冷やし中華こそ王道、冷やしラーメンなど認めん!

作者:柊透胡

「諸君! 夏の麺と言えば!?」
「冷やし中華!」
「その通り!!」
 取巻きの即答に、卵麺のように縮れた羽毛を膨らませ、ビルシャナは満足そうに頷いた。
「冷水で締めたぷりぷりの中華麺の上に細切りチャーシュー、錦糸卵、キュウリにトマトと、盛り付けた皿の何と美しい事か!」
「ハムや蒸し鶏、牛スジも捨てがたい!」
「もやしやオクラ、焼きナスも美味いぞ!」
「名脇役の青ネギ、練りガラシや紅生姜だって、忘れてはならない!」
「然り然り! これを、甘酸っぱい醤油だれや濃厚なゴマだれをベースにした掛け汁で食せば、何皿でもイケる! 見た目も味も栄養も最高の、正に夏の風物詩、王道である!」
 ビルシャナの演説に、取巻き達も大いに頷く昼下がり――だが、彼らの目の前に翻る幟には、でかでかと『冷やしラーメン始めました!』の文字が。
「それがどうだ! 嘆かわしい……何でも冷やせば良いというものではない!」
 近年、クローズアップされてきた冷やしラーメン。ビルシャナはそれが許せない。
「冷やしラーメンなど、断じて認めん! 諸君、夏が始まる今こそ、冷やしラーメンに天誅を!」
「冷やしラーメンに天誅を!」
 拳振り上げる勢いのまま、ビルシャナと取巻きは、冷やしラーメンを始めたばかりのラーメン屋に殴り込みを掛けるのだった。

「へぇ、冷やしラーメンって、発売から60年以上も経つのね」
「既に、山形県の郷土料理と言っても過言では無いでしょうね」
 ふむふむと、興味深そうに頷く綺羅星・ぽてと(三十路間近系アイドル・e13821)と肩を並べ、都築・創(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0054)は集まったケルベロス達の方に向き直った。
「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 山形県山形市郊外にあるラーメン屋を、ビルシャナと取巻きが襲撃するという。
「どうも、冷やし中華を愛し過ぎて、冷やしラーメンが許せないビルシャナが現れちゃったんだよね☆」
「綺羅星さんの懸念が、私の案件にヒットしましたので、皆さんに集まって戴いた次第です」
 流石は三十路間近系アイドル。夏色全開キャピッ☆と営業スマイルのぽてと。対する創は、あくまでも粛々と用件を説明していく。
「個人的な料理の好みまで否定する訳ではありませんが……それで、個人的に許せない対象を襲撃するとなれば見過ごせません」
 『冷やし中華こそ王道、冷やしラーメンなど認めん!』明王には、一般人の取巻きが3名いる。
「取巻きの数、少なくない?」
「場所が、元祖冷やしラーメンの街ですからね」
 先にビルシャナの主張を覆せば、戦わずして取巻きを無力化出来るだろう。
「……どうやら、ビルシャナも取巻きも、『冷やし中華』には深い愛着と拘りがありますが、『冷やしラーメン』は食べた事すらないようですね」
 食わず嫌いのビルシャナとは、迷惑以外の何物でもない。
「ですから、今回に関しては、彼らも美味しいと思えるインパクトある『冷やしラーメン』を食べさせてあげれば、取巻きの無力化も簡単でしょう」
 襲撃されるラーメン店には、既に話を通している。一般的な冷やしラーメンの材料は揃っているし、厨房は自由に使って良い。材料などの持ち込みも自由だ。
「彼らは殴り込みを掛けてくる訳ですから、まず、テーブルに大人しく着かせて、冷やしラーメンを食べさせる方向に持っていくようにして下さい」
 なし崩しで戦闘になれば、取巻きは問答無用で信徒と化し、ビルシャナが撃破されるまでサーヴァントのように戦う。ビルシャナさえ倒せば元に戻るので救出は可能だが、取巻きの数だけ、戦闘は不利になるだろう。
 ちなみに、戦闘となってしまえば、ビルシャナは『冷やし中華氷皿』とか『冷やし中華こそ王道経文』で攻撃し、『清めの冷やし中華』でヒールする。信徒は『冷やし中華への情熱燃え盛る孔雀炎』をぶつけてくるという。
「首尾よく、冷やしラーメンに感動させる事が出来れば……取巻きだけでなく、ビルシャナもショックで弱体化も期待出来ますので」
 ビルシャナとなってしまった人間は救う事は出来ないが、これ以上、被害が大きくならないように――来たれ! ケルベロス料理人!


