
●某教会
「ぴっちりスーツは正義ッ! つまりジャスティス! あのボディラインがたまらねぇ! 俺のハートをガッチリと鷲掴みだからなッ! ある意味、これは恋……。いや、真理だなッ!」
羽毛の生えた異形の姿のビルシャナが、10名程度の信者を前に、自分の教義を力説した。
ビルシャナ大菩薩の影響なのか、まわりにいた信者達は、ビルシャナの異形をまったく気にしていない。
それどころか、信者達はぴっちりスーツ姿で、キリリッとした表情を浮かべていた。
●都内某所
「ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです。悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事が今回の目的です。このビルシャナ化した人間が、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やそうとしている所に乗り込む事になります。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまいます。ここで、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ビルシャナは破壊の光を放ったり、孔雀の形の炎を放ったりして攻撃してくる以外にも、鐘の音を鳴り響かせ、敵のトラウマを具現化させたりするようです。信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。ただし、信者達はとてもマジメで、性格がキツめ。物凄く頭でっかちで、偏った考え方をしているので、説得は難しいかも知れません。なお、信者達の生死は成否判定には影響しません」
そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「また、信者達はビルシャナの影響を受けているため、理屈だけでは説得することは出来ないでしょう。重要なのは、インパクトになるので、そのための演出を考えてみるのが良いかもしれない。また、ビルシャナとなってしまった人間は救うことは出来ませんが、これ以上被害が大きくならないように、撃破してください。それでは、よろしくお願いします」
そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
![]() ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396) |
![]() デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203) |
![]() 昴・沙由華(ドキドキレプリカント天使・e01970) |
![]() 阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878) |
![]() 狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934) |
![]() ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205) |
![]() 櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597) |
![]() シャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856) |
●教会前
「まさか、こんな教えを広めるビルシャナが本当にいるとは……」
ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)はフィルムスーツ姿で、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前にやってきた。
ビルシャナはぴっちりスーツが正義であると訴えており、信者達にもそう言った恰好をさせているようである。
「ぴっちりスーツですか。体にしっかりフィットするならば動きやすそうではありますが、体が蒸れそうですね。……と言うより、ビルシャナの観点は外見の利点しか考えてないようですが……」
阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)がぴっちりボディスーツ姿で、何処か遠くを見つめた。
おそらく、個人的な下心から、女性信者達にぴっちりスーツを着せていたのだろう。
「……資料だと、信者達はとてもマジメって話だが、マジメな奴がこんなバカなことするか? 『マジメに変態活動をしています』って言うつもりか? ……馬鹿らしい」
狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)が、呆れた様子で溜息をもらす。
もしかすると、ビルシャナの洗脳を受ける前は、マジメだった……と言う事かも知れない。
「正直、俺はぴっちりスーツ肯定派でも否定派でもなく、知らん好きにしろよ派なんだが……。ただ、シャルフィンが1人サラッと真顔で行こうとしてるのに気付いてしまってな。お前、説得とか出来るのか?」
櫟・千梨(踊る狛鼠・e23597)が、シャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856)に視線を送る。
「ううむ。そろそろ依頼に参加してみようと入ったはいいものの……。説得というのは、俺の一番苦手な分野だな。……千梨、助けてくれ。口から説得の言葉よりも弱音が出そうだ」
