
●巨乳大作戦
「古来より、胸とは美しい女性を司る象徴であった! だが、哀しいかな……遺伝子の悪戯によって、一生を惨めに過ごさねばならない者が後を絶たない!」
空地に並べられた土管の上で、なにやら鳥頭の怪人が熱弁を振るっている。どう考えてもセクハラにしか聞こえない主張なのだが、しかし周囲に集まった者達は、皆一様に頷きながら妙に納得した表情を浮かべている。
「今こそ、我らが立ち上がる時なのだ! サプリメントに脂肪注入……あらゆる手段を用いて少女巨乳化計画を実行に移し、この世に生きる全ての女性を巨乳にしてやるのだ!」
「「うぉぉぉっ! 巨乳、イズ、ジャスティス! 全ての女の子は、幼女であっても巨乳であるべきなんだぁっ!」」
もはや事案発生と呼んでも過言ではない台詞を叫びながら、異様な熱気の中で盛り上がるビルシャナと信者達。今や、彼らの頭を支配しているのは、貧乳を滅ぼして巨乳だけの社会を作り出そうという、恐ろしく歪んだ妄想だけだった。
●胸だ! とにかく胸だ!
「うぅ……ま、また、とっても怖い未来を予知してしまいました……」
その日、ケルベロス達の前に現れた笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は、恐ろしく脅えた表情で自らの予知した未来について語り出した。
「リーナ・エスタ(シェルブリット・e00649)さんが心配していた通り、小さいおっぱいの女の子なんて認めないっていうビルシャナが現れました。それで……その……胸の小さい女の子たちのおっぱいを、無理やり大きくしてあげるのが正しいと思っているみたいで……そういった女の子を見つけると、変なお薬を飲ませたり、おっぱいに脂肪を注射しようとしたり……」
だんだんと、ねむの瞳に涙が浮かんで来た。おまけに、物凄く語り難そうな様子である。まあ、巨乳化を名目にあんなことやこんなことをされると考えれば、10歳の少女が脅えないはずもないだろう。
「戦いになると、ビルシャナは氷の輪とか鐘の音とか、意味の解らない経文で攻撃して来ます。それに、配下にされていた人達も、説得できていないと一緒に戦いに参加してきちゃいます」
戦闘に突入すると、配下の一般人はビルシャナのサーヴァントのような扱いとなる。彼らの人数は10名程で、ビルシャナさえ倒せば元に戻るのだが……その前に倒してしまうと、彼らが死んでしまうというのだからやってられない。
「配下の人達の目を覚ますには、ビルシャナの言葉に負けないような説得が必要です。でも……たぶん、理屈じゃ説得できないと思います」
説得の際、重要になるのはインパクト。巨乳よりも衝撃的な何かを垣間見せれば、新たな悟りを開いて明後日の方角へ去って行ってくれるかもしれない。
「このまま、こんな人達が増えたら……ねむも、おっぱいだけ大きくされちゃうんでしょうか? そんなところだけ大人になっても、ねむは全然嬉しくないです……」
説明を続けるねむは、既に泣き出す一歩手前だった。そんな彼女を見るに見かね、立ち上がったのは成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)。
「女の子の胸だけ無理やり大きくしようとするなんて……とりあえず、困ったお兄さん達には、しっかりお仕置きしておかないとね」
なんというか、今回も気が重くなる依頼である。だが、これもケルベロスの使命であると強引に割り切ったようだった。
参加者 | |
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![]() フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077) |
![]() リーナ・エスタ(シェルブリット・e00649) |
![]() 高原・結慰(四劫の翼・e04062) |
![]() 舞・冥華(装甲駆逐騎兵・e05871) |
![]() 三千世界・八千代(全てはわらわが戯事なり・e10715) |
![]() エンヤ・レーガン(という夢を見たんだ・e14521) |
![]() 浅葱・ミク(クルーズナビゲーター・e16834) |
![]() フェニックス・ホーク(炎の戦乙女・e28191) |
●乳、それは崇め奉るもの!
