そこはごく普通の住宅街を通る、何の変哲も無い路地であった。強いて言うなら、先日に起こったケルベロスとデウスエクスの戦いによって損傷した箇所が、ヒールによって修復され些かちぐはぐな外見があるのが変わっている程度の異質さしかない。
深夜にその路地に現れた者達は、そんな微笑ましい異質さとは違い、文字通りに異質な者達だった。
「この場所で、戦いの縁が結ばれたのね。ケルベロスに殺される瞬間の彼女は、何を思っていたのかしら?」
シスターのような外見のそれは、『因縁を喰らうネクロム』。デウスエクス、死神である。
「何だか素敵な予感がします。あなた達、彼女を回収してください」
ネクロムに命じられた怪魚型死神は、青白く発光し泳ぎ回る。
「とても強い因縁。それも、ひどく一方的な強い執着……。とても甘美な感情ですわ……」
怪魚型死神達の泳ぐ軌跡が魔法陣のように浮かび上がる様を最後まで見届けることなく、ネクロムはその場を去っていた。
魔法陣が完成すると、その中心にはエインヘリアルの将たる存在、エルヴァ・スィモス・エスパーダであった者が召喚されていた。
もっとも、理性を失った瞳、むき出しになった刃のような牙、直立することなく地面を這う四肢からは、かつてのエルヴァを連想することは難しい。
「……ティー……シャ!」
ただ、手に握る愛用の長剣と、口から洩れる宿敵への憎悪だけが、それがエルヴァであることを示していた。
ヘリオライダーである静生・久穏に呼び掛けられ、それに応じたケルベロス達がヘリポートに到着すると、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)が既にその場に佇んでいた。
冷静なティーシャだが、表情が苦々しいものになっており、憂慮するべき事態が起こっていることは容易に想像することができる。
「アギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269)さんの宿敵、『因縁を喰らうネクロム』という死神の活動を確認しました」
つい先日に、ケルベロスと宿縁を持つデウスエクスが一斉にケルベロス個人を狙って襲撃するという事件が起こった。
久穏が見た予知は、そうしたデウスエクスの1人、エルヴァ・スィモス・エスパーダが死神によってサルベージされるというものであった。
「嫌な予感ほど、当たるものだな。この時期は死者が彼岸から此岸に還って来ると言うが……」
これは、ティーシャが危惧した事態でもあった。
「ケルベロスに撃破されたデウスエクスの残滓を変異強化した上でサルベージし、それを戦力として持ち帰るのが、ネクロムの目的のようです」
久穏はこれを防ぐため、エルヴァが復活する現場へ赴いて欲しいと、ケルベロス達に要請する。
戦場はごく普通の住宅街の路地。夜ではあるがケルベロスにとって照明が必要になる状況ではない。
既に避難勧告は済んでおり、一般人を巻き込む心配はない。
「復活したエルヴァさんは、生前の知性を失っています、会話の類は通用しないでしょう。ですが、戦闘能力は損なわれておらず、むしろ強化していると思ってください」
戦い方も、生前のそれと同じ。ゾディアックソードを用いた戦いを行う。
また、怪魚型の死神もエルヴァの配下として戦いに加わるので、そちらへの対処も必要となる。
「死亡したデウスエクスの復活という事態は、見過ごすわけにはいきません。危険ですが、皆さんの力で死神勢力の戦力増強を防いでください」
久穏に促されヘリオンに乗り込むケルベロス達。
「もう少しは構ってやるべきかとも思ったが……。こんな形で、とはな……」
独り、ティーシャは先の戦いで最後に見た宿敵を思い返し、虚空を見つめてそう呟くのだった。
参加者 | |
---|---|
アギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269) |
