
7月7日、七夕の夜。東京上空……。
大きな鍵を手にした『赤い頭巾のドリームイーター』が、ひとり、空を漂っていた。
「綺麗……短冊に込めた人々の願い事が、まるで宝石のよう。
あの輝きが欲しくて、あなたは『モザイクの卵』を降らせたのね。
でも、鎌倉の戦いでこしらえてもらった卵も、あと少ししか残っていないのね。
…………。
いいわ、あなたの夢、私が手伝いましょう。
だって、あなたの夢は、きっと私と同じだから。
だから、残った卵を私に頂戴。
あなたをこの星に呼んであげるわ……ジュエルジグラット」
●星に願いを音楽に願いを
直径1mモザイクの卵は七夕の短冊の中から、願いを集める。
「ピアノが上手くなりますように」
そんな短冊の願いを次々と吸収していく。
モザイクの卵は孵化していく。場所は幼稚園の七夕飾りの傍で。
……そこからキーボードの形をしたドリームイーターが生まれたのだった。
●ヘリオライダーより
デュアル・サーペント(ウェアライダーのヘリオライダー・en0190)は、皆に話し始める。
「みんな、聞いて欲しいんだ。ドリームイーターが七夕を利用して大作戦を行う事が判明したんだよ。この作戦は、ローデッド・クレメインス(灰は灰に・e27083)他、多数のケルベロスを予測して調査してくれた事で事前に知る事が出来たんだよ。どうやら、ドリームイーターは、鎌倉奪還戦に失敗した『モザイク落とし』作戦を再び起こそうとしているらしいんだ」
そして、とデュアルは続けた。
「モザイク落としが行われれば、日本に巨大なモザイクの塊が落下するから、大量のドリームイーターが出現して、日本中が大混乱になる事が予測されている。敵は、残存するモザイクの卵を使用して、日本中の七夕の願いを使用して、日本中の七夕の願いをドリームイーター化し、そのドリームイーターを生贄に捧げる事で、モザイク落としのエネルギー源にしようとしているんだよ」
特徴としては、デュアルは続ける。
「七夕の願いから生まれたドリームイーターは出現してから7分間で自動的に消滅して、モザイク落としの儀式のエネルギーに変換されてしまう。みんなにはドリームイーターが現れる地点に向かって、7分以内にドリームイーターの撃破を頼みたいんだ」
ドリームイーターについてデュアルは説明し始める。
「今回の七夕の願いから生まれたドリームイーターは、『ピアノが上手くなりますように』という願いを吸収したドリームイーターで、体長3メートル程のキーボードの形をしている。場所は幼稚園の校庭の真ん中にある七夕飾りの場所。『音符』、『メロディ』、『鎮魂歌』の三つになるよ」
最後に大事な事をデュアルは真剣な顔でケルベロスに伝えた。
「ドリームイーターを7分以内に撃破出来なかった場合は、消滅してしまって倒す事が出来なくなる。そして、今回現れたドリームイーターの過半数を撃破出来なければ、モザイク落としが実現してしまうんだ。でも、ほぼ全てのドリームイーターの撃破に成功すれば、モザイクの卵による事件は今後発生しなくなるみたいだよ」
「七夕の大切な夢を奪ってモザイク落としをしようとするなんて許せない! みんなにの活躍に全部かかっているんだ、頑張ってね、応援しているから!」
参加者 | |
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![]() シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
![]() アルヴァ・リンドヴルム(ネフシュタン・e00648) |
![]() ロストーク・ヴィスナー(庇翼・e02023) |
![]() 小熊・正(流離ノ銃鍛冶人・e03388) |
![]() 滝川・左文字(食材・e07099) |
![]() アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587) |
