七夕モザイク落とし作戦~夢の護り人

作者:河流まお

 7月7日、七夕の夜。東京上空……
 大きな鍵を手にした『赤い頭巾のドリームイーター』が、ひとり、空を漂っていた。
「綺麗……短冊に込めた人々の願い事が、まるで宝石のよう。
 あの輝きが欲しくて、あなたは『モザイクの卵』を降らせたのね。
 でも、鎌倉の戦いでこしらえてもらった卵も、あと少ししか残っていないのね。
 …………。
 いいわ、あなたの夢、私が手伝いましょう。
 だって、あなたの夢は、きっと私と同じだから。
 だから、残った卵を私に頂戴。
 あなたをこの星に呼んであげるわ……ジュエルジグラット」
 放たれた卵の一つが流れ星のように東京の空を駆ける。
 星にお願いを、なんてよく言ったりするが、この卵の場合は人の夢を吸収する魔性の星となるのがなんとも皮肉なところだ。
 隅田川の流れと並走するように上空を進んだ卵は、人の夢の気配を感じ取ったのか、あるアパートの上でその動きを止めた。
 アパートの屋上には七夕で短冊に彩られた一本の笹の葉が飾られている。
 モザイク模様の卵の殻にヒビが入り、その裂け目がそのまま巨大な口となり笹の葉を飲み込む。
『ギター上達! バンドのみんなで絶対メジャーデビュー!』
 ドリームイーターに笹の葉ごと飲み込まれた短冊の一つには、そんなことが書かれていた。
「聞いてください、皆さん」
 集まったケルベロス達にセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が重々しい口調で告げる。
「ドリームイーター達が、人々の願いが集まる七夕を利用して、大きな攻勢を仕掛けてくるようです」
 セリカの言葉に会議室がざわつく。
「先の鎌倉奪還作戦時でも使用された『モザイクの卵』……未だ残存するこの卵を使い、巨大なモザイクの塊を日本に落下させようとするのが敵の作戦です」
 もし、そのようなことになればドリームイーターが溢れかえり、日本が大混乱になることは間違いないだろう。
「第二次モザイク落とし作戦、ってとこか……」
 ケルベロスの一人の言葉にセリカが頷く。
 敵の目論見はこうだ。
 残存するモザイクの卵を使用し、日本中の七夕の願いを利用してドリームイーターとして孵化させる。そのドリームイーター達を生贄に捧げ、巨大なモザイクの塊を日本に落下させるためのエネルギー源とするというものだ。
「七夕の願いから生まれたドリームイーターは出現してから7分間で、自動的に消滅し、モザイク落としの儀式のエネルギーに変換されてしまいます……」
 もし、多くが討ち漏らされてしまえば、日本に巨塊が落ちることとなるう。
 セリカはケルベロス達にドリームイーターが現れる地点に向かい、7分以内に敵を撃破してください、と告げる。
「皆さんにお願いしたいのはこの地点です」
 セリカが地図で指示したのは東京都内、隅田川沿いにある5階建てアパートの屋上。ここに『ギター上達、メジャーデビュー!』という願いを吸収したドリームイーターが現れるとのことだ。
 パンクなファッションに顔と両腕がモザイク化したドリームイーターで、手に持ったギターをかき鳴らして攻撃してくる。
『シビれるだろ? この音色ビーム』というパラライズ効果を持つ遠距離攻撃を中心に、
『破壊衝動デストローイ! ビーム』という怒り効果を誘発させる攻撃を織り交ぜてくる。
 他にも、ピンチに陥ると『ときにはバラードも歌うのさ……ビーム』という自身の傷を癒す行動もしてくるようだ。
「繰り返しますが7分以内の撃破を心掛けてください。おそらく、今回現れるドリームイーターの過半数を撃破出来なければ、敵のモザイク落としは成功してしまうでしょう」
 逆に、ほぼ全てのドリームイーターを倒すことが出来れば、モザイクの卵による事件は今後発生しなくなるだろうとセリカは説明する。
「七夕に書く願いごとは書き手本人のものです。それが食い物として扱われるのを、私は許したくありません。人々の願いを、どうか守ってください」
 深々と頭を下げるセリカに、ケルベロス達は頷きを返すのだった。


