振り払えぬ百足への『嫌悪』

作者:なちゅい

●『嫌悪』を利用する夢喰い
 野山と密接した環境にある街は、どうにも自然環境が近いこともあり、害虫などが人の生活域に入り込んでくることがよくある。
 その女子大生、森島・さとみは、あからさまに嫌悪感をむき出しにして家へと駆け込み、玄関の戸を強く閉めた。
「あー、ムカデは嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……」
 バッグを握り締め、玄関にうずくまってしまうさとみ。彼女は帰宅途中、ムカデを目にし、全身の毛を逆撫でて家へと飛び帰ってきていたのだ。
 しばらく、気持ちを落ち着かせるまで、彼女はその場から動かないつもりでいた。
 しかし、そいつはそれを待ちはしなかった。いつの間にかさとみの近くに現れた人影が、手にした鍵でさとみの心臓を貫いてしまう。目から光が消え、さとみは意識を失ってしまう。
 その人影は、両手が翼のようになった魔女。その翼もモザイクが掛かってしまっている。第六の魔女・ステュムパロス。それが彼女の名だ。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
 そこで、生み出されたのは、ムカデが立ち上がったような姿の新たな夢喰い。無数にある腕の全てにモザイクが掛かっている。それが、さとみの嫌悪する部分ということなのだろう。
 新たに生み出されたドリームイーターは玄関を突き破り、ふらふらと外へと飛び出していくのだった。
 
 ヘリポートに集まるケルベロス達が語り合っている話題は、『嫌悪』だった。
 歴戦のケルベロスとて、嫌なものは嫌だし、嫌いなものは嫌い。そんなものについて語り合う。
「そうだね、ボクも……」
 リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)が身を震わせているモノ。毛虫などは苦手だと語る。
「りんごを食べようとしたときに、顔を出した時のことが忘れられなくて……」
 そんな思い出を語っていると、ケルベロスが集まってきたのを確認し、リーゼリットは本題に入る。
「苦手なものへの『嫌悪』を奪って、事件を起こすドリームイーターがいるみたいだよ」
 『嫌悪』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようだが、奪われた『嫌悪』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターにより、事件を起こそうとしているようだ。
「怪物型のドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破してほしいんだ」
 このドリームイーターを倒す事ができれば、『嫌悪』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるはずだ。襲われた女子大生、森島・さとみは自室で襲われてそのまま意識を失って倒れている。うまく事件が解決できたなら、介抱の上でフォローなどあるとよいだろう。
 現場となるのは、長野県の都市部にあるアパートだ。
「その周辺には、普通に住人が行き来することがあるよ。騒ぎになる前に人払いをする必要もあるだろうね」
 どうやら、ドリームイーターはアパート周囲を徘徊しているようだ。そいつは人を求めているのは間違いない。
 現れるドリームイーターは1体のみ。獲物を見定めた夢喰いは、素早く地面を這いずってからの飛び掛り、そして、強靭な顎から毒を流し込み、敵を弱らせてから捕食してくるようだ。
「元々、嫌悪感を抱かせる見た目だけれど、人型ともなれば、より嫌悪感が倍増しまうね……」
 予知でそれを見ているリーゼリットもやや顔を顰めている。かなり醜悪な見た目の敵であるのは違いない。
 説明を終えたリーゼリットは首を大きく振る。できるだけ、その気持ち悪い予知の映像を頭から振り払いたいと考えたのだろう。
「ともあれ、『嫌悪』を形にしたドリームイーター……放置するわけにはいかんな」
 それを聞いた雛形・リュエン(オラトリオのミュージックファイター・en0041)も同じく顔を顰めていた。彼としても、あまり相手にしたくない敵ではあるのだろう。
 だが、誰かがやらねばならない。討伐せねば、被害が拡大してしまうのだ。
「そうだね。どうか、皆の手で討伐を。よろしく頼んだよ」
 リーゼリットは改めてそうケルベロス達へと願うのだった。


