綺麗な黒髪に興奮する豚ども

作者:なちゅい

●翼を持ったオーク達
 それはどこかの一室。
 薄暗い場所にて、数体のオーク達を前にしていたのは、マントを羽織った男だ。
「ムムム、量産型とはいえ、実験ではこれ以上の性能は出せないなァ。これ以上の性能を得るには、新たな因子の取り込みが不可欠だ」
 テンション高くぶつぶつと独り言を呟くこの男は、マッドドラグナー・ラグ博士という。ときおり漏れだす笑い声からも、男の異常性を垣間見ることが出来る。
「オークどもよ、人間の女を襲って来い。そして、子孫を生み出してくるのだ」
 ラグ博士は、実験で生み出した飛空オークに対して、指示を飛ばす。色欲にまみれた豚どもは、望むところだと大声を上げた。
「お前達が産ませた子孫を実験体にすることで、飛空オークは更なる進化を遂げるだろう!」
「「「ぶひいいぃぃぃぃ!!」」」
 女性を襲う行為に価値を見出す下衆な豚どもは、やる気満々に歓声を上げるのだった。
 
 そこは、福岡県のとある女子高。
 授業中らしく、生徒達が体操服姿で走っている。
「おらー、しっかり走れー!」
 ややだるそうに走っている中、女性の体育教師が生徒達に発破をかけていた。真面目に走る者もいるが、手を抜いて走る者もいる。ごく普通の授業光景と言えるだろう。
 そんな中だ、そいつらが空から降りてきたのは。触手を羽根のように使い、空を滑空してくる6体のオーク達だった。
「きゃああああっ!」
 その汚らしい見た目に嫌悪感を抱く女子高生達は、我先にと逃げ出す。
「綺麗な黒髪、くろかみいいい、ぶひいいいいいいっ!」
「ぶひいいいい、黒い髪を触手で汚すぶひいいい!」
 なんともフェチな性癖を持つオークどもだが、暑い時期ということもあり、女子高生達は白い体操服姿でいる者が多い。それだけに、走るスポーティーな少女達の黒く綺麗な長い髪は非常に映えて見える。
「我慢できないぶひいいいいいい!!」
 下品なオークどもはその黒い髪をこれでもかと触手で嘗め回すように触り、そして、触手を突き刺して体操服を破り裂いてしまい、あるいは、触手から飛ばす溶解液で体操服をも溶かしてしまう。
「い、いやああああっ!」
 オークの強力な力に、女子高生は成すがままにされてしまうのである……。
 
 竜十字島のドラゴン勢力の動きがあったと知ったケルベロス達は、現状を確認すべくヘリオライダーの元へと急ぐ。
 ビルの屋上には、すでに、リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)が険しい顔をしてケルベロスの来訪を待っていた。
「皆、ようこそ」
「早速だけど、黒髪少女が大好きなオークが現れるって……」
 橘・ほとり(キミとボク・e22291)の言葉に、リーゼリットは複雑な表情で頷く。目の前のほとりが実際に、黒髪の少女だったからだ。
 今回事件を起こすのは、オークの品種改良を行っているドラグナー、マッドドラグナー・ラグ博士が生み出した、飛空オークという飛行型のオークだ。
「飛行という名を冠してはいるけれど、高い場所から滑空して目的の場所に移動するだけの能力で、自由に飛行する事はできないようだよ」
 だが、高所から滑空しつつ、襲撃目標である女性を見つけ出してその場所に直接降下するという攻撃方法は、かなり効率的でかつ脅威となるだろう。
「皆には、飛空オークに襲撃される少女達を守り、飛空オークを撃破してほしい」
 場所は、福岡県にある女子高だ。お嬢様学校であり、清楚な容姿の生徒が多いという。それもあって、黒髪少女が好みなオークに狙われたのだろう。
 晴れた日の日中、学校のグラウンドで体育の授業を行う女子生徒を狙い、6体のオークが上空から襲撃してくる。
「飛空型といっても戦闘能力は通常のオークと大差ないから、対処もそれほど変わらないはずだよ」
 グラウンドは広いので、戦うスペースに困ることもないだろう。
 戦闘に関してはいいのだが、問題はそれまでについてだ。
 飛空型オークは滑空しながら襲撃場所を探す為、事前に避難活動をしてしまうと、予知と違う場所に降下してしまい、事件の阻止が出来なくなってしまう。
「だから、女子高生を避難させるなら、オークが降下する直前から行うようにしないと、オーク達は別の場所を狙ってしまうよ」
 ただ、体育の授業を行っていたという状況もあり、グラウンドに50人はいる女子生徒達を避難させるのは、なかなか難しいことを留意したい。
 また、避難を行わない場合でも、オークが好きそうな行動を女性達が行わなかった場合なども、襲撃場所が変更になる場合があるという。
 例えば、ルックスのよい男性ケルベロスが現場にいるだけで。また、女子高生達がお淑やかな態度をとったり、過剰に身だしなみを整えたりしようとするだけでも、オークの好みから外れてしまう場合がある。
「そういった男性は一旦物陰に隠れておくとか……。あるいは、女性メンバーがオーク好みの姿になって、引き付けるといいかもしれないよ」
 敵は黒髪少女に目がないという。黒髪のメンバーがそのまま、あるいは、黒髪のウイッグなどを被り、体操服姿で囮になるものよいだろう。
 そこまで、神妙な表情でケルベロスへと説明したリーゼリット。
「……くれぐれも気をつけてね」
 その場にいるメンバー達を気遣って心配そうな表情をしていた彼女だが、その表情が和らぐ。
「でも、皆なら女子高生を守りきることができるって、ボクは信じているよ」
 信頼するケルベロス達に依頼を託したリーゼリットの表情は、心なしか晴れやかにすら見えたのだった。