ル・デモリシア(占術機・e02052) |
リコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164) |
緋々野・結火(爆炎の復讐鬼・e02755) |
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827) |
暁・歌夜(ヘスペリアの守護者・e08548) |
忍乃・飛影丸(ダークブレイズ・e09881) |
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301) |
●再開
住宅街の路地に点在する街灯に照らされる、長身の四足獣と、宙を浮遊する怪魚。
季節と相まって、まるで何かしらの怪談の一場面のようだ。
怪魚は宙を泳ぐ様から本来地球に存在するモノでないと分かるが、それよりもなお異常なのは、四足獣であった。
元々は、理性と知性を有する人型の存在であった。けれど、身体の所々が獣のように変質し、理性も知性も失ってしまっている。けれどもただ1つの執着が、その瞳には狂気となって煌々と灯っているのだ。
「酷い有様だな、そうまでして私に会いたかったか。その執念には感心する」
獣と怪魚。それらに8人の人物がそれぞれ武器を手に対峙している。余程世情に疎い者でもなければ、デウスエクスを撃滅するためケルベロスが戦いを挑んでいるのだと分かるだろう。
獣に対して呼び掛けたのは、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)。黄泉返り獣と化した、かつてエインヘリアルの将として名を馳せたエルヴァと浅からぬ因縁を持つ者だ。
「ティー……シャ!」
獣と化してなおティーシャへの怨讐を失わなかったエルヴァは、牙を剥き四足で動きながらも手放すことのない長剣の切っ先を向ける。
しかし、エルヴァが動くその機先を制するように、武骨な鉄の塊の如き巨大な剣が叩き付けられた。
「お前の執念は大したものだが、好きにさせる訳にはいかんな」
鉄塊剣を操るマティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)に、エルヴァの意識が僅かに逸れる。ティーシャに対するそれとは違い、障害を煩うかのように。
エルヴァは怒りの咆哮を上げ、それに呼応するように怪魚達がケルベロスに襲い掛かる。
「はー、折角妾が珍しく頑張って倒したんになー」
気怠そうに呟きながらも、ル・デモリシア(占術機・e02052)は怪魚群に全身から容赦無く多数のミサイルを浴びせていた。
自ら茶化しているが、エルヴァとの戦いにはルも参加しており、その際の奮闘が無為になったかのようで気に入らないのだ。
怪魚はデウスエクスとしては強力な存在ではない。だが、この攻撃で斃れるほど弱くもない。爆炎を潜り抜けケルベロスに肉薄し、それぞれが目の前のケルベロスに牙を突き立てる。
かつては多くの部下を統率する才に秀でていたエルヴァだが、今は見る影もない。怪魚は彼女の采配によって動いているのではなく、各々の闘争本能に従っているだけだ。
「エインヘリアルの将と言えども、この有様では獣と同じですね。指揮官としての能力も、もう残されてはいないようですし」
真っ赤な彼岸花のような攻性植物が捕食形態に変じ、怪魚に噛みつき毒を注ぎ込む。攻性植物で怪魚を相手取るリコリス・ラジアータ(錆びた真鍮歯車・e02164)は、獣に堕したエルヴァにはさほど関心を抱いていない。
怪魚の牙によって傷付いた自身と仲間とを、暁・歌夜(ヘスペリアの守護者・e08548)は士気を高めることで乗り切った。
「せっかくの静かな夜を騒がすようなあなた達は、ご退場願います」
そして、怪魚と対峙する歌夜のすぐ傍らを氷結の螺旋が走り抜け、怪魚の一体を凍結させる。
