オウガメタル救出～救いを求めるもの

■リプレイ

●オウガメタル救出～救いを求めるもの
　ふわり。飛行するのはオラトリオのシア・アレクサンドラ（イツワリノウタヒメ・e02607）、ヴァルキュリアのミーシャ・クライバーン（トリガーブレード・e24765）、そしてエストレイア・ティアクライス（メイド騎士・e24843）の三名、他、戦力的危険を考慮して動物変身で黒い仔猫姿の円城・キアリ（傷だらけの仔猫・e09214）がシアに抱えられている。
　探すのはオウガメタル。銀色の光を発光信号のように光らせてくれる。でも、降下の誤差が生じる事を考えて飛行部隊がオウガメタルの回収に向かうのだ。オウガメタルの回収には兵隊蟻に狙われない様に遮光布も用意している。
「あ、あの辺り、きらきらしているわ」
　猫の目の良さでキアリが声を上げる。キアリの誘導で向かうと他のメンバーでも見えて来る。
　エストレイアが銀の光を放つオウガメタルに声をかける。
「もう大丈夫です、私達が助けに来ました！」
　しかし、オウガメタルは答えない。言葉は交わせないようである。だが、その意思は通じたようで、それを確認してからエストレイアは地上で待つ後続部隊へ向けてシグナルを発した。
　そのまま飛行部隊はオウガメタルの救出にかかる。ある程度のオウガメタルが救出できたその時、キアリが声を上げた。
「兵隊蟻が来たわ！」
　全てのオウガメタルの救出は無理だ。この兵隊蟻に倒されてしまっては助けられない。
　地上部隊の到着までに兵隊蟻と働き蟻２体を止めなくてはならない。全てを救出出来なかった事は残念だが、シア達は下降して構える。動物変身を解いたキアリも構えた。地上部隊の仲間達が分かりやすいようにライト等の光源の確保にも動く。
「私はアリア騎士ディーアルーサ。オウガメタルを回収に来た。私達にオウガメタルを返して貰おう」
　礼儀正しくアリア騎士と名乗った兵隊蟻は漆黒の騎士という姿をしている。恐らく騎士気質なのだろう。
「お前達、私のサポートを頼むぞ」
「はっ！　ディーアルーサ様！」
　働き蟻達も彼女のサポートに徹する構えの様だ。
「オウガメタルはわたくし達がお護りしますわ！　いきますわよ！」
　そう宣言すると、シアがアリア騎士へ向かって対デウスエクスのウイルスカプセルを放った。アリア騎士の治癒能力が阻害されていく。
　アリア騎士もすぐさま動く。シアに向かって、その牙を伸ばしてシアへと報復とばかりに喰らいつこうとする。それを見たエストレイアが庇いに入った。
「シア様、大丈夫でございますか？」
「ええ、ありがとうございます、エストレイア様」
　身を呈して護ってくれた彼女にシアは礼を述べる。
「さあ、覚悟するんだ！」
「凍てつく氷への準備はいいかしら？」
　ミーシャは妖精弓を引くとアリア騎士の心臓を目指して射抜く。続けてキアリが氷を纏った螺旋を放った。
　だが、働き蟻達も動く。二匹がミーシャ達へと向かって羽をこすり合わせる。破壊音を奏でてミーシャ達は激しい音に頭の痛みに必死に耐えるしかなかった。
　このままでは厳しい。早く合流して貰わなくては。

●合流、そして戦いへ
「勇気の戦士仮面ブレイバー推参、お前の相手は俺達だ！」
　ライドキャリバーに乗った天空・勇人（勇気のヒーロー・e00573）の声が聞こえる。地上部隊がやって来たのだ。
「貴方の相手はこちらですよ！」
　フェイト・テトラ（悪魔少年は識りたい・e17946）が放つ魔法は『魔法使いのおじいさん』から継いだ魔法で、自らの方に敵の意識が向くようにと影がアリア騎士の眼前を薙ぎ払う攻撃を行った。そして、猫夜敷・千舞輝（毎日が猫曜日・e25868）が続いてフェイトへと癒しと様々な物を打ち破る力を与える。
　勇人とライドキャリバーが共に動く。勇人がアリア騎士へと向かって急所を狙う蹴りを放ち、更にライドキャリバーが炎を纏って突き抜けた。
　最後に大河原・萌（スタンドアップガール・e28775）が光の輪をアリア騎士へ向かって飛ばした。
