七夕モザイク落とし作戦~目指せビッグワン!

作者:沙羅衝

 7月7日、七夕の夜。東京上空……。
 大きな鍵を手にした『赤い頭巾のドリームイーター』が、ひとり、空を漂っていた。
「綺麗……短冊に込めた人々の願い事が、まるで宝石のよう。
 あの輝きが欲しくて、あなたは『モザイクの卵』を降らせたのね。
 でも、鎌倉の戦いでこしらえてもらった卵も、あと少ししか残っていないのね。
 …………。
 いいわ、あなたの夢、私が手伝いましょう。
 だって、あなたの夢は、きっと私と同じだから。
 だから、残った卵を私に頂戴。
 あなたをこの星に呼んであげるわ……ジュエルジグラット」

 大きな国道沿いに、一つの釣具店があった。駐車場から出た看板には、デフォルメされた魚の絵が描かれてあった。
 その駐車場に、一つの笹が飾られていた。そこには、お客さんや、店員が書いた短冊が飾られてある。
 釣具店の願い事と言えば、決まっている。
『今年は年なし!』
『アオリ3kg! お願いします!』
『大会、頑張ります! ノッて来い!』
 などなど、おおよそ釣り人しか分からない単語が並ぶ。しかし、それらを集めると、結局は一つの願いにたどり着く。
『ビッグワン!』
 そう、その場所での一番の大物を狙う願いに集約されるのだ。溢れんばかりの思いを、皆短冊に込めていた。
 店が閉店し、外で飾られているその短冊達と笹の葉が風に揺れていたその時。直径1メートル程のモザイクの塊が発生していた。
 そのモザイクの塊は、短冊を吸い込み、どんどんと大きくなり、はじけた。

「みんな、集まってくれてありがとう」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084) は、集まったケルベロス達に依頼の説明を開始していた。
「あんな、ドリームイーターが七夕を利用して大作戦を行う事が判明したんよ」
 七夕を利用する? 絹の言葉に、集まったケルベロス達が口々に感想を呟く。
「この作戦はな、ローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083)さんとか、沢山のケルベロスが予測して調査してくれて、なんとか事前に分かってんけど。どうやら、ドリームイーターは、鎌倉奪還戦時に失敗した『モザイク落とし』作戦を再び起こそうとしているらしいわ。
 モザイク落としが行われてしもたら、日本に巨大なモザイクの塊が落下する。そっから大量のドリームイーターが出現して、日本中が大混乱になりそうやねん」
 なるほどと、緊張した面持ちで頷くケルベロス達。絹が続きを話す。
「敵は、残存するモザイクの卵を使用して、日本中の七夕の願いをドリームイーター化し、そのドリームイーターを生贄に捧げる事で、モザイク落としのエネルギー源にしようとしているようや。
 んでな、七夕の願いから生まれたドリームイーターは出現してから7分間で、自動的に消滅して、モザイク落としの儀式のエネルギーに変換されてしまうみたいやな。
 せやから皆には、ドリームイーターが現れる地点に向かって、7分以内にドリームイーターを撃破して欲しいんよ」
 モザイク落としが行われる前に、出現したドリームイーターを撃破しなければいけない。しかも、タイムリミットは7分である。事態を察したケルベロスが、絹に更に詳しい説明を求める。
「今回みんなに撃破して欲しいドリームイーターは、釣具店に現れたドリームイーターや。このドリームイーターは、手に持った釣竿を使って、武器を絡め取ってくる。それと、なんかひしゃくみたいなヤツでモザイクを飛ばしてくるみたいや。でも、このモザイクには催眠の効果が確認されとる。気をつけてな。あとは、疑似餌状……ああ、ルアーちゅうて魚の姿を模したやつな、それを投げてくる。これは混乱の効果があるみたいやね。それらを駆使してくるから、その処理に手間取ってしもたら時間が無くなる。あらかじめ作戦を立てといた方がええやろな」
 今回の依頼の肝心な所は、時間制限である。敵の攻撃の効果に惑わされ、時間がかかりすぎてしまうと、撃破は困難となる。ケルベロス達は、互いの顔を見合わせた。
「実はな、この戦いやねんけど。他の皆にも依頼が行っとる。で、どうやらこの作戦を完全に阻止することが出来たら、現在起きているモザイクの卵による事件は発生しなくなるやろちゅう予測もたっとるんよ。モザイクの卵の在庫切れやな。せやから、出来れば完全阻止を狙いたいねん。頼むで!」
 絹の言葉を聞いたケルベロス達は、気合の声を上げた。