ビルシャナと信者達の集まっている空地へ到着するなり、フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)と高原・結慰(四劫の翼・e04062)の二人は、呆れた様子で大きな溜息を吐いた。
「男共は、どうしてこうバカなのだろうか?」
「……はぁ、また面倒な敵が現れたものだね。何で巨乳になんか拘るんだろうね……。意味が分からないよ……」
目の前で熱弁を繰り広げるビルシャナと、それに賛同して卑猥な叫び声を上げている信者達。なんというか、これは酷い。
昼日中から、巨乳がどうのバストがどうのといった内容の話を大声でしている時点で、ご近所様にも大迷惑。というか、どこからどう見てもセクハラでしかなく、何も知らない女性が耳にしたら、明らかに嫌悪感を抱くレベル!
「胸! 胸! 胸! この世界は一体どうなって……」
否、嫌悪感どことか、既にリーナ・エスタ(シェルブリット・e00649)がブチ切れ寸前になっていた。
「とにかく! 胸の大きさで女性を格付けするなど言語道断! このリーナたんが絶対にゆ"る"さ"ん"! 『絶対に』だ!」
身体を小刻みに振るわせて溜めた怒りを拳に込めて、高らかにビルシャナと信者達に宣誓する。だが、そんな彼女の声に振り向いた信者達の目に映るのは、その場に集まった女性達の胸でしかなく。
「おお! なんと悲しい光景だ!」
「推定平均、Bカップあればいい方か? ……まるで、荒涼とした冬の大地に残された枯れ木のようではないか!」
神をも恐れぬ冒涜的な言葉を吐いて、恐ろしく残念な物体を見たと言わんばかりに嘆いていた。
「んー、なんで大きくならないといけないんだろ? このままで何も困らないんだけどなー。おぢさんたち、変態さん?」
想像を絶する巨乳への拘りに、フェニックス・ホーク(炎の戦乙女・e28191)は思わず顔を顰めて信者達に尋ねた。が、彼らに自分達が変態であるという自覚なと欠片もなく、顔を真っ赤にして反論してくるだけだった。
「なにを言う! 巨乳こそ、新たなる人類の核心なのだ!」
「その通りだ! これからの新世紀は巨乳に覚醒した者……即ち、乳タイプが作って行くべきなのだ!」
彼らにとっては、巨乳こそ正義。それ以外は悪であり、胸に栄養を蓄えることのできない者は、愚かな旧人類だとまで言い放つ始末。
「うわぁ……。なんかもう駄目だ、この人達……早くなんとかしないと……」
完全にドン引きした様子で、成谷・理奈(ウェアライダーの鹵獲術士・en0107)が腐った魚のような視線を信者達に向けて言った。三千世界・八千代(全てはわらわが戯事なり・e10715)もまた、白いブラウスとスカート姿へと変わり突っ込みを入れるが。
「三千世界・八千代、貴様らの問答に参加致す……そもさん! お主ら、それは女性を愛でるているのではない。ただ胸フェチなだけ……」
「うるせー! ってか、そもそも胸は性欲の対象になるもんなんだから、フェチって言葉つけんのがおかしいんだよ!」
残念ながら、殆ど屁理屈にしか聞こえない理屈で、ヤケクソな反論が返ってきただけだった。
「巨乳な。わかる。素晴らしいよな。僕も大きなおっぱいに顔を埋めて、優しくよしよしされたい!」
そんな中、エンヤ・レーガン(という夢を見たんだ・e14521)だけは、どこか遠い目をして叫んでいたが、それはそれ。
「むー、この鳥、どわーふの半分ちかく敵にまわしたっぽい。どわーふてきに、胸のおーきさは禁句だとおもいま~」
「ええ……。これは私たちに対する挑戦状です!」
あまりに酷い暴言の数々に、静かな怒りを胸に秘めて、覚悟を決める舞・冥華(装甲駆逐騎兵・e05871)と浅葱・ミク(クルーズナビゲーター・e16834)。もっとも、ここで殴っては意味がないので、まずは可能な限りの言葉を尽くし、敵を論破することにした。
●男の娘、巨乳化計画!?
