七夕モザイク落とし作戦~モテたい男子の理想像

作者:天木一

 7月7日、七夕の夜。東京上空……。
 大きな鍵を手にした『赤い頭巾のドリームイーター』が、ひとり、空を漂っていた。
「綺麗……短冊に込めた人々の願い事が、まるで宝石のよう。
 あの輝きが欲しくて、あなたは『モザイクの卵』を降らせたのね。
 でも、鎌倉の戦いでこしらえてもらった卵も、あと少ししか残っていないのね。
 …………。
 いいわ、あなたの夢、私が手伝いましょう。
 だって、あなたの夢は、きっと私と同じだから。
 だから、残った卵を私に頂戴。
 あなたをこの星に呼んであげるわ……ジュエルジグラット」
 
 
 夕方の商店街には晩御飯の食材を買いに来た主婦や、学校帰りの学生など多くの人々で賑わっている。
 その一角に何本もの笹が飾られ、そこに色とりどりの短冊が結ばれていた。それは商店街で行われている七夕祭りだった。その前のテーブルで2人の高校生らしき制服の男子が短冊に文字を書き込んでいる。
「短冊に何書いた?」
「お前こそ何て書いたんだよ?」
「俺はレギュラーになれますように、だな。そろそろ3年も抜けるし、試合出てー」
 そう言いながらボールを蹴るように足を動かす。
「あーそっか、もうすぐ3年も引退か」
「で、で? お前は何て書いたんだよ」
「あーあー、……彼女が出来ますようにって」
 しつこく尋ねる友人に照れながら答える。
「彼女かー俺もほしいなー。よし、俺も彼女欲しいってもう一枚書こ!」
「ええー! そんなのありかよ、じゃあ俺も成績アップでもう一枚!」
 2人が短冊を書いて結びつけて、騒がしく立ち去っていく。
 誰も居なくなると短冊の下に異物が蠢き始めた。それは1m程のモザイクの塊。
 モザイクは『彼女が出来ますように』と書かれた短冊をその身に吸収していく。するとモザイクが割れ、中から一人の学生服を着た男性が立ち上がった。
 2mを超える長身。そしてさらさらの茶色がかった髪に、垂れ目がちの甘いマスク。口元は優しい笑みを作り、いかにもモテそうな若い男性の姿をした存在が、願い事を得たモザイクから生まれていた。
 
「皆さん緊急事態です。ドリームイーターが七夕を利用して大作戦を行う事が判明しました」
 真剣な表情でセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達に説明を始める。
「この作戦はローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083)さんと多数のケルベロスが予測し、調査してくれた事で事前に知る事ができました。ドリームイーターは、鎌倉奪還戦時に失敗した『モザイク落とし』作戦を再び起こそうとしているようです」
 モザイク落としが行われれば、日本に巨大なモザイクの塊が落下するため、大量のドリームイーターが出現し、日本中が大混乱となる事が予測されている。
「敵は残存するモザイクの卵を使用して日本中の七夕の願いをドリームイーター化し、そのドリームイーターを生贄に捧げる事で、モザイク落としのエネルギー源にしようとしています」
 七夕の願いから生まれたドリームイーターは出現してから7分間で、自動的に消滅し、モザイク落としの儀式のエネルギーに変換されてしまう。
「皆さんにはドリームイーターが現れる地点に向かい、7分以内にドリームイーターを撃破して欲しいのです」
 発生したドリームイーターは、その場に留まり7分間待つという行動をする為、周囲に被害が出る事はない。
「皆さんに倒して欲しいドリームイーターは、彼女が欲しい、モテたいといった願いから生まれたようです。その結果、相手を催眠状態するといった、心に干渉して状態異常にする能力を持つようです」
 直接的な攻撃力は高くないが、時間制限のある戦いでは厄介な相手となる。
「現われる場所は横浜にある夕方の商店街です。人通りは多いですが、敵は放っておけば何もしないので、出現時に避難させれば被害が出る事は無いでしょう」
 短冊を吸収して生まれるので、現われる前に短冊やそれを書く人を退ける事はできない。
「大勢の人々が楽しむ七夕を利用するのも許せませんが、モザイク落としが成功すればとんでもない被害が出てしまうでしょう。皆さんの力でそれを阻止してください。大規模な戦いになりそうですが、皆さんならきっとやり遂げられると思います。どうか、よろしくお願いします」
 セリカが深く頭を下げる。ドリームイーターの好きにはさせないと、ケルベロス達は足早にヘリオンに乗り込んだ。