「成程、別部隊が居たのか。しかし、人数など関係ない。お前たちを倒せば良いだけの事」
　余りアリア騎士は脅威に感じていないようである。どちらにしてもアリア騎士の使命はケルベロス達を倒す事。一歩も引くつもりなどないのだ。
「……僕に攻撃意識が向いたでしょうか？　どちらにせよ見切られない様にしなくてはいけませんね。アデル、一緒にいくよ！」
　フェイトは妖精弓を二つ束ね、漆黒の巨大な矢をアリア騎士に向かって撃ち放ち、続くようにアデルは金縛りを放つ。続けてミーシャの放つ炎のドラゴンが襲いかかった。
「眠りなさい、魂の帰る場所、優しさに包まれながら」
　シアがバイオレンスギター『Starlight parade』を奏でながら歌う。それは、静かに……まるで死へと誘うように、と。
「お前達の好きにはさせない！」
　勇人の二本のゾディアックソードを構える。そして十字を描くように斬りつけていく。そして彼のライドキャリバーが走るとアリア騎士の足を引き潰した。
「アロン、千舞輝を護ってあげて」
　キアリはオルトロスのアロンへ千舞輝を護る様にと向かわせる。そして自身はアリア騎士を目指して螺旋を纏った拳を放つ。しかし、それを妨害するように働き蟻がキアリの攻撃を受け止めた。
「やはり働き蟻といえど、護りに入られると面倒だな」
　ミーシャはアリア騎士へと狙いを定める。妖精弓の矢を引くと心臓を目がけて撃ち抜いた。
「この剣が折れない限り、戦い抜いて護り通します！」
　エストレイアは気合いを入れ直すと、アリア騎士へと重い一撃の蹴りを放った。
「火詩羽、行くで！」
　千舞輝が猫の光は七光りでミーシャ達へと異常を治していく。相棒の火詩羽は萌達に加護の光を送り込んだ。
　アリア騎士も動く。千舞輝へ蹴りが叩き込まれそうになるのを傍に居たアロンが飛びだして護った。
「絶対にオウガメタルさん達を守る！」
　萌は炎のドラゴンを放ち燃え上がらせる。そして萌の相棒のウイングキャットは勇人達に加護の光を送り込んでいった。
　もう一匹の働き蟻はエストレイアを狙う。棘を突き差し、その身体の動きを奪っていった。
「上手く入らなかったようですね……。アデル、サポートをお願い！」
　まずはアデルが足止めをかける。そこにフェイトがアレース・ゲラーン・ニコ・エリュトロンを再び仕掛けた。アリア騎士に向かって大きく影が薙ぎ払っていく。
「いきますわよ！」
「避けられるか？」
　シアの放ったオーラがアリア騎士を吹き飛ばす。そこにミーシャの凍てつく螺旋が絡みついた。
　アリア騎士がフェイトに向かって牙を振るう。それを、勇人とライドキャリバーが駆けつけ庇った。
「キアリ様、萌様、宜しいでしょうか？」
「ええ、構わないわ」
「頑張ります！」
　エストレイアの言葉にキアリ、萌は頷く。連続して攻撃をして、攻撃を防がれない為だ。
　エストレイアはアームドフォートからの主砲の一斉射撃を始め、続けてキアリの凍てつく螺旋が飛ぶ。そして萌のマインドリングが切り裂いた。
　働き蟻二匹は羽を擦り合わせる。不快な音が二重に木霊し勇人達の正常な判断を奪っていく。
「ネコマドウの七、「猫の光は七光り」。うおーまぶしー」
　千舞輝はすぐに回復に入る。猫が光を放てばＬＥＤの七倍明るいという癒しの力だ。
　フェイトは漆黒の弾丸を働き蟻へと放ち、アデルが足止めに入る。続いてシアが再びウイルスをアリア騎士へと向かって放った。続いてミーシャが氷の螺旋を放つが、働き蟻がアリア騎士を庇いに入る。
「ご無事ですか、ディーアルーサ様」
「ああ。良い働きをしてくれた。感謝する」
　そう礼を述べるとアリア騎士は自らの傷を癒し始める。それは同時にその守備力さえも高めていっていた。
「庇われてしまった上に、回復に入られたか。しかし、回復に入るという事はダメージが蓄積しつつあるという事だな」
「そうだな。まずは俺が活路を開くぜ！」
　ミーシャの言葉に頷くと、勇人はライドキャリバーに騎乗すると、アリア騎士の急所をつく蹴りを叩き入れ、そこに炎を纏ったライドキャリバーが疾走する。
