妖怪厚化粧

作者:青葉桂都

●エレベータの悲劇
 とあるオフィスビルで、スーツを着た1人の青年がエレベータから降りてきた。
 大きくため息をつく。
「……貴島主任、いい人なんだけどあの厚化粧はどうにかして欲しいなあ」
 エレベータの扉が閉まったのを確認してから青年はつぶやく。
「顔は真っ白なのに目の周りだけ真っ黒だから、普通に見られてるだけでなんかにらまれてるみたいな気になるし……それに、エレベータで乗り合わせるとあの臭いが……」
 大きく息を吸い込んで、吐く。
 窓を締め切ったビル内の空気も別に清浄というわけではないが、それでも先ほどまで彼がいた密閉空間よりはマシなのだろう。
 青年が自分のフロアに戻ろうとした時……突然、モザイクでできた緑の翼を持つ魔女が、その場に出現した。
 声を上げるどころか、身じろぎする間もなく、大きな鍵が青年の左胸を貫く。
 心臓を貫いたかに見える鍵だが、そこから血は出ていない。傷もなかった。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
 魔女は笑った。
 青年がビルの廊下に崩れ落ちる。
 その隣に、女性の形をしたなにかが出現する。
 目も鼻も口もない、真っ白な顔をしたピンクのスーツのドリームイーター。
 化粧水の匂いと香水の匂いが入り混じった空気が廊下全体に広がる。
 スーツから化粧ポーチを取り出したそれは、まず真っ赤なルージュで耳元まで引き裂いたかのような大きな唇を形作った。
 さらに歌舞伎の隈取のように荒々しく真っ黒に目を描き出したドリームイーターは、パウダーパフの粉を撒き散らしながら廊下を歩き出した。

●ヘリオライダーの依頼
「皆は、苦手なものはあるだろうか?」
 唐突な問いかけに、ケルベロスたちの幾人かが返した答えを聞き、ザイフリート王子は重々しく頷いた。
「その苦手なものへの『嫌悪』を奪って、事件を起こすドリームイーターがいるようだ」
 敵は奪った『嫌悪』を元に怪物型のドリームイーターを生み出して、事件を起こそうとしているようだという。
「駆けつける頃には生み出した当人は姿を消しているはずだが、怪物型のほうはその場に残っている。被害が出る前に、撃破してもらいたい」
 怪物ドリームイーターを倒すことができれば、『嫌悪』を奪われてしまった被害者も目を覚ましてくれるはずだ。
「今回出現するドリームイーターは厚化粧の女性に対する『嫌悪』から生まれたようだ」
 怪物は女性の姿をしているが、顔がない。代わりに化粧で自分の顔を描き出している。
 いるだけで化粧水と香水の混ざった匂いがただよってくるが、さらに香水を吹きかけて悪臭を周囲に振りまいてくる。
 これがドリームイーターの攻撃だ。近くにいると悪臭でダメージを受けるほか、その空気の中で歩くのが辛くなり、足が止まってしまう。
 パウダーパフでフェイスパウダーを顔中に塗りたくり、その粉を周囲に撒き散らすこともある。粉は遠距離まで漂い、吸い込むと体が麻痺してしまうのだ。
 さらに、厚く塗った口紅を体や服に押し当ててくることもある。
 押し付けられると体に力が入りにくくなり、武器をうまく扱えなくなるようだ。
「敵はオフィスビルの10階エレベータホールに出現し、社員が働く事務室へ向かっている。事務室に入る頃にはお前たちも到着できるはずだ」
 もちろん社内には社員が残っているので、出現するフロアからだけでも避難させることを考えておいたほうがいいだろう。
 ちなみにエレベータホールには階段への入り口もあるが、窓はない。
「苦手なものは誰にでもある。それを利用して戦おうというドリームイーターのやり口は、不愉快といって差し支えなかろう。頼むぞ、ケルベロスたちよ」
 ザイフリート王子はそう言って、話を締めくくった。


