オウガメタル救出~断崖絶壁!

作者:一条もえる

 山陰地方の山奥。
 人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
 異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
 この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
 そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
 大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
 この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
 だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
 その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。

 ケルベロスたちがヘリポートに行ってみると、見慣れないヘリオライダーがいた。
 某ハンバーガーチェーンの紙袋を抱え、その店で一番大きいサイズのハンバーガーを、むしゃむしゃと頬張っている。
「もぐもぐ……。
 あ、来た来た。はじめましてだね。私は崎須賀・凛。よろしくね」
 崎須賀・凛(オラトリオのヘリオライダー・en0205)はそう言う間に1つを食べ終わると、すぐに紙袋に手を突っ込み、新たな1つを……。いったい、あの大袋の中に何個入っているのだろうか。
「さて、時間も無いからさっさと説明にはいっちゃおうか。
 黄金装甲のローカスト事件、知ってるかな?
 そこで黄金装甲化されていたアルミニウム生命体の正体は、『オウガメタル』って種族だったの。
 もぐもぐ……」
 事件を解決したケルベロスたちは、彼らとの間に絆を結ぶことに成功した。それにより、彼らの現状を知ることになる。
「助けて欲しいって、彼ら。あ、よかったらみんなも食べる~?」
 勝手にハンバーガーを押しつけた凛は自らのぶんも取り出し、怒りか、ハンバーガーかで頬を膨らませて続けた。
「もう、ひどいのよ! オウガメタルを支配しているローカストは、まるで消耗品のように彼らを扱ってるの! 特に黄金装甲化なんてものを続けられたら、オウガメタルは絶滅する可能性だってあるらしいんだから!」
 だからこそ、彼らはケルベロスに助けを求めたのだ。
 命がけの脱出行である。ローカストの本星からゲートを通じて脱出した彼らは、当然ながら追われている。その窮地を、絆を結んだケルベロスたちは感じ取ったのだ。
 追っ手のローカストは、兵隊蟻が1体と、働き蟻が2体。
 奴らは広範囲を捜索し、オウガメタルの殲滅を行っているようである。
 ヘリオンにて急行すれば、到着は夜半過ぎになるだろう。辺りは暗いが、オウガメタルは発光信号のように銀色の光を放ち、現在位置を知らせてくれるはずである。
「そこまでつけるから、あとは飛び降りちゃってちょうだい。
 ちょ~っとだけ位置がずれるかも知れないけど、100メートルもズレるって事はない……はず。
 気をつけてね、兵隊蟻はゲートを守るっていう役目も持ってるの。だから他のローカストよりすごく強いし、どんなに苦戦してても逃げ出したりしないから。
 働き蟻は戦いが専門じゃないし、兵隊蟻の指示で動いてるから……そっちを撃破すれば、逃げ出すことがあるかも。とはいっても、みんなでも1体1じゃ勝てないと思う。残念だけどね」
 と、凛は眉を寄せつつ、最後のひとくちを飲み込んだ。

「でもね?」
 と、凛は新たなハンバーガーを取り出しつつ片目をつぶって見せた。
「助けを求められちゃったら、見捨てるなんてできないじゃない。
 さ、みんなヘリオンに乗って乗って!」


参加者
ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)
知識・狗雲(鈴霧・e02174)
柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)
石流・令佳(暴走族総長兼社長令嬢・e06558)
レーニ・ユハナ(ルーベルジョクラトル・e16962)
ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)
リビィ・アークウィンド(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e27563)
神無月・瑠璃(流星・e28551)

