飛空オーク高層ビル決戦～上空奇襲作戦！

■リプレイ

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　上空で待機するヘリオンが３つあった。そのヘリオンの一つの扉が開かれた。
「……見えた、あそこがマッドドラグナー・ラグの研究所か」
　スライ・カナタ（彷徨う魔眼・e25682）は上空から高層ビルの屋上を見つめる。その瞳には視界に広がる光景以上の何かを見ている様子でもあった。
「空挺作戦で敵城奇襲とは痛快だ」
　これから行うのは、上空のヘリオンから高層ビルの屋上にあるラグ博士の研究所への奇襲。それを敵城と称して気合いを見せるのは楡金・澄華（氷刃・e01056）。
「さて……遂にあの迷惑なオークを作った博士に引導を渡す時間ですね」
　これから奇襲で首を狙うラグ博士だが、今までに飛行オークでかなりの被害を起こしてきた。
「女の敵、静べし～。慈悲？　ありませんよぉ♪」
「今までのオークの恨み、全て叩きつけてあげます♪」
　　槙島・紫織（紫電の魔装機人・e02436）とアーニャ・シュネールイーツ（時の理を壊す者・e16895）の口調は柔らかいが、その中には激しい恨みと憎しみが込められている。
「そうですね。飛行オークの被害をこれ以上出さないためにも、必ずラグ博士を撃破致しませんと……」
　クノーヴレット・メーベルナッハ（知の病・e01052）が複雑な表情で呟く。
「そうだな、品種改良の豚の生みの親の御首、確実に頂こう！」
　様々な想いを込めやる気を見せるケルベロスたちであった。
　そんな中、ミミックのサヴァと一緒に降下するタクティ・ハーロット（重力喰水晶・e06699）は、万が一にも空中でバラバラにならないようにミミックを背中に乗せ捕まってもらう。
「ティナもはぐれないようにね」
　その隣でもアーニャ・クロエ（ちいさな輝き・e24974）がウィングキャットのティナに声をかけていた。

「はい、分かりました。降下タイミングをずらしますね」
　降下準備をする中で、アーニャ・シュネールイーツは別班のティ・ヌ（ウサギの狙撃手・e19467）からアイズフォンで連絡を受けていた。先に降下し、陽動を引き受けるという連絡だった。
「分かった、降下タイミングは私が調整する」
　その連絡に澄華が応える。降下作戦は経験があるようなので、他の者もタイミングを澄華に任せる。
「そういえば、水着コンテストがあるのですよね」
　軽く雑談を挟みながら、何か準備をしている葵原・風流（蒼翠の四宝刀・e28315） 。
「そうだな、その為にも、ここで飛行オークを壊滅させておきたいな」
　水着コンテストの開場へ飛行オークが飛来したら大混乱が起きそうだ。そんな雑談で緊張をほぐし降下のタイミングを待つ。
「あとに続いてくれ」
　次の瞬間、他の班が降下を開始したのを確認し、澄華が降下を開始する。続けて他の者もヘリオンから順番に降下していく。
　ラグ博士の研究所を潰す作戦の開始だ！

