
●某教会
「女の子のへそには夢がある! つまりドリーム! 漢のロマン! 俺は悟った……へそにはロマンがある! そして、夢がある、と!」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた女性信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、女性信者達は露出度の高い格好で、いやらしくヘソを広げていた。
●都内某所
「ヤマダ・タエコ(ボッチなアニソンロッカー・e11869)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、女性信者達はへそで誘惑してきたり、相手のへそを露出させるため、ハサミをふりまわしてきたりするようです。そう言った意味で、危険な集団であると言えるかもしれません。なお、信者達の生死は成否判定には影響しません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
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![]() 真暗・抱(究極寝具マクライダー・e00809) |
![]() アレクセイ・ディルクルム(狂愛月下香・e01772) |
![]() レンチ・マーラ(慾・e03391) |
![]() メーリス・サタリングデイ(一斉送信完了しました・e10499) |
![]() ヤマダ・タエコ(ボッチなアニソンロッカー・e11869) |
![]() 叢雲・秋沙(ウェアライダーの降魔拳士・e14076) |
![]() サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381) |
![]() チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323) |
●教会前
「うわっ……、いかにもヘソ好きが集まる教会って感じだね」
メーリス・サタリングデイ(一斉送信完了しました・e10499)はドン引きした様子で、ビルシャナ達が拠点にしている教会の前にやってきた。
ビルシャナが無類のへそ好きと言うだけあって、ある程度の覚悟はしていたつもりだが、敷地内にはへそを無駄に強調した女神像なども飾られており、色々な意味で残念な感じが漂っていた。
もちろん、ビルシャナ達にとっては、パラダイスなのかも知れない。
だが、何の事情も知らない一般人からすれば、間違いなく関わってはいけない相手。
そう言った意味でも、近隣住民から気味悪がられているようだ。
「ヘそに希望というか、欲望を詰めていないか、このビルシャナ……?」
サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)が、思わずツッコミを入れる。
実際にビルシャナは女の子達のへそを性的なモノとして見ており、それをオブラートに包み込むようにして教義に仕立て上げているようだ。
「おへそ、おへそねぇ……。夏は薄着になる女の子も増えていっぱいキュートなおへそを楽しめるわね! ウェストすっきり縦長おへそもちょっと油断してお腹が気になる横気味おへそも、一部のマニアにはたまらない腹肉の奥に慎ましく隠れたおへそも、みんな素敵。その形状に至る過程を妄想するのもワビサビかもしれないわね。夏のギラギラしたネオンの片隅で雷さまぷれいでおへそを楽しむカップルもいるかもしれないわ。ううん、想像が膨らむわね」
レンチ・マーラ(慾・e03391)が上機嫌な様子で、悶々と妄想を膨らませる。
何となくビルシャナと仲良くなれる事が出来るような気もするが、愛でる方向性が異なっているため、相容れない存在であると言えるだろう。
「……と言うか、ビルシャナは、おへそをなんだと思ってるんだ! おへそはモザイクの要らない性器じゃないのに……!!! ……って、これ前におへそ好きのビルシャナと戦ったときに、ボクもやってた! まさかあの中にいた人がビルシャナに……!?」