■リプレイ

●邂逅
「うまかったぜ、ありがとうな。さぁ、特攻(ブッコん)でくるぜッ!」
 ハンバーガーの包み紙をゴミ箱に投げ込んだ石流・令佳(暴走族総長兼社長令嬢・e06558)は、先ほどまでの穏やかな物腰からは一転、戦闘モード……あるいはヤンキーモードに切り替わっている。
「楽しい楽しい、敵前降下の時間だね」
 そう言って笑うゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)を、抱きかかえた。
「おかわりは、オウガメタルを救出した後でもらおうかな」
 そう言って包み紙を捨てた知識・狗雲(鈴霧・e02174)は狼の姿に変じ、レーニ・ユハナ(ルーベルジョクラトル・e16962)に抱きかかえられた。
 レーニはその毛並みを存分に味わう。
 偶然ではあるが、ここにそろったケルベロスたちの半数が、オラトリオなどの有翼の種族である。他に柳橋・史仁(黒夜の仄光・e05969)はリビィ・アークウィンド(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・e27563)に、ティスキィ・イェル(ひとひら・e17392)は神無月・瑠璃(流星・e28551)に抱えられる。
 ティスキィはしっかりと、瑠璃にしがみついた。
「飛びづらくありませんか?」
「大丈夫大丈夫、まるで羽毛の軽さよ♪」
 あはは、と瑠璃は笑う。
「あっちだ! チカチカと何か光ってる!」
 下方をうかがっていたゼロアリエが指さした方向。あれがオウガメタルの発する信号に違いない。そこめがけ、一行は飛び出した。
「なるべく急ぎますから、落ちないでくださいね!」
 レーニはそう叫びつつ、地獄化した翼で風をいっぱいに受けて方向を転じる。
 各人、仲間を抱えていて飛行能力を存分に活かすことはできないが、降下ポイントは正確、あとは微調整するのみでいい。
 結果、彼らは狙ったところからほんの10メートルも離れていない円の中に、全員が降下した。スピードを殺す時間さえ惜しく、辺りに生い茂った草木の枝葉が鳴る。
 そこに、逃げてきたオウガメタルたちがいた。
「あぁ、よかった。ご無事でしたか」
 ティスキィが微笑む。オウガメタルたちの安堵する意識が、一行に流れ込んでくる。
「まだ安心、とはいかないんだけどね」
 瑠璃は苦笑しつつ、首をすくめて辺りを見渡す。
 それでもゼロアリエは、
「キミたちのことは俺たちがバッチリ守るよ。意志を無視されて道具扱いなんて、ムカつくだろ? キミらの代わりに俺たちがぶっ飛ばすから、よかったら力を貸してくれない?」
 と、オウガメタルを励ます。
「そうだよ、このお姉さんなんかおすすめよ?」
 瑠璃はおどけるように言ってみたが。
「あ、でも、あなたたちが狙われたら元も子もないから……やっぱり下がってもらったほうが、いいかな?」
 小首を傾げた瑠璃に、はっきりとオウガメタルの意志が伝わってきた。
 ともに戦おうという、意思が。