![]() ミュルミューレ・ミール(ヴァルキュリアのミュージックファイター・e24517) |
![]() レオナルド・ドール(沈む獅子・e26815) |
●七夕モザイク落とし作戦~星に願いを音楽に願いを
幼稚園の校庭にある少し大きめの七夕飾り。
「固定できるLEDライトとカンテラを用意してみたのです」
「俺は紙灯籠だ」
ミュルミューレ・ミール(ヴァルキュリアのミュージックファイター・e24517)とアルヴァ・リンドヴルム(ネフシュタン・e00648)は、用意して来たLEDライトとカンテラと紙灯籠を使って七夕飾りをライトアップする。三つの光源で照らされる七夕飾りは夜空の中、綺麗に揺れらめいていた。
「ちょっとロマンチックでいいね……!」
「これが七夕……! とーっても綺麗なの。また一つ、この星の事を知れました……嬉しいのです」
「ミルキーウェイに願いを託すか……東洋の風習は風流で良いな」
アトリ・カシュタール(空忘れの旅鳥・e11587)とミュルミューレ、そしてアルヴァは七夕飾りの幻想的な姿が美しいと思う。
願い事を叶えるだけでは無い、そんな美しさがこの七夕飾りにもこの夜空にもある。
「校門は閉めてきたぞ。これで一般人が入って来る事は無い」
滝川・左文字(食材・e07099)が、そう言って戻って来た。
そんな時、灯りに誘われるように大きなキーボードが現れる。
「……! 来た……!」
ロストーク・ヴィスナー(庇翼・e02023)の言葉を合図にケルベロス達はドリームイーターに対して予定通りに取り囲むように陣形を取る。
「まずは護りを固めていくよ!」
「イェイ! ロックなゲリラライブ、スタートデース!!」
アトリは達へと雷の壁へと展開、シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)とはオウガメタルを背に、そして小熊・正(流離ノ銃鍛冶人・e03388)がミュルミューレ達にオウガ粒子を放っていく。左文字は自らに幻影を纏わせた。
「謡え、詠え、慈悲なき凍れる冬のうた」
白手袋を着用したロストークは、氷の槍斧の形に変わると刻まれたルーンが開放されて氷霧をドリームイーターへと放つ。その間に彼のボクスドラゴンは正へと耐性を与えていった。
「行きます……!」
小さな身体のミュルミューレはナイフの刀身に映した魔法を続けて放ち、ドリームイーターへと当てる。
「……一分経過だ」
腕時計で時間を確認しながらレオナルド・ドール(沈む獅子・e26815)は、神速の突きを放った。
ドリームイーターは自身のキーボードを使って演奏を始める。綺麗なメロディは正の動きを制限しつつあった。
「こちらは炎のメロディを奏でてやろう」
アルヴァの炎が渦巻く蹴りが叩き込まれ、ドリームイーターは炎に包まれ、アトリはアルヴァ達に雷の壁を展開すると、ロストークのナイフがドリームイーターを切り裂いていく。続いてボクスドラゴンが炎のブレスを吐きだして燃え上がらせた。
「ミュルの光の翼は凄いのですよ!」
ミュルミューレの光の翼は光の粒子となってドリームイーターへと襲いかかる。
「おお、綺麗デス! ボクも負けてはいられないデース!」
シィカもチェーンソーでドリームイーターの傷を斬り広げていった。
「ヘッ! 捕えたぜ……こっちだってただ逃げ回ってたわけじゃないんだぜ? 調子に乗って暴れすぎたな!」
左文字は織上げた霞網でドリームイーターを捕らえ、刃の様になったそれを使って切り刻んでいく。
「よし、あの傷を重点的に狙っていくぞ!」
正はガトリングガンを構え、炎の弾丸が降り注ぎ、ドリームイーターを炎で渦巻かせた。
哀しきメロディが響き渡る。それは魂を偲ぶ音色。ふわりと眠気すら感じる音色。それは左文字を包んでいく。
「……そろそろ2分経過!」