参加者
シェラーナ・エーベルージュ(剣の舞姫・e00147)
写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)
エルボレアス・ベアルカーティス(メディカリスト・e01268)
月海・汐音(欠心デスペレイション・e01276)
モモ・ライジング(攻勢防壁・e01721)
リュコス・リルネフ(銀雷狼・e11009)
ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)
ゴルディエル・グランナッゾ(銀眼王ゴルディエル・e29079)

■リプレイ

●『嫌悪』を抱かせる夢喰い
 ヘリオンから降下したケルベロス達が着地したのは、長野の町。
 そこには、ドリームイーターが現れるという。
「依頼で一緒なのは初めてだね! ムカデ退治がんばろうね、汐音ちゃん!」
 その2人は、闘技場で何度も共に戦っている。コンビネーションを見せ付けてやろうと言うリュコス・リルネフ(銀雷狼・e11009)に、小さく頷く月海・汐音(欠心デスペレイション・e01276)は町に目を向ける。
「人の感情を奪う魔女……。随分と勝手してくれてるみたいね」
 人の心は人のモノ。魔女などが好き勝手に弄んでいいモノではないと汐音は語る。
 魔女、ステュムパロス。そいつは人の『嫌悪』を奪うのだという。
「『嫌悪』か。……ふむ、私にはよく分からんな」
 エルボレアス・ベアルカーティス(メディカリスト・e01268)はさほど関心なさそうに呟く。
「『嫌悪』を形にしたドリームイーター……初めて聞くね」
 対して、モモ・ライジング(攻勢防壁・e01721)は興味を持って口にした。残念ながら、『嫌悪』を奪ったそのドリームイーターには、すでに逃げられてしまっている。
「まずは、目の前に敵に集中しましょう」
 モモはポケットから飴を取り出し、口に放りながら仲間に促す。
「……とある女性の『嫌悪』が形を成したもの、か」
 雛形・リュエン(オラトリオのミュージックファイター・en0041)が言う今回の敵は、百足の姿をしているそうだ。
「百足かー。確かに見た目あれだし、咬害とか酷いらしいねー」
 写譜麗春・在宅聖生救世主(誰が為に麗春の花は歌を唄う・e00309)は呟く。実際、通常の百足に関しては、咬まれた直後にアナフィラキシーショックを起こした死者も出ているのだという。
「体長2メートルの人型のムカデか……。ちょっと想像できないわね」
 仲間の話を聞くだけでは、いまいち敵の姿を思い描くことが出来ないシェラーナ・エーベルージュ(剣の舞姫・e00147)。ただ、実際見て嫌悪するなら、その分攻撃に力が入るのではないかと、彼女は気楽に考えていたようだった。
「さて、アパートまで行けば、すぐ見つかるかしら」
 そのシェラーナの言葉もあって、一行は被害者の女性のアパート周辺へと向かう。

