
●ロリコンの集い
都内某所のイベント会場。
「はーい、『取り立てエンジェル抵当かた』の限定グッズご購入される方は、こちらにお並び下さいー!!」
イベントスタッフが2列3列とともすれば太く短く前のめりに崩れそうな人々の列を整えるべく、必死に声を張り上げている。
そして、会場内の幾つものブースの中には、美少女アニメであろうか、可愛らしいロリっ娘がデカデカと描かれた抱き枕やポスター、マウスパッドなどの様々なグッズが、所狭しと陳列されていた。
中には、一見すると何に使うか判らない、肌色でキャラクターの姿が一切見当たらないブツもあったが、それはそれでキャラクターの名を冠して公式グッズ認定すれば、売れるのだから不思議なものである。
「はい、それでは販売イベント今から開始ですー、押さないで順番にお入り下さいー!」
スタッフがそう宣言するのと、配下を引き連れたビルシャナがその会場へ殴り込んできたのは、ほぼ同時であった。
「ロリコンは抹殺されるべきであるーッ!!」
「ロリコン許すまじっ! いたいけな少女を邪な目で見るなど不快極まりない!」
「イエスロリータノータッチなど、綺麗事にすらならんッ!!」
苛立たしげな怒号と共にビルシャナ達は一般客を殴りつけ、その怒りの矛先はアニメグッズへも及んだ。
「あぁっ、かたちゃんの抱き枕が!?」
「沙潮冴様のぬいぐるみを守らねば……!!」
熱烈なアニメファン達が体を張ってグッズを守るという――傍から見れば首を傾げたくなる判断基準で動いた為、人的被害は悪戯に増えていった。
●ロリコンに染めろ
「大変であります、アニメグッズを売るイベント会場にビルシャナが襲撃をかけるみたいであります!」
ケルベロス達へ向かって説明を始める小檻・かけら(サキュバスのヘリオライダー・en0031)は、やけに慌てていた。
今回の事態は、新条・あかり(点灯夫・e04291)の調査によって明らかになった。
「出現するビルシャナ、『ロリコン抹殺すべし明王』が語る教義は、とにかく合法違法二次元三次元関係なく、ロリコンを認めない主義なのであります……」
つまりは、大変個人的な主義主張を掲げたビルシャナが、個人的に許せない連中を力でねじ伏せる為、今回の凶行に及ぶという。
「また、明王の主張に賛同している一般人12名が配下となってるであります。明王が教義の浸透よりも異端者狩りを優先しているせいか、既に配下となっていても洗脳を解ける可能性がありますよ」
それ故、ビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、戦わずして配下を元の一般人へと戻し、無力化する事ができる。
「明王の配下は明王が倒れるまでの間戦いに参加してきますが、明王さえ先に倒してしまえば正気に戻るので、救出できるであります」
しかし配下が多いまま戦闘に突入すれば、それだけ厳しい戦いとなるので注意が必要だ。
また、明王より先に配下を倒してしまうと、往々にして命を落とすのへも気をつけて欲しい。
「今回のロリコン抹殺すべし明王は、ビルシャナ閃光と浄罪の鐘で攻撃してくるであります」
理力に満ちたビルシャナ閃光は、複数の相手にプレッシャーを与える可能性を持つ遠距離攻撃。
敏捷性を活かした浄罪の鐘もまた、射程が長い上に複数人へダメージをもたらし、稀にトラウマをも具現化させる。どちらも魔法攻撃だ。
「12人の配下は、六法全書を武器代わりに殴りかかってくるであります」
もっとも、説得にさえ成功すれば配下は皆正気に戻るので、ビルシャナ1体と戦うだけで済むはずだ。
「配下達は、皆がロリコン抹殺すべし明王の影響を強く受けているため、理屈だけでは説得できないであります。インパクトが重要でありましょうから、説得の際の演出をお考えになるのが宜しいかと」
そこまで言って、ふと首を捻るかけら。