「ドーモ、エルヴァ=サン。たまたま参加したケルベロスニンジャです。だがデウスエクスは殺す」
氷結の螺旋を放った姿勢のまま、日本文化を勘違いして覚えた外国人のような口調で忍乃・飛影丸(ダークブレイズ・e09881)はエルヴァに語り掛ける。それは一種の挑発だったのだろうか。
「火墨、fireデス。まずは死神魚をdestroyしマース」
緋々野・結火(爆炎の復讐鬼・e02755)の指示で、彼女が使役するビハインドの火墨が周辺の小石や空き缶などに念を込めて怪魚へと飛散させる。
その間に、結火自身は前衛の仲間へとケルベロスチェインを用いた守護の魔法陣を展開していた。
ケルベロスとデウスエクス、互いの攻撃が混じり合い、夜の住宅街は俄かに戦場と化した。爆発音や武器による破砕音など、様々な音が鳴り響き静謐は打ち砕かれる。
それらの轟音の中でも、一際異彩を放っていたのはエルヴァの咆哮であった。
「……シャー!」
ティーシャの名を叫んでいるような、意味の無い獣の唸り声のような、おそらくは本人にすら理解できていないであろう、純粋な獣性から成る音。
そんなエルヴァや怪魚を後衛から冷静に眺めつつ、味方の傷を癒す役割に徹するアギト・ディアブロッサ(終極因子・e00269)は、自身と宿縁のある者を思い浮かべていた。
(「派手に釣り上げに来るかと思ったが、そうでもないみたいだな。やっぱり、あいつはよく分からん」)
この事態を引き起こした、即ち死んだエルヴァを蘇生した死神。
だが、今はこの場にいない者について思索を巡らせる余裕はない。引き続き、アギトは仲間達が無事にこの戦いを乗り切れるよう行動するのだった。
●戦局
戦いの構図は、ケルベロス達の想定通りに構成された。
「他者に己の力を吸われて不快に思う程度の知性はありますか?」
自身の地獄化を一時的に過剰浸食させた腕部による掌撃を怪魚に打ち込み、吸収した生命力を己の物とするリコリス。
それに対して何かを思うような知性を怪魚は持ち合わせていないが、ある種の不気味さを警戒する本能はあったのだろう。もっとも、身悶えする程度で何かしらの対策を打てる訳でもないのだが。
「祝福しましょう。喝采あげましょう。何も見えぬ夜を歩いた足跡を、誰かが道と呼ぶでしょう。だからそう、私はその道を開きましょう」
ふいに、怪魚の周囲に強力な殺気の塊が出現する。歌夜の精神を揺さぶるその攻撃を受け、怪魚は陸に打ち上げられた魚のように悶え苦しむ。
「氷漬けで鮮度バツグンです。死体が残るなら、後でサシミにしてあげマス」
超鋼金属製の巨大ハンマーで叩き潰すように怪魚を氷に塗れさせる飛影丸は、冗談を口にするくらいには余裕がある。
「いっそ、丸焼きにしてしまってはどうかえ?」
言いつつ、それを実行するとばかりにルは焼夷弾をばら撒き怪魚を炎に包み込む。
着実に敵戦力を削ろうと、ケルベロス達は怪魚達の殲滅を優先していた。
怪魚を狙いアームドフォートの主砲を発射しつつ、ティーシャは横目にエルヴァを見やる。
「今度こそ終わらせてやるよ。その前に、邪魔な魚を退治しないとな」
それまで、もうさして時間は掛りはしないだろう。
マティアスが主にエルヴァを抑え、ルと歌夜が味方全体の被害を抑え、アギトと結火が後方から支える。そして、他のメンバーが怪魚を撃破する。これが、ケルベロス達が構築した戦局であった。
怪魚達を始末してしまえば、ケルベロス達は全戦力をエルヴァに集中することが出来る。しかし、戦局の構築は想定通りであっても、進捗がそれに倣うとは限らない。
「こいつ……。分かってはいたが、強いな……」
エルヴァの星座の重力を宿した一撃は、マティアスに耐え難い苦痛を齎した。
生前の精妙さは失われているものの、その引き換えとばかりにエルヴァの剣は重さを増している。
「厳しいだろうが、耐えてくれよ」
「Damn it! 私としたことが迂闊デシタネー」