●非情
「……近づいてくるぞ」
 オウガメタルの中には傷ついている者もいた。そんな者たちを、史仁は暗闇に溶けゆく薄い霧で癒していった。
 その史仁が視線を巡らし、眉を寄せる。近づいてくる足音、そして苛立った声。
「我らから逃げるなど愚かにもほどがある、身の程を知らぬというにもほどがあるッ!」
 史仁は闇の中に姿を隠し、様子をうかがった。
 すぐそばが崖になっている。3メートルほどの高さだが、声がするのはその下だ。
「ここか!」
 怒声とともに枝が断ちきられ、その向こうから兵隊蟻ローカストが姿を見せた、瞬間。
 古代語を詠唱した史仁は、光線を打ち込んだ!
「ぐおッ!」
「先手をとった! 一気に畳みかけよう!」
 叫んだゼロアリエは、全身を地獄の炎で包む。一方でレーニの展開した紙兵が、ケルベロスたちを守るように展開した。
 ケルベロスは次々と崖を飛び降り、ローカストに飛びかかった。
「はいはい、了解ッ!」
 人の姿に転じた狗雲はウイルスカプセルを、兵隊蟻に投げつける。
「ケルベロスか!」
「そのとおり。ここから先は、私たちケルベロスが相手しますよ!」
 ありったけの武装を展開し、リビィは兵隊蟻に立ち向かう。アームドフォートを向け、一斉斉射!
 しかし兵隊蟻は素早く跳躍し、その砲弾を避けた。大樹が吹き飛ばされ、土煙が舞う。
「別の場所で、他の仲間も駆けつけている。もう一踏ん張りだ!」
 史仁の言葉は、オウガメタルたちに向けたものだったのだが。兵隊蟻も、驚愕の呻き声を上げた。
「ケルベロスどもめ……オウガメタルを逃がすわけにはいかん!」
「ティスキィさん! 令佳さん!」
「えぇ!」
「任せろッ!」
 リビィに応じたティスキィと令佳とが、土煙の中から飛び出す。ティスキィの放った蹴りは炎を生み、令佳のアームドフォートからは、時間を凍結させる弾丸が放たれた。
 ところが。
 付き従っていた2匹の働き蟻が割って入り、その攻撃を受け止める。
「なにぃ?」
「ケルベロスめ。オウガメタルともども、ここで皆殺しだ!」
 後方から一気に間合いを詰めた兵隊蟻はアルミの牙を伸ばし、驚きの表情を浮かべた令佳に食らいついた。狙い澄ました、正確無比な一撃。
 鋭利な刃物のごときそれは、深々と臓腑まで食い込む。腹から血飛沫をまき散らしながら、令佳は膝をついた。
「ゲホ……ゲホッ……!」
 喉の奥から血がこみ上げてくる。咳とともに吐き出すと、瞬く間に衣服が血で染まっていく。
「令佳さん、しっかり!」
 レーニは顔色を変え、力を溜めたオーラによって、その傷を癒してやる。幸い、致命傷には至っていない。
「ありがとう。……クソッ、不覚をとったぜ。あの野郎、なかなかやる!」
 戦うケルベロスたちの傍らで、オウガメタルたちは狼狽しつつ、身を震わせていた。
「さすがはゲートを守っている連中だけはあるね!」
 ゼロアリエの放った砲弾が働き蟻に命中し、動きを鈍らせる。
 兵隊蟻が羽根を擦り合わせた。生じた破壊音波が、狗雲やレーニらを襲う。思わず耳を押さえてうずくまるが、頭がふらふらして、いったい、敵が、どこにいる、のか……?
 自身も苦しいはずなのに、狗雲のボクスドラゴン『アスナロ』が一声鳴いた。注入された属性によって、主を正気に戻す。
「レーニ!」
「大丈夫。退場には、まだ早いよね?」
 ふらつく頭で懸命に、レーニは『彩光泡沫』を放つ。色とりどりのシャボン玉が辺りに舞った。
 それに呼応するように、リビィの歌声も。生きることの罪を肯定するメッセージは、傷ついていたケルベロスたちを癒していく。
 兵隊蟻は働き蟻を矢面に立たせ、自身は後方から攻撃を仕掛けてくる。
 鋭い攻撃が、正確な狙いとともに襲いかかる。それは、ケルベロスの命さえ奪う恐るべきもの。
「早いところ、こっちから片づけるしかないな!
 立ちはだかる、その速さ……この鎖で止めてあげる!」
 狗雲が手をかざすと、働き蟻どもの足元から白緑色の鎖が現れ、絡みついた。
 動きが鈍ったところを、史仁の、大地さえ粉砕するほどの強烈な一撃で叩き斬る。体液が溢れ、働き蟻は悲鳴を上げた。
「申し訳ないんだが、死んでもいい仲間なんて定義、地球にはないんでね!
 オウガメタルは全力で守らせてもらうぞ!」
「怯むな! その調子で私の身を守れ! いかに傷つこうとも私の盾となることこそ、貴様らの使命であろうが!」
 という兵隊蟻の命令に働き蟻は逆らえず、けなげにも立ちはだかっていた。
「なんて非情な……」
 『仲間』などではなく、『駒』。その意志を考慮することなく戦いに駆り出される、苦しみ。リビィは我が身を振り返って悲しみ、そして怒りを覚える。
「寝言を! オウガメタルにせよ働き蟻にせよ、ローカストのために働くのだ!」
「そう言われれば気の毒だが、叩き潰すしかないな!」
 ゼロアリエは働き蟻に向けて蹴りを放つ。摩擦で炎が生じ、外骨格の焼けるいやな臭いが辺りに立ちこめた。
「仕方がありません!」
 リビィは兵隊蟻をにらみつつ、働き蟻に斬りかかった。構えた剣には光の翼の粒子がそそぎ込まれ、大剣と化す。
「私の光の刃はひと味違いますよ。こうなった以上、勝負です!」
 大きく翼を広げて突進し、働き蟻の肩口から斬り下ろす。
「ギャアアアアアアッ!」
 働き蟻は壮絶な悲鳴を上げて倒れた。
「えぇい、その程度で!」
 兵隊蟻が拳を繰り出してくる。そこには鋭い棘が無数に生えていた。
 それに刺されたゼロアリエはアルミ化液を注入され、痛みに呻きながら倒れた。
「ゼロ!」
「まだまだ……ネジが2、3本足りなくたって、問題なく動くから」
 悲鳴を上げて駆け寄るティスキィの手を優しく握りしめ、立ち上がる。しかし、体のあちこちが強ばったように動かない。
「……無理をしないで。必ず一緒に帰るんだから」
 ティスキィが溜めたオーラをそそぎ込むと、体が楽になった。
「強がりを! 貴様らを倒した後に、オウガメタルどもも皆殺しだ!」
 兵隊蟻はそんなふたりに、なおも迫る。牙をガチガチと鳴らして……。

