オウガメタル救出~追っ手アリから守りきれ!

作者:なちゅい

●逃げ出したローカスト
 山陰地方の山奥。
 人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
 異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
 この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
 そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
 大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
 この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
 だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
 その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。
 
 ヘリポートへ駆け込んできたケルベロス達。
 すでにそこでは、リーゼリット・クローナ(シャドウエルフのヘリオライダー・en0039)が離陸の為のスタンバイをしている。
「来てくれてありがとう。早速だけれど……」
 彼女は挨拶もそこそこに、状況説明を始める。
「黄金装甲のローカスト事件を解決したケルベロス達が、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことができたそうだよ」
 絆を結んだ結果、アルミニウム生命体は、本当は『オウガメタル』という名前の種族で、自分達を武器として使ってくれる者を求めている。
 現状、オウガメタルを支配しているローカストは、グラビティ・チェインの枯渇を理由として、オウガメタルを使い潰すような使用法をしている。特に、黄金装甲化は、オウガメタルを全滅させる可能性すらある、残虐な行為であると言う。
「情報として得られたのは以上だね。自分達の危機を悟ったオウガメタルに、助けを求められているんだよ」
 ここまでは経緯。一呼吸置いたリーゼリットはこれからが依頼内容だよと続ける。
「オウガメタルと絆を結んだケルベロス達が、今、オウガメタルの窮地を感じ取ったそうなんだよ」
 オウガメタル達はケルベロスに助けを求めるべく、ローカストの本星からゲートを通じて脱出、地球に逃れてきたようだ。しかし……。
「当然、最重要拠点であるゲートには、ローカストの軍勢がいるよ」
 このままではローカスト達によって、オウガメタル達は遠からず、1体残らず殲滅されてしまう。
 オウガメタル達が追われているのは山陰地方の山奥。リーゼリットはこれから、ヘリオンで現地に向かうと言う。
「目的は2つ。オウガメタルの救助、そして、ローカストの撃破だよ」
 この作戦に成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えられるだけでなく、ローカストの最重要拠点であるゲートの位置も特定する事が可能になるかもしれない。
 しかし、ゲートの位置に関わる事から、ローカスト達の攻撃も熾烈になるだろう。
「戦いは厳しいものとなると予測されるけれど、皆に助力を願いたいんだ」
 ローカスト達は、兵隊アリ1体が働きアリ数体を率いた群れで山地の広範囲を探索して、逃走するオウガメタルの殲滅を行っているようだ。
「ボクが視たのは、兵隊アリ1体と働きアリ2体の群れだね」
 ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎだ。逃走するオウガメタルは銀色の光を発光信号のように光らせるので、それを目標に降下すれば、オウガメタルの近くへ降下する事ができるだろう。
 降下には誤差がある為、すぐそばに降下できるわけでは無いが、百メートル以内の場所には降下できると思うので、合流は難しくない筈だ。
「合流したとしても……兵隊アリの戦闘力はかなり高いようだよ」
 追っ手である兵隊アリは、ゲートを守るという役割からか、どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無いだろう。
 働きアリは、戦闘は本職ではないが、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っている。ただ、兵隊アリが撃破されて状況が不利だと思えば、働きアリは逃げ出す可能性があるようだ。
 説明は以上だよとリーゼリットは告げ、最後にこう付け加えた。
「この1件は、ローカストと決着をつける契機になるかもしれないね。それに……、助けを求めるオウガメタルを見過ごすわけにはいかないよ」
 皆の活躍を期待しているよ。そう告げた彼女は、ケルベロス達へとヘリオンに乗るよう促すのだった。


参加者
リーズグリース・モラトリアス(怠惰なヒッキーエロドクター・e00926)
槙島・紫織(紫電の魔装機人・e02436)
リヴィ・アスダロス(魔瘴の金髪巨乳な露出狂拳士・e03130)
アイビー・サオトメ(世界はそれをアイと呼ぶんだぜ・e03636)
ペーター・ボールド(ハゲしく燃えるハゲ頭・e03938)
葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)
白銀・ミリア(ピストルスター・e11509)
折平・茜(群れない羊は葡萄に触れない・e25654)