「了解だ」
腕時計で時間を確認しながらレオナルドは皆に時間を伝えつつ、自らは炎を纏った蹴りを叩き込む。そこにアルヴァが漆黒の弾丸を撃ち込んだ。
「さあ、最後の護りだよ!」
アトリの放つ雷の壁はシィカ達を包んでいく。
「キラキラ蹴りなのデース!」
シィカは煌めきを放つ重い蹴りをドリームイーターへ叩き込む。続けてミュルミューレは惨殺ナイフを両方の手に持ち構えると、舞うような攻撃で切り刻む。小さな少女と綺麗な翼も相まって綺麗でありながら残酷な攻撃だ。
ロストークは跳び上がると、煌めく斧でドリームイーターを叩きつける。その煌めきが正の放つオウガ粒子を更に煌めかせて美しい。その美しきオウガ粒子は左文字達を包み込み、その感覚を鋭くしていく。オウガ粒子の援護を受けた左文字は氷の螺旋を放ち凍らせていった。
キーボードに♪の形が浮かぶと、そのまま自身を包み込む。それはドリームイーターへと力を与えていっているように見えた。
「……回復されたか」
「そして、こちらは3分経過。残り4分だ、どんどん攻めていくぞ」
アルヴァがドリームイーターへ凍てつく光線を放ち、レオナルドが凍った所を狙って突く。
「みんな、頑張ろう!」
励ましの声をかけながらアトリは正と左文字に癒しの雨を降らせて回復させる。
「夢喰いさま、絶対に倒します」
「これからがライブの見どころデース!」
ミュルミューレの翼が輝くと光がドリームイーターを襲う。続いてシィカは対デウスエクスのウイルスを撃ち込んだ。
「僕達も頑張ろう」
ロストークはボクスドラゴンにそう声をかけると、ナイフを使ってドリームイーターを切り刻む。続けて炎の息が襲った。
またキーボードから曲が演奏されて来る。哀しく寂しい音色が響く。その響きがシィカを包み込もうとするのを左文字が庇った。
「大丈夫か?」
「ありがとうなのデス」
庇ってくれた左文字にシィカはお礼を述べる。その隙をついて正は纏っている牡丹と名付けられたオウガメタルを「鋼の鬼」と化してドリームイーターをその拳で殴りつける。そこからオウガ粒子が綺麗に散った。
「……4分経過だ」
レオナルドの言葉に皆が頷く。総攻撃までもうすぐだ。出来るだけダメージを与えておきたい。
レオナルドの炎を纏った蹴りがドリームイーターに叩きつけ、そこを狙ってアルヴァは漆黒の弾丸を放つ。
「左文字さん、回復するよ!」
アトリは先程、怪我を負った左文字に施術を行って回復させる。ロストークはルーンを輝かせながらドリームイーターを飛びあがって振り下ろし、ボクスドラゴンの炎のブレスが続いた。
ミュルミューレは再び両手にナイフを持つと舞い上がる。ドリームイーターを踊る様に切り刻んだ。
「助けて貰った分、しっかり頑張るのデス!」
シィカは気合いを入れ直して、チェーンソー剣を構え、ドリームイーターの傷を斬り広げていく。その傷を狙って左文字は鎧装忍術・糸織千刃を使って切り刻んでいった。そこに正の対敵性体用零式削岩百糎砲 羅戦でアームドフォートを超弩級砲に変形させて砲弾を撃ち込む。
すると、ドリームイーターが美しいメロディを奏でる。綺麗で美しい旋律。それはミュルミューレを包み、動きを鈍くさせた。
「……5分経過! 総攻撃に入る!」
レオナルドの掛け声に、ケルベロス達に緊張が走る。残された時間は2分。相手のドリームイーターは回復を使えるから、それを加味しつつ、しかし、出来る限り回復はさせないように。
「モザイク卵の事件を阻止する為にも全力でいかせて貰う」
レオナルドは炎を纏った蹴り叩き込み、ドリームイーターを燃え上がらせる。
「ここからが最終勝負だな」
アルヴァは凍結の光線をドリームイーターへ向けて放つ。
「ミュルミューレさん、回復するよ!」
アトリはミュルミューレを癒しの雨で傷を癒す。
「ありがとうございます、カシュタール様。ミュル、頑張って攻撃します!」