●激闘の予感
「危な~いッ!」
 そこに瑠璃が飛び込んで、割って入る。
「くぅッ!」
 鋭い牙は瑠璃を傷つけたが、まだ倒れるわけにはいかない!
「こうすればいいの? いくよ、『ライジングダーク』ッ!」
 瑠璃の叫びとともに、惑星レギオンレイドを照らす黒太陽が具現化する。それは絶望の黒光を照射し、兵隊蟻は驚き恐れ、足を震わせた。
 オウガメタルは姿を変え、瑠璃と力を合わせて戦っているのだ!
「ば、ばかな……!」
「ははッ! オウガメタルはこっちに来てくれるってよ!」
 令佳が笑う。そしてふと、憂い顔になり、
「……令佳たちも、たとえばさっきのハンバーガー。家畜の命を奪って生きながらえているわけですから。偉そうなことは言えないのです」
 と、呟く。
「それでも、意志の通じ合う相手ならば、言葉を交わすことで分かり合いたい……!」
「黙れ! 貴様と問答などするつもりはない!」
 働き蟻と兵隊蟻とが、飛びかかってくる。働き蟻の牙を受け止めたものの、次に兵隊蟻が……!
「こっちは任せて!」
 瑠璃が再び、立ちはだかって攻撃を受け止める。
「ヤルノ!」
 主の叫びに応じ、ボクスドラゴン『ヤルノ』は兵隊蟻に向かってブレスを浴びせた。致命傷には遠いが、相手は跳び下がり、隙が生まれる。
 その間にレーニは、瑠璃の傷を癒す。
 いっぽう働き蟻の牙を掴んだ令佳は、歯を食いしばってそれを押し返した。
「女でも、喧嘩はやれるんだよッ!」
 むんずと働き蟻の頭をつかみ、強烈な頭突き! そしてそのまま地面に叩きつける! 手近な石を投げつける! さらにとどめに、サッカーボールでも蹴るかのように、崖下に蹴り落とした!
「……悪りぃな、アタシだって今は引き下がるわけにはいかないんだ」
 いつか、話ができる時がくるといい。
 その攻撃で絶命したのだろう。働き蟻は崖下から戻ってこなかった。
「オウガメタルは、お前たちが道を間違えているって悟ったってことだ!」
 史仁がまとうブラックスライムが、巨大な顎を広げて兵隊蟻を飲み込んだ。兵隊蟻は懸命にもがき、捕縛から逃れる。
「助けてって言われたら、見捨てるわけにはいかないからね!」
 狗雲の構えたナイフが、キラリと輝く。
「ぐぉおおお……!」
 刀身に映し出された幻影が、兵隊蟻に襲いかかった。故郷の星での、凄惨な記憶を呼び覚ましたのか。兵隊蟻は悶絶し、何度も倒れ込みそうになった。
 それでもなお、兵隊蟻の戦意は衰えない。配下が倒れようが、それでもケルベロスたちを前に一歩も引き下がらない。
「シャアアアッ!」
 鋭い怒声を放つと、再びケルベロスたちを破壊音波が襲う。
「く……」
 瑠璃は頭を振ってそれに耐え、反撃に出ようとしたが。
「敵はそっちじゃないッ!」
 令佳は立ちはだかって、その攻撃を受け止めた。すかさずレーニからヒールが飛び、傷を癒すとともに正気に戻す。
「ふん。貴様ら同士、同士討ちする様が見たかったがな!」
「悪趣味です!」
 憤然として主砲を斉射したリビィだったが、敵も素早く避けて当たらない。