参加者
藤・小梢丸(カレーの人・e02656)
シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)
相良・美月(オラトリオの巫術士・e05292)
山彦・ほしこ(山彦のメモリーズの黄色い方・e13592)
宇部・敦子(おおきないきもの・e13759)
綺羅星・ぽてと(三十路間近系アイドル・e13821)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
工藤・千寛(正統派ヴァルキュリア・e24608)

■リプレイ

●掴みはOK?
「夏の麺は冷やし中華こそ王道!」
 昼下がりの陽射しは、既に夏のそれ。ビルシャナは卵麺のように縮れた羽毛を膨らませ、居丈高に言い放つ。
「冷やしラーメンなど、断じて認めん! 夏が始まる今こそ、冷やしラーメンに天誅を!」
 拳振り上げる勢いのまま、冷やしラーメンを始めたばかりのラーメン屋に殴り込みを掛けるビルシャナと取巻き3名! 荒々しく引き戸を開ける。
 ガラガラガラッ!
「お待たせしました! 審査員の登場です!」
「……は?」
「こちらの辛口審査員4名が冷やしラーメンを試食し、ぶった斬ります! 皆、覚悟はいいかーっ!」
 ビルシャナの反応などキニシナイ。マイクを握り締め、営業スマイル全開の綺羅星・ぽてと(三十路間近系アイドル・e13821)。
「さあさあ、審査員席はこちらでーす♪」
 目をパチクリさせているビルシャナ御一行を、愛らしく招く神宮・翼(聖翼光震・e15906)は、アシスタントだろうか。
 ――ナンダコレ?
 思わず振り返るビルシャナ。通りの幟には、憎き「冷やしラーメン」の文字。だが、言ってしまえば、普通に個人経営のラーメン店だ。
 それが、1歩店内に入れば――『全国ご当地冷やしラーメン選手権』の横断幕がでかでかと。のみならず、手作り感満載な飾付けやら、フリップボードやら……ローカル局の低予算バラエティを思わせる、非日常的空間。
「び、ビルシャナ様……ビデオカメラまで、あります」
「違う違う、収録用カメラだっぺさ」
 取巻きは既に及び腰だが、山彦・ほしこ(山彦のメモリーズの黄色い方・e13592)も、主にプロデューサー的にイイ笑顔だ。
「冷やしラーメンの最大の強みは地域色ゆたかなバラエティだっぺ。まずは、審査員として冷やし中華との違いをしっかり見てくれな」
 カウンターの向こうの厨房では、既に藤・小梢丸(カレーの人・e02656)、シェリン・リトルモア(目指せ駄洒落アイドル・e02697)、工藤・千寛(正統派ヴァルキュリア・e24608)がスタンバイ。スパイシーな香りがしていたり、ごりごりゴマをすっていたり、挽肉を炒める美味しい音がしていたり、それぞれ調理に余念が無い。
「何を言い出すかと思えば……馬鹿馬鹿しい」
 だが、厨房の熱気(というか、寧ろ暑い。ほしこ曰く「冷やしラーメンの涼感が引き立つ、山形盆地の盛夏水準を目指しただよ」)も構わず、けんもほろろに突っぱねるビルシャナ。
「夏の麺は冷やし中華こそ王道! 冷やしラーメンを食うなど時間の無駄!」
「そ、そうだそうだ!」
(「うぅ……気にいって貰えなかったらどうしましょう? き、緊張で胃が痛くなってきました」)
 ビルシャナ御一行は、当然と言えば当然の反応。野菜を丁寧に切りながら、不安そうな相良・美月(オラトリオの巫術士・e05292)の肩が優しく叩かれた。
「お店の人は、もう大丈夫よ」