参加者
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)
ガナッシュ・モントプム(くるり踊り唄う・e00960)
大石・千代子(フィレナワール・e01170)
眞山・弘幸(業火拳乱・e03070)
ココ・プラム(春告草・e03748)
神宮時・あお(忘却ノ未来・e04014)
十朱・千鳥(ローズロワ・e19159)
夜識・久音(ホーリープレイ・e20233)

■リプレイ

●七夕
 夕方でもまだまだ外は明るく、商店街は人で賑わっている。
 笹が何本も飾られた一角では、人々が短冊に願い事を書いている。そこにケルベロス達が敵を待ち構えていた。
「みんな、どんなお願い、してる、のかな?」
 興味深々にガナッシュ・モントプム(くるり踊り唄う・e00960)が、子供達が短冊に願い事を書いているのを眺める。
「人のお願い事がきらきらで宝石みたいっていうの、ボクも何だかちょっと分かるかも。だからこそ、それを利用するのは許せませんなぁ」
 子供が背伸びしながら短冊を結ぶのを見て、大石・千代子(フィレナワール・e01170)は敵の思惑通りにはさせないと決意する。
「七夕の願いごと……みんなのいろんな想いが詰まってるの……。大切な、大切な願いごとだよ。モザイク落としなんて、絶ーっ対にさせない!」
 隣でココ・プラム(春告草・e03748)も、ぐっと気合を入れた。
 笹の前では男子学生達が彼女欲しいと騒ぎながら短冊を結ぶ。
「この手の願いが集まったからテンプレのイケメン姿でご登場って事か、人の願いを利用するなんざ気に入らねぇな。何にしても短期決戦上等ってな」
 男子達の願い事を聞いた眞山・弘幸(業火拳乱・e03070)は、いつでも戦える準備をする。
「またドリームイーターですね、ああいう願いとはいえ、悪用は許さないね」
 短冊を飾った男子が立ち去る姿をエルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)が見送った。
「……おねがいごとが、強い、七夕は、確かに、狙われ、やすい、です、ね。……そんなに、もてたい、もの、なの、でしょうか。……よく、わかりません」
 モテたいという願いに神宮時・あお(忘却ノ未来・e04014)は首を傾げた。
「随分と大掛かりな作戦、ですね。罪のない七夕の願いを利用しようという手口も。ドリームイーターの在りようも受け入れるわけにはいきません」
 強い憤りを籠めて夜識・久音(ホーリープレイ・e20233)が必ず倒そうと言い放つ。その視線の先、笹の下に1m程のモザイクの塊が現われた。笹に飾られた短冊の一部を吸収すると、ドクンッとモザイクが脈打ち、縦に割れた。中から立ち上がったのは、爽やかな容姿に、長い足、一見してイケメンと分かる学生服を来た男子だった。
「つーかデカい!」
 思わず声が漏れた十朱・千鳥(ローズロワ・e19159)が見上げる。その男子の身長は優に2mを超えていた。
「ガナ子怖くないか? 一緒に頑張ろうな」
「うん、ぼくも、がんばる!」
 千鳥がガナッシュの頭を撫でると、ガナッシュはコクコクと頷く。
「はじめましょう!」
 久音の掛け声に合わせ、ケルベロス達は一斉にイケメンドリームイーターへ襲い掛かった。