アギトと結火の2人掛りで、マティアスの負傷を癒す。
結火は複数の味方を癒す手段しか用意していないため、こうした事態ではやや効率が落ちるが止むを得なかった。
ケルベロス達が怪魚を殲滅するか、エルヴァがマティアスを突破するか。
どちらにせよ、そう時間は掛りそうにない。
●宿敵
ケルベロス達が怪魚群を撃破するのと、エルヴァがマティアスを打ち破ったのは、ほぼ同時であった。
「……なんとか、凌いだようだな」
ただし、怪魚と異なりマティアスは戦線を離脱してはいない。これ以上抑えることが出来なくなっただけだ。
「ここからは、私がお相手しましょう」
歌夜が、仲間達の盾となるべくエルヴァの前へ躍り出る。
「おや、無視とはつれないのぅ」
同じくエルヴァを抑えるために立ちはだかったルだが、エルヴァは2人を気にせず長剣を振るう。
「ティーシャー!」
叫び、エルヴァの長剣から蠍のオーラが迸る。
「大した威力だ。死神に掬われようが、やはりお前はお前ということか」
そう口にしたティーシャは、自身がこの宿敵をそれなりに意識していたのだなと、今更に自覚した。特に興味など無いつもりだったのだが……。
「俺は後ろだ。前は頼めるか?」
エルヴァの放った蠍のオーラは、ティーシャのみならず後衛陣の味方を纏めて撃ち抜いていた。ここまでの戦いで、ケルベロス達全員が治癒を必要としている状態であり、アギトは自身が後衛陣を引き受け、結火に前衛陣を任せる。
「OKデスネー。皆さん、fightデース!」
2人が治癒を行うも、ケルベロス達の負傷は決して楽観はできない。特に深刻な状態のマティアスは自力での治療を行うものの、やはり負傷に追い付いてはいなかった。
「盆に戻った死者は、再び還るのが定めです。もう一度、送ってあげましょう」
胸部を変形展開させた発射口から照射する必殺のエネルギー光線。先の戦いでエルヴァを仕留めたこの攻撃に何らかの反応があるかとリコリスは様子を伺ったが、他の攻撃とさして違いは見受けられなかった。
「大寒地獄と灼熱地獄、どちらがオコノミデース? 二度と戻れないように、キッチリ送り還してあげマース」
氷結の螺旋の直撃を受けたエルヴァは、それでもティーシャへの視線を僅かも逸らしはしない。そのあまりにも強烈な執着に、飛影丸は苦笑いを浮かべるしかなかった。
一方の死を以ってしてもなお消えることのない因縁。
これが、宿敵というものなのだろう。
●再決着
戦いの構図は、新たな形に変化していた。
「SYAaaa-!!!」
吼え猛るエルヴァの攻撃を、ケルベロス達は耐え忍ぶ。
誰かが猛攻を受け、それを自身や仲間が癒す。そうしてその間に他のメンバーがエルヴァを攻撃する。
どちらが先に力尽きるか。至極単純な削り合いが、この戦いの最終局面であった。
「こうなったら、私もattackデース!」
仲間の回復役を担う結火だが、状況を鑑みて攻撃に転じる。地獄の炎弾を放つも、かろうじて避けられてしまった。
獣の如き敏捷性を誇るエルヴァの身のこなしに対して、攻撃を必中させられるのはそれに長けた立ち位置の3人だけであった。
それを見越してリコリスは攻撃の精度を上げるが、エルヴァの攻撃はそうした守護を打ち消してしまう。
「治療も限界か……。俺も攻め時かよ」
最早回復の必要は薄いと判断し、アギトもエルヴァの生命力を削り取るべく、周囲の命をも穢す狂った生命讃美歌を歌い上げた。知性を失ったエルヴァですら、この歌の呪いは精神を掻き乱され、身体を蝕まれる。
ケルベロス達は皆が深手を負っているが、戦闘中の治療では完全に傷を癒すことはできない。回復役の2人が攻撃に移ったのは、もう回復をしてもエルヴァの攻撃に抗えないと考えたからだ。
「的確な判断じゃ。こちらがやられるよりも先に、こやつを倒してしまえば良いのじゃからな」
ケルベロス同様に、エルヴァも致命傷を負っている。
ルは容赦無く両腕の鎖でエルヴァを絞首し、幾度も地面に叩き付けた。