 予知で聞いていた現場に到着してすぐ、汐音は殺界を展開し、周辺に一般人が寄り付かないようにする。
 在宅聖生救世主はそれを確認し、よしよしと頷く。エルボレアスは念の為にと、周辺に住民がいないことを確認していたようだ。
 そこに現れる大きな影。ケルベロス達よりも大きな百足だった。諸説あるが、その足の多さはネーミングの由来の1つともなっている。
 この敵を目の当たりにした自身の旅団団長を、モモは想像する。
「うわぁ……。うちの旅団の団長が見たら、悲鳴上げながら魔法放ちそうね……」
 百足は赤く輝かせた瞳で、ケルベロス達へと狙いを定めていた。
 ところで、遠目にはまだちらほらと人影が見える。殺界が展開している為こちらに来ることはないだろうが、危険であることは間違いない。
「敵を引きつけておかんとな」
「あと、できれば、敵の狙いを分散させなきゃね」
 ヒエル・ホノラルム(不器用な守りの拳・e27518)、リュコスはその為に囮として敵の前に立ち、注意を引き付けようとした。
 遠方の人々の避難の為、サポーターとして駆けつけた昇が人払いを始める。
 目に入る一般人へと避難するよう、彼は呼びかけていた。
 その間に、他のメンバーも巨大百足に対するべく、敵の前へと進み出る。
「『嫌悪』か……。ふん、儂が嫌うもの等、貴様等侵略者共の他にあるまいて」
 地の底から響くような炎の燃え盛る低い音を轟かせて、ゴルディエル・グランナッゾ(銀眼王ゴルディエル・e29079)が感情を篭らせつつ語る。デウスエクスに滅ぼされた小国の王族である彼。その憤怒の炎が地獄となった両の目で敵を睨み付ける。
「あー、足がわしゃわしゃしてるの嫌なんだー」
 敵の姿を見据えた在宅聖生救世主は、女性が『嫌悪』を抱く理由に多少の理解を示す。
「なんとなくわかるんだよー」
 百足の足全てに掛かっているモザイク。この女性にとって、百足が足をもぞもぞと動く様子がよほど嫌なのだろうと、在宅聖生救世主は考える。
 だが、この百足を『嫌悪』する感情も、女性の一部であるはずなのだ。汐音は心の中でそう呟き、剣の柄を握る。
「これが、人の感情から創られたドリームイーター……。彼女の『嫌悪』、返してもらうわよ」
「まあ、アレを放っておく訳にも行かないから、手早く終わらせよう」
「そうだな」
 エルボレアス、リュエンもそれぞれライトニングロッドをケルベロスコートの下から取り出して構える。エルボレアスはすぐに頭上へと雲を呼び起こしていたようだ。
 手前のモモは戦いのスリルを感じてスイッチが入ったようで、鋭い視線で敵を睨み付けるのだった。