参加者
月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)
オーフェ・クフェロン(人類好きの人形・e02657)
赤星・緋色(小学生ご当地ヒーロー・e03584)
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)
葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)
御堂・宗一郎(旅鴉・e22928)
ウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)

■リプレイ

●七夕ライブ
 七夕の夜。隅田川沿いのとあるアパートの屋上にて待機するケルベロスの一団の姿がある。
 太陽はすっかり地平に沈んだものの、東京の夜は僅かに明るい。夜空を侵食するように、立ち並ぶビル群が煌々とした光を放っている。
「こう明るいと、天の川は見えないな」
 織姫と彦星の浮かぶ東の空を眺めながら、自然を愛する魔女、月宮・朔耶(天狼の黒魔女・e00132)が残念そうに呟く。フクロウのポルタとオルトロスの天狼も眩しすぎると訴えるようにそれぞれ一鳴き。
「七夕とはいえ、都会だとね」
 傍らに立つ青年、ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)が頷く。
 まあ、実のところ常人より遥かに鋭い彼の視力なら天の川も見えないことはないのだが、ここは黙っておくのが華だろう。
「俺としては、今日が満月じゃなくてホッとしてるところだ」
 月齢は三日月。生まれつき「狂月病」に罹患しているヴォルフには結構重要なところだった。
「わんこ姿も義兄も良いと思うが……天の川も一緒に見たかったのう」
 肩を落とす朔耶。
「人工の光も、これはこれで綺麗なものですよ。まるで街が星空を映しているようですわ」
 口元に扇を当てながら、オーフェ・クフェロン(人類好きの人形・e02657)。
 地球の文明を愛して定命化を受け入れたオーフェは、大都市・東京の光をどこか愛おしげに見つめている。
「そう言われてみると、七夕の夜には無粋に見えた街の光も、案外悪くないように思えてくるな」
 ココア味のシガレットを咥えた御堂・宗一郎(旅鴉・e22928)が「お前さん、なかなか風情があるじゃねぇか」と口元を持ち上げる。
 その見た目はどこからどう見ても美少年なのだが、どこか言動がおっさんっぽい……というか実際35歳だったりする。年齢詐欺か。
「ねね、皆だったらどんなお願い事を短冊に書く? 私なら『ダンス上達、なんやかんやでメジャーデビュー!』かなっ」
 愛用のエアシューズの調子を確かめながらダンスを披露する元気印の少女は赤星・緋色(小学生ご当地ヒーロー・e03584)。
 そのジョブは自宅警備員なのだが、彼女の定める自宅はでっかく『川越』。
 地元ではご当地ヒーローとして親しまれている。本日、墨田区のピンチに緊急出動中である。
「うーん、願い事か。俺はとりあえずこの作戦の成功だな。せっかくの七夕に、モザイク塗りの星が降るのは勘弁してほしいからな」
 緋色の問いに、渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)が考え込みながら答える。
 ケルベロスとして目覚めるまではどこにでもいるような少年として暮らしていた数汰だからこそ、日常というものがいかに壊れやすく、大切なものなのかを知っているのだろう。
 ちなみに緋色とは同じ旅団所属で、なんやかんやの顔見知りだ。
「夢……夢、か」
 心の底にある何かを思い出そうとするようにするのは葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)。
 伊月が地獄化した欠損部分は『夢』。七夕で思い思いの短冊で彩られた笹の葉を見つめる伊月は、どこか寂しげだ。
 自分自身の夢を伊月は思い出すことが出来ない。だが、それを大切にしていた、という感覚は今でも伊月の中に消えずに残っている。ならば、せめて誰かの夢を――
「護るよ。護らなきゃ。それが僕の、僕らの、役目だ」
 その意志に呼応するかのように、伊月の金眼に炎が灯る。
「そろそろ頃合いだ」
 インカムタイプのイヤホンで時間を確認していた朔耶。彼女の言葉に頭上を見上げれば、今まさに、奇妙なモザイク模様の卵がアパート目がけて落下してくるところだった。
「頼むぜ、ウルトレス」
「ああ、任せておけ」
 数汰の言葉に頷き、ベースを奏で始めるウルトレス・クレイドルキーパー(虚無の慟哭・e29591)。
 聴くものが聴けば、街に鳴り響く無秩序な雑音をも組み込むその技巧に驚くことだろう。
「バンドマンとしては、ギター音が迷惑に思われたくないからな」
 落下したモザイクの卵が笹の葉を飲み込み、心臓のように脈動しながらその姿を変えてゆく。
 前奏は終わり、激しい戦闘の始まりを予感させるエイトビートの旋律が始まる。七夕ゲリラライブのスタートだ!