参加者
楡金・澄華(氷刃・e01056)
毒島・漆(皮膚科・e01815)
阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)
篠宮・マコ(スイッチオフ・e06347)
立花・彩月(刻を彩るカメラ女子・e07441)
睦月・冬歌(やらしく治療したい・e15558)
伊庭・晶(ボーイズハート・e19079)
メルヴィナ・リリー(忘失の歌姫・e28616)

■リプレイ

●お嬢様学校とオーク
 ヘリオンで現地に向かうケルベロス達。地球人多め、ほぼ女性のチームである。
 そんな中、立花・彩月(刻を彩るカメラ女子・e07441)は不安そうな表情をしていた。
「福岡のお嬢様学校……。思い当たる節があるわ。もしかしたら……、わたしの母校かも……」
 そこが、飛行オークによって襲われるという。詳細は聞いていない為、現地に到着してからにはなるが、ただ、自らの母校が無事であることを祈る彩月である。
「そう言えば、オークとこうして依頼で殺り合うのも、随分と久しぶりですねぇ……」
 女性を襲うことしか頭にないオークに、遠慮も容赦も慈悲も微塵も必要ないと考える毒島・漆(皮膚科・e01815)は、きっちりと殲滅しようと考えている。
「とはいえ、今回の敵は随分と注文が多いのね」
 手当たり次第に女性を襲うイメージだが、案外違うのかしらと篠宮・マコ(スイッチオフ・e06347)は疑問を抱く。今回のオークは綺麗な黒髪女性に興奮するという。まさに黒髪女性のマコだが、豚の好みに当てはまっても、全然嬉しくないと呟いた。
「オーク単体でも厄介なのに、それを統括する存在もいたなんて……」
 同じく、漆黒の髪を持つ阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)は、敵の指揮系統を気にする。同時に、鈍重そうなオークが空を舞ってくる図をなかなか想像できないでいたようだ。
「ですが、事前予知が可能な私達にこそ、利があると言うもの……。オークなんかに絶対負けたりしません!」
 たわわな胸を震わせて意気込む晴明は、今年の頭まで高校生だったとは思えぬ超ナイスボディである。どこをとっても、オークに狙われそうな彼女は囮役となる予定だ。
 やがて、ヘリオンが現場空域に到着し、メンバー達は降下の準備を始めるのだった。