●
　ケルベロスたちの降下に反応して、早速研究所側で動きがある。
「ブヒブヒ！」
　迎撃用の飛行オークたちが次々に投石機のような機械で迎撃に飛び上がる。
「一番槍は私が頂こう」
　迎撃に飛んで来る飛行オークを狙い、天空より無数の刀剣を召喚する澄華。その刀剣を空中に解き放つ。
「ぷぎゃぁ！」
　解放された刀剣に晒され、悲鳴を上げるオークたち。
「さぁ、どんどん去……排除しましょうねぇ♪」
　紫織は普段の口調のまま、エアシューズに流星の力を込める。
「ふふふ〜」
　そのまま重力を込め、オークを踏み貫きながら流星のように降下していく。
「ぶひびひぃぃ！」
　飛行オークの狙いはラグ博士の研究所に近づけさせない事。ケルベロスたちの攻撃に耐え、接近したオークは触手を伸ばしてクノーヴレットを捉える。
「んっ……」
　オークの触手に身体を弄られ、厭らしい声が出てしまうクノーヴレット。
「ブヒヒヒィィ！」
　その声に興奮して、さらに触手を伸ばそうとするオークだが……。
「させねぇぜ！」
「死にたいようだな」
　そこへ割り込むタクティとスライ。伸ばされた触手を左手のガントレットで防ぎ、右手に超硬化させた竜の爪でオークを引き裂く。
　さらにスライはクノーヴレットの身体を縛っていた触手だけを綺麗に竜牙動力剣で切り落とした。
「ありがとうございます」
　乱れた服を整えながらお礼を返すクノーヴレット。
「まだまだ、戦いはこれからだぜ！」
「あぁ……」
　それに男らしく笑顔で返すタクティと、クールに返すスライが対照的であった。
「全て撃ち落としてあげます……ファイア！」
　アームドフォートの一斉掃射を飛行オークへ叩き込むアーニャ・シュネールイーツ。
「ブヒヒヒィィ！」
　そんな砲撃を避けながら空中を滑空しながらアーニャ・クロエに近づくオーク。しかし、それをヴァルキュリアの翼を羽ばたかせ避け、雷撃を放つ。さらにウィングキャットのティナが翼を羽ばたかせ邪気を払う。
「まるで飛んで火にいる夏の虫状態ですね」
　次々と撃墜されていく飛行オークを眺めながら呟く風流。同時に、ゾディアックソードと斬霊刀を二刀流に構えながらヴァルキュリアの翼を輝かせる。
「オークを打ち破る力を」
　そのまま空中で寂寞の歌を響かせ、オークを打ち破る力をスライたちへ纏わせる。

　離れた場所では別の班のケルベロスたちが飛行オークに絡まれ苦戦していた。しかし、もう一つの班が援護し対処していた。
「なら、俺たちは先に降下するぜ！」
　タクティは器用に結晶のような翼を羽ばたかせ、降下速度を早める。さらに背中のミミック・サヴァが偽物の黄金をばら撒きながらオークをかく乱する。
　先に降下すれば、混乱を助長させられるだろう。
　他の者も翼を利用したり、防具特徴のダブルジャンプを駆使したりして、空中戦を有利に進めていく。
　そして、かなりラグ博士の研究室に近い場所に降下する事に成功した。

●
　着地と同時にアーニャ・クロエとアーニャ・シュネールイーツが別班へ連絡を入れる。その間に、各々が色々な行動を取る。
「カザリさんの出番です」
　風流はアイテムポケットから小柄の女性の人形を取り出す。それをビルの下へ、落下したように見せかけながら、落とす。
「ああ、カザリさんが！！」
　そして、大きな声で美人の仲間が重傷を負い落下していったように演技する。
　しかし、それに反応するオークは誰も居なかった。通常のオーク相手であれば、もしかしたら何らかの反応があったかもしれないが、オークの大半は混乱状況であったから、それに反応している余裕など無かったのだ。
　作戦は状況に応じて考える。やってみなくては分からない事もあるから、戦況に激しく影響を与えない限り、挑戦する事は悪く無いだろう。
　それに、今回の行動では混乱の度合いを測る指針にもなっただろう。現在はそれだけオークたちが混乱しているという証拠でもあるのだ。