 代わりに、棘から注入されるアルミ液を浴びて悲鳴を上げた。
 狗雲が再び『殺神ウイルス』を放ち、のけぞった兵隊蟻に向けて史仁とゼロアリエとが突っ込んだ。
 しかし兵隊蟻は両者をいなし、崖下に飛び降りる。すぐさま、ケルベロスも後を追った。
 敵は逃げたわけではない。
 すかさず牙を伸ばし、追撃に出た瑠璃に襲いかかった。
「ちょっと……虫は苦手なんだけどなぁ。あんまり近づかないでくれる?
 さぁ、もう一発いくよオウガメタルちゃん! えーと、『戦術超鋼拳』ッ!」
「ぐおぉッ!」
 全身を覆ったオウガメタルが鋼の鬼となり、その剛拳で敵を貫く。ローカストの厚い装甲にヒビが入った。
 そのヒビが、さらに広がる。ティスキィの放った『ファミリアシュート』が命中したのだ。
「オウガメタルの助力は心強いですね……でも、あまり無理はしないでください」
 と、態勢を入れ替えて今度は、ティスキィが庇う格好になった。オウガメタルと共闘する興奮で我を忘れていたが、瑠璃の傷もかなり深いのだ。
「ありがとー。はは、助けてあげないとって張り切ったけど、相当強いわ、この敵」
「おのれ……!」
「引き下がってもらえねぇか?」
 と、令佳は呼びかけたが。
「できぬ! 我らアリア騎士が使命を果たさぬなど!」
 ケルベロスたちも傷を負っているが、兵隊蟻もまた、全身から血を流している。それでも敵は牙を鳴らし、襲い来る。とっさに、レーニはケルベロスチェインを展開した。
 兵隊蟻の牙が、リビィを傷つける。しかし『サークリットチェイン』のおかげで、かなり傷は浅く済んだ。
「今度こそ!」
 リビィは意気込みとともに得物をナイフに変え、傷ついた兵隊蟻の装甲をズタズタに切り裂いた。
 それでもなお、兵隊蟻は叫びつつ襲い来る。
「ゲートは奪わせぬ! ローカストを滅ぼさせはせぬッ!」
「まぁ、その心意気には敬意を払うよ」
 肩口に深々と突き刺さった牙を握りしめ、ゼロアリエは歯を食いしばる。
「けどね、オウガメタルを皆殺しにしていいかっていうと、違うと思うんだよね」
 ゼロアリエが構えた得物に、黒のオーラがまとわりつく。それは兵隊蟻を貫き、黒い罪悪の念を植え付けつつ、絶命させた。
「……因果は回る。断ち切ることは認めない」

「増援は、いないようだな」
 史仁はしばらく耳を澄ませて辺りを窺っていたが、ゼロアリエが姿を見せた事に安堵し、力を抜いた。
「お疲れ様、殺人号」
 殿を買って出たゼロアリエを援けていた令佳のライドキャリバー『爆走単車・殺陣号』も、無事な姿を見せた。
「無事に任務達成、だな」
 汗をぬぐい、狗雲がニヤリと笑う。傷を負っていない者などいない。
 その傷を癒やしつつ、ケルベロスたちは山中をあとにした。
 オウガメタルの救出に成功したことで、戦いが新たな局面を迎えることを予感しながら。

作者:一条もえる 重傷:石流・令佳(赤い特攻服の社長令嬢・e06558) 神無月・瑠璃(流星・e28551) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。