「ここはやはり、ロリータ少女や幼女の可愛らしさ素晴らしさを是非とも教えて差し上げてください。彼らをロリコンに目覚めさせるぐらいの気概でお願いするであります」
ロリコン抹殺すべし明王は、何より異端者を敵視しているため、ケルベロス達が『自分達はロリコンだ!!』と声高に叫べば、襲撃の手を止めて主張に聞き入るだろう。
ロリコンの取るに足らない妄言など簡単に論破してみせると高を括っているからかもしれない。
「だからこそ、明王の鼻っ柱をべきっとへし折って、ロリコンのお客さんだけでなく、配下の方々も説得で救って差し上げてください……どうか、宜しくお願いします!」
かけらは深々と頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
![]() 星黎殿・ユル(聖絶パラディオン・e00347) |
![]() アイリ・ラピスティア(宵桜の刀剣士・e00717) |
![]() アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341) |
![]() 新条・あかり(点灯夫・e04291) |
![]() 遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166) |
![]() 真昼間・狗狸狐(なにもかもなにもかも・e22743) |
![]() レイン・プラング(解析屋・e23893) |
![]() 豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077) |
●
イベント会場。
「まずナイロン加工ポスター……」
「限定の冷や麦セット、買えるよな……?」
真剣にパンフレットを見て、いかに効率的にブースを巡るか考えているアニメオタクの行列。
ケルベロス達は彼らの最後尾に陣取り、建て物の入り口から襲撃してくるロリコン抹殺すべし明王へ備えていた。
「ロリコン断じて許すまじ!!」
明王と配下達が突撃してきたのは、数分も経たぬ間であった。
「待てぇい! わしはロリコン絶許美少女仮面!! この世の正義と公序良俗を守るため、わしも戦うのじゃ!」
すると、真昼間・狗狸狐(なにもかもなにもかも・e22743)が、明王達の前に立ちはだかって大見栄を切った。
「ゆくぞ、このロリコンどもめ! わしの説教で真人間に目覚めさせてくれる!」
しかし、威勢良く食ってかかる相手は避難させるべきアニメオタク達。
因縁つける相手が間違ってはいるが、明王達も呆気に取られている分、時間稼ぎにはなろうか。
「皆の大事なものは守るから。ここは私たちに任せて逃げて、ね」
その隙にアイリ・ラピスティア(宵桜の刀剣士・e00717)が、落ち着いた物言いで避難を頼んだ。
「みんな、避難に協力してくれるかなー?」
遠之城・鞠緒(死線上のアリア・e06166)も、ロリっ娘ファッションでオタクの心を掴むべく呼びかけた。
「勿論、みんなの大事なグッズは守ります!」
ちなみに鞠緒のコスプレは兄の著作『歌姫探偵☆まりお』のアイドル衣装に探偵帽を被っている。
「はーい、きちんと避難誘導するから手を挙げて列を崩さずに着いて来てね」
と、オタクの先頭に立ち非常口へ導くのは星黎殿・ユル(聖絶パラディオン・e00347)。
「ふふふ、ユルおねーさんが守護する限り、この場のロリとグッズはノータッチなのさ」
クールなボクっ娘レプリカントは、凛とした風を纏って一般人達が我先にと列を乱さぬよう牽制しつつ駆けていく。
「お兄ちゃんたちの大事な取り立てエンジェルは僕たちロリロリシスターズが守るから安心して逃げてね」
素直に進む列を見やり、新条・あかり(点灯夫・e04291)もメイド服を纏い、彼らが気に入るセリフ回しで避難を促した。
「皆さんの大切な物は、必ず守りますから」
レイン・プラング(解析屋・e23893)は折り目正しく一礼して、