その途端、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)が、気まずい様子で汗を流す。
もしかすると、あの時のへそを忘れる事が出来ず、ビルシャナになった……と考えられない訳ではない。むしろ、あり得る。十分にあり得る事だった。
そう思うだけで、嫌な汗が止まらなくなったが、とりあえず考えない事にした方が幸せになれそうである。
「そもそも、女の子のへそに夢があるっていう事自体が間違っているの、背信者なの、真に夢と希望と愛と冒険がいっぱい詰まっていて愛があふれているのは、漢の腹筋とへそのコラボレーションなのですよ。本当に悟っているのなら、その黄金比に引き付けられないはずがないのです」
そんな中、ヤマダ・タエコ(ボッチなアニソンロッカー・e11869)が、漢の腹筋のコラボレーションについて、無駄に熱く語っていく。
今回のステージ衣装はロックの神様にリスペクトした深紅のレオタードで、たすき掛け状に目玉がいくつもつけられた最高の逸品。
これならば、ビルシャナの心も、ガッチリ鷲掴みだろう。
「まあ、別にどこに魅力を感じるかは人によってそれぞれだから、思うのは勝手だけど、流石にビルシャナみたいに迷惑行為に走るのは感心できないね」
それとは対照的に叢雲・秋沙(ウェアライダーの降魔拳士・e14076)が、落ち着いた様子で答えを返す。
だが、ビルシャナ達は誰にも迷惑を掛けていないと思い込んでおり、自ら欲望を満たすため、暴走し続けているようだ。
(「臍信者の皆さんは、樽型女子の臍でも萌えるのだろうか……?」)
アレクセイ・ディルクルム(狂愛月下香・e01772)が素朴な疑問を抱きながら、仲間達と共に教会の中に入っていく。
教会の中にはビルシャナがおり、女性信者達のへそを眺めて、幸せそうな表情を浮かべた。
そのため、ケルベロス達の存在に気づいておらず、ヘソ以外のモノが見えなくなっているようだった。
「ハッハッハ! 我は正義のピロー(ヒーローではない)究極寝具マクライダー!」
次の瞬間、真暗・抱(究極寝具マクライダー・e00809)が抱き枕カバーで上半身を覆い、高笑いを響かせるのであった。
●教会内
「……って、無視をするなァ!」
抱がムッとした様子で、ビルシャナを叱る。
その間もビルシャナは、女性信者達のへそに釘付け。
抱の声すら聞こえていないのか、様々なアングルから女性信者達のへそを眺めていた。
「いや、てっきり関わってはいけないヤバイ奴が現れたのかと思ってな」
ビルシャナが汚物でも見るような眼差しで、警戒心をあらわにする。
「貴様にだけは言われなくなかったな、その言葉……」
これには抱もイラッと来たのか、激しく拳を震わせた。
少なくともビルシャナよりはマシだと思っていたが、それは相手も同じだったようである。
そう言った意味で相容れない存在である事は間違いないため、このままフルボッコにしても何の問題もなさそうだった。
「ええと、医学をかじる端くれとしては、お腹を余り出していると冷えで新陳代謝が落ちる=将来的にスタイルが崩れるから、へそを出すどころじゃなくなる可能性があるかなと……。冷えは体の色々な変調に繋がるしな。それとも、一時の好みの優先で将来への不安を買うのか。だったら……辛いな……」
サフィールが悲しげな表情を浮かべ、女性信者達に語り掛けていく。
「そ、そんなの……お、大きなお世話よっ! そうならないための努力もしているし、大丈夫よ、絶対に……!」
気の弱そうな女性信者が、あからさまに動揺した様子で言い返す。
本当は不安で仕方がないようだが、ビルシャナが傍にいるため、本音を言う事が出来なかったようである。
「それに、露骨なヘソだしより、服の隙間からチラッと見えるヘソ……。普段、隠されているからこそ、それがフッと見えた時にこそ宝物を見つけたようなロマンがある……安易に信者達にヘソを露出させた貴様は、ヘソに存在するロマンの可能性を放棄した愚者でしかない!」
抱が『我はマトモだ!』と言わんばかりの勢いで、女性信者達にビシィッと言い放つ。
「いや、その恰好で言われてもなぁ。どこからどう見ても、変態じゃないか」
だが、ビルシャナ達の反応は、冷ややか。
女性信者達も『貴方に言われてもねぇ』と苦笑い。