●飛行オークの襲来
 程なく、ケルベロス達は現場となる女子高へと到着した。
 その学校は彩月の母校ではなかったが、体育教師の後ろ姿が学生時代担任と姿が被って見えて。
(「……生徒を呼び捨てで呼ぶタイプだったな」)
 あの先生は今も、母校で教鞭を振るっているのだろうか。思いを馳せる彩月だが、まずは依頼と動き始める。
 彼女は伊庭・晶(ボーイズハート・e19079)と共に校内へ入り、職員室で事情説明を行う。オーク襲撃の情報提供と、その対処に訪れたケルベロスに感謝する教師達だが、生徒を危険にさらすというのに難色を示す。だが、事前避難、警戒を行うと、オークは別の場所に現れるだけと、晶が説明すれば、教師達もしぶしぶ了承してくれたようだ。
 さて、グラウンドでは、現状、体育の授業で持久走を行っており、50人ほどの女子生徒に幾人かのケルベロスが授業へと混じっていた。
 それを監督する女子教師の隣に、楡金・澄華(氷刃・e01056)の姿がある。
 女子高生という年でもないと考えた彼女は、周囲に潜んで警戒している漆へと武器を預け、教育実習生として紛れ込んでいたのだ。
 それらしく見えるようにと、澄華は半そでの白いTシャツにハープパンツ姿で参加している。もちろん、本物の教師には事情説明済みである。自慢の脚線美を女子高生に見せつつ、隣人力を働かせて仲良く語っていたようだ。
 一方で、同じ年の睦月・冬歌(やらしく治療したい・e15558)もまた体操服を着て、女子生徒と一緒に走っている。囮はしないようで、ピンクの髪がやや目立つ。
(「体操服の女の子ハァハァ……。おっと、いけない」)
 冬歌は走る女子生徒達に怪しげな視線を向けて、何やら考えていたようだが、なんとか理性で劣情を抑えていたようである。
 こちら晴明。彼女も体操服を着用の上、授業に参加していた。走るのはあまり得意ではない彼女。大きな胸が激しくゆれ、妨げになっているのである。
 それ以外のメンバーは、グラウンドの端の木陰に潜伏し、オークの降下を待つ。
 参加するケルベロスの中で唯一の男性、漆は希望する仲間から武器を預かった上、万全を期すべく、隠密気流によって生徒達にすら見つからぬよう全力を尽くしていた。
 マコは目立たぬよう配慮しつつ、ぼんやりとオークの出現を待つ。
 メルヴィナ・リリー(忘失の歌姫・e28616)も付近で物陰に隠れ、双眼鏡で上空を見上げている。
 そして……、メルヴィナはそれらの影を捉える。スマートフォンを取り出し、彩月へと空メールを送っていた。
「来たぜ、オークだ!」
 他のメンバー達も即座に動き始める。晶はグラウンドの教師にオークの出現を伝達した。
『上空から、デウスエクスが確認されました。繰り返します……』
 校内から流れ始める放送。メルヴィナからメールを受け取った彩月が上手くやってくれたのだろう。生徒にグラウンドから離れるよう教師が避難誘導を行っていた。校内では生徒が誘導に従い、グラウンドから遠い校舎へと避難を進めていく。
 現場となるグラウンドでは、オークの姿がはっきり確認できるようになっていた。上空からでも見える黒髪の少女達目がけ、汚らしいオーク達が降り立ってくる。
 漆はそこで物陰から飛び出し、最も地面に近づくオーク目がけ、蔓触手形態と変化させた攻性植物を伸ばそうとする。手前の一体は前衛だったのか、それを庇うように動いたオークを縛り付けることに成功する。
 そうして、緻密なグラビティ操作技術によって引力と斥力とを使い分け、漆はできる限り高速での移動を試み、他メンバーとの合流を図る。
 元々グラウンドにいたメンバーは、ケルベロスとしての行動を開始する。
 生徒達へと警告を行っていた晴明は敵が間近に迫ってきたことを察し、その身を張る。
「どこを見ているのですか? あなたの相手はここですよ」
 囮となる彼女。ナイスバディで、何より好みの黒髪女性とあって、オークは興奮しつつ彼女に狙いを定める。
(「最低限、避難が終わるまでは耐えませんと」)
 下卑た笑いを浮かべて触手を伸ばす敵に対し、晴明は身構えた。
 同じく、黒髪の澄華も教育実習生として生徒達に避難を促そうとするが、襲ってくるオークの相手で手一杯になりかける。
「おい、何してんだ、てめぇら!」
 校内からグラウンドへとやってきた晶。心が男性的な彼女は、仲間を、女性を襲うオークを許せじと、彼女は迎撃を始めていた。
 上空から降り立つオークを抑えてくれている間に、メルヴィナもグラウンドに出ていた。
「私達はケルベロスです。皆さん、誘導に従って避難して下さい! 校舎内に避難して下さい!」
 割り込みヴォイスを響かせ、さらにケルベロスカードを提示するメルヴィナ。その効果は覿面で、すぐに女子生徒達は誘導に従ってくれる。
 とはいえ、オークの出現に混乱が全くないわけではない。まして、グラウンドは50人もの生徒がいるのだ。
 冬歌は混乱する女子生徒を、ラブフェロモンを振りまいて魅了する。
「落ち着いて、避難をお願いね」
 その姿は頼れるお姉様といった姿。思わずその姿に惚れ惚れしてしまった生徒達ははいと頷き、その場から去っていく。
「お礼は体でいいからねー!!」
 女子高生の背にそう呼びかける冬歌。どういう意味か深く考えるのは止めておこう。
 さて、オークを抑えるメンバー達。
 晴明は伸びてくる汚らしい触手に耐えていた。
「触手?! この程度で……」
「黒髪、黒髪ぃ、ぶひぶひぶひいいい!」
 まずは彼女の髪。艶やかな髪へと異常に興奮していたオークは、そのまま体にも触手を這わせていく。
 避難する生徒達とは逆側に、澄華も敵をおびき寄せていた。攻撃は一切行わず、敢えてされるがままになってしまう。
「ぶひぶひ、綺麗な黒髪ぶひぃ……」
 オークはそう言いながらも、髪だけでなくその体をも触手で締め付けて。
「ううっ、はあん……」
 辱めを受ける澄華は嫌がりながらも、甘い声を上げて演技でオークの劣情を煽る。色仕掛けは忍者の得意技なのだ。
 しばし、彼女達がオークの攻めに耐えていると、女子高生を庇う態勢に立っていた漆が武器を投げつける。それを受け取る澄華がケルベロスコートを脱ぎ払って戦闘態勢を整えた。
 冬歌も囮役メンバーを気遣って参戦するのだが。
「いけいけ、そこ! いいよ、オーク!」
 声に出して、なぜかオークを応援する冬歌。一体どちらの味方なのか。
 ともあれ、自身の欲情をぶつけてくるオークを駆除すべく、ケルベロス達はグラビティを発し始めるのだった。