「みなさま、ここはおまかせ、ください!」
アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)は、辿々しくも凛とした物言いで請け負ってみせた。
「少女の魅力か……ボクにはちょっと難しいかな?」
と、首を傾げて呟くのは豊田・姶玖亜(ヴァルキュリアのガンスリンガー・e29077)。
「努力はするけど……って、可愛らしくしようとしても無理がありそうだし、自然体でいこう」
姶玖亜は我が身を盾にブースへ並んだアニメグッズを守っていた。
●
アニメオタク達が皆逃げ果せたのを見計らい、アイリとあかりは殺界形成で目に見えぬ追い立てをして、仕上げにかかる。
鞠緒は配下達へ向き直った。
「それでは、明王と配下の皆さんのロリコン度を判定します」
「何ぃ?」
「ロリコン撲滅を掲げるからには、皆さんどんなチェックでも引っかかりませんよね?」
ふふふー♪ と楽しそうに笑いながら、配下達を挑発する鞠緒。
「では、わたしから自己紹介致しましょう。遠之城・鞠緒と申します。この春に19になりましたが……皆さん、わたしのことはロリだと思いますか?」
鞠緒は、大人っぽい顔立ちを包む鮮やかな藍色の姫カット、黒を基調にした豪奢な装いと白いヘッドドレス。
女性として低くない身の丈やミステリアスな雰囲気からも、一目見ただけでは彼女をロリっ娘と判断するのはなかなか難しい。
配下達は皆首を横に振った。
「では次に参りましょう」
にっこり微笑んだ鞠緒が、揃えた指で指し示すのはアイリ。
「ロリコンってほど小さい子を愛でる情熱は……その、よくわからないけど」
でも、小さな女の子が可愛いって気持ちはちょっと分かる、かな。
アイリは、明王や配下の嗜好を斟酌しながら、おずおずと前へ進み出る。
「そんな愛情を否定するのはきっとよくないことだから止めなきゃね」
気合を入れてから、鞠緒同様に自己紹介。
「アイリ・ラピスティアだよ……19歳、よろしく、ね」
ぺこりとお辞儀するアイリは、青みがかった長い銀髪と深い海の青を映したかのような瞳を持つ少女だ。
「私は、その、ロリ? って年齢じゃないから、そういう魅力はもう無いけど……でも、その魅力はわかってる」
本人はそう言うも、どちらかといえば低めの身長、明るい光を宿した丸く大きな瞳と、すっきりした印象の童顔。
19歳ながらロリっ娘の素質は充分あるといえよう。
「小さな女の子って、『可愛い』よね。幼い故の純粋さ、とか、ひたむきさとか、見てると眩しくて、大事にしたいな、って思っちゃうの」
うっとりした表情で語るアイリこそが可愛くて、配下達の心を揺らす。
「そう、尊いんだよ、小さな女の子って」
その主張を、実感として受け取りかけている彼らは、感嘆の溜息を洩らした。
「そうだよな、大事にしたいよなぁ」
とはいえ、アイリの論調はあまりに綺麗過ぎて、ともすればビルシャナの教義寄りに受け取られかねないのが難点か。
もう少し下心へ訴えかける理屈が欲しいところだ。
「はい、アイリさんを抱きしめたいと思いましたか? 彼女はロリだと思いますか? では、次に参りましょう」
「やれやれ。人の嗜好にケチを付けるのはナンセンスだね」
次に紹介された姶玖亜が、会場の入り口に立入禁止テープを張り終えてやって来る。
「ロリコンでも誰かに迷惑をかけるわけじゃないなら、いいんじゃないかな? 大事な商品を傷付ける方が迷惑だよ?」
そうさっぱりした口調で連中を諌める姶玖亜は、カウボーイハットにウェスタンシャツといったガンナーズスタイルに、大人びた顔つき、ボーイッシュなショートヘア。
「かつて名をあげて歴史に名を残した戦国大名や武将なんかは、年若いお嫁さんを場合によっては複数貰ってたそうだね」
やはり自覚している通り、いささかロリっ娘とは方向性の違う美貌を備えている。