シャルフィンがぴっちりスーツ姿で、千梨に協力を求めた。
千梨もそのつもりでいたため、『やれやれ』と言わんばかりに溜息をもらすと、シャルフィンと一緒に教会の中に入っていく。
教会の中にはビルシャナ達がおり、女性信者達がぴっちりスーツに身を包み、眼鏡をキラーンと輝かせていた。
「……んっ? ひょっとして、入信希望者か? だったら、これを着ろ。男も、まあ……、とりあえず着ておけ」
ビルシャナがケルベロス達を見つめて、ぴっちりスーツを渡していく。
それは明らかにワンサイズ小さいもので、その事を理解した上で配っているようだった。
「だったら、ひとつ提案が……。これならば、ボディラインだけでなく、ヘッドラインまで見せつける。これこそ真のぴっちりスーツ。周りの視界が見えにくいからこその背徳感、完全に体の全てを包み込んだ拘束感。顔が無個性になるからこその変貌感。これこそ、完全なるぴっちりの為せる業よ♪」
そう言ってデジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)が全身をオウガメダルで覆い、ボディラインを強調するようにして、ビルシャナの前でポーズを決める。
「い、いや、そこまで行くと……ちょっと」
ビルシャナがドン引きした様子で、苦笑いを浮かべた。
どうやら、そこまでは求めていないらしく、『む、無理!』と言わんばかりに顔を背けている。
「……と言うか、ぴっちりスーツは洗い難くて臭くなるんで2次元だけにして下さい」
そんな中、ジュリアス・カールスバーグ(山葵の心の牧羊剣士・e15205)が、ぴっちりスーツの使用前と使用後を並べ、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「ふっ……、甘いなっ! その臭さがイイんじゃないかァ!」
だが、ビルシャナは、臭いフェチ。
『むしろ、それこそ望む形!』と言わんばかりに、だらしない笑みを浮かべていた。
それは常識のある一般人ならば、ドン引きするほどのレベル。
「……そこまでです! 世界に趣味や嗜好は数多あります……。しかし、それを悪用し、人を惑わすような行為には、もはや愛はありません!」
次の瞬間、昴・沙由華(ドキドキレプリカント天使・e01970)が変身ヒロイン『エレクトラ』として、ビルシャナ立の前に現れるのであった。
●教会内
「もはや愛はない……だとぉ!? ふざけるなっ! これも……ぴっちりスーツを愛するが故っ! 愛が為せる業なのだ!」
それでも、ビルシャナは自らの考えを改める事なく、ケルベロス達に対して言い放つ。
まわりにいた女性信者達も『私達が好きでやっているんだから、関わらないで!』と叫び、ケルベロス達をジロリと睨みつけた。
「まあ、ピッチリ系を完全否定はせんよ。戦闘用や舞台衣装と用途は様々……、競泳水着とかもそうかな。だが、アレらは訓練した者が着るから機能が発揮されるし、見た目も凛とする訳だ。己が身を省みるんだ。正直、一般人が着ても面白くなるだけだと思わんか? ホラ、俺とかが着たってダメそうだろ?」
千梨がある程度の理解を示しながら、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「確かに……、そうかも知れん。だが、例えそうであっても、ぴっちりスーツは正義! 正義なのだ! それだけは揺るぎない事実っ!」
ビルシャナがくわっと表情を険しくさせ、キッパリと断言をした。
「そんなにボディラインを堪能したいなら、スーツよりビキニ水着とかの方が良いんじゃねぇか? それに、スーツだと中に詰め物とかして誤魔化せるからな。ボディライン最高とか言っても、実は脱いだら残念な人かもしれねぇぜ。その点ビキニなら、誤魔化しができねぇからな」
夜魅が品定めをするようにしながら、女性信者達に視線を送る。
「おいおい、俺の信者に限って、そんな奴はいない……よな?」
途端にビルシャナが不安げな表情を浮かべ、気まずい様子で汗を流す。
「も、もちろんです! わ、私達に限って……そんな事……」
幼児体型の女性信者が即答したものの、その目は泳いでおり、まわりにいた女性信者達の反応も同じようなものだった。
「やっぱり、全身ぴっちりスーツの方がいいんじゃない?」
デジルが思わせぶりな態度で、身体をクネらせる。
「いや、お前は勘弁……と言いたいところだが、よく見ると……悪くないや。いやいやいや、顔も分からないし……。でも、想像する楽しみが……って、興味なんてねーからな!」
ビルシャナが新たな世界の扉を開く寸前で、何とか踏み止まって考えを改めた。
それを目の当たりにした女性信者達が『全身スーツでもいいの!?』と驚き、動揺しているようだった。
「それなら、スーツはスーツでも、ビシッとした物をお勧めします。デキる人間である事をアピールできますし、着こなしが自信に繋がってきますからね」
ジュリアスが落ち着いた口調で、女性信者達に語り掛けていく。
「えっ? でも、このスーツもビシッとしてますよ?」
眼鏡を掛けた女性信者が、ぴっちりスーツでポーズを決める。
どうやら、彼女達にはぴっちりとビシッの違いが分からないらしく、同じようなものだと思っているようだ。
「……ですが、それだけが全てでは、味気ないと思いませんか? わざわざ自ら選択肢を縛る必要も理由も無いと思いますが……。例えば、フリルのついた可愛い魔法少女衣装、ビキニ鎧や姫騎士の鎧、あえて布地が少なく肉体美を強調する衣装……。選択の幅があるからこそ、ぴっちりスーツと言う個性が光るのです!」
沙由華がミニスカートや地肌の太ももを意識したアクションで、まわりにいた女性信者達に訴えかける。