「だから、貴様らに言われたくないっ! 貴様等だけには……!」
抱が怒りをあらわにしながら、ビルシャナ達に言い返す。
無自覚とは言え、ビルシャナ達がマトモだと思い込んでいるため、色々な意味でイラついているようである。
その間もビルシャナ達は残念なナマモノを見るような視線を送っているため、例え命乞いをしたとしても殺しておくべきだという結論が脳裏に過った。
「……とは言え、見境無しにへそ出しにしてると、いずれ脂肪の塊のお腹で見えなくなったへそを見つけて幻滅すると思うんだけど……。その手の服装を嫌がる子も多いから、無理強いするのは夢を追いかける資格は無いよ」
そんな中、秋沙が落ち着いた様子で、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「その点なら問題ない。ここにいる奴らはみんなへそ好き。見せるのも見るのも好きな奴らだけだからな!」
ビルシャナが躊躇う事なく答えを返す。
実際には女性信者達を洗脳しているだけなのだが、本人達にその自覚がないせいか、ビルシャナの言葉にまわりも賛同しているようだった。
「まあ、私も臍は好きですが……。ただし、愛しの姫の臍限定です。唯の臍など唯の凹みに過ぎない……。本当の良さは、臍へ至るまでの道筋にあり、頬を撫で首筋を辿り鎖骨、柔らかな双丘を越えた下のなだらかなくびれ、そして……これらの要素が複雑に絡み合い調和し響きあってこそ、臍は真の魅力を発揮します。普段、隠し秘めているからこそ、姿を見れた事への感謝とレア感が増すのです。自慢の腹を見せたいのはわかりますが、ならばこそ日常的に無料公開はもったいない」
アレクセイが愛しの姫のへそを思い出しつつ、女性信者達に語っていく。
彼にとって、愛しの姫のへそ以外は、豆腐に空いた穴に等しいのだが、女性信者達はそう思わなかったらしく、何やら恥ずかしそうにへそを隠した。
「お、おい! なんでへそを隠しているんだ!」
その途端、ビルシャナが信じられない様子で目を丸くした。
「い、いや、別に……」
眼鏡を掛けた女性信者が、恥ずかしそうに視線を逸らす。
「……ただ、おへその魅力もすごいけれど、ほかの部位もいいわよね? へその形状を決定づけるお腹のお肉も、その下の流れるような曲線を描くお尻や太もも、もちろんその上空にそびえ立つたわわなおっぱいだって夢と希望と浪漫に満ち溢れているわ! 一部位だけに固執するなんてもったいないと思うけど……。ニョタイは楽しんでこそでしょう?」
そこですかさずレンチが、女体の良さについて語っていく。
女性信者達もへそだけでなく、他の部分も見てほしいという気持ちが芽生えたのか、まんざらでもないようだった。
「それに、真なるおへそ信者は、漢の腹筋と腹毛に彩られたおへそこそ夢見るはず。それが分からないビルシャナは異端者なのです。さあ、真なる教徒は私に付いてくるのです。18時間ロックの神様のライブビデオを見続けて愛に悟るのです」
続いてヤマダがマイク片手に、へそについて語り出す。
「ふ、ふざけるなっ! 漢など論外っ! もっとも忌み嫌う存在だ! それよりも、へそを見せろ! 誰でもいいから、へそを見せろおおおおおおおお!」
ビルシャナがへそ欠乏症に陥りつつ、殺気立った様子で叫ぶ。
しかし、女性信者達は催眠が解けかかっているため、かなり引き気味。
恐怖のあまり、へそを見せるどころではないようだった。
「そんなにへそが見たいのなら見せてあげる! これが見たかったんでしょ? 素直にやられてくれるのなら、舐めてもいいし、触っても……ちょっとだけならいいよ!」
そう言ってチェリーがパーカーの前を開け、思わせぶりにヘソを広げる。
「こ、これは……このへそはああああああああああああああああああああ! 俺が求めていたのは、このへそ……このへそなんだ! 俺はこのへそに見覚えがあるッ! 何故なら、このへそは……いや、このへそこそ、俺がへそ好きになったキッカケを作ったへそだからだァ!」
次の瞬間、ビルシャナがカッと両目を見開き、叫び声を響かせた。
「えっ? ひ、人違いじゃないの……かな」
これにはチェリーも驚き、激しく目を泳がせる。
「い、いや、間違いない。このへそだ。素直にやってやるから、そのへそ……舐めさせろおおおおおおおおおおおおおお」