●『嫌悪』を抱かせる夢喰い
 巨大な百足の姿をしたドリームイーター。そいつはモザイクの足をわらわらと動かし、鎌首をもたげてこちらを威嚇してくる。
「ムカデは山で見慣れてるけど、人型でここまで大きいと恐ろしいね」
 リュコスはそれに向けて、構えを取った。
「でも、ボクには頼れる仲間や戦友の汐音ちゃんもいる! サクッと倒して、事件解決さ!」
 そうして、リュコスは他の仲間の盾となる。素早く飛び掛かってきた百足の巨体を受け止め、体を押さえつけられながらもリュコスは紙兵を自分達の周囲に撒き、自分達を守らせようとする。
 同じく盾となるヒエル。彼はライドキャリバーに庇うよう指示を出すと、拳を思わせるフォルムをした魂現拳はそれを守りつつ、自身を燃え上がらせて突撃していく。
 炎の突撃を受けたことで、百足は体の左脚を幾本か燃え上がらせる。
 敵が炎を気にするその間に、ヒエルは自身の氣……オーラを高めていた。
「一瞬でも、俺から気を離してみろ。その一瞬で拳を叩き込ませてもらう」
 その気を意図的にぶつけていき、ヒエルは百足の気を引く。敵は彼の思惑通り、ヒエルへと意識を向けていたようだ。
 そうして、盾役が百足の気を引く間に。在宅聖生救世主はオラトリオの翼で高く飛び上がり、百足の背に流星のごとき蹴りを食らわせた。炸裂と同時に十字架が光り輝くような衝撃を百足へと走らせ、その足止めを図る。
 さらにモモが続く。戦闘モードへと入った彼女は、在宅聖生救世主よりやや後方の背を踏みつける。
 着地してすぐ、モモは両手にリボルバー銃を握って敵へと突きつけた。
 そのモモより先に、汐音が仕掛ける。
「暴虐の――緋ッ!」
 魔力を集中させて創造した緋色の刃を振るい、百足の体を裂いていく。その度に体液ならぬ、モザイクが体から飛び散った。
 火力となるメンバー達には、リュエンが電気ショックを飛ばし、彼らの力を高めていたようだ。
 後方からも攻撃が飛ぶ。エルボレアスが頭上へと発生させた雲。彼がロッドを掲げ振り下ろすと同時に、その雲から黒い雷が百足へと落下していく。
 痺れを走らせる敵へ、ゴルディエルもまた気迫を背負い、重力を宿した蹴りを炸裂させる。
 ゴルディエルはデウスエクスに対する並々ならぬ憤怒の感情と、凍てつくほどの冷血さを持って襲い掛かっていた。
 そして、シェラーナは全身に禍々しい呪紋を浮かび上がらせ、術式の力を高めていく。
「今代が剣の舞姫が舞いる!」
 速度を生かしてシェラーナは百足の回りを動き回りながら、仲間が与えた傷口を抉るように斬霊刀の刃を見舞っていく。そうして、シェラーナは攻撃の手数を増やし、百足の体に傷を増やしていった。
 シェラーナの浴びせる斬撃に、体内からモザイクを撒き散らす百足。そいつは痛みにもだえながらも、強固な顎でケルベロスへと喰らい付いてくる。
 ライドキャリバー、魂現拳がケルベロスの代わりとなってそれを受け止める間、シェラーナはじっと敵の攻撃を見据える。
(「捕食も顎も、私には届かない攻撃だわ」)
 素早く戦場を動き回る彼女はじっと敵を観察し、その攻撃のタイミングを見極めようとしていた。
 ドリームイーター、百足は強力な顎でケルベロスを噛み砕いてくる。
 盾役メンバーが耐えている間、在宅聖生救世主がブラックスライムを飛ばして敵の動きを拘束し、モモが精神を集中させて百足の体を爆発させる。
 さらに、ゴルディエルが極限まで高めた精神によって敵の顎を破裂させる。硬い顎が破壊されたことで、百足は苦しそうに身を捩じらせていた。失われていくグラビティ・チェインを補充すべく、百足はヒエルへと喰らい付く。
 エルボレアスも敵の節を狙い、高速で降魔の拳を叩き込む。しかし、盾役メンバーの傷が深まれば、治療が生きがいであるエルボレアスも黙ってはいられない。ライトニングロッドから青い雷を発射し、ヒエルへとショック療法を施していく。
 避難誘導に当たっていた昇も駆けつけ、宝石に封じられた魔力を癒しの弾丸と成して発射することで援護してくれていた。
 その間前線では、汐音が2本のゾディアックソードに宿った星座の重力を大百足へと十字に叩き込む。
 同時に、逆方向からリュコスが百足に近づき、その体へと触れた。
「これは神の火。禁忌の火。恩恵と災禍を以て全てを燃やす炎也!!」
 リュコスは超分子振動を相手に送り込む。それは細胞内部から発火させ、ムカデの体を引火させた。
「……やるじゃない」
 敵から距離を取りつつ、汐音は表情を崩さず、それでいて微かな笑みを口元に浮かべていて。
 褒められたリュコスは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「汐音ちゃんも流石だね!」
 リュコスはその汐音と並び、手を伸ばす。タッチを汐音へと促したのだが、汐音は百足から視線を反らすことなく。
「……油断しないの」
 あくまで、今は戦闘モードの汐音。ただ、リュコスを窘める彼女の口調からは、信頼と親愛が感じられて。リュコスは素直に手を下げ、うんと大きく頷いたのだった。
 さて、百足の攻撃から仲間を支える前線メンバー。
 激しいスピンで敵の体を轢き潰す魂現拳や、敵へと獣の拳で殴りかかるリュコスが時に肩代わりをしていたが。敵に怒りを覚えさせたヒエルの疲弊は大きい。
「くっ……」
 ヒエルは手足に纏った氣で敵の攻撃をいなし、あるいは防御することで抑えようとしていたが、全てを抑えられるほどに敵の攻撃は軽くない。
「うおおおおおっ…………」
 ここで負けるわけにはいかぬとヒエルが猛り、叫ぶ。幾分かそれによって傷口が塞がってはいたが、その傷は深い。
 エルボレアスがすかさず、頭上に展開させていた雲から薬品の雨を降らすことで前線の仲間達を癒していき、リュエンも電気ショックを飛ばしてヒエルを賦活させていく。
 もちろん、ケルベロス達はただ、ドリームイーターの攻撃に耐えているだけではない。
「永遠の無明に沈むが如きこの苦痛……、貴様の全てに刻んでくれよう」
 敵の足が鈍ったのを確認したゴルディエルは、手にするルーンアックスに自身から溢れ出る地獄を纏わせて、力の限り敵へと振り下ろす。ゴルディエルは百足を断ち切る為に振り下ろしたわけではない。若干鈍いその刃で、相手を叩き潰さんとしていた。
 その破壊力は絶大で、百足はモザイクに包まれたいくつもの足をばたつかせていた。それがまた、見る者に嫌悪感を抱かせる。
 在宅聖生救世主も敵に狙いを定め、携えたガトリングガンを撃ち放ち、ムカデの体へと銃弾を叩き込んでいく。
「私の狙いになったのが運の尽き。賽の目持って、河原へ流れろ!」
 モモもまた、リボルバー銃の装填と発射を同時に行い、21発もの弾丸で百足の体に風穴を穿つ。そこらからは、モザイクが溢れ出していた。
 口を開いて捕食してこようとする敵へ、シェラーナが舞うように躍りかかっていく。彼女は敵の攻撃のタイミングを図っていたのだ。
 斬撃主体で攻撃を行っていた彼女だが。ここぞと彼女は斬霊刀を引く。それはこの一撃の為の布石でもあったのだ。
「穿つ!」
 敵の顎の下部を目がけ、シェラーナは渾身の突きを繰り出す。それはまさに一点必殺。ついに百足は完全に地面へと崩れ落ちた。それはモザイクに包まれ、霧散してしまう。
「百足のローカストとか出て来ないよね……?」
 在宅聖生救世主は改めて気味の悪い百足の姿を思い返し、そんな危惧を覚えてしまうのだった。