ミュルミューレとロストークはそう言うと光の翼をはためかせる。綺麗な翼からキラキラと光が溢れるとドリームイーターへと放たれた。
「相手に回復されて、思ったより削れてないけど……それでも一気に叩けばいけるね」
ロストークはルーンを発動させて煌めく光の中斬りきつけた。ボクスドラゴンもそれに続く。
「音楽とは! もっと、キラキラロックにキメるもんなのデース!」
シィカはその言葉通り、キラキラと煌めく重たい蹴りをドリームイーターへと放った。
「動きを封じる」
左文字は凍てつく螺旋を放つ。そして続いて正はオウガメタル『牡丹』を鋼の鬼とし、強力な一撃を放った。レオナルドはグラビティ・チェインを破壊力に変えるとドリームイーターへと叩きつける。
「幼き子供のかけがえのない夢、護らせて貰う」
アルヴァは漆黒の弾丸をドリームイーターへと放った。
「私も戦うよ! みんな! 力を貸して……!」
アトリは自らの魔力に依り雷を帯びた鳥を召喚し、ドリームイーターへと解き放つ。
「舞い踊りますよ」
「夢は願う人のものだよ。他人が触れるものじゃない」
ミュルミューレのナイフが踊る様にドリームイーターを切り刻んでいく。ロストークはそう言うとルーンを煌めかせて斬りつけていった。
左文字の放つ鎧装忍術・糸織千刃がドリームイーターを捕らえ切り刻むと同時に……
「生贄なんぞになるのではない!夢見る子供たちの為、その音色を宇宙の果て……織姫様んとこまで、持ってけッ!!」
正のアームドフォートは再び超弩級砲に変形し、ドリル砲弾がキーボードのドリームイーターを貫き……まるで綺麗な夜空の星の様に、きらきら、きらきらと煌めいて消滅していった。
●七夕の夜に
「……終わったか?」
「ああ、ぎりぎりって感じだったけどな」
アルヴァの言葉に、レオナルドは改めて腕時計を見てからそう言って苦笑した。
「七夕飾りは無事だろうか?」
幼稚園の子供達の七夕飾りを心配して左文字はまだ照らされている場所を見上げた。七夕飾りの方は無事……という訳にはいかなかったようだ。飾りなどがいくつかとれて、短冊も地面に落ちている物がある。
「俺も直そう」
「手伝う」
アルヴァ、レオナルドも一緒に、竹などは直して、飾り付けや短冊等、大丈夫そうなものは、もう一度手に取って飾り直した。
「子供達が心を込めて短冊に書いた願いだ。守らねばな」
アルヴァの言葉に二人も頷く。
「ライトも無事みたいデス。もう一回、ライトアップしてみるのデス!」
光源になっていたものも倒れていたが、シィカはそれを直して再び修復された七夕飾りを照らす。
……そこには、夜空と相まって幻想的な光景があった。
「うむ。直す必要は出てしまった事は申し訳ないが……これで子供達の夢が叶うといいのう」
正はその姿を見ながらそう呟く。少なくともここに現れたドリームイーターは倒す事が出来た。願いを願った子供達の夢は、悪用される事もなくなった。
(「私も願えるなら……大切な人と……一緒にいられますように」)
アトリは幻想的な七夕飾りを見ながら、そっと願った。
「これならきっと、皆さまのお願いも天の川まで届きますね!」
「ああ、そうだね。きっと届くね」
ミュルミューレの微笑みにロストークは微笑み返す。
「願いが叶うといいな」
レオナルドも優しい顔で微笑んだ。
子供達の素敵な夢が叶う、そんな事を思いながら綺麗な星空を見上げる。
夜空には天の川にベガとアルタイルが見える。絶好の夜空だ。
幸福なこの夜に、子供達の夢も幸せであるように、と。
作者:白鳥美鳥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年7月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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