参加者
ロゼ・アウランジェ(時空詩う黎明の薔薇姫・e00275)
エレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)
オーネスト・ドゥドゥ(アーリーグレイブ・e02377)
燈家・陽葉(光響凍て・e02459)
愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)
鈴木・犬太郎(超人・e05685)
蔵王・錬鋒(鉄腕炎腕の鬼・e13629)
御簾納・希(不撓不屈の拳・e16232)

■リプレイ

●フロアにこもる化粧の匂い
 ケルベロスたちはオフィスビルの階段を跳ぶように登っていた。
「厚化粧……ですか。綺麗になりたいお気持ちはわかりますが逆効果なような……?」
 ロゼ・アウランジェ(時空詩う黎明の薔薇姫・e00275)が首を傾げる。
 彼女が階段を駆けると、金髪の巻き髪がなびく。
「確かに、お化粧は人を綺麗にしますけど。 やり過ぎは良くないですよねえ……」
 リボンでまとめたエレ・ニーレンベルギア(追憶のソール・e01027)の茶色い髪も揺れている。
 当の本人が気づいていないことが一番の問題だ、とエレは心の中で呟く。
「お化粧は、その人の魅力引き出すファッションとしてはええと思うんやけど……。その、他の人に迷惑になる様なんは、あかんと思う、かなぁ……」
 まだ幼い少女のような外見をした御簾納・希(不撓不屈の拳・e16232)が階段の踊り場を飛び越えると、三つ編みにした黒髪が跳ねた。
「……でも、自分の匂いって、自分じゃわからないのだと。気が付かないうちに嫌われてるって、それって、辛いことだと思うのです」
 愛柳・ミライ(宇宙救済係・e02784)は藍色の瞳で静かにビルの上を見つめた。
「でも、それはそれとして厚化粧はダメなのです! とりあえず撃退なのです……!」
 浅黒い肌の青年が口を開いた。
「女性の化粧は男の見栄みたいなもんだから多少過剰になるのはしゃあねぇんだよ」
 オーネスト・ドゥドゥ(アーリーグレイブ・e02377)の口調は軽薄だったが、少なくとも彼がそれを本心から言っていることはわかった。
「それを分かってやりつつ上手いこと薄化粧に誘導するのが……って、今言ってもしゃあねぇか」
 青年は息を吐いた。
 息も切らすことなくケルベロスたちはオフィスビルを登っていく。
「10階じゃ。ぬかるでないぞ」
 蔵王・錬鋒(鉄腕炎腕の鬼・e13629)が力強く声をかける。
 少年……どころか少女にも見える彼だが、ドワーフの外見は見かけからはわからない。
 エレベータホールの扉を開くと、強い臭いがした。
 化粧水と香水の混ざった臭い。
 相性を考えていないどころか、あえて相性の悪い匂いを混ぜ合わせたのではないかとケルベロスたちは感じた。
「うわぁ、ドきつい化粧の匂いって俺も苦手なんだよなぁ」
 鈴木・犬太郎(超人・e05685)は隠すことなく顔をしかめる。
 デウスエクスの姿はないが臭いだけでもひどい。
「厚化粧……たしかに、不快な臭いだよね……。悪臭は公害だもん、倒さないとね」
 いつも浮かべている燈家・陽葉(光響凍て・e02459)の笑顔も、この状況ではさすがに陰りが見えてしまう。
「嫌、と感じてしまっては敵の思うツボでしょうか。何とか、無心に……」
 ロゼは努めて表情を変えないようにしていた。
 扉が閉まる音を聞きつけて、ケルベロスたちは事務室の1つへ向かった。
「まぁ仕方ないよなぁこれをやらないと被害は減らないし、いっちょやるか!」
 今しがた閉まったばかりの扉を、犬太郎が蹴り開ける。
 すでにそれぞれの得物を構えていたケルベロスたちが敵の居場所へと一気に踏み込む。
「久しぶりの出番かな。……力を貸してね、阿具仁弓」
 炎のごとき曲線を描く赤き弓の弦を引いて、陽葉は女の姿をした敵を見やる。
 一般人のほうへ行こうとしていたドリームイーターが、振り向いた。