参加者
ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)
知識・狗雲(鈴霧・e02174)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
御子神・宵一(御先稲荷・e02829)
神崎・晟(魁殿竜・e02896)
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)
一津橋・茜(紅蒼ブラストヘイム・e13537)
柚野・霞(玄鳥の魔術師・e21406)

■リプレイ

●釣具店にて
 夕方になり、ケルベロス達は事件の発生場所である釣具店へ来ていた。ドリームイーターを迎え撃つ為の準備と、出現と同時に戦う為であった。
「これでよしっと」
「おお、これはまた見事な魚拓だな、ガロンド君」
 店員に事情を説明し、店内に自らが参加した釣り大会優勝時の写真と、その時吊り上げた大物の魚拓を、ガラス越しに外へと見えるように店内に飾らせてもらっていたガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)に、神崎・晟(魁殿竜・e02896)が話しかけていた。
「うん。たまたま参加したんだけどね。そういえば神崎くんは釣りをするんだっけ? 僕は本格的なのはやったことないな……」
「……!?」
 その言葉に、晟と周りの店員が絶句する。これほどの釣果を上げておきながら、初心者とは……。
「その時の竿も持ってきてみたんだけど、これ、良く分からなくってね」
 そう言いながら、竿を見せる。
「これで……か!?」
 その竿は、その扱いづらさと重さで、今では使う者の居ないモデルであり、飾ってあった最新式の竿を手に持っていた彼は思わず見比べる。
「成る程、道具が全てじゃないという事なんですかね。ガロンドさん、なんかすごいです!」
 御子神・宵一(御先稲荷・e02829)は、その様子を見ながら狐の耳や尻尾をぴこぴこ、ぱたぱた動かし、スマホを片手に羨望の眼差しでガロンドを見る。
「……いやいや、宵一君。釣りはそう簡単ではないぞ。勿論道具も大事だし、それを使う為の知識という……」
「おお! これは食いでがありそうですね! ガロンドさん!」
 ウンチクを語ろうとする晟の言葉を遮り、その写真の魚を見た一津橋・茜(紅蒼ブラストヘイム・e13537)が興奮しながらガロンドの背に飛び乗った。楽しそうにきょろきょろと首を振り、耳をピコピコと動かしている。
「勿論おいしかったよ。鮮度は大切だねぇ。ああそうだ、例の短冊は何処だろう?」
 小さなウェアライダーを背に乗せながら、店員に案内され、自動ドアを出て駐車場に出るガロンド。その後に宵一も続いていく。
 その場には、無言で魚拓と写真を見つめる晟と店員が残された。
「きっと、神崎さんにも良いことがありますよ。こんなに情熱を注いでいるのですから」
 晟のそばで柚野・霞(玄鳥の魔術師・e21406)が勇気付けようとそっと声をかけ、さあ、行きましょうと続ける。
「……あ、ああ」
 彼はそれだけ言い、手に持った最新式の竿をそっと陳列棚に戻したのであった。

 夕方になってもまだ照りつける太陽の下、駐車場では短冊が飾ってある笹の周りに他のケルベロスが居た。
「なるほど……天の川のビックワン、か。皆の熱い思いが集まっているな。ただ何故だろうな、嫌なモノを連想する」
 ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)がその短冊の一つ一つを見て呟く。
「七夕は夢がいっぱい……ドリームイーターの餌には充分、なのかな?」
 知識・狗雲(鈴霧・e02174)も短冊を見る。その願いの強さを確認し、ディークスに問いかける。
「そう……なのだろうな」
 ディークスは狗雲に頷き返した。
「モザイクの卵の事件も長かったですね。しかし、ここで終焉ですね」
 ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)の言葉を最後に、少し無言の時が流れた。
 ドリームイーターの事件に終止符を打つ。これが今回ケルベロス達に託された依頼だ。人々の願いをデウスエクスに変換する行為など、ここで終わらせるのだ。
 彼らは、決意を新たにしながら夜を待った。