■リプレイ

●オウガメタルを助けに……
 ヘリオンは、中国地方上空を飛ぶ。
 具体的な場所は逐一移動をしていることもあって分からないが、山の中、ちらほらと何かが光っているのが、待機しているケルベロス達にも分かった。
「夜の山中で光るものを探すなんて、宝探しみたいだね」
 葉月・静夏(戦うことを楽しもう・e04116)がその光を見下ろしつつ呟く。光は、ローカストに追われているアルミニウム生命体、オウガメタルに他ならない。緊急事態ではあるのだが、彼女はそれにわくわくしていた。
「再びオウガメタルの救出依頼だ。前と同じように、あたし達が必ず救出してやるぜ」
「不退転達を倒した事で、こんな展開になるとはな……。ともあれ、オウガメタル救出、成し遂げて見せよう!」
 白銀・ミリア(ピストルスター・e11509)、リヴィ・アスダロス(魔瘴の金髪巨乳な露出狂拳士・e03130)は同じ依頼でローカストを撃破した際、一度オウガメタルを救い出している。今回もその心積もりだ。
「オウガメタルの救出、頑張る、ね」
 やや眠そうなリーズグリース・モラトリアス(怠惰なヒッキーエロドクター・e00926)も、言葉ではその救出をと意気込んでいた。
「お友達になってくださる人達が増えてくれるみたいです! 頑張りますです!」
 拳を握る姿が可愛らしいアイビー・サオトメ(世界はそれをアイと呼ぶんだぜ・e03636)は男の娘だ。なんでも、仲良くなれそうな人がいるということで、彼女、もとい、彼は仲間達と一緒に救出活動を頑張りたいと口にしていた。
「デウスエクスであっても、侵略者ではなく助けを求めているなら手を差し伸べたい」
 ただ、槙島・紫織(紫電の魔装機人・e02436)の場合は、助け出したいのはオウガメタルだけではないようだ。
「ローカストもぉ、できれば助けてあげたいのですけれどぉ……、今の向こうのスタンスでは、難しいですねぇ……」
 現状では、ローカストがケルベロスへ歩み寄る様子はない。残念ながら、自衛の為に備える必要があるだろう。
(「……皆、わたしより強い人達で、こんな人達がこういう修羅場を潜ったからこそ、ガイセリウムが墜せたのでしょうか……」)
 そんな仲間達に、折平・茜(群れない羊は葡萄に触れない・e25654)は頼もしさを覚えていて。東京防衛線でのケルベロスの活躍は記憶に新しい。
 だが、今は、自身もその一員。オウガメタル救出の為、茜もまた気持ちを新たにするのである。