 ピレネー犬を思わせるもふふわの風貌で、柔和に請合う宇部・敦子(おおきないきもの・e13759)。ぽてとや翼、ほしこ達が煙幕となり、早々に一般人を逃がしたのだ。可能な限り、キープアウトテープで人払いも図っている。
「冷やしラーメンを邪道と言うなら冷やし中華も全力で邪道よ? 他の人が『美味しい』と食べてるものを口にもせずに否定するなんて」
「な、何だと!」
「あなたと話した事もない人に『あいつキモいよな』って言われたら? 試してみなきゃ分からない事は多いわ」
 敦子の正論に、一層表情を険しくするビルシャナ達。
「あれ? 日本生まれの中華系冷麺として先達であり王者である冷やし中華様がまさかの敵前逃亡?」
 すかさず、ぽてとは白々しく声を張る。険悪状態のまま、なし崩し戦闘開始は色々な意味で勿体無いし、何としても避けたい所。
「チャンピオンが挑戦者から逃げるとかないわー、白けるわー、所詮口だけだわー……」
「おのれ……言わせておけば!」
 ノンブレスで頑張ったぽてとの挑発に、ビルシャナは面白い程勢い良く乗っかった。
「所詮はぽっと出の冷やしラーメンが、我が舌を満足させるなど有り得ぬわ!」
 やれるものならやってみろ!――ずかずかと審査員席(4人掛けテーブル席)に座り、そっくり返るビルシャナ。
「び、ビルシャナ様……」
「諸君も早く席に着け! どんな冷やしラーメンが来ようと、木っ端微塵に粉砕してくれようぞ!」
 殴りこんでくる出鼻を挫き、テーブルに着かせて冷やしラーメンを食べさせる――まず、第一関門は突破出来たようである。

●全国ご当地冷やしラーメン選手権!
 ビルシャナと取巻き達が着席した所で、いよいよ始まる「全国ご当地冷やしラーメン選手権」の筈が……。
「では、まず一口♪」
 いただきます、と手を合わせた翼の前にある皿は、明らかに冷やし中華に見えた。
「残念! これは北海道の『冷やしラーメン』なんですよー」
「……何だ、その呼び方詐欺は」
 これ見よがしに冷やし中華……もとい、北海道版冷やしラーメンに舌鼓を打つ翼は、ビルシャナ達の箸が届かないカウンターの向こう側。ビルシャナの唸り声はこの上なくドスが利いていたが、翼は屈託なくお団子頭を傾げて見せる。ちなみに、思い切りカメラ目線だ。
「ですよねー。世間一般では『冷やしラーメン』と言えばもっと別のものをイメージしますよね。つまりそれだけバリエーションに富んでるという事!」
「なるほど……」
 思わず頷いた取巻きの1人は、すぐさまビルシャナの剣呑な視線に身を竦める。
(「そもそも、冷やし中華と冷やしラーメンの違いがわからぬのだが」)
 麺を茹でる鍋からの湯気で眼鏡を曇らせながら、内心で独りごちる小梢丸。
(「スープの量くらいかな? つまり、このビルシャナは細かい事を気にする奴だってこと」)
 細か過ぎて、ビルシャナの主張はザルだ。その辺りに、付け入る隙があるかもしれない。
 ともあれ、今は冷やしラーメンのバラエティの豊かさを見せ付けるのが先。
「では、その個性豊かな冷やしラーメンの数々をご紹介しましょう! ……あ、おいたはメッ! だからね☆」
 明るくおどけて見せて、翼はマイクをぽてとにパス。あくまで、メイン司会を引き立てるスタイルだ。
「さぁ、先ず初めの冷やしラーメンはこちらです☆」
 マイクを受け取り、ぽてとはにこやかに厨房を振り返る。
(「……あ、そう言えば。冷やしラーメンの出す順番、決めてなかったわね」)
 冷やしラーメンは基本、ケルベロス1人に付き1品担当。その種類は存外に多くなった。今回のコンテストも、取巻きを減らし、ビルシャナを弱体化させるのが主旨ならば、もう少し打ち合せるべきだったか。