●ビッグワンを狙う
「来た」
 頭上に浮かんだ三日月が雲で隠れた頃、笹の周囲にグラビティの収束を感じとったウィッカが仲間に合図を送り、オウガメタルを纏う。他のケルベロス達も一斉に武器を構えた。
 笹からほんの少し離れた箇所に、直径1メートル程のモザイクの卵がその姿を現していく。そしてそのモザイクは、目の前の笹に飾り付けられた短冊を一気に飲み込み、その姿を巨大な人型に変え、叫んだ。
「フィッ! フィッシんんん!!」
 その声は駐車場にこだまし、手には10メートルはあろうかと言う釣竿が出現した。
「アラームセットOK! 皆さん。お願いします」
 宵一が腕時計のタイマー機能を6分後にセットし、スタートさせる。
 その言葉を聞いたウィッカがエアシューズを履いた足を、円を描くように動かし、無駄の無い動きから炎を出現させてドリームイーターへと飛ばすと、胴体の部分から炎が上がりだした。
『ただの飾りじゃないよ…!』
 狗雲が前に立つウィッカ、宵一、ディークスと、晟とボクスドラゴンの『ラグナル』、ガロンドとミミックの『アドウィクス』に唐紅色の鎖を纏わせ、彼らの攻撃力をアップさせていく。
 そして同じメンバーに晟が私兵を撒き、ラグナルがドリームイーターにブレスを浴びせると、胴体に炎の傷が広がっていった。
「大物狙いは悪くない。悪くないが。 星を飲む大物はノーサンキューかな」
 ガロンドがそう言いながら、3メートル程のドリームイーターの頭上に大きくジャンプし、重力を宿した飛び蹴りをそのアゴを捉える。すると、その衝撃でドリームイーターの膝が少し落ちる。
 そこへアドウィクスが左足に牙を立てて噛み付くと、霞が左膝の裏に飛び蹴りを打ち込み、スカートを左手で押さえながら反動をつけて着地した。
「ガアアアあアあ!」
 ケルベロス達の息のあった容赦ない攻撃に悲鳴を上げながら、左膝を地面に落とすドリームイーター。
「よし! このまま一気にいくぞ!」
 しかし、晟がそう言った時、ドリームイーターがその右手に構えた釣竿を一閃した。
 ヒュッ!
 大きく風を切る音が聞こえたと感じた時、晟の身体にモザイク状の糸が身体に巻きついた。
「や、やはり……私か!?」
 そう、ドリームイーターはこの場での一番の大物である、蒼いドラゴニアンに目をつけたのだ。
「竜の一本釣り……新しいな。だが、釣り上げる前にその釣竿を圧し折ろう」
 ディークスがブラックスライムの闇蜥蜴『with』を捕食モードに変形させ、その動きを縛ろうと近距離からその腕に放つ。しかし、その攻撃を華麗なステップで避けるドリームイーター。
『……捉えました。』
 その隙を付き、宵一が強烈な一撃を叩き込む。
 だが、ドリームイーターはその攻撃に怯むことなく一気に竿を振り上げる。
「ノ……ノッタ! コレハ……デカイ!」
 釣竿が先程まで出ていた三日月のように弧を描く。
「ま、負けんぞ!」
 晟は両足で踏ん張り、必死に絶え、逆らう。
「ア、アオイ……ギョタイ……」
「魚じゃない!」
 耐えながら思わず突っ込む晟。しかし、その叫びもむなしく、蒼いドラゴニアンは宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられた。
 ドゴォ!!
「ぐはっ!」
 その衝撃で、駐車場のアスファルトが砕ける。
「神崎くん!」
「だ、大丈夫だ! それより、攻撃優先だ!」
 ガロンドの声に、巻きついたままのモザイクを気にしながら応える晟。
 そう、今回の依頼は何よりも時間勝負である。ケルベロス達は、そのまま前を向く。
「アスナロ、お願い!」
 狗雲のボクスドラゴン『アスナロ』が素早く晟の傷を癒し、モザイクを除去していく。
「オラァ! です!」
 それを見た茜が、狙い済ませた蹴りを右足に叩き込んだ。