●合流は阻まれて
 1つのオウガメタルの光を捉え、ヘリオンから降下するケルベロス達。リーズグリースは闇夜対策にと、キャンプ用のルミカライトを出来る限り用意していた。彼女はそれを抱えつつ降下し、オウガメタルの近くに投下して光源を確保しようと試みる。
 しかしながら、移動を続けるオウガメタルとローカスト……兵隊アリに働きアリ。光源として機能させるにも一苦労だ。
 ペーター・ボールド(ハゲしく燃えるハゲ頭・e03938)はというと、ライドキャリバー、ボルのライト、そして、携帯品として持ち込んだ照明器具を灯りとしていた。静夏もまた、携帯する提灯おばけで周囲を照らす。
 その上で、先行するミリアが夜目を駆使しつつ、何が起きてもよいようにと万全の態勢で追跡する。さらに茜が森の小道を利用することで、移動のサポートを行う。最悪、障害物は直接グラビティで排除と考えていたリヴィはそれに助けられた形だ。
(「……彼らを、なんとしても落とすわけにははいかない……」)
 茜の呟きに、メンバー達は頷く。
 どうやら、すでにオウガメタルはローカストに取り付かれていたようだが、それもまださほど時間が経ってはいない。紫織、アイビーも仲間の後を追い、オウガメタルへと近づいていく。
「イカした俺に!」「あたしが!」
 オウガメタルへと最初に接触するペーターが割り込みヴォイスで声を張り上げ、それにミリアが声を合わせる。
「俺達に!」「あたし達が!」
「任せろ!」「絶対に助ける!!」
 どうやら、言葉は通じていないようで、首を傾げるオウガメタル。
「メガルムを倒して得た物だ、これならどうだ?」
 リヴィが取り出したのは、ローカストの隊長の重甲な金剛角だ。
 それらに対して目に見える反応はなかったが、ケルベロスが救出に来たというニュアンスはオウガメタルに伝わったようだ。
 だが、ほぼ同時にアリ達によって包囲され、その攻撃が始まってしまう。このままではオウガメタルが危険だ。
 可能であれば、オウガメタルを逃がしたいが、これでは……。
「さあ、ボク達一緒に行きましょう!」
「お願い、私達に力を貸してほしいの!」
 アイビー、静夏の言葉にもやはり反応を示さない。自身や仲間達がその装備が出来る状況が許せば違ったかもしれないが、現状、直接力を借りることは難しそうだ。
 それはそれで、オウガメタルの危機的状況が変わらないということでもある。
 仕方なく、ケルベロス達はオウガメタルを囲むローカストを、さらに囲うような形で布陣していく。
「こっち、よ」
 リーズグリースもそれに参加する。できるならローカストの気を引きたいところだ。
「逃げる敵しか相手取れんのか? これでは、メガルム達も浮かばれんな?」
 リヴィが挑発をするが、兵隊アリは実にクールだ。
「我らアリア騎士、その程度で激情すると思ってもらっては困る」
 思った以上に冷静な敵。リヴィは思わず舌を巻いてしまうのである。

●守りたい想い
 まずは、オウガメタルからアリ達の気を引きたいと考えるケルベロス達。飛び出したのは静夏だ。
「いくよ!」
 退魔の撞木を大きく振り上げた彼女は腕力だけでそれを操り、兵隊アリ……アリア騎士へと叩き付ける。デウスエクスの強さを肌で感じる静夏。命のやりとりをしていると実感した彼女は楽しそうに微笑む。
 その騎士は高く飛び上がり、キックを繰り出してくる。その鋭い蹴りをライドキャリバーのボルが受け止め、炎を纏って反撃を食らわせていた。
「イカスぜ、ボル!」
 地獄化した髪を、勢いよく燃え上がらせるペーター。彼はすっと息を吸い込む。
「俺をおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!! みいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
 叫ぶペーターの声は、ボルに積載した指向性スピーカーを兵隊アリへと向け、体すら震えさせそうな声で敵の注意を引き付ける。
 さらに、リヴィが仕掛けた。
(「こいつらはリーダーの兵隊アリを倒せば、撤退するらしいのでな」)
 だからこそ、狙うは兵隊アリなのだが、どうやら働きアリのうちの1体は壁役のようで、その身を張ってくる。
 リヴィは已む無く、働きアリの動きを止めようと古代語を唱えて魔法の光を放ち、働きアリの足1本の根元を石と化していたが、働きアリはしっかりとアルミの牙を生やして喰らいつくことで反撃してくる。働きアリも決して弱い敵ではない。しばらくは一時も気を抜けない闘いが続きそうだ。
 その間に、紫織はライトニングロッド『Baculum fulgur』を操る。
「皆さんを守りませんと……」
 ふだんはゆるふわな印象を抱かせる紫織だが、一度闘いとならば、冷静沈着な性格を思わせる鋭い視線を敵に向けてクールに言い放つ。そして、彼女のロッドに従い、雷の壁が後ろのメンバーを守るように展開していく。
 リーズグリースもまた、後ろのメンバーへと雷の壁を展開させる。とかく、破壊音波やアルミによる石化が怖いと判断しての対応だ。
「受け継ぐ力を解き放て!!!」
 さて、ミリアは小さな体で前線に立つ。そして、胸の内に溜め込んだ恐怖や怒りを解き放ち、破壊の一撃を砲撃として放った。
 それが兵隊アリに浴びせかけられると、アイビーがローカストに怒りを覚えながらもグラビティの構えを取る。
 折角、仲良くなれそうなお友達を攻撃するなんて。アイビーにはそれが許せない。
「彼らの気持ちも考えてください!」
 怒りのままに、アイビーは竜の幻影を兵隊アリへと飛ばして、焼き払おうとする。だが、それが働きアリによって遮られたことに、アイビーはちょっとだけむくれていたようだ。
 茜は少し遅れて、自分を含めた後列メンバーの足元の地面へと守護星座を描く。そうして、更なる支援をと考えていると、ローカストがケルベロスの相手を行うドサクサに紛れ、オウガメタルがその包囲から逃れてこちらへとやってきていた。
「私達は、敵ではない」
 それに気づいたリヴィが声をかけるが、オウガメタルに言葉の意味は伝わってはいない。ただ、ニュアンスは伝わったのか、オウガメタルはケルベロスの背後に隠れるように身を縮こまらせていたのだった。