●デスロック・ドリームイーター
「お、あ……」
 モザイクの卵から生まれたドリームイーターは3mにも及ぶ巨躯。骸骨を模したパンクなファッションに、鍵を思わせる形状のエレキギターを持った姿だ。
「こ、の歌声、機械みたいに正確な、ぎぎ技巧。前にインディーズで、聞いたこと、が……ある」
 その願いの元となった人間の記憶も写し取っているのだろうか、ウルトレスの演奏を聴きながら、ドリームイーターがゆっくりとその上体を起こす。
「ゆゆゆ、許せねぇ。俺達より上手いやつつ、つ。メジャーデビューするのは、おおおおれぇ達だぁ! 潰す潰す、潰してやるぁああッ!!」
 世間に自分の音楽が認められない怒り、そして他者への妬み。ドリームイーターがそのギターをかき鳴らすと、それらの激情が怪光線となって放たれる。
「…ッ」
 ベースを低く構えてウルトレスはこの衝撃に耐える。手傷を負いつつもウルトレスは演奏を止めない。
「カウント開始だな」
 すかさず黄金の果実でウルトレスをサポートする朔耶。彼女の肩に止まっていたフクロウのポルテが飛び立ち、その姿を装飾美しい魔杖へと変える。
 前衛で真っ先に動いたのはヴォルフ。
 すべての努力が実を結ぶとは限らない、そのことに関しては多少、ドリームイーターに同情出来なくもないのだが。
「この度はご愁傷様ですが……とりあえず死ね」
 あいにく今回は時間がない。神速でもって抜き撃たれた銃弾が、乾いた破裂音を残しドリームイーターの足に突き刺さる。
「7分間だけ、お前のライブに付き合ってやるよ。だがアンコールは無しだ」
 数汰が掲げたナイフに雷が落ち、その真の刀身が姿を現す。青白く輝く雷霆の長剣。数汰が宿す固有グラビティ、神雷天槌(ケラウノス)だ。
「――その身に刻めッ!」
 疾風迅雷の速度でドリームイーターに迫り、その一撃を叩き込む数汰。
「7分以内って言わずにもっと早く倒しちゃお! 全チームで一番になるくらいに!」
 これに続くは赤髪のヒーロー少女緋色。エアシューズでのアクセルジャンプが、屋上のコンクリートに弧月の擦過痕を刻む。
「くらえっ! ひっさつ!」
 放たれる蹴撃は全身全力、それに強烈な遠心力を上乗せした達人の一撃だ。
「ぐ、お……」
 交錯する数汰と緋色の一撃を受け、モザイク模様のドリームイーターの顔に亀裂が入る。
「守りはおっさんに任せて、思うがままに闘ってきな」
 初手でメタリックバーストを展開し、攻撃陣をサポートする宗一郎。狙アップの支援を受け、続くは伊月だ。
「……紅藍、今日も頼むよ」