「そうすれば、家の繋がりも強まり、しかも自分の跡継ぎや血縁者が増え、覇業の助けになる」
そのせいか、姶玖亜が語るロリコンのメリットは、出世欲を擽る斬新な発想。
しかも、歴史に裏づけされている論理な為、説得力がある。
戦国時代、女性の初婚平均年齢は13〜4歳だったと言われている。
「ロリコンは、きっと人生の成功の秘訣なんだよ」
姶玖亜の纏めを、配下達は皆真剣に聞いて、
「志立て大業を成すなら……君、ロリコンたれ!」
「おおーーっ!!」
力強い号令にも拳を振り上げて応える程、感化されていた。
●
「ロリコンとは文学だよ」
きっぱり断言するのはユル。
「世界最古の小説と呼ばれる源氏物語を読んでみなよ?」
背は低く胸は大きく瞳も大きいというユルは、白衣の下にぴったりしたボディスーツを着ているのもあって、どこからどう見ても大人のお友だちを喜ばせるロリ巨乳だ。
「ちょうどアレ位の子達を愛でて、あまつさえ自分好みに育てた上に嫁にまでしてるんだよ」
ユルは自分より年下の仲間達を見やり、源氏物語の内容に言及する。
源氏が若紫を拉して初潮が来たばかりの歳の頃に我が物とした話は有名だが、何も紫の上ばかりがロリでは無いのだ。
後々まで罪に慄く事となる密通をした義母の藤壺も、桐壺帝へ入内した時は14歳。終盤で源氏へ降嫁する女三ノ宮も同じである。
朱雀帝が六条御息所の娘の斎宮へ心惹かれる描写もあり、いかに源氏物語で歳若い少女の婚姻や恋愛に関する描写が多いか、よく解る。
「其にも関わらず日本……いや世界で絶賛されている現実を直視しな」
キリッと言い放つユルへ、配下達がうっと言葉に詰まった。
反論の糸口が見つからないだけではない。ユルの可愛さに魅了されたからだろう。
「解らなければ六法全書よりも厚いこの源氏物語全五十四帖で……」
「……い、いや、もう良い。読破に何日かかるんだよ」
クールな声音のまま、ユルはどことなく楽しそうに配下達を追い詰めるのだった。
(「まあ、実際に手を出していなければ罪ではないですからね。ノータッチなら自由なのではないですか?」)
一方、簡単に自己紹介しながら、内心ではロリコンに対する冷静な私見を思い巡らせるのはレイン。
黒目黒髪の大人しそうな美少女で、そのぼんやりした表情や小柄な体格などロリっ娘要素の多い有望株である。
レインは、すぐにうるうると瞳を潤ませつつ、上目遣いで哀願を始める。
「私みたいな子ども、女性としての魅力は無いんでしょうか……」
儚げに愛らしい風情を演出し、自らの可憐さで配下達を籠絡する作戦だ。
「私はまだ何も知らない子どもです。だからこそ、大人の皆さんと共に歩む事で学びたいと思うんです」
少女らしい鈴を転がすような声音が、配下達の心にぐっと迫り来る。
(「えっと……何て言うんでしたっけ? 確か……」)
小首をこてん、と傾げて、更なる殺し文句を思い出すレイン。
「私、貴方の色に染まります……!」
大きな目に、今にも零れそうな大粒の涙を溜めて言うのがコレだ。
その破壊力は凄まじく、配下達がそわそわと動揺の色を見せた。
「皆さんが私達を好きになることが罪なら、私が皆さんを好きになることも罪になってしまうのですか……?」
彼らの良心を揺さぶる精神攻撃の効果は抜群。
「いや、それはその……」
「少女の純粋な恋心を踏み躙る訳には……ううむ」
面白い程狼狽える配下達を見て、鞠緒がにこにこと追撃する。
「どうです。抱きしめたいと思いましたか? 想うだけなら罪ではありません。心で抱きしめてあげて下さいね」
●
「これ成功してもひどい目に合うパターンじゃ……うわーーんやっぱ嫌じゃーーー!!!」
いよいよ自分の番という時に、狗狸狐は駄々を捏ねて大号泣。
「自分からわざわざロリキャラアピールとか、あざとくてイタいのはいやじゃーー!!!」
と、仲間にぶっ刺さりそうな文句を吐くやゴロゴロゴロゴロ廊下を転がった。
「わしははやく自立したオトナになるんじゃーーー!!