●外道な豚らしき最後を
 飛行オーク達は気を良くし、狙ったケルベロスを執拗に攻め続ける。
「貴様らに墜とされるわけないだろ」
 臨戦態勢に入り、武器を受け取った澄華はオークの触手を爆発させて吹き飛ばす。
 囮役となって体力をすり減らすメンバーへ、マコは気力を撃ち出していく。
 そんな中、マコの忠猫、ウイングキャットのぴろーがけなげにも身を張り、オークの触手の餌食となってしまう。マコは嫌悪感を抱くオークから距離をとり、ぴろーを応援していた形だ。
 ぴろーの股の下から忍び寄る触手。敵は敏感な尻尾の付け根を攻め立てていく。
「ふみゃ、みゃあん……」
 それに、ぴろーも艶かしい鳴き声を上げて耐えていた。
「これでもくらいやがれ!」
 その後ろから、晶が自身の魂を凝縮させた結晶をオーク数体へと投げ飛ばす。
 イチゴミルク色の球を浴びたオークは幻影に取り付かれて、うっとりとしていたようだ。
 オークの前に立ちはだかる晶の後姿。遠目で見ている女子高生がそれに見とれて晶へ声援を送っているが、さすがに距離があるのか晶の耳には届いていない。
「これで、頭を冷やして下さい!」
 女子高生の避難を済ませて駆けつけたメルヴィナ。冷気を帯びた手刀を繰り出すことで、オークの体が凍りつく。そいつは衝撃に耐えられず、氷にまみれて力尽きたようだ。
「せめて、桜のように美しく散るといいわ!」
 遅れて戻ってきた彩月も、斬霊刀に電気を纏わせてオークを切り裂く。血飛沫を桜の花びらのように舞わせ、そいつは命までも散らしていった。
「お還りなさい、あなたの在るべき場所へ!」
 晴明もまた、2枚のカードから金色の融合竜を呼び出し、オークを喰らいつかせんとけしかける。
 だが、その横から、オーク達は執拗に彼女を攻め続けた。序盤からオークにしつこい攻めを受け続けた晴明の体力は、もはや限界だった。
「そこはだめ……ひぎぃっ! らめぇ……ッ! も、やめ……アッー!!」
 興奮してぶひぶひと鼻を鳴らす豚どもの攻めに、彼女はついに屈してしまい、その場へと倒れこむ。
 全力で回復に当たっていた冬歌だが、あんなことこんなことをするオークに「わぁい!」となぜか喜んでいた。最後まで攻められた晴明の姿に、冬歌は肌をてっかてかにし、満足げな表情を浮かべた。
 ただ、えろいのは好きだが、痛いのは嫌な冬歌である。さすがに、盾役がいなくなれば自身にも危険が及ぶと、冬歌は一層回復の手を強める。
「楽しんでいきましょうよ。一度きりの人生だもの」
 マコもぴろーがギリギリ耐えてくれている中、これ以上前線メンバーを倒させるわけにはいかぬと、癒しのオーラを撃ち出していた。
 その後は、順当にオークを攻め崩すケルベロス達。
「破壊手術……γナイフッ!」
 漆は魔力を込めた連撃を浴びせて魔力を流し込み、1体のオークの体を内部から破壊する。
「喰らえっ」
 その隣では晶が高く飛び上がり、オークにドロップキックを食らわせてその顔面を砕いて地を這わせていた。仲間のおかげでオークの攻めから難を逃れ、彼女は自由に戦うことができていたようである。
「これで痺れて下さい!」
 さらに、メルヴィナ。ライトニングロッドを携えた彼女はそれを振るい、先端から迸る雷を飛ばしてオークの体を焼き払う。そいつは黒焦げになって、グラウンドに転がった。
 いつの間にか、劣勢になってきていたオーク。逃亡も考えていたが、澄華が少し肌を露出させたのを見て、鼻息荒く食いついてくる。
「楽しんだか? 代金は貴様らの御首だ」
 彼女は手にする斬霊刀に、自身の力の一部を解放して憑依させる。そのまま、オークの体を薙ぎ払い、その魂を抜き取った。
 オークの胴が寸断され、ぐしゃりと地面へ落下する。汚らしいオーク達は全て絶命し、グラウンド上に転がったのだった。