●イケメン
「なにこれデカすぎる。外見だけあって中身は残念なやつは、いくらイケメンでもモテないの」
 その身長差にエルスは呆れたように見上げる。掌を向けると、ドラゴンの幻が現われ大きな顎から炎が放たれた。
「先制攻撃です! コーラスさんも行きますよ!」
 炎に巻かれたところに久音が飛び蹴りを放って胴を打ち抜き、続いてボクスドラゴンのコーラス、そしてロクサーヌもタックルをぶち当てた。
「オレに喧嘩を売る気なら止めておいたほうがいい」
 余裕の表情を見せてイケメンは乱れた髪を撫でる。
「モテたいにしても、いろんな願いを混ぜすぎじゃないかな」
 千代子は縛霊手を展開し、紙兵を撒き散らして敵との間に配置すると仲間を守るように動かす。
「作戦は、がんがんいこうぜ! だね!! 絶対に、消えちゃう前に倒しちゃうよ……!」
 紙兵を盾にして大鎌を手にココがくるくると回りながら投げつける。
「……2m、……目の前に、すると、想像より、おっきい、です……」
 それを追うようにあおがイケメンに向かって跳躍し、イケメンが大鎌を腕で受けたところへ顔を蹴りつけた。腕のガードがゆるみ大鎌の刃が胴を裂く。
「さて野郎共、全力全開、前のめりで行くぜ」
「了解! イケメン顔を切り刻んでやる!」
「ぼくも、えんご、します!」
 弘幸が声を掛けて動き出すと、両手にナイフを手にした千鳥も一直線に駆け出す、その背後からガナッシュが手にしたスイッチを押すと、カラフルな爆発が周囲に起こる。爆煙に紛れて千鳥が飛び込み顔に向けて一閃、すれ違いながら脇腹、背後に回って背中と切りつけ、煙が晴れる頃には既に距離を離していた。イケメンが振り向いたところに弘幸が目にも止まらぬ速さで脇腹に蹴りを叩き込み、くの字になったところへ反対の足がハイキックで頭を刈るように薙ぎ倒した。
「ぐふっ、男の嫉妬はみっともないよっ」
 地面を転がったイケメンが立ち上がるとウインクする。するとキラキラと飛び散った星が庇おうと前に出たミミックの松乃進や、近くのケルベロス達にぶつかり、その瞳をキラキラ輝かせる。
「ぼくのおどりで、みんなについた、お星さまを、お空にばいばいします!」
 ガナッシュが軽やかにワルツのステップを踏むと、瞳に宿る星が消え去っていく。
「んー、ちゃらちゃらふらふらの男は嫌いんですね。言動も軽くて頭も軽いし、なんか弱そうで頼れなさそう。やはり強い人がいいの」
 イケメンを観察したエルスの体から黒い液体が伸び、鋭く先端が尖り槍のように敵の胴を貫いた。
「ダメだよー、自分がからっぽでも人のモノでそれを埋めようとしちゃ」
 続いて反対側から千代子も黒い液体に包まれた腕を向ける、長槍のように伸びた液体が背中を突き刺す。液体は傷口から体内を黒く侵食していく。
「ちょこちゃんのいうとおりだよ、お願いごとは、それをした人のものだもん!」
 ココの掌からドラゴンの幻影が現われ炎を吐き散らす。
「熱烈だね、可愛い子は歓迎するよ!」
 攻撃を受けてながらもイケメンは口に手を当て、チュッと投げキッスをするとハートが弾丸のように飛んでくる。
「……借り物の、願いを、叶えても、意味が、ありま、せん」
 あおが両手の間に集めた気の塊の弾丸のように撃ち出し、ハートを撃ち抜く。
「照れなくてもいいんだよ」
 爽やかにイケメンはハートを撃ち出す。それを間に入ったコーラスが受け止めた。
「イケメン度でいったらこんなドリームイーターより、俺の方が勝ってますよね!? 弘幸さん! いや渋さでいったら弘幸さんには叶いませんけどね?」
 イケメンを見上げ、振り向いた千鳥が自信満々に尋ねる。
「イケメン度か……確かに千鳥のがイケメンだろうな。ひょろ長くて誰かの夢を奪う奴をイケメンと言うには納得いかねぇし、渋さは……まぁ歳の甲って奴だろうよ」
 軽く肩を竦めて弘幸が笑って返事をして、すぐに真顔に戻り敵の懐に飛び込んでガントレットを嵌めた腕を伸ばす。その先端、人差し指一本がイケメンの胸を抉る。指一本の傷、だが体内を巡る気脈を断ちイケメンの動きを止めた。
「という訳で、本物のイケメンの力を見せてやるぜ!」
 千鳥がナイフに炎を纏わせてイケメンに斬りつける。イケメンは腕を上げ、深い傷を負いながら顔を守った。腕の傷口からモザイクが覗く。
「やれやれ、本物のイケメンというのはオレみたいな顔、スタイル、性格と全て揃った男子の事をいうんだぜ?」
「作ったイケメンに価値はありません」
 ピッと指を向けて語るイケメンに、久音は縛霊手でボディブローを叩き込む。霊力が網状となってイケメンの体を縛った。