「エントリーナンバー1番、歌って踊って祈っちゃうノマドご当地アイドル『山彦のメモリーズ』のほしこです☆」
 ぽてとの逡巡を察して、ほしこはすぐさま名乗りを上げた。今は撮影も担当している敦子のビデオカメラに満面の笑みを浮かべ、どんぶり乗せたトレイごとドンッとビルシャナの前に置く。
「おらの冷やしラーメンはコチラ!」
 ほしこの一推しは、福島県喜多方市の和風冷やし。どんぶりを埋め尽くす極厚の焼豚が豪快だ。
「……フン」
 一見して、湯気立たぬ醤油ラーメンか。馬鹿にしたように鼻を鳴らし、渋々の呈で箸を取るビルシャナ。取巻き達もこれに倣う。
 だが、スープを一口、彼らの愕然とした表情に、ほしこは内心でにんまりとする。
「焼豚ウマーッ!」
 和風冷やしの何よりの魅力は、鰹をふんだんに使った醤油出汁と焼豚の旨味コンボ! 喉越し良い平打ち麺が良く絡むスープはすっきり最後まで飲めて、山形の冷やしラーメンに勝るとも劣らない筈。
「ラーメンを山葵を溶かしてすすると最高だっぺ☆」
「薬味に山葵だと!?」
 取巻きの1人が感じ入ったように呟いている。
 初っ端の掴みはOKか。この勢いに乗るべく、2番手となった美月がおずおずとラーメン鉢を運んでくる。
(「冷やし中華も冷やしラーメンも美味しいですよね……でも、今はこのお店の為にも、お客さんの為にも、冷やしラーメンの為にも頑張らなくっちゃ!」)
「わ、わわわ私は、冷やし塩ラーメンを作りました」
「おお! これは、彩り鮮やかです!」
 少女が緊張でカチコチなのを見て取り、すかさず、合いの手を入れるぽてと。翼も解説を求めてプチインタビュー。
「夏野菜ですか? 見た目からしてヘルシーですね!」
「は、はい! 食欲の減退する暑い夏にぴったりのラーメン、だと思います」
 さっぱりした塩味のスープに細麺が泳ぐ。トッピングはトマトやきゅうり、オクラに青シソ等々。
「お野菜たっぷりなので、意中の女性を誘って2人で食べに来てもいいかもしれませんよ」
「!」
 そんな相手がいるかいないか、如実に判る取巻き3人の悲喜交々はさておいて。
「僕は新潟5大ラーメンの1つ、三条カレーラーメンの限定バージョン、冷やしカレーラーメンで参戦だ!!!」
 意気揚々の小梢丸は、カレーの匂いを撒き散らして満を持しての登場だ。
「……何だ、これは」
 どんぶりからしてキンキンに冷えたカレーラーメンを、怪訝そうに眺めるビルシャナ。
「野菜もたっぷり栄養満点。ん~、美味い♪」
 そんな不審も構わず、小梢丸自身、さっさと冷やしカレーラーメンを堪能する。
「これほど素晴らしいラーメンはあるだろうか、いや無い」
 本気も本気の自画自賛に釣られ、一口、ラーメンを啜ったビルシャナと取巻き達。
「これは……!」
 夏の暑さにも負けないひんやり感、スパイスがピリリと利いたバランスの良い辛さ、明らかに「朝になって冷たくなったカレー」とは全く一線を画す味わいだった。

●冷やしラーメンだって美味しいんだ!
「さて、ここまで出場の冷やしラーメンは3点。丁度折り返し地点ですが、皆さんのご感想は?」
 翼の質問に、無言でそっぽ向くビルシャナ御一行。まだまだ、降伏には至ってない様子。司会の名目で彼らを監視するぽてとだが、それでも今の所、暴力沙汰の動きは無い。
 ……というか、満腹になりつつあって、動き辛いのかもしれない。
「そろそろ身体が冷えちゃってませんか? 温かいお茶をどうぞ♪」
 シェリンが振舞った熱いお茶で小休憩。一息ついた所で、後半戦突入だ!