 働きアリは並の強さといった印象を受ける。個々のケルベロスと同格くらいの印象か。
 ただ、アリア騎士は、全員で当たらねばならないほどに強力な敵ではある。隊長クラスと戦ったメンバーから言わせれば、それには劣るが、油断はならない相手だ。
 仲間に壁を張り終えたリーズグリースは攻撃に打って出る。
「錬成開始、基本症状設定、薬剤選定、調合調整、錬成終了」
 リーズグリースは数種類の薬剤を調合し、出来上がった薬品を騎士の足元へと投げつける。いくらローカストとはいえ、効果は覿面。麻痺の成分がローカスト達の体を苛んでいく。
 静夏やペーターは、それに苦しむ兵隊アリを集中して狙う。時に邪魔する働きアリをあしらいつつも、炎を纏わせた一撃を静夏が兵隊アリに叩き込み、ペーターが傷つく仲間メインで溜めた気力で自身や仲間を癒していく。
 敵にメディックは不在。そう判断したリヴィは、邪魔するディフェンダーの働きアリの体を石へとしようと狙う。
 だが、自身もまた防御役。働きアリの攻撃による壁となることも考えれば、効率はいいとは言いがたい。味方にジャマーがいれば、少しは違ったろうが……。
 怯えるオウガメタルを見て、アイビーは奮起する。仲良く出来そうな人……人型の生命体が増えそうなのだから。精一杯頑張ろうと、彼はガトリングガンを連射させていた。