「全ての女性を巨乳にするといいましたけど、80歳のお婆さんも巨乳にするのですか? みなさんのお母さんや、親戚のおばさんもですか?」
あらゆる女性を巨乳にすると豪語するビルシャナと信者達に、まずはミクが率直な疑問をぶつけて言った。
そもそも、巨乳にしたところで、ちゃんと責任は取れるのか。それに、巨乳というなら相撲取りも巨乳だが、全ての女性がそんな姿になっても良いのかと。
「女性は年齢に応じた体型のバランスが大事です! フィオリナさんとかもそうですよね。お尻も大きいですし」
そう言って、さりげなくフィオリナの尻を撫で回すミク。
「こ、こら。どこを触っているんだ!」
その途端、顔を真っ赤にして叫ぶフィオリナだったが、しかし信者達はむしろ嫌悪感を露わにした様子で、非難の言葉を叫び始めた。
「な、なんという短絡的なやつだ! 胸の谷間と尻の割れ目の区別もつかんとは……」
「それに、俺達が大きくしてやるのは胸だけだ! 相撲取りみたいに、腹までデカくするわけねーだろーが!!」
さすがは、巨乳の願望に脳内を汚染された者達である。彼らの目に映るのは巨乳のみ。尻では乳の代わりにもならないと、バッサリ切り捨てる辺り、かなりの重傷だ。
「巨乳が正義と言うけどさ、巨乳だらけになったら個性が無くなって、そもそも巨乳の存在が稀薄になると思うんだけど……」
ならば、今度は貧乳の希少価値について語ってみせようと、結慰が信者達に問い掛けた。
大きさを比較する対象がなくなれば、巨乳もへったくれもあったものではない。全ての女子がFカップになってしまえば、それはもう巨乳ではなく単なる没個性。
「成長過程の胸って素晴らしいよな。膨らみ始めの希望が詰まった感とか。けど! 貧乳もいいぞ。膨らむことはもう無くても! 優しさはある!」
「胸の大きさが女性の全てだなんてナンセンス! 貧乳は希少価値であり、ステータスだ!」
エンヤとリーナもまた、結慰に追従する形で貧乳の良さを語って聞かた。ついでに言うなら、サプリメントや脂肪注入はドーピングだから邪道である。だいたい、悟りなどと言って恰好をつけてはいるが、満足しているのはビルシャナだけだと。
だが、信者達の頭の中は、既に巨乳のことでいっぱいだ。今更、貧乳がどうのと言われたところで、その歪んだ決意は揺らがない。
「なにが優しさだ! 貧乳にあるのは、寂しさと虚しさだけじゃねーか!」
「それに、俺達は別に、胸に希少価値なんざ求めちゃいねーんだよ! ただ、この世に生きる全ての女性に、幸せになってもらいたいだけなんだ!」
自分達は、あくまで女性のためを思ってやっていると叫ぶ信者達。こういうのを、きっと『善意の押し付け』というのだろう。否、そもそもセクハラにしかならないことを叫んでいる時点で、むしろ『ありがた迷惑』と言った方が良いような気が。
「ひんにゅーはきしょ~かち? むねふぇち? よくわかんないけど、どわーふいじめよくなーい」
こうなったら、もう細かいことはどうでもいい。とにかく、種族的に胸が大きくなれない者のことも考えろと、冥華はのんびりした口調の中に怒りを込めて主張する。彼女からしてみれば、巨乳以外が悪であるなどという考え方は、もはや完全な種族差別でしかない。
もっとも、その辺は信者達も解っているのか、敢えて誤魔化すようなことはしてこなかった。が、しかし、代わりに妖しい視線をケルベロス達に向けると、今度は邪な笑みを浮かべながら迫って来た。
「心配は要らん! 我々は、全ての女性にとっての救世主なのだ!」
「その通り! 小学生でも、発育の良い子はEカップやFカップある子もいる! 我らに任せておけば、君も立派なロリ巨乳にしてあげよう!」
うわ、これはキモい! というか、EカップやFカップの小学生で色々と妄想するとか、この時点で既に警察召喚五秒前!