●助け出した女性にフォローを
 『嫌悪』が形を成したドリームイーターを倒したケルベロス達は、戦闘による被害を確認すると、周囲の家の壁やアスファルトなどが破壊されていた。
 ヒールグラビティを活性化させていない在宅聖生救世主が仲間にヒールを頼む。ヒエルが気力を撃ち出してその箇所の修復を始める。
 シェラーナもヒールを考えていたが、どうやら自身に向けたヒールグラビティのみ活性化していたらしく、この場は他メンバーのサポートに回っていたようだ。
 エルボレアスも周囲へとヒールを施していたが、自宅アパート玄関にて倒れる被害者、森島・さとみも気がけていた様で、仲間と共に向かって彼女へと手術を行い、精神状態を安定させる。
「もう安心じゃよ、奴は儂等が片付けたぞ」
「大丈夫かな? 気を失っていたから、介抱させてもらったよー」
 ゴルディエル、モモは隣人力を使いつつ、森島へと落ち着くよう声をかける。
「私達はケルベロスよ。安心してください、もう事件は解決させました」
「何かあれば言うと良い。爺に遠慮等無用じゃからの」
 モモがチョコを食べながら簡単に事情を説明し、ゴルディエルは胸を張って森島へと告げる。
 しかし、森島は夢喰いの姿を目にしており、多少不安がっていたようだ。
「何かあれば、今回の様に俺達ケルベロスが必ず助けに来る。だから安心して、日常を過ごしてくれ」
 仲間にフォローを任せていたヒエルも、改めて彼女を元気付けた。数人のケルベロスの言葉によって、森島も幾分か気を楽にしていたようだ。
「『嫌悪』、か。一体いくつの感情がドリームイーターに利用されるのだろうか」
「難しいねー。嫌いって思いは簡単にはなくせないし」
 リュエンが再びその感情について口にすると、在宅聖生救世主がううんと首を傾げる。
 人から『嫌悪』の感情が消えることはない。ドリームイーターは更なる『嫌悪』を利用するのだろうか。ケルベロス達はそう考えて止まないのである。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年7月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。