●プリンセス降臨
 ドリームイーターが振り向く前、すでに事務所内は騒然としていた。
 錬鋒は混乱を鎮めるべく、ミライとともに進み出た。
 縛霊手を装備した両腕を掲げるとプリンセスクロスがキラキラと輝きを放つ。
 身に着けていた防具がシルエット状に変化したかと思うと、輝きの中でドワーフの短躯が優雅に回転し、シルエットがひらひらと広がっていく。
 ファンシーな音と共に光が弾ける。
 一瞬のうちに錬鋒の武器と防具はレースや刺繍が豪華に、しかし上品に施されたものへと変化を遂げていた。
「ケルベロス見参じゃ。わしらが来た以上、デウスエクスの好きにはさせんぞ」
 プリンセスモードへ変身した錬鋒(ドワーフ・男)が一般人たちへと見栄を切る。
 もっとも、彼はドワーフの男性には珍しく付け髭をつけていないし、顔だちも女性的なので違和感はあるまい。
 ミライもまた、アイドルの衣装が華麗に変化していた。
 ギターのワンフレーズが響き、ふわりと広がったスカートが室内であるにも関わらず風をはらんで広がる。
「このケルベロスアイドル、Love You! ミライがきたからにはもう大丈夫なのです☆」
 アイドルらしく、彼女もビシッとポーズを決めた。
「ケルベロスだ! ケルベロスが来てくれたぞ!」
 ドリームイーターの出現に怯えていた人々が、歓声を上げた。
 8人のケルベロスたちは二手に分かれて行動を始めた。まずは敵を足止めしつつ一般人を避難させる手はずだ。
 犬太郎は鉄塊剣を片手で振りあげた。
 近づくと異様な臭いに気分が悪くなる。香水を振りかけるとさらに臭いが強まった。
 ただの臭いではなく、これがドリームイーターのグラビティなのだ。ケルベロスですら体調を悪くするほどの悪臭から仲間を守るのは犬太郎の役目だ。
「間近に来ると、なおいっそうひどい臭いだな……だが、臭いで俺は止まらん!」
 傷ですら止まらない超人が臭いで止まるはずがない。止まってしまいそうな足を無理やり動かして接近する。
 腕力だけで薙ぎ払った剣がドリームイーターを周囲の空気ごと叩き切る。
(「パッチワーク、嫌悪を力にする能力ドリームイーター。予知では『第六の魔女・ステュムパロス』ってやつだな」)
 考えながらも、犬太郎は手を止めることはない。
 彼が敵の注意を引きつければ、それだけ仲間が楽になるはずだ。
 ロゼの拳や錬鉾の蹴りを異様な動きで敵が回避するが、ミライの放った弾丸は確実に敵を捉えて、凍り付かせた。
 陽葉はオーネストや希とともに、一般人たちの避難に回っていた。
「僕達はケルベロスです、デウスエクスが現れたので避難してください」
 ミライや錬鋒の変身で勇気づけられた人々は、地球人である3人の言葉であることも手伝って、彼女たちの言葉を素直に聞いてくれる。
「できるだけ臭いを吸い込まないように、布とか口に当てて移動してくれ。グラビティじゃないにしても、どんな影響が出るかわからないぜ」
 オーネストが女性社員の1人の手を取り、忠告する。もちろん1人だけでなく他の者たちにも声をかけている……が、直接話すのは女性ばかりで男性に伝えるよう頼んでいた。
「よければこのハンカチを使ってください」
 使える物を持っていない者には、マスクをつけたエレがハンカチを配っていた。
「スピカ、ちゃんとみんなを守ってやってな?」
 希はウイングキャットのスピカに指示を出している。
 戦場を迂回させ、ケルベロスたちは階段があるエレベータホールへ一般人を誘導する。
 入口付近に敵がいるためいくらか危険は伴うが、犬太郎が敵を引き付けてくれていたため負傷者は出さずにすんでいる。
「落ち着いて、階段から移動してください。敵はしっかり抑えておきますから」
 開きっぱなしにしている扉から、人々が足早に出ていく。
 今のところ誘導は順調だった。
 エレはハンカチを配り終えるとドリームイーターに向き直る。
 社員たちに配るだけでなく自分自身も厚めのマスクを着けていたが……。
(「マスクしててもこの匂い、きっついですねえ……」)
 それでも彼女は不敵に笑ってみせる。
 笑っていればきっと全部、解決するはずだ。
 空気の通り道を作るために、まずは壁を縛霊手で殴って破壊する。
 換気したところでもちろん攻撃は防げないが、とりあえず不快感が多少なりとマシになることを期待していた。
 返す刀で、オフィスのデスクを蹴って高らかに跳躍する。
 重力を操ったエレの蹴りはドリームイーターを捉えて周囲に浮いていた粉を一気に床へ叩き落とした。
 その間にも避難は続いている。
 逃げる人々にちらと目をやった敵へ錬鋒が近づき、両腕の縛霊で挟み込む。
 重力にとらわれ、足の止まっていた敵は攻撃を避けることはできない。
「お主の相手はわしらじゃ。よそ見しとったら、一瞬で持って行ってしまうぞ」
 錬鋒を見下ろして敵は口紅を塗りなおし始める。
「狙うなら、私からにしてください!」
 御業を操りながら、エレもドリームイーターへと呼びかけた。

