはごろんと転がった。
「ふかふかで気持ちよかったです!」
 美月は目をキラキラさせて微笑む。
「理論と推測の刃で無に帰せ」
 優輝の左右の手に炎と氷の力が宿り、それを合わせる事で眩い光が生まれた。その閃光は全てを切り裂く刃となってクマを貫く。
『ク……マッ』
 ぼろぼろだった生地がビリビリと破け、中の綿が爆発するように飛び散りクマの姿は消え去った。

●幸せな夢
「おっきいクマさん、抱きしめたかったなぁ……」
 きっと抱きしめればもっとふかふかを楽しめただろうと、美月はしょんぼりした顔で肩を落とした。
「ケルベロスが夜分、お騒がせしました。デウスエクスは無事討伐しましたので、安心してお休み下さい」
 騒ぎに何事かと顔を覗かせる人々にフォトナが礼儀正しく一礼した。
「ドリームイーターは一体何を企んでいるのだろうな」
 動き出した敵の思惑に優輝は思考を巡らせた。
「女の子も起きたみたいにゃ! 一件落着にゃ!」
 窓から外を見る目覚めた少女を確認したケーシィは胸を張った。
「これで『驚き』を取られちゃったっあの子も、もう大丈夫だね。安心して、いい夢が見られると良いけど……そういえば家にあったくまさん、まだ捨てられてないよね?」
 太一が尋ねると、てっくんは腕を組んで少し悩んだ後、こくんと頷いていた。
 ラギアが建物にヒールを掛ける。すると塀が大きなクマさんの形へと変わった。
「これを見れば夢を利用された少女が喜ぶかもしれんな……」
「可愛らしいクマさんだ。これならきっと喜ぶだろう」
 ラギアはそんな子供の姿を想像して笑顔を見せると、これはいいものだと観賞するエリカもつられて微笑む。
「大好きなぬいぐるみに囲まれた、幸せな夢が見られるといいわね」
 そう願い、リリアは大好きな彼の事を思い浮かべて帰途につく。
 一件落着と、ケルベロス達は夜を騒がすドリームイーターを倒してその場を後にするのだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年7月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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