●魂の咆哮
 ケルベロス達はその巨大なモザイクの釣り人に一斉に攻撃を放っていった。その攻撃は鋭く、どんどんとダメージを蓄積させる事に成功していた。
 だが敵の攻撃も正確であり、的確に状態異常を引き起こす。
 ビュッ!
 ドリームイーターが出現させた勺を振り、ディークスに向かってモザイクを撃つと、そのモザイクはディークスの身体に纏わりつき、顔を覆った。
「ぐ……!」
 その目の前のモザイクに、頭の中が錯乱する。そのまま竿を構えるドリームイーター。今度は白髪のウェアライダーを吊り上げるつもりだ。
 だが、一握りの気力が彼を支える。
「……魚如きと一緒にするな!」
 ディークスは、気合の声を上げ、そのモザイクを吹き飛ばし、さあ来いと惨殺ナイフの『魔鉱彩刃』を構えた。
 ケルベロス達の備えは万全とも言えた。敵の攻撃が単体にしか及ばない事を調べ上げ、狗雲とアスナロを中心に回復を素早く行い。それ以外のものは、常に全力で攻撃を与えていった。
「貴方が釣り上げるには、ケルベロスという魚は少し大きすぎますね……。あ、でも先程……。いえ、何かの間違いでしょう」
 ウィッカはそう言いながら、が半透明の御業を使って、ドリームイーターの動きを更に制限させる。ウィッカの御業は、その巨大な腕を縛り付けていく。
 そこへ、薄っすらと浮かぶ白いバトルオーラ『狐影』から、オーラの弾丸を射出する宵一。彼は無言で集中し、更にもう一撃を放った。
「気合! 入れて! ぶちのめします!」
 茜はガチガチとバトルガントレットの両拳をあわせて叩くと、軽々と跳躍し、連打でドリームイーターを殴り飛ばした。
『シトリーよ。60の軍団を統率する、偉大なる地獄の公爵よ。汝、我が望みの通り、彼の者を覆う薄衣を剥ぎ取れ。』
 茜が着地したと同時に、左手の魔導書を開いた霞の詠唱が響き渡る。足元に赤い五芒星の魔方陣が浮かび上がり、その身を包む。霞は右手で持ったナイフでドリームイーターに照準を合わせ、振り下ろす。すると、その瞬間に鋭い魔力がドリームイーターへと降り注いでいった。
「ガアアアあアあアァァ……」
 その攻撃を受けたモザイクが、ボトッ、ボトッと落ちていく。
 様子を伺うケルベロス達。
 暫くその動きを見守っていると、ついには、堰を切ったかのように全身が崩れ落ち、一つのモザイクの塊となっていった。
「倒した……かな?」
 ガロンドが恐る恐るそのモザイクの塊に向かう。見ると、既に事切れているように見えた。
 しかし、そのモザイクの塊の中で光る両目が、その金色のドラゴニアンを見据えていた。
「駄目だ! まだコイツは生きている!」
 そうガロンドが言った時、野太い弦楽器の低い音のような咆哮と共に、ドリームイーターはモザイクをもう一度人の形へと成していく。
「なんて……執念なんだ」
「人の思いが重なって出来たデウスエクスだ。……そう思えば、頷けるかもしれん」
 ディークスの呟きに答える晟。
「みんな! もう、時間が……!」
 狗雲が切迫した声を上げた時、無常にも宵一の腕時計から、残り1分を知らせるタイマーが鳴った。