「そ、そんな事はないわっ! だって、ビルシャナ様は……ぴっちりスーツが大好きだもの! 三度の飯より、ぴっちりスーツが大好きなビルシャナ様が太鼓判を押すのだから、間違いないわ」
少し病み気味の女性信者が、瞳孔の開いた目で叫ぶ。
既に身も心もビルシャナにどっぷりハマッているらしく、まわりが見えていないようである。
「ああ、もちろん! もちろんだとも!」
ビルシャナも激しく目を泳がせながら、無駄に激しくコクコクと頷いた。
「ふむ、生まれて初めてぴっちりスーツとやらを着てみたが……。シャツの上から着るものではないんだな。どうも、もごもごして着心地が悪いが……」
シャルフィンがぴっちりスーツ姿で、妙にソワソワとする。
「いや、ぴっちりスーツは正義っ! その考えに揺るぎはないッ! だから、これでイイのだ、間違いない!」
ビルシャナが無駄にキリリとした表情を浮かべ、躊躇う事なく言い放つ。
これには、まわりにいた女性信者達もウットリ。
すっかり心を奪われてしまったようである。
「……とは言え、先ほどから幾人かの視線を感じる。教えに染まった者達だろうか? それに動悸の乱れを感じる。視線も定まらないようだが、これはこちらを凝視しているのか……。この状況で、理解出来ないな」
ネルが警戒した様子で、ゆっくりと辺りを見回した。
ここに入ってからずっと妙な視線を感じていたらしく、身の危険を感じているようである。
「……とは言え、身体全体が締め付けられる感覚で、ちょっと苦しいですね……。長時間の着用は体にも悪そうで……あっ!」
その途端、晴明のぴっちりボディスーツ姿がビリッと破れ、ハッとした表情を浮かべた。
「もう……限界だァァァァァァァァァァァァ!」
それと同時に物陰でハアハアしていた男性信者達が姿を現し、次々と晴明に飛び掛かっていく。
「……ひっ! む、胸を……今度は後ろから!? そんな突然……ひいっ! 揉まないで! やぁっ、そこはだめ……ひぎぃっ!も、やめ……アッー!」
そして、晴明は男性信者達に身体を撫で回され、グッタリと意識を失った。
●ビルシャナ
「……たくっ! あれほど隠れていろと言ったのに……」
ビルシャナが呆れた様子で、頭を抱えた。
「す、すみません、つい……」
それに気づいた男性信者達が、苦笑いを浮かべる。
しかし、晴明はグッタリ。
あられもない姿のまま倒れていた。
「ここまでやられた以上は……仕方がありませんね。多少、手荒な真似になりますが……」
沙由華が深い溜息をもらして、信者達に当て身を放っていく。
「おいおい、勘違いをするんじゃねぇぞ! 誰だって、ついウッカリやっちまう事くらいあるだろうがァ!」
ビルシャナがイラついた様子で、破壊の光を放ってきた。
「ついウッカリで、こんな事をする者達を放っておくわけにはいかないな……」
それに気づいたネルが破壊の光を避け、ビルシャナにブレイジングバーストを撃ち込んだ。
「うぐぐ……、よくも、よくも、よくもぉ! 許さん! 許さんぞおおおお! ええい、構わん! やっちまえ!」
ビルシャナが両目を血走らせ、まわりにいた信者達を嗾けた。
その指示に従って、まわりにいた信者達が、ケダモノの如く勢いで、次々と飛び掛かっていく。
「それにしても、この恰好は……動きづらいな」
シャルフィンが間合いを取りつつ、ビルシャナにホーミングアローを使う。
「それがイインだろうがっ! 何故、それが分からない。いや、分かろうとしないんだァ!」
ビルシャナが殺気立った様子で、再び破壊の光を放つ。
「自分はモコモコの癖に、ピッチリ好きとか訳が判らんな」
千梨がシャルフィンと連携を取りつつ、ビルシャナに攻撃を仕掛けていく。
「だから言っただろ! お前達は理解する気がない、と……! ぴっちりスーツがいかに素晴らしく、機能美に溢れていたとしても、それを理解しようとしなければ、分かる訳がない!」
ビルシャナが吠えるようにして叫ぶ。
「分かっていないのは、そっちです! こんなモノを着たら、体のラインが出るから、迂闊にスイーツも食べれないじゃないですか」
ジュリアスが腹のぜい肉を掴むようにワキワキと両手を動かし、ビルシャナに対して反論をする。
「だったら、コルセットでも巻きやがれ!」
ビルシャナがまったく悪びれた様子もなく、再び破壊の光を放ってきた。
「やっぱり、拳で言わねえと分からねぇようだなァ!」
その間に夜魅がビルシャナの懐に潜り込み、容赦なく螺旋掌を炸裂させる。
「導きましょう、貴方の在るべき場所へ…!」
続いて、晴明が詠唱と共に龍の頭部を持った巨大な緑色の亀『玄武』の幻影を出現させた。
『玄武』の幻影は凄まじい咆哮を上げると共に黒い雷雲を上空に発生させ、天を裂き、地を揺るがしそうな程の巨大な落雷をビルシャナに落とす。
「グギャアアアアアアアアアアアアアア!」
その一撃を食らったビルシャナが悲鳴を響かせ、消し炭と化して崩れ落ちていく。
「お、俺達は一体……」
それと同時に、信者達が我に返り、驚いた様子で目をパチクリさせた。
未だに何が起こったのか分からないらしく、頭の上にはハテナマークが浮かんでいる。
「ビルシャナもいなくなったし、良かったら夜の施設にいらっしゃい。そこでたっぷり楽しみましょ♪ 素材もゴムなり布なり用意するわ」
そして、デジルは目を覚ました信者達に全身ぴっちりスーツを配り、自分が運営している夜の施設に誘うのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年7月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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