「ボクは毎日ぎゅーにゅー飲んで、スクスク育つんだよ! いつか立派に大きくなるんだよ! 人の手は借りないんだよ!」
胸の大きさに関係なく、子どもは元気が一番だ。心配されずとも、いずれは育つ。そう言って拒絶するフェニックスだったが、暴走を始めた信者達は止まらない!
「でゅふっ! でゅふふっ! 別に我々は、痛いことをするつもりはないでござるよ♪」
「そうそう! ただ、君のおっぱいを成長させるのを、ちょ~っとお手伝いしてあげるだけだからね~♪」
ある者は両手をわきわきさせながら、またある者は謎の白濁液の入ったコップや見るからに痛そうな注射器を片手に、それぞれフェニックスの胸元目掛けて迫って来た。
「いい加減にしろ! 女性に巨乳を求めるのが正義なら、男性に『大きさ』を求めてもいいのだよな?」
色々な意味で危険なものを察知し、とうとうフィオリナがブチ切れた。その手に握られているのは、紛うことなき枝切狭!
何の大きさを求めるのか、ここでは敢えて口には出すまい。ただ、該当しない者がいるならば、それを『悪』として断罪し、切り落としても構わないだろうと言ってのけ。
「お前たちの言っていることはそういうことだ」
乾いた鋏の音を響かせながら、信者達を右から左へと品定め。が、どうやら、彼女のお眼鏡に適う者はいなかったらしく、残念そうに首を横に振って。
「残念ながら、全員悪のようだな」
空地に響く鋭い音。これには、さすがの信者達も、少しばかり怯んだ模様。
これは好機だ。チャンスに畳み掛けるようにして、八千代は敢えて信者達を煽るような言葉を浴びせて行く。
「『巨乳、イズ、ジャスティス!』と抜かすのは嘘じゃったのか? 貴様らの胸の思いはその程度じゃったのか?」
少女の美しさを胸に抱くのであれば、まずは自分を改めろ。自分も変えることのできない者に、他人の胸をどうこうする資格などない。
「さすれば、サプリメントで自分の胸に脂肪注入して解決! 隗より始めよ……己が変わらずして他人に求めようなどとは笑止!」
はっきり言って、無茶苦茶な主張である。しかし、急所を切断される恐怖で頭のネジが緩んでいた信者達にとって、これは斬新過ぎる発想に思えたようだ。
「そ、そうか! 巨乳パワーで幸せになれるのは、なにも女性だけじゃなくていいんだよな!」
「そうと解れば、善は急げだ! まずは俺達を巨乳に改造した上で、いずれは新しい乳タイプ……『巨乳な男の娘』を作り出すんだ!」
完全に明後日の方向へと妄想を炸裂させ、信者達は空地を飛び出し、猛ダッシュ! 正直な話、それは単なる性転換手術ではないかと思うのだが、もう色々と突っ込んでいるのも馬鹿らしい。
「あれ、放っておいていいのかな? でも……今は、ビルシャナの方をなんとかしないとね」
危険な何かに目覚めてしまった信者達の背中に冷たい視線を送りつつ、理奈は何も見なかったことにして、強引に気を取り直す。
地球上の全ての女性を、もれなく巨乳に改造しようなどという破廉恥な計画。それを阻止するべく、ケルベロス達は改めて、残されたビルシャナと対峙した。
●禁じられた言葉
斜め上の発想により呪縛から解放された信者達。肉の壁としての彼らを全て失ったことで、残るはビルシャナただ一人。
怒り狂ったビルシャナの放つ氷の輪が、巨乳至上主義を説く謎の経文が、それぞれにケルベロス達へと降り注ぐ。だが、それでも数の差は圧倒的。今更、この程度の攻撃で怯む者など、この場には誰一人としていないわけで。
「食らえっ! ボクの必殺魔球!」
ファミリアロッドの変化した小動物に魔力を込めて、ボールのように投げ付ける理奈。その威力は決して大きくはないが、嫌がらせとしては十分だ。
「おのれ、小癪な! ならば……今一度、自分達の胸の小ささに嘆き苦しむがいい!!」
傷口を広げられたビルシャナが、お返しとばかりに鐘の音を鳴り響かせる。それは人々の心に隠された、過去のトラウマを呼び覚ます魔性の音色。