　その間に偵察に向かった澄華たタクティたちだが、ラグ博士の研究室への最短ルートに、多数待機しているオークを発見した。数は、軽く見ても６体以上。そのオークたちは、指示が無いのでどうしていいのか分からない様子。
「敵が来たのか？」
「何処から来たフヒか？」
「敵は何処だ、俺の自慢の触手で嬲ってくれよう！」
　現状は混乱し、どうしていいか分かっていない様子だが、攻撃を仕掛ければ敵に所在を知らせ目標を与えてしまう。放置して混乱させたままにしておくのがいいだろう。そのまま静かに戻る。
「あちらが本丸への近道だが不要な戦闘となる」
　最短距離を進むと多数のオークと戦う事になる。多数のオークと戦い、かく乱するのも一つの作戦。激しく立ち回り他の班が行動しやすくするのも悪く無い。
「迂回しましょう」
　しかし、此方側の被害を考慮すると、難しいところ。スライは迂回を提案する。
「そうだな。ここは飛行オークの拠点だ。この数を攻撃して、やる気を出させたら俺たちは、無事では済まないだろう」
　澄華が確認した範囲だが、６体から７体ぐらいだろうか。視界の影に居ればもっと多いだろう。無論、この８人で倒せる可能性は十分にあるが、他から援軍が来る可能性もあるし、突破した頃にはラグ博士に逃げられているかもしれない。
　そんな無駄な時間と被害を出すのは好まない。
「こちらから回りましょう」
　混乱しているオークを観察している間に、アーニャ・クロエが迂回路を確認した。ケルベロスたちは、そちらを通りラグ博士の元へ向かう事にした。

「この程度なら突破出来るな」
「陽動にもなるな」
　迂回路を進むケルベロスたち。そこで2体ほど混乱であたふたしているオークを発見、すぐに攻撃を仕掛ける。
「場を混乱させるのは忍の本領……仕事、させてもらうぞ」
　疾走しながらの二刀斬撃を繰り出す澄華に続き、連続攻撃を繰り出すケルベロスたち。
「ミサイル一斉発射！」
　さらにマルチプルミサイルで大きな爆発音を響かせるアーニャ・シュネールイーツ。さらにCrescentを高速回転させながら、すれ違いざまに台風のような斬撃を繰り出すアーニャ・クロエ。
「ふふふ～。触手プレイ『される』感想は如何ですかぁ？」
　触手のような形状のケルベロスチェインでオークを貫き微笑する紫織。そこへ鋭く踏み込み、防具ごとオークをずたずたに切り裂くスライ。そのまま足を止めずに走り抜ける。
「うふふ、捕まえました……♪」
　クノーヴレットは、オークに接近すると魔力を込めた指先でオークのぶよぶよな下腹部に触れる。
「ぶひぃ！！！！」
　その声の悲鳴は痛みだろうか、それとも別の衝撃だろうか。その触れた手が小刻みに動き、下腹部を這い回る。
「さぁ、私のこの指で奏でてさし上げますから、素敵な声で歌ってくださいね……♪」
　その動きは指がまるでオークの触手のように這いずり動き、オークの敏感すぎる下腹部を絶妙な力加減で刺激を与え、体力と理性と知能を奪っていく。
「ぶ……ひ……ぃぃ」
　そしてクノーヴレットの手が止まると同時に白目をむいて倒れ、そして動かなくなった。

　手早い連携でオークを倒し先へ進むケルベロスたち。長い戦いで集中力を途切れぬように、歌声を響かせる風流。もう、ラグ博士の研究室はすぐ側だ……。

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「おのれ！」
　ラグ博士の研究室に到着したケルベロス。内部からは戦いの喧騒とラグ博士の罵声が響いていた。
「すでに戦いは始まってますね」
　即座に判断し、研究室へ飛び込む。先に突入した別働班はかなり激しい戦闘を繰り広げていた。
「いくぞ！」
　それを見て、即座に判断行動に移す。派手な攻撃でラグ博士の注意を剃らせながら、同時に傷ついた仲間たちを癒すためヒールを行う。
「癒しの雨よ……」
　アーニャ・シュネールイーツが薬液の雨をバルタザール・エヴァルト（おっさんの刀剣士・e03725）を中心に降らせ……。
「今度こそ、守ってみせるよ」
　アーニャ・クロエが光り輝く月のオーラを生成し、その光りを夜陣・碧人（現を揺蕩う幻想精・e05022）たちに浴びさせる事で傷を癒す。
「動かないで下さい」
　そんな中、ラグ博士の飛ばした観察記録のページで身体を束縛されているエレ・ニーレンベルギア（追憶のソール・e01027）に風流が近づき、斬霊刀を構え、真横に一閃する。
「私の斬霊刀は病のみを切り裂きます」
　静かに言い放つと同時にエレを覆っていたページは塵となり、さらに傷が癒える。