「じゃあ、わたしは働き蟻に脅しをかけるわね。それにアリア騎士だっけ？　あいつにもダメージ入れるわ」
　キアリの放ったブラックスライムはアリア騎士と働き蟻の一匹を飲み込んだ。
「守り、固めるで！」
　千舞輝の放つ光が勇人を癒し、守備力も高めていく。
「星厄の光、満ちたり。儚き者よ、燃え尽きろ」
　エストレイアの詠唱が響く。星厄剣から溢れる黒き光が刃に乗るとアリア騎士へと撃ち放たれた。続き、萌も炎の竜を解き放つ。最後にアロンが神器の剣で斬り裂き、ウイングキャット達はケルベロス達の回復と加護の力を高めていった。
　アリア騎士がフェイトに向かって鋭い蹴りを放って来る。それを受け止めながらアデルと共に足止めにかかった。
　シアの槍が稲妻を帯びる。それを一気に突き刺して痺れさせた。動きが鈍った所を見て、ミーシャが弓を引き、心臓を矢で貫く。畳みかけるように勇人のゾディアックソードが十字を描いて斬りつけると、ライドキャリバーが足元を狙って轢いた。
　働き蟻達が同時に羽をこすりつけて不快な音を鳴らす。今度はケルベロス達全員に響き渡った。一部、避けられたものもいるが多くが混乱の中に入る。
　千舞輝は何とか猫の光は七光りを使ってシア達を癒す。フェイト達の回復は火詩羽が担ってくれた。
「危ないとこやった……。良く考えれば、全体に同じ攻撃を受ける可能性、あったんや。火詩羽、おおきにな！」
　一人だとかなり危ない事態だった。火詩羽のおかげで大惨事が防げたようなものだ。千舞輝は深く感謝する。
「エストレイア、萌、一気に叩き込むわよ」
「承知いたしました」
「確実に当てるよ！」
　意思疎通を確認し合ったキアリ、エストレイア、萌は一気にアリア騎士に攻撃を加える。
　キアリの拳による爆破攻撃、エストレイアの弱点を断つ一撃、萌のマインドリングによる切り刻む攻撃が流れるように叩き込まれた。
　アリア騎士の士気は高い。捨て身の覚悟で死力を尽くして来る、そういう目をしている。それはアリア騎士が騎士としての誇りを持っている事をケルベロス達にも強く感じさせた。
　……だから、互いに敬意を持って戦う。アリア騎士、ケルベロスの誇りにかけて。
「ゲートを守る為にも負ける訳にはいかない！」
　アリア騎士の戦意に働き蟻達も鼓舞されている様である。
「僕達もオウガメタルを護ります！」
　フェイトがそう宣言し、ケルベロス達も気持ちを新ためて引き締めた。
　攻撃は狙い通りフェイトに偏りつつあるものの、勇人やエストレイア達が庇いダメージを一か所に集中させずに拡散していく。シアとミーシャは出来うる限り攻撃をアリア騎士に絞って狙い戦っていく。働き蟻が庇う事もあるが、萌やサーバント達、また余裕があるメンバーが攻撃を続ける。仲間達の回復は千舞輝と火詩羽がカバーし、厳しい時はシャウトで対応して貰う。
　ケルベロス達もアリア騎士達も自分達の力を生かし、効率を考え、共に声をかけあい連携をとって対応していく。
　続く攻防。
　そして、シアの放つ稲妻がアリア騎士を貫く。動きが鈍った所に勇人が動いた。
「オウガメタルは守り抜く！　食らえ必殺、ブレイバァァァキィィィック！！」
　宙高く跳躍し、青いオーラを右足に纏わせながら渾身の蹴りを放つ。
「……！！」
　その一撃でアリア騎士は動かなくなった。
「ディーアルーサ様が倒れてしまわれた……！」
「あの方がいらっしゃらなければ勝ち目は無い……！」
　自らの上司の死を知った働き蟻達は去っていく。それをケルベロス達は深追いしない。
　……そう、オウガメタルを護る事に成功したのだから。

作者：白鳥美鳥	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年6月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 4／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 5
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