終いには大の字になってパタリと動きを止め、
「ひっく、ひっく……Zzz……」
泣き疲れたのか眠ってしまった。
幾ら、狗狸狐が子どもだけに許された天然の可愛さや幼さを存分に発揮して、配下達へ仕種のみで自然とアピールしていたとしても。
「そうだよなぁ、勝手にロリだの何だの決めつけられるのは嫌だろうなぁ」
「ほらな、こんなに小さい子だってロリキャラ扱いされるのは嫌だって言ってるじゃねーか」
「あざとくてイタいかぁ、全く最近の少女キャラの方向性は嘆かわしい……」
いかに何でも文句の方向性が悪過ぎた。
ロリキャラアピールを泣いてまで拒絶や否定する事は、ロリコンを憎む明王達に格好の餌を与えるに他ならない。
少女本人がロリに見られたくないと言っているのに、その気持ちを無視してロリコンを認めるのか――と。
「取柄って言ったら……んー、お肌、とか?」
ぷにぷにすべすべのほっぺたを自分でつんつん、と突くのはあかり。
この行動すら狗狸狐に言わせればあざとくイタいアピールになる訳で、猜疑心を植えつけられた配下達の視線が妙に怖い。
「あのさ、『いたいけ』って言ってくれてるってことは、ちょっとは可愛いって思ってくれてるのかな?」
それでもあかりはめげずに、丸く滑らかな頬を赤らめて、
「だったら、嬉しい」
可愛らしく照れてみせた。
「えっと、僕は――好きな人になら――邪な目で見られても構わないよ……なんて」
真っ赤になった耳をぴこぴこ動かしつつ、もじもじと上目遣いに問いかけるあかり。
「お兄さんたちは、どうかな?」
普段は中性的であまり感情を表に出さない彼女が、これ程までに身体を張って演技するのへは、理由がある。
かの19歳年上の恋人がしょっちゅうロリコン疑惑をかけられる為、その溜まりに溜まった鬱憤のせいで明王絶殺レベルの心意気なのだ。
(「ロリコンだって良いじゃない!!」)
かように強い意志でもって、あかりは愛らしさを振り撒く。
「初めてあかりさんとお会いしたのですけれど、本当に利発で可愛らしい方!」
その様子を眺め、鞠緒が手放しで彼女を褒めた。
(「成程あの思慮深い方がロリコンのそしりを受けても愛したくなるのも解りますね」)
密かに抱く感想は至極尤もで、あかりの誘惑は配下達へも通用するかと思われたが。
「……それが、本当に君の気持ちなら、理解したいけれど……」
「なぁ」
「誰かに言わされてるんなら、無理しなくて良いんだぞ?」
どうも配下達の反応が良くない。
「言わされてるなんてあり得ない! 人の性癖にあれこれ口出しするのは野暮ってもんだよ。犯罪にさえならなきゃロリコンだって良いじゃない!」
必死に反論するあかり。
実際、ビルシャナの配下や信者を説得する際には、ケルベロス自身が教義の『否定派になりきる』必要がある。
それ故、口だけだとしても、ロリアピールするのが嫌だと誰かに押しつけられたかの如く喚いた狗狸狐の言葉が、尾を引くのも仕方なかった。
「アニエスにはまだろりこんとかむずかしいことばはわかりませんけど、みんなちがって、みんないいってききました」
最後は、アニエスが何の打算も意図も感じさせぬ幼女の純粋さを最大限に発露して語りかける。
「ひとのすきなものをダメと言うなんて、おかしいと思い、ます!」
銀のウェーブヘアと青く大きな瞳の可憐な、雪女のような風情の幼女である。
「アニエスたちだって、みなさまとなかよくしたいのです」
――それをちっちゃいからって、ダメって言われたらかなしくなります。
一度は眼をうるうるさせて配下達を見つめてから、
「ね、アニエスたちとなかよく、してください!」
にっこりと花も綻ぶ笑顔を見せるアニエス。
「どうです、アニエスちゃんを抱きしめたいと思いますか?」
鞠緒が毎回欠かさぬロリコンチェックを入れた。
レインやアニエス、あかりの本能に訴える説得も、ユルや姶玖亜の実に納得できる脇から攻めた論理も、効果的であったから。
「俺はレインちゃんを抱き締めたい! ロリコンと言われても構わん!」
「ユルちゃん可愛い!」
「あかりちゃん萌え!」
配下達は口々に欲望を迸らせ、正気に戻った。
しかし、それも7人だけで、残り5人は頑として明王を支持し、奴と共に攻撃を仕掛けてきた。
「お主も宗教なんかやめてまっとうに生きよ! でなきゃ死んでしまうんじゃぞ! こんなばかげた話で!」
「みんななかよく、が、いちばんですっ……!」
ケルベロス達は手加減攻撃も交えて明王と配下を相手取り、配下の犠牲を2人出してしまったものの、明王を討ち倒した。
作者:質種剰 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年6月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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