●空気を清浄に
 社員たちの、最後の1人が階段を降りていく。
「転んだりせえへんようにな。ボクらケルベロスがおるから、安心してな」
 希は駆け下りていく背中に声をかけた。
 まだ声変わりもしていないその声でも人には安心を与えることができる。
 もう一般人がいないことを確かめて、希は立入禁止のテープをはった。
「さあ、後はドリームイーターを片付けるだけや」
 ゲシュタルトグレイブを一振りすると、希は刃に稲妻をまとわせる。
 高速の突きが敵を貫いた。
 神経が果たしてあるのかどうかわからないが、雷はドリームイーターへ浸透して敵を麻痺させた。
 オーネストもすでにドリームイーターへと攻撃をしかけていた。
「男なら素直に言ってやれって話だよなぁ。化粧ないほうが魅力的ですよとか……ってまあ厳しいか。しゃあねぇから尻拭いてやるか!」
 エレベータホールに倒れていた男の姿を思い出して嘆息する。
 降魔をまとわせた拳を、オーネストは顔のない女へと叩き込んだ。
 敵は殴られた場所にパフでフェイスパウダーをつけて撒き散らしていた。
「そいつはちょっと粉が多すぎるぜ」
 防ごうとした腕の間から粉が飛び込んでいく。犬太郎はエレをかばって2人分のパウダーを浴びて顔をしかめていた。
「この光を捧げます……!」
 赤い弓から暁の霊力が込められた矢が放たれる。
 矢に射抜かれた、悪臭と不快さで傷ついた犬太郎の精神を祓った。
 もちろん、誘導の間も戦っていた5人も負けてはいない。
 べったりと塗りつけられた口紅を嫌そうに見下ろしながら、錬鋒が身構える。
(「縛霊手が重く感じる……ならば、体を武器にするまで」)
 鋭い蹴りが、空を切った。
(「ち、足も重いてか!」)
 ミライは異臭の中へ粉をかき分けて突撃する。
「厚化粧だとか上手い下手は兎も角、人前で化粧など言語道断なのです! つまりそれって、一番いい状態じゃない自分を人様に見せてることに他なりません……!」
 オウガメタルのクッキーちゃんを身にまとって、思い切り体ごとぶち当てる勢いで拳を叩き込む。
 アイドルの体当たりな攻撃に、ドリームイーターの服が裂ける。
「そろそろ、ドリームイーターさんの防御も崩れてきましたね!」
 なかなか敵は倒れないが、だからこそ守りを弱めてダメージを与えねばならない。
 閉口するほどの臭いの中から再びミライは距離を取る。
(「まだ、苦手なものがわかるほど、長く生きていないけれど。……願わくば、識ることのないよう」)
 他の仲間たちが仕掛けるのを横目に、先生から習った精霊術で不意を打つタイミングをミライは狙い定める。
 撒き散らされる異臭と多すぎる化粧の粉、べったりと塗られた口紅。
 直接的なダメージを受けるものではないが、ケルベロスたちの精神を削り取る。
 だが、ケルベロスたちの攻撃も確実にドリームイーターを追い詰めていた。
 希の高速突きは回避されたものの、続く錬鋒の降魔の拳は敵をとらえる。
 傷ついた敵はもう限界が近い。
(「うう……においが……そのお化粧はやりすぎですね……!」)
 ロゼは思わず浮かべてしまいそうな不快な表情をどうにか抑えていた。
 不愉快であること自体敵の狙い通りなのだとすれば、それを敵に見せないほうがいい。
 それに、きっとその表情は高貴な血筋にふさわしいものではない。
 硝子の刀身を持つナイフを手に舞うように斬りつける。
 狂気をはらむ夢を映し出す刃が、ドリームイーターの細身の体を切り刻んでいく。
「私は、私に出来る精一杯をやるだけです!」
 エレの生み出した霧が逃げ場を封じて敵に襲いかかる。
 陽葉の調べが戦う者たちに癒しを与える。ミライのボクスドラゴン、ボンちゃんも属性をインストールして回復を手伝っていた。
「大地の精霊さん、お願い、力を貸して!」
 ミライの詠唱に応じて噴煙が足元から敵を貫いたかと思うと、その煙を犬太郎の渾身の拳が打ち抜く。
「一撃だ、俺のたった一撃を全力で完璧にお前にブチ込む」
 超人の拳が鮮やかに放たれて、的確に急所を貫いた。
 傷ついて、それでも化粧道具を手放さないドリームイーター。
 オーネストは敵の姿に苦笑いする。
「若い兄ちゃんなら尚更しゃあねぇか。次がないよう男磨けよ!」
 ドリームイーターではなく、それを生み出す元にされてしまった男への言葉。
 軽薄で女好きな彼だが、それだけに女性を大切にする気持ちに偽りはない。
 突き出した掌がデウスエクスの魂を食らい、それを地獄の炎に変えて解き放つ。
 化粧品が焼ける嫌な臭いが周囲に漂い……力尽きたドリームイーターは、炎の中に溶けて消えていった。