 長引くローカストとの戦い。
 ケルベロスは敵を抑えつつ回復する攻撃を繰り返すが、なかなか敵を効率よく押さえ込むことができず、消耗戦の様相を呈してきてしまう。それだけ、アリア騎士は屈強な兵隊であったと言える。
 回復を続けていたペーターだったが。彼を庇ってくれたボルが働きアリの喰らいつきでその場から消えてしまう。そして、ペーターもまた、怒りを覚えさせた騎士の攻撃に苦しめられていた。一撃が非常に強力な為、回復が追いつかなくなってくる。
「イカしてねぇぜ、てめえはよ……」
 燃える地獄ヘアーがやや弱まり、深く息をするペーター。しかしながら、敵はカマキリの刃と成した腕で彼の体を貫き、その体力を奪い去ってしまう。ついには頭の炎が消えてしまい、ペーターはその場に倒れこんでしまった。
 紫織は悔しそうにペーターを見下ろす。しかし、これ以上仲間を倒れさせるわけにはとサポートの為に雷の壁を構築させていく。
 茜も途中まではオウガメタルの傷を癒していたこともあり、前衛メンバーの手当てが一手遅れてしまっていた。
 ただ、仲間の回復にも当たる茜が敵を見れば、騎士を庇い続けている働きアリの体力が残り少ない。
 今なら。茜はバスターライフルを展開し、魔法光線を発射する。その一撃が働きアリの体を貫通し、敵の体内のアルミが漏れ出した。
 そんな中、静夏は騎士に狙いを定める。
「夏の暑さも、あなたの力も、風鈴の音で少し和らげるよ」
 彼女は敵へと左拳を当てようとする。だが、それを働きアリが身を呈し、己の傷を顧みることなく静夏の攻撃を受けることとなって。
 彼女が拳を激しく振動させると、心地よい風鈴の音が聞こえる。それを耳にしながら、働きアリの体内からはアルミと体液とが漏れ出し、ついにそいつは力尽きて、その場に倒れてゆく。
 そこを狙う兵隊アリがまたも、カマキリの刃となした腕を振り下ろす。静夏はそれを腹深くまで食い込ませてしまう。
 ギリギリのところで、それに耐える静夏。しかしながら、彼女はその状態でなお、笑いを見せている。
「当面はこれで……」
 一方の紫織は仲間が危ういと、緊急手術を行うことでその傷を癒すが、果たしてどこまで持つか……。
 ともあれ、凶刃を振るう騎士をいち早く仕留めねばならない。
「とにかく攻撃!」
 敵の盾は失われたのだ。後は騎士を狙うのみ。ミリアはルーンアックスを高速で振り回し、兵隊アリへと叩き付け、さらに敵の鎧を砕いてしまう。
「皆、あたしに続け!」
 先導する彼女に合わせるように、リーズグリースはファミリアロッドを小動物へと戻し、自身のサキュバスとしての魔力を込めた上で飛ばす。仲間がつけた傷をその小動物が広げると、今度はリヴィが躍りかかる。
「我が降魔の連撃で沈むがいい……!」
 彼女は修練で磨き上げた己の全身を駆使して、アリア騎士へと叩き込む。拳、蹴り、頭突き、体当たり、さらにドラゴニアンの翼や長い尻尾も使い、ことごとく殴打を食らわせていく。
「くっ……」
 ようやくよろけた兵隊アリを、遠方からアイビーが狙う。
「さぁ、あなたも。この寂しさに堕ちて、来て……」
 アイビーは、自身の内にある寂しさを、孤独を恐れる感性を、フェロモンを通じることで相手に共有させる。そうして、彼は敵を内部から押し潰す。
 感情を共有しているのか、瞳にハートマークを浮かばせる兵隊アリ。だが、それも消えてゆく。そいつは意識を完全に失い、仰向けに倒れて絶命してしまった。
「これで安全、かな」
 リーズグリースが呟く。残った働きアリは恐れをなして、いずこともなく走り去っていく。
 追撃はしないというチームの方針もあり、ケルベロス達は矛を収めたのであった。

●保護したオウガメタルと……
 かなりの傷を負いはしたが、ケルベロス達はアリア騎士を名乗る兵隊アリと働きアリ1体を討伐できた。
「やりました、よね……。わたしはお役に立てました、よね……?」
 任務達成に安心し、茜は膝を突く。
 そして何より、一行はオウガメタルを保護することが出来た。
「意思疎通、できるか、な?」
 リーズグリースが改めて、オウガメタルを撫でながら意思疎通を図ろうとする。会話は残念ながらできなかったが、なんとなく、喜んでいることだけは感じ取れた。
「ようこそ地球へ。今後はよろしく頼むぞ?」
 紫織がさらに歓迎の言葉をかける。ケルベロスならば、自分達を有用に使ってくれる。そう主張しているような気がしたメンバー達なのだった。

作者:なちゅい 重傷:ペーター・ボールド(ハゲしく燃えるハゲ頭・e03938) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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