●モザイク
「モテたいなら、もっと中身を鍛え上げないとね。でもお前には無理ですね、中身などないし、その願いさえも他人のものですね」
 エルスの纏う黒い液体が広がりイケメンを呑み込んだ。
「オレこそ理想! 願いそのもの! モテてモテてモテまくってみせる!」
 イケメンがドヤ顔でウインクをした。星が煌きケルベロス達の動きを鈍らせる。
「そんなに、お星さまをまきちらしたら、おそうじが、たいへんです」
 ガナッシュが対抗するように光輝く粒子を散らし、仲間の中の感覚を研ぎ澄まさせる。
「一応これでもサキュバスの端くれだもん。魅了とか誘惑には負けないぞー、たぶんだけど!」
「ココも! よく分かんないけど、負けないよ!」
 千代子がドラゴンの幻影を生み出す。その幻は空を舞い炎のブレスを吐き出し、背後からココの投げる大鎌がイケメンを袈裟に斬り裂いた。
「……グラビティで、強引に、誘惑するのは、もてる、とは、言いません」
 あおがナイフを煌かせると、イケメンとは正反対のモテなさそうなぽっちゃり男子の幻がイケメンの視界に現われ、襲い掛かる。
「その通りです。モテたいのなら、正々堂々とするべきでしょう!」
 続けて久音も黒色の魔力弾を撃ち込み、襲う幻を増やした。
「デブは暑苦しい!」
 イケメンは長い足で跳躍してケルベロスに近づく。
「やれやれ、ハニー達の熱いアプローチは受け取ったぜ?」
 イケメンの甘く囁く声が久音を惑わそうとする。
「ちょっと背が高いからって調子に乗るなよ!」
 千鳥が舞うように両手のナイフを操り、イケメンの周囲を回るように移動しながら幾重にも斬り刻む。
「背が高けりゃ良いってもんじゃないぜ」
 弘幸が踏ん張るイケメンの太腿を蹴って跳躍し、地獄の業火を纏った左脚で回し蹴りを叩き込み、体を壁に叩きつけた。
「この身長が羨ましいのかい? まあ、君達ふつメンが憧れるのは仕方ないね」
 イケメンは傷つきながらも髪をかき上げるポーズを決める。
「背がおっきいのは、ココもうらやましいんだよ……ココだって、すぐにおっきくて素敵なレディになるんだもんね!」
 そこへココがイケメンの顔目掛けて魔法の光を撃ち込む。するとみるみる内に皮膚が石へと変わっていった。
「これが流行の石パックか、ふっ、オレの美貌がまた美しくなってしまうな」
 ぺたぺたと顔を触ったイケメンが笑う。
「うわあ超気持ち悪い……こんなのが彼氏になるなんて本当に勘弁なの」
 ドン引きしたエルスは嫌そうに眉を寄せ、離れた位置から左右の二刀を振るう。するとイケメンの居る空間ごと体を十字に斬り裂いた。
「素直になれよ、オレのものになれ」
 イケメンが逃さぬようにドンッと壁に手をつきながら誘ってくる。
「そ、そんな誘惑には負けないから!」
 強気に言い返しながらも、千代子はあっさりと精神操作を受け、その目には仲間が敵として映る。
「あ、あぶないです、そっちは、なかま、ですよ」
 慌ててガナッシュがワルツのステップを踏み、千代子を正気に戻す。
「あ、危なかった、ありがとうねガナッシュくん」
 千代子も周囲に薬液の雨を降らせて敵の影響を完全に消し去る。
「恥ずかしがらなくてもいいんだよハニー」
「誰もドリームイーターの誘いなんて受けません!」
 差し出すイケメンの手に松乃進が噛みつき、久音が壁を蹴って高く跳躍して上から顔面を蹴りつけた。
「……みなさん、こういう、男子に、なりたい、ので、しょう、か?」
 横から勢い良く跳躍したあおが更に横っ面を蹴り飛ばす。
「そんなにモテたいなら、その面をこいつで男前にしてやる」
 弘幸がガントレットの拳を固め、顔に抉るように叩き込んだ。
「お似合いの顔になってきたんじゃないか!」
 続けて千鳥がナイフで頬に傷をつける。すると薔薇の棘が全身を巡るようにイケメンの内部に激痛を走らせる。