「まずは食べて下さい」
 千寛の力作は、ピリ辛冷やし担々麺。
「ここで、敢えて冷たいラーメンで体を温めて、次に備えて下さい」
 矛盾した言葉のように聞こえるが……神降ろしならぬ、料理の巨匠を降ろしたような気合がめらめらと燃え立つ千寛の形相に、さしものビルシャナも突っ込めなかった様子。
 冷水でしっかりと締めた中華麺を冷たいスープに潜らせ、トッピングは唐辛子の風味が良く利いた挽肉炒めに、シャキシャキもやし。仕上げに万能ねぎを散らし、ラー油と中国山椒を掛けて完成だ。
「お残しは、許しませんからね」
「あ、食べる時はカメラの方に目線お願いしまーす」
「う、うむ」
 千寛の何だかイイ笑顔に思わず息を呑んだビルシャナ御一行だが、文句も言わずシェリンの指示に従う辺り、結構律儀かもしれない。
「では、ボクの番ですね! コクのあるスープとさっぱりお野菜のゴマ味噌冷やしラーメンです!」
 シェリンからは、山形生まれの冷やしゴマ味噌ラーメン。さっぱり系が多い冷やしラーメンの中でも、バッチリコクのある味わいが魅力だ。トッピングのシャキシャキサラダとも相性抜群。是非、こんもり山盛りで。
「こんなに野菜が食べられるなんて!」
 野菜が好きなのか、取巻きの1人はそれはもう嬉々として山盛りサラダを平らげている。
「ビルさんビルさん。そう言えば、『麦切』ってご存知?」
 撮影はほしこに替って貰い、敦子も冷やしラーメンの仕上げに入る。ふと思い付いたような質問に、ビルシャナは怪訝そうに両目を眇める。
「誰がビルさんだ……わしは内陸育ちだ。夏に食べるなら冷やし中華、これ一択だろう」
「その言い方からして、山形県民ね……自分とこの郷土文化に唾吐くな」
(「狐と葡萄ならまだ可愛い話だけど、一方的に敵対視ってのはねえ」)
 顔を顰めてぶった切った敦子の冷やしラーメンは、満を持して、これぞ正当派山形版! 鶏ガラベースの醤油味、キュウリも添えた基本に忠実な一杯だ。
(「出来れば、このお店の渾身の一杯もお願いしたかったけれど……後のお楽しみね」)
 こうして、元祖冷やしラーメンをトリに、6杯の冷やしラーメンがビルシャナ達の胃袋に消えていった――笑顔から一転、真剣な表情で口を開くぽてと。
「冷やし中華は戦前からあった。そして、これまで変わった冷やし中華というのも幾度も作られことでしょう……」
 モノローグのようでいて、その言葉は明らかに取巻き達に投げ掛けている。
「しかし、貴方達の様な冷やし中華原理主義者が他の味を認めてこなかったのよ。そうやって、冷やし中華は進化の道を止めらてしまったのよ!」
「!!」
 ぽてとの舌鋒に、ハッと括目する取巻き達。
「これからは、もっと他の味も認めていかなきゃダメよ☆」
「そうですね……冷やし中華1つだけで完結してしまうのはもったいないです」
「冷やしラーメンで今年は夏バテ知らずなのです」
「冷やし中華も冷やしラーメンもおいしい食べ物! どちらかに固執して、それ以外をダメなんて言っちゃダメだと思います!」
 千寛と美月、シェリンの真っ直ぐな言葉に、お互い顔を見合わせる。
「……そう、だな」
「確かに、冷やしラーメンはどれも美味かった」
「こんなに種類が豊富なんてな。夏中冷やしラーメンでも、きっと食べ飽きないぜ」
 美味はどんな言葉より雄弁だ。ごちそうさま――揃って合掌した取巻き達は、鱈腹をさすりながら席を立つ。
「お、おい! ……おのれ、余計な事を!」
 あっさりと取巻き達に去られ、怒りに身を震わせるビルシャナだが……次の瞬間、満腹と思えぬフットワークの軽さで店を飛び出す!
「斯くなる上は……清めの冷やし中華で口直しすれば!」
「まだ食べる気なの?」
 2本のライトニングロッドを太鼓のバチのように構えるシェリンは、流石に呆れ顔。だが、ここまで来て逃がす訳にはいかない。
「ごっごめんなさいっ」
 必死に謝りながらも、美月の武神の矢が鳥影を貫く。翼も、アンプやスピーカーの集合体のようなアームドフォートから超音波攻撃だ。
「竜をも屠る一撃、その身に受けなさい!」
 千寛の鋭い剣技が羽毛を散らせば、敦子はデストロイブレイドを繰り出し、ビルシャナが他に目移りするのを許さない。
「ぐあぁっ!」
「こうなったら踊るっきゃない、レッツダンシーング!」
 ビルシャナは明らかに弱っている。小梢丸がオタ芸テイストで応援すれば、ほしこの力ある歌声が響き渡る。
「じゃあぽてとちゃん、最後のシメいくっぺよ!」
「砕け散れえぇぇぇぇ」
 ――ちなみに。一仕事の後、皆して冷やしラーメンを堪能したそうです。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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