●他人のふり見て
 ドリームイーターの姿はやがて完全に消え失せた。
「片付いたみたいやね」
「そうじゃな。部屋がずいぶん荒れてしもうたのう。ヒールして帰ったほうがいいと思うのじゃが」
 希に同意した錬鋒が仲間たちに呼びかける。
「はい。壁も壊してしまいましたし、私もお手伝いしますね」
 エレが換気のために開けた穴へまず近づく。
「けどまだ臭いが残ってるよ。本当に迷惑な敵だよね」
「やっぱり、厚化粧は絶対ダメなのです……」
 陽葉に声をかけられて、ミライも辟易とした顔を隠せなかった。
「ううん、あまり気分はよくないかもです……何事もやりすぎはよくないということがわかりました」
 ロゼも大きく息を吐いた。
「壁は直さなきゃいけないですけど……空気の入れ替えをしたいですね……」
 ふさがっていく壁を見やって、彼女は呟いた。
「お化粧はまだあんまりしたことありませんけど……するときは気をつけなくちゃいけませんね。厚化粧にならないように、この感じを忘れないようにします!」
 絵が下手だから、自分でちゃんとできるかどうか不安だが……肝に命じておかなければと、ロゼは誓う。
「化粧の練習をするなら、言ってくれりゃいくらでも相談に乗るぜ?」
「本当ですか? ありがとうございます、オーネストさん」
 笑いかける青年の言葉に、ロゼは人懐こい笑みで応えた。
 壊れた備品をヒールして回るのはそれなりに時間がかかったが、やがてケルベロスたちは片づけを終えた。
「これからこんな感じの事件が増えそうだな。これをきっかけにパッチワークに関する情報を手に入ればいいが……」
 パッチワークの魔女がいる限り、様々なドリームイーターが生み出され続ける。
 犬太郎は敵が消えたあたりに視線を送り、呟いた。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年7月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。