●七夕の夢
「さーて、あっつく行きますよ!」
 茜が腕輪の封印を解除し、赤いオーラを身に纏っていく。
『紅王クレナイノアカ―――赤の手により我が血に染まれ』
 茜は大きくジャンプし、右手の爪でドリームイーターの腹を引き裂く。
「肉! じゃなかった、魚よこせ! です!」
 さらに茜は牙の形をした左手のオーラを打ち込み、その勢いのままドリームイーターの腹部を突き抜けた。
「この敵は、皆さんの情熱を具現化しているのですね。これ程までに強いのですから、きっと、その願いは叶うんでしょう。
 でも……おまえは死ぬといい、ドリームイーター」
 霞が再び五芒星を出現させる
「霞さん。あわせます」
 ウィッカも同じく五芒星を導き出した。
『黒の禁呪を宿せし刃。呪いを刻まれし者の運命はただ滅びのみ』
 霞が魔力を浴びせると共に、ウィッカがドリームイーターへ黒の禁呪の刃を打ち込んだ。
「ウオオオオォッォォぉぉぉ!」
 ドリームイーターが咆哮を上げる。
『唱え、遊べ、呼び声よ…。汝らは個に非ず。乞い願い、認めて挑むは声無き調べ。繋がり絶ちて力得た、穢れし霊に問い賜う…汝が名は何か…』
 ディークスが青い紋様が刻まれた爪を滑らかに動かし、詠唱する。すると、その声に応えるかのようにしわがれた声が聞こえてきた。
『讐魄溘焉の勢(レギオン)……我ラ、多勢ナルガ故ニ……』
 黒い刃が雨のようにドリームイーターに突き刺さる。
「アスナロいこう! メディックだからってナメるな!!」
 狗雲のウイルス攻撃とアスナロのブレスが敵を直撃し、更に宵一がその釣竿を持つ巨大な両腕を跳ね上げた。
「神崎さん! お願いします!」
 それを聞いた晟がコクリと頷き、ラグナルを呼び寄せる。ラグナルが晟に力を施すと、4基の巨大なミサイルランチャーを背負った蒼い巨竜が現れた。
『逃げる…?いったい何処に逃げられると思っているのだ?』
 ドドドドォン!
 派手な爆発音を上げ、ドリームイーターは、再びその形を崩し始めた。
「夢を求めし者……といえど。災禍をもたらす希望は断つ」
 ガロンドの声に反応した、アドウィクスがドリームイーターに噛み付く。
「これもまた黄金竜の仕事……」
 ガロンドは更に言葉を続ける。
「人の夢を集めし傀儡よ……物語は終わりだ」
 ガロンドがそう言った時、モザイクがバラバラに崩壊していく。
『はい。』
 ガロンドがそう言うと、突然ドリームイーターの頭上に巨大な吊り天井が現れ、一気に地面に叩き伏せた。
 ドゴォン!!
 派手な破壊音を上げながら、その天井は自らを砕け散らせ、ドリームイーター共々消滅させていったのだった。

「へー。知らない単語が一杯だ。……えーっと」
 宵一はスマホを取り出し、検索を始めた。
 ケルベロス達は壊れた箇所をヒールで修復し、少し残った短冊を眺めていた。
「他はどうなったのだろうな?」
「上手く行けば、これ以上事件が発生する事は、無いということなのですが……」
「まだ分からないですね。これで、事件も解決すれば良いのですが」
 ディークスと霞の疑問に、ウィッカが答える。
「釣竿使わないとダメですかね~」
 すると、ぶんぶんと竿を振る素振りを見せる茜。
「ははは……。神崎くんに教わったらどうかな?」
 ガロンドがそう言い、晟のほうを向く。
「釣りをすると言うのなら、喜んで教えるが……」
「でも、やっぱり素潜りでぶん殴った方が早そうです!」
 その答えを予測していたのか、納得の表情で頷く晟。そこへ、最後まで被害を直していた狗雲が、アスナロと共に帰ってきた。
「みんな、忘れちゃいけない!」
 不思議な顔を向ける一行。
「みんなの願い事。書こう!」
 その言葉にはっとする一行。
「そうだ、な」
「賛成です!」
 晟と霞が予備の短冊がないか、店舗に入っていく。
「妙案だ」
「……見ないでいただけるのなら」
 ディークスとウィッカは何を書こうかと、思考を巡らせる。
「そうすることに、しようかねぇ!」
 と、ガロンドが頷いた時、
「俺、お魚が食べたくなりました!」
「魚!」
 宵一と茜がその忠実な想いを披露する。
 こうして、七夕の夜の事件が終わった。
 三日月のか細い光が一行と笹を照らす。
 人々の願いが尽きる事は無い。それは、ケルベロスも同じ。
 七夕の願い事をのせた風が、夜空に舞い上がった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年7月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 4
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