「うぅ……。優しすぎて……優しさが辛い……」
見栄のためにパッドを胸元にたくさん入れていたとき、今の恋人に言われた言葉。それがエンヤの心を容赦なく抉るが、しかしそこはミクがさせはしない。
「頑張ってください、皆さん! トラウマなんかに負けちゃだめです!」
テレビウムのぷろでゅーさーによる応援動画と合わせ、原罪を肯定する歌で仲間達を鼓舞する。たとえ、胸が小さいことが罪であると言われても、そんなもの気にした方が負けなのだと。
「お前に、慈悲の一撃は必要ないようだな」
「女性の価値は、胸だけにあらず! このリーナたんが、直々に成敗してくれる!」
今まで吐かれた暴言の数々。その制裁であるとばかりに、フィオリナとリーナが研ぎ澄まされた一撃をビルシャナに食らわせた。羽毛が凍結し、粉々に粉砕されて行く中、続けて結慰が音速を超える速度で拳を繰り出し、ビルシャナの身体を土管に叩き付けた。
「巨乳、巨乳、煩いよ。何で巨乳なの? 貧乳に人権は無いの? 貧乳が何でそんなに駄目なの?」
粉砕された土管の残骸に埋まっているビルシャナに、結慰は恐ろしく冷たい口調で問う。その眼差しは、まるで殺処分される前の害獣に向ける、哀れみと嫌悪の感情が入り混じったものと同じだった。
「ねぇ、何でなの? 何で其処まで否定するの? すっごく、不愉快」
「う、うるさい! なぜ、巨乳なのか、だと……。乳は母性の象徴! 故に、母性の欠片もない貧乳女など、生物学的に見ても欠陥品だからじゃぁっ!」
ああ、言っちゃった。事ここに及んで、まさかの最低最悪な差別発言。あまりに不快極まりないビルシャナの言動に、とうとうケルベロス達は本気でブチ切れた。
「「「……死ね!!」」」
こんなやつ、情けをかけてやる必要さえない。
攻性植物を解き放ったエンヤがビルシャナの身体に猛毒を注入し、八千代がナイフで更に傷口を抉って行く。おまけに冥華のミミック、はこまでが、大口を開けてビルシャナの尻に噛み付いた。
「うぎゃぁぁぁっ! し、尻がぁぁぁっ!」
「ん、今回の冥華はどーわーふ代表。判決、鳥はゆーざい、慈悲なしっぽい」
尾羽を食い千切られるビルシャナに、無情にも告げられる冥華からの死刑宣告。アームドフォートの一斉射撃を容赦なく叩き込むが、これで即死できていたら、まだ幸せだった。
「子供は子供らしく、大人になるため頑張るんだよ。それを無理に奪う権利は、キミにはなーい!」
そういうわけで、やっぱり死刑判決は覆らない。最後はフェニックスからも死刑を宣告され、彼女の呼び出した巨大な火の鳥がビルシャナへ向かって飛んで行く。
「ぐ、ぐぁぁぁっ! おのれ……貧乳どもめぇぇぇっ!!」
真紅の炎に包まれて、天高く舞い上げられてゆく鳥頭。最後に、フェニックスの真上まで吹き飛ばされたところで、ビルシャナの身体は薄汚い花火となって、木っ端微塵に弾け飛んだ。
「自分のやってることが絶対的な正義だと思ってる奴ってのは、大体間違ってんだ。よく覚えておきな」
最後に、どこからか真理を告げるような青年の声がした。が、それを理解するだけの身体も心も、既にビルシャナには残されていなかった。
「外見なぞいつかは色褪せる物……。内面を愛されてこその喜びよ」
砕け散ったビルシャナの残滓を横目に、瑠璃硝子のお守りを取り出して呟く八千代。
胸の大小に貴賎なし。それに、大切な人のことを想って過ごしていれば、意外と胸なんて勝手に大きくなって行くものであると。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2016年6月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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