 紅藍。伊月専用のケルベロスチェインがその鎌首を持ち上げる。幼馴染の一人から名を取ったこの鎖。捻くれ者にして皮肉屋、だが誰よりも努力家であるその彼のことを、伊月は思う。その心は常に共にある、こうして彼を思うだけで力が湧いてくるのだから。
「皆の夢を護るため、君の力を貸してくれ」
 伊月の意志に応えるように紅藍が疾る。
 鎖の先が敵の足元で弾かれたように飛び上り、その首元へと一気に喰らいつく。
「ぐ―ッ」
 伊月のその一撃が、奇妙な骸骨模様をしたドリームイータの服も同時に引き千切った。
「おおおお、俺達のステージ衣装よくもぉおおッ」
 大切な一張羅を壊され、ドリームイーターが狂乱の悲鳴を叫ぶ。墨田区に響き渡る耳をつんざく絶叫に、近隣アパートの住人達が「なんだなんだ?」とその顔を覗かせる。
「ひ、デウスエクス!?」
「わわ、ケルベロスもいる。え、マジで!?」
 恐慌が広がりそうだった現場を、ウルトレスのベース音が制した。
「すぐに終わる。ステージには上がるなよ」
 見た目の派手さや、音量の大きさだけに頼らない技巧を中心としたプレイが、観客たちの心を一瞬にして掴む。
「おう、頼んだぜ! ケルベロスぅうう!」
 戦場にオーディエンスの声援が加わった。
 被害を最小限に抑えるため人目を避けた場所で戦うことが多いケルベロス達だが――
「たまにはこういうのも悪くないですわね」
 オーフェの指のマインドリングが光り、レプリカントたる彼女の武装機構がその駆動を開始する。
 パチンと持っていた扇を閉じると、赤と黒の装甲が一瞬にして彼女の右腕を覆い、身の丈ほどある巨大な砲塔へとその姿を変える。
「演算終了、喰らいなさいな」
 夜を塗り替えるような眩い光弾が発射され、ドリームイーターに叩き込まれた。
「が、ぐ……」
 ドリームイーターの身体に、亀裂が葉脈のように刻まれる。
「くそ、なな、何故。観客どもは、俺達の音を、聴きやがら、ねぇ。聴け、聴けぇ! ブッ壊されてぇのかぁあああ!」
「音ってのはな――」
 ドリームイーターとの演奏合戦(ジャム)を続けながら、ウルトレスがドリームイーターに肉薄する。
「奏者(プレイヤー)と聴衆(オーディエンス)の魂が共鳴して、はじめて音楽になる。一方的な押し付けは、ただの騒音だ」
 戦術超鋼拳がその顎元に撃ち込まれ、ドリームイーターの顔ついた亀裂が一層大きくなる。
「認め、ねぇ……おお俺達だ、俺達が音楽シーンのの、頂点に立つつつんだぁあッ!」
 だが狂乱するドリームイーターもそう簡単に倒れる相手ではない。ここからが正念場だ。