●それぞれの一時を
 ケルベロス達はグラウンドに転がるオークの遺体を片付け、戦いによって荒れたグラウンドに澄華がヒールを施す。
 メルヴィナもグラウンドにヒールをかけていたが、彼女は途中で晴明の容態が気になり、そちらにも溜めたオーラを撃ち出していた。
「結局、またこんなオチですか……」
 しくしくと泣き寝入りする晴明。肉体的にも精神的にも重い傷を負ってしまった彼女は、しばし安静が必要なようだ。
 ある程度状況が改善されたと判断した漆は、白衣の裡から取り出した煙草に火をつけ、この場を去っていく。
 残るメンバーはしばし、女子高生と交流をとこの場に残っていた。
 澄華などは忍者の運動能力を生かし、グラウンドを疾走してみせる。それに、女子高生達からは賛美の声が上がっていた。
 そして、なぜか地面を駆けて汗を流しているのは、ウイングキャットのぴろーだ。可愛らしいその姿は、生徒達を和ませていた。
「ぴろーならできる。きっとできるよ。がんばれぴろー」
 主である全力見学系女子マコは、可愛らしいサーヴァントの応援をする。声を上げつつ、学校の体育の授業をよくサボ……もとい、見学していた思い出を頭に過ぎらすマコである。
 彩月はというと、残念ながら恩師との再会とはいかなかったが、同じ雰囲気を持つ女性教師に、自らの過去を吐露していた。
 恩師がスポーツ推薦してくれたのに、自身の不注意で膝に大怪我を負い、女子サッカー選手の夢が叶えられなくなったこと、そして、今はプロのカメラマンを目指して勉強していること。
 辛かっただろうとその教師は優しく慰めてくれたが、彩月の肩に手を置いてこう返す。
「……是非、自身で伝えに行ってやってくれ」
 恩師に謝罪をして今の自身の姿を見せるのであれば、直接、自身の足で恩師に会いに行って、伝えてあげてほしいと。
 それに、彩月は少し戸惑っていたが、小さく頭を振って応えていた。
 そこで鳴るチャイムの音。授業の終わりを告げる合図とともに、ケルベロス達はその場から去ることにしたのだった。

作者:なちゅい 重傷:阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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