「しぶといデスネ。ならば、これはどうデショウカ? ハァーッ、イヤァーッ!」
鎖から脱したエルヴァに、飛影丸は心臓の地獄炉をフルドライブさせ、全身から獄炎を吹き上げ迫る。その勢いのままに敵を掴み飛翔し、錐揉み落下で地面へと叩き付ける。
ルと飛影丸の攻撃によって、地面はあちこち陥没してしまっている。それ程の衝撃を受けて、なおエルヴァは立ち上がった。
「呆れたしぶとさですね。送り火がなければ逝き辛いというのなら、私達が焚いて差し上げましょう」
自身の攻撃手段の中で、最も有効であると考えるコアブラスターを撃つリコリスの腰元では、射出の反動でブリキのロボットと曼珠沙華が揺れていた。
それは、見る者にどこか物悲しげな風情を感じさせる。まるで、1つの季節が移り変わる際のような、或いは祭りの終わりのような。
「あなたは、縋り付いてでも過去を、自身の想いを離さない人なのでしょうね。私には無いものです」
己とは対極的な存在であるエルヴァに、歌夜は敵の傷跡を正確に斬り広げながら称賛とも侮蔑ともつかない言葉を告げる。その言葉の意味する処がどちらであろうとも、こうなりたいとは思わないけれど。
敵と味方が入り混じり常に動き続ける戦場にあっても、ケルベロス達は己の役割を明確に定め仲間と連携を取り続けた。泥沼のようなこの状況においても、それは変わらない。
それに対して、デウスエクスはただ目の前の敵を襲うだけであった。
単純な戦闘能力でなら、この場の誰よりもエルヴァは優れている。けれど、この戦いは一対一ではない。個々の力と知恵、そして1つの集団としての総合力で勝った側が、勝利を得るのだ。
「これ以上ティーシャに余計なモノを背負わせたくはないからな。俺の力の限りを尽くして終わらせる」
中空に無数の大剣を出現させたマティアスは瞬時にプログラムを組み上げ、エルヴァに逃れることを許さない集中的な斬撃を見舞う。
ケルベロスの総力を結集した苛烈な攻勢は、エルヴァの生命力の限界以上に攻め抜いた。
けれど、それでもなおエルヴァの身体は崩れない。まるでその時までは決して終わりはしないと定められているかのように。
剣を振るう力すら残されてはおらず、自らを治癒する余地も無い。ただ這いずるように手足を動かし前へ進む。
「……いいだろう。お前の望む最期を与えてやる」
ティーシャは手持ちの火器と内臓された全ての武器を展開し、一斉に砲撃した。
爆発と砲身から発される煙とが晴れた後には、崩れ果てた路地に原型を留めない遺体が、糸の切れた操り人形のように横たわっていた。
殲滅を目的としたティーシャの一斉砲撃の轟音の最中、ケルベロス達はエルヴァの満足気な笑い声を聞いた。錯覚だったのかも知れないが、それを確かめる術は無い。
ようやく戦いが決着し、ティーシャとエルヴァの縁は絶ち切られた。死神の力によって蘇生した肉体は、塵となって消えていく。遺体は髪一筋も残りはしない。
ただ、エルヴァが愛用していた長剣だけは、その存在を残していた。もっとも、ケルベロス達の猛攻によって僅かな破片を残しているに過ぎないが。
「……」
複雑な想いを胸に、ティーシャはその破片を拾い上げた。遺品の1つくらいは、持っていてやっても良いのかも知れないと。
宿敵と決着を果たしたティーシャを見守る仲間達は、誰も声を掛けはしなかった。
(「追い付いているのか、離されてるのか……。さて、アイツとはいつ遭遇するのやら」)
ただ1人、アギトだけは自身の宿敵の背を思い描いていた。
作者:流水清風 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年8月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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