完全に理性の留め金が外れた様子で、ビルシャナが飛び掛かってきた。
「そこまでだよっ!」
それと同時にメーリスが色々と察した様子で、ゾディアックミラージュを仕掛ける。
「うごっ! 何故だあああああああああああ」
その一撃を食らったビルシャナがバランスを崩し、納得がいかない様子でケルベロス達を睨みつけた。
●ビルシャナ
「間違いない、そのへそ……。そのへそが俺を狂わせた!」
ビルシャナが興奮した様子で、チェリーに迫る。
どうやら、ビルシャナの人生を狂わせた張本人に酷似しているらしく、他人とは思えないようだ。
そのため、ネットリと纏わりつくような視線を送っており、ヘビの如くちょろちょろと舌を出していた。
「ひ、人違いだよ。だって、ボクとキミとは初対面だし!」
チェリーがあたふたした様子で答えを返す。
ビルシャナの状態では初対面だが、一般人だった頃に……あった事があるかも知れない。
もちろん、それは単なる気のせいである可能性もあるのだが、あまりにも心当たりがあるせいで嫌な汗が止まらない。
「お前が忘れたとしても、俺の身体は覚えている! だから、へそを舐めさせろおおおおおおおおおおおおおお」
次の瞬間、ビルシャナが鼻息を荒くさせ、ジリジリとチェリーに迫っていく。
「全力で気持ちが悪いね、このビルシャナ」
その途端、メーリスがドン引きした様子で、乾いた笑いを響かせる。
女性信者達もビルシャナに対する気持ちが激変したため、必要以上にへそを隠していた。
「やはり、マトモじゃないのは、貴様の方だったな。この……ド変態が!」
抱がここぞとばかりにビルシャナを罵りながら、三対の魔眼を使う。
「ち、違う! 俺はド変態なんかじゃない! ただへそが好きなだけの純粋なビルシャナだああああああああああああああああ」
ビルシャナが混乱した様子で、両目を血走らせる。
何が純粋なのか分からないが、見る限り異常そのもの。
それでもマトモだと言っているのは、本人くらいのものだろう。
「いつも思うけど、ビルシャナって光の国とやらに導く気がないというか布教の仕方が自由過ぎる……」
サフィールがビルシャナに冷ややかな眼差しを送る。
ビルシャナはチェリーのへそを舐める事に全神経を注ぎ込んでいるため、ある意味で動く的。狙ってくださいと言わんばかりに、隙だらけであった。
「姫のことを考えながら話していたら、早く会いたくなりました。さぁ、終わらせましょう」
すぐさま、アレクセイがスカルブレイカーを仕掛け、ビルシャナを追い詰めていく。
「な、何故だ、何故……邪魔をする! 俺はへそが好きなだけなのに……。ただ純粋にへそが好きなだけなのに……」
ビルシャナがボロボロと涙を流しながら、チェリーのへそに手を伸ばす。
だが、届かない。チェリーが逃げ続ける限り……!
「嫌がっている子に変態行為を強要するビルシャナには、お仕置きだよ」
次の瞬間、秋沙が一気に間合いを詰め、ブーストナックルでビルシャナの身体を貫いた。
「うぐっ……、俺はただ……へそが舐めたかっただけなのに……」
ビルシャナが納得のいかない様子で、血溜まりの中に沈んでいく。
それと同時に女性信者達が我に返り、ビルシャナを恨めしそうに睨みつけた。
「まあ、それが問題だったんだけどね。もっと、女の子の魅力を知っていれば、こんな事にならなかったのかも知れないけど……。人生が狂うほどのへそねぇ……」
レンチが何気なく、チェリーに視線を送る。
「べ、別人だから! こ、こんなビルシャナ、知らないし」
チェリーが顔を真っ赤にしながら反論したが、かなり心当たりがあるようだった。
「そんな時こそ、ロックです! ブルーな気持ちを晴らす唯一の方法……。それがロックなのです!」
そう言ってヤマダが自らの思いを、魂の叫びに変換しつつ、教会内に歌声を響かせるのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年7月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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