●騒音加速
「シビれろ! シビれろぉおお! 俺様の音楽にシビれろぉおッ」
 ロックの神か悪魔が乗り移ったかのように、激しく頭を振るドリームイーター。パラライズの発動をジャマ―効果で更に高め、狂ったようにビームを放ってくる。
「よりによってジャマ―か。これは厄介だな」
 神雷天槌と達人の一撃を叩き込んだものの、ビームの標的となってしまった数汰。額から伝う血を拭いながら呟く。
「大丈夫か? 若いの。それにしても最近の曲ってのは、どうもねぶかぶしいな。演歌も歌え、演歌も」
 数汰の背中に紙兵を貼り付けBS耐性を付加する宗一郎だ。

 戦闘開始からしばらくの戦いの展開はこうだ。
 敵のパラライズビームをオーフェが適宜治療してゆき、咲耶と宗一郎がBS対策。その間に他のメンバーで一気にドリームイーターを攻め立ててゆく。
 やや攻撃寄りに尖らせたケルベロス側の構成だが、きちんとBS対策をしておいたのが吉と出たようだ。一度、回復の要であるオーフェがパラライズを受けてしまう場面があったが、伊月の放った黄金の蝶がこれを治療する。
 だが時間制限がある以上、どうしても無理に攻めて行かざるを得ないのがケルベロス側の不安要素だ。
 パラライズを治療しても蓄積してゆくダメージまではどうしてもカバーがし難い。オーフェの負担を減らすために数汰、緋色、伊月はドレイン効果を狙う攻撃を織り交ぜてゆくのだが。
「5分経過だ。そろそろマズいぜ」
「あと2分、ですわね」
 経過時間を確認しながら戦っていた朔耶とオーフェが仲間たちに警告する。
「時間がない。俺も攻めるぜ! オーフェ、大変だろうが皆を支えてくれ!」
「善処致しますわ」
 オーフェと共にこれまで仲間への支援を重点的に行っていた朔耶だったが、ここでついに攻撃に加わる。
「頼むぜ、ポテさん!」
 確実に当てていくべきか迷うところだったが、ここはやはり威力重視でいくべきだろう。
 朔耶の持つファミリアロッドが淡い魔力の輝きを残し、コキンメフクロウのポルテへと変わる。
 杖の状態で周辺から集めていた魔力を解放し、梟の金眼が月輪の輝きを宿す!
「行けッ!」
 ポルテがドリームイーターの胴体を貫く。ぐらり、と大きく傾くドリームイーターの身体だが、そのギターを杖代わりにして最後の執念で踏みとどまる。
「は……、ででデビュー、皆で、デビュー! 俺、もっとギター上手くなって……あ」
 だがそのドリームイーターの顔に、死神の影が差した。月光を遮りドリームイーターの頭上からその影を作ったのはヴォルフ。
「悪いが、その願いは叶わない。これで終わりだ」
 その手には大鎌に似た形状のゲシュタルトグレイブ『Unterwelt』が握られている。
 三日月と大鎌。まるで2つの月が星空に浮かんでいるかのようだと、ドリームイーターはその死の瞬間に思った。
「が……ふ」
 頭を落とされたドリームイーターが糸の切れた人形のように、膝から崩れて沈む。 
 ギターを取り落とし、その手足の先からだんだん黒い灰となって消えてゆくドリームイーター。
 残されたのは願いの元となった短冊に笹の葉。そしてエレキギターだ。

●星に願いを
「……」
 戦いが終わり、ドリームイーターが残したギターを拾い上げるウルトレス。
 おそらく、このギターもドリームイーターの身体の一部だったのだろう。エレキギターはボディの下部から黒ずんだ灰となって徐々に消えてゆくところだった。
 敵とはいえ、ウルトレスにとっては『音』を重ねた相手でもある。
「これで、ライブ終了だ」
 ギターとベース、両方の楽器の弦を引き千切るウルトレス。そして、同じ夢を目指していたロッカーに黙祷を捧げる。
 戦いの熱気を冷ますように、隅田川から涼やかな風が吹いた。残った笹の葉がサラサラと清涼な音を奏でる。
「うおおおお――!」
 期せずして観客となった近隣住人達から湧き起る拍手と歓声。それに応えるケルベロス達。両手を振ったり、慣れない歓声に恥ずかしがったり、その反応は様々だ。
「お疲れさん。怪我はねぇかい?」
 共に戦った仲間を労う宗一郎。
 残された笹の葉を拾い上げるのは伊月。そこに緋色が近づく。
「ねね、モザイクの卵に食べられてたのってこの笹の葉だけだったし、もしかしてお願い事を書いた本人は無事なのかな?」
「そうだね、たぶん……」
「そっか! 良かった! この願い、叶うといいよねっ」
「……うん」
 緋色の笑顔に、伊月も笑顔を返す。どこかぎこちないだった笑顔だったが、その優しさは緋色にしっかりと伝わったようだ。
「さて、いい機会ですし。わたくしも出来れば七夕という文化をよく知りたいですわ、数汰さん」

「え、俺指定!?」
 生粋の地球人であり、ごく一般的な日本人であるところの数汰が重要参考人としてオーフェに捕獲された。
「まったく、賑やかな夜だ」
 戦闘中の冷淡な雰囲気が和らぎ、穏やかな表情を見せるヴォルフ。
 ライブして戦って、こんなに忙しい七夕はそうそう無いだろう。
「短冊貰ってきたぞ。ほら、義兄も」
 みんなで願いを短冊に書いて笹の葉に飾る。
 星までその願いが届くように、なるべく高い場所につけるといいだろう。

作者:河流まお 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年7月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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