「おのれ、オーク共は何をやっとるかぁぁ！」
　再び己の研究室に土足で入り込まれ、怒りを露わにするラグ博士。そもそも、そこまで入り込まれるのは指揮官の作戦ミス。それを部下に押し付けるなど、指揮官失格。まあ、ラグ博士は研究者であり、指揮官でも何でも無く、戦いは不得手なのだが。
　それが大きな隙となった。
「今ですよ～！」
「ああ、いくぜ！」
　一瞬、紫織と七種・酸塊（七色ファイター・e03205）が視線を交わしたかと思うと、周囲を囲むにように動き、連携攻撃を仕掛ける。
　酸塊 たちが流れるような連携攻撃を繰り出すのに続き、紫織が胸部を開放する。
「コンデンサ出力上昇……高電圧弾、スタンバイ、発射します」
　胸部ブラスター用砲身から高電圧弾を発射し追撃する。
「この技、避けきれるかな……？」
「うふふ、貴方の心の傷を抉ってさしあげますわ」
　さらに、澄華はラグ博士の周囲に多数の魔方陣を作成して、そこから閃光を放ち連続で攻撃を仕掛け、クノーヴレットはトラウマボールを放ち、ラグ博士の心の傷を抉る。
　まだ、攻撃の手は緩まない。
「叩き割らせてもらうんだぜ！」
　遠距離からの攻撃が止んだタイミングで踏み込むタクティ。右手を握ると同時にバトルガントレットが結晶化する。その結晶化した部分でラグ博士の顔面をぶん殴る。
「……見えた。そこがお前の死だな」
　スライの瞳だけに映る緑色の線、それは相手を効率よく破壊する軌道を映したもの。その軌跡にそって、竜牙動力剣を走らせる。
　ケルベロスたちの連携攻撃は、次々とラグ博士の体力を奪ってゆく。
　しかし、それでも倒れぬラグ博士。そこへアルメイアが歩み出てギターを構える。
「さあ、貴様の未来を置いていけ！」
　ギターの演奏に乗せて放たれた魔曲がラグ博士の魂送曲のように響き、最後に残された力を『破壊』する。
「馬鹿な……私が敗れる、だと……！？　わー……おッ！！」
　その言葉を最後に、液体が蒸発するかのように消滅した。ラグ博士の最後だ……。

「へっ、やかましいトカゲ親父だったな」
　アルメイアが、ラグ博士が倒れた場所を静かに見つめる。アルメイアとラグ博士には浅からぬ因縁があったらしい。しかし、その視線から、想いはうかがい知ることは出来ない。
　アーニャ・シュネールイーツは片目を閉じて、別班のイピナへラグ博士の撃破を報告する。
「ラグ博士は、綺麗に消し飛ばしました！」
「ラグ博士の撃破、成功です！」
　ほぼ同時に、一緒に戦っていた班のエレ・ニーレンベルギア（追憶のソール・e01027）もラグ博士撃破の報告を入れる。

（「可能なら何か研究資料を持ち帰りたい処だけど……」）
　そう心の中で呟くクノーヴレットだが、それはすぐに諦めた。
「ラグ博士は撃破、この研究室に有用な情報もなさそう……とくれば、遠慮無く破壊させてもらうぜ」
　戦いで激しく損傷しているのもあったが、さらに別班の桐屋・綾鷹（蕩我蓮空・e02883）が研究資料を破壊していたのだ。個人的に興味があったクノーヴィレットだが、断片的に残った資料の危険性を考慮すると、いっそ処分してしまう方が色々と安全だろう。
「うわあああああ！！　逃げるブヒイイイ！！」
　遠くからオークたちの悲鳴が響く。ラグ博士撃破の報で士気が崩壊したのだろう。
　これで、飛行オークの脅威は、ほぼ無くなったといって良いだろう。
　その戦果に満足するケルベロスたちであった。

作者：雪見進	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年7月18日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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