「顔は止めろ! イケメンの顔は女子達の宝なんだよ! これから出会う全てのハニーが泣いてしまうだろ!」
「皆さん、残り2分ですよ! いっちゃいましょう!」
 敵が怒鳴っている間に時計を確認した千鳥が仲間に呼びかける。ケルベロス達は頷き一斉に攻撃を開始した。
「このチャラ男、お前なんか一生彼女が出来ないの。あっ一生って言ってももうすぐ終わるよね」
 エルスは虚無と現実の狭間から闇を召喚し、暗闇はイケメンを覆い魂を侵食していく。そこへ千代子の伸ばした黒い液体がイケメンの顔を貫いた。
「止めろって言ってる!!」
「ご、ごめん。まぶしくて直視できなくて、つい……」
 イケメンの剣幕に思わず千代子が謝罪していた。
「ちょこちゃんも……なのかな……? それじゃココとちょこちゃんと、お顔に当てっこだね! ここ、負けないよ!」
 それを見たココは張り切ってイケメンの顔を狙って大鎌を振り下ろした。顔を守ろうと防戦一方になる。
「……歪んだ願いを、無に還す、破滅の、詩」
 目を閉じてあおが唄い始める。唄と共に周囲に魔力が満ち溢れ、イケメンの体を包み込むとその体からずるりと溶けるように肉が落ちた。その覗いた傷口にはモザイク化した沢山の短冊があった。
「七夕の願いは、ちゃんと天に届けましょう」
 踏み込んだ久音が縛霊手の拳を胸の傷口に叩き込む。背中に突き出た腕がモザイクの短冊を飛び散らせた。
「熱烈すぎるぜ、これ以上はDVだぜ……!」
「こっちは、いきどまり。にげられない、ですよ!」
 逃れようとイケメンが足を踏み出した瞬間、ガナッシュが手の上に乗せたスイッチを押す。すると爆発が起こりイケメンの体が吹き飛ばされた。大きな体が壁に弾かれふらつく。
「何一つ、誰の夢も、モザイク落としのエネルギーになんてさせてやるつもりは更々ない」
 かつて行き場のない願いを籠めた短冊を思い出しながら、一気に間合いを詰めた千鳥が右のナイフで胸を薙ぎ、跳躍して頭上を取ると肩に左のナイフを突き刺した。
「さすがイケメンだな。ここはおっさんも負けてられねぇってヤツだ」
 上に注意が向いている内に弘幸が股の下をスライディングで潜り、背後に回り込むと光輝く左手を向ける。するとイケメンの体が引き寄せられ、踏み込んだ闇纏う右の拳が背中を打ち抜いた。続けて膝に蹴りを打ち下ろし、バランスを崩したところに後頭部へ拳を叩き込み、そのまま壁にぶつけて押し潰した。
「オレのイケメンマスク……」
 顔を押さえながらイケメンは崩れ落ち、内部のモザイクが砕け散った。

●願い
「見た目だけイケメンでも中身が伴なわなくてはモテませんよね」
 見た目よりも大切なものがあるとエルスは言いきる。
「……好きな、人、意外に、もてても、うれしいもの、なので、しょうか……」
 無表情にあおは相手は誰でもいいのだろうかと頭を傾けた。
「短冊か、皆は何を願うんだ」
「弘幸さんみたく渋かっこよくなる!」
 弘幸が尋ねると千鳥が即答した。
「ココはね、シーチキンのお城作りたい!! ちょこちゃんは?」
「七夕のお願い事? ボクは特にないかなぁ。今が一番楽しいんだー。でも、今よりもっといっぱい遊ぼう!」
 ココの可愛らしい願いに微笑みながら、千代子は腕を組んで考えて答える。
「うん、いーっぱいあそぶの!!」
「ぼくも、あそびたい、です」
 そこにガナッシュも加わり楽しげにあれこれと遊びを考える。
「みんなの願いが叶うといいですね」
 久音は戦闘で落ちた短冊を拾い、笹に結びつけた。そこには平和になりますようにと書かれていた。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年7月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。