「慈愛龍の名において命じる。ドン・ピッグ、オークの力をもって、人間どもに憎悪と拒絶をもたらすのだ」
ギルポーク・ジューシィの言葉で、オーク達のリーダードン・ピッグはにやりと笑った。
「ああ。旦那が隠れ家さえ用意してくれりゃ、ウチの若い奴らを使ってどんどん女をさらってくるぜ。そうすりゃすることは一つ、憎悪と拒絶なんざ稼ぎ放題だぜ」
戦いを避け、目立つことはせずに憎悪と拒絶を稼ぐオークの所業。ギルポーク・ジューシィは好悪の感情を見せずにたんたんと告げる。
「お前の欲望に対する用意周到さ、長所と見ている。お前たちがことをなす為の隠れ家を用意しよう」
ギルポーク・ジューシィが魔空回廊を開く。ドン・ピッグはオーク達を引き連れ、迷いなく入っていく。
「ありがとよ旦那。さて隠れ家の次は、さらっても目立たなそうな場所を探すぜ」
「なんだあんなバカ親、もう知るか。お、あったあった」
夜、外灯が少ないビルの路地裏で、少女は独り言を続けながら、カゴの中の毛布を取り出した。
「ちょっと汚いけど、今日はこれでいいか。慣れちゃったな……」
少女の服や肌は薄汚れているが、顔色は良かった。道から見えにくいビルの隙間に座って毛布にくるまり、コンビニからもらった消費期限切れのお弁当を食べる。
「明日はカンパしてもらって銭湯にでも……ん?」
道路からゴトリと音がした。少女が気になって顔を出すと、近くのマンホールのふたが開いていた。
「いたぞ……ぐへへへ……」
そんな声がしたあと、次々と触手を生やした豚人間が姿を現す。8体のオークは、呆然とする少女へうすら笑いを向けていた。
「あ」
少女は恐怖を認識する前に、その体を無数の触手に覆われた。オーク達は一先ずことを終えて満足したのち、声を発せない少女を連れてマンホールの中へと戻る。
マンホールのふたが閉まると、路地裏には食べ途中のお弁当だけが残されていた。
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロスを見渡し、自身の持つ資料に視線を落として説明を始めた。
「竜十字島のドラゴン勢力が、新たな活動を開始しました。今回事件を起こすのはギルポーグ・ジューシィ配下のオーク達です。このオーク達は、ドン・ピッグというリーダーの指示のもと、非常に用心深く女性をさらっています。東京の路地裏に出没し、存在が消えても怪しまれないような弱者を狙っているようです。オークは女性を襲撃しその場で暴行すると、秘密のアジトへと女性を連れ去ります。皆さんは」
セリカは一度言葉をとめ、ケルベロス達をもう一度見つめる。
「オーク達が女性に接触した直後に現場に突入、オーク達を撃破してください。オークが女性に接触する前にこちらが女性に接触すると、オーク達は襲撃を取りやめてしまい、撃破が不可能になります。注意してください」
セリカは背後の大型ディスプレイの映像を、予知された路地裏に切り替えた。
「場所は東京足立区の路地裏です。オークの数は8体、道路のマンホールから出現し、ビルの隙間にいる女性……少女を襲撃します。道路は車がぎりぎり2台通れるほどの幅で、夜であるからか人通りはほとんどありません。オークの戦闘能力ですが、一般的なオークと同じです。触手の力強さと素早さを活かした攻撃を主に行い、雄たけびを上げることで自身の回復と強化を行う個体もいます。回復を行う個体を見極め、集中的に倒したいところですね。最初にもお伝えしましたが、オーク達は用心深く女性を連れ去っています。確認できていないだけで既に他の被害者がいるかもしれません。ドン・ピッグの隠れ家も、いずれ見つけ出さなければいけません。手がかりがあればいいのですが……」
セリカは説明を終えると表情をきりりと引き締め、ケルベロス達へ敬礼した。
「ともあれ、まずは速やかに少女を救出し、オーク8体を確実に撃破することが先決です。皆さまならば、オーク達の悪逆非道をくじくことができると信じています。ご武運をっ……お気をつけて」
参加者 | |
---|---|
萃・楼芳(枯れ井戸・e01298) |
隠・キカ(輝る翳・e03014) |
鈴木・皆人(地球人の鹵獲術士・e03122) |
阿木島・龍城(翡翠宮の剣英・e03309) |
阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878) |
正門・絵夢(正門流の妖姫・e14620) |
フィマリア・フィーネス(ウィッチドクター・e28502) |
ノリコ・ウォーカー(解放者・e28954) |
夜でも都会の空は明るい。上空から付近の偵察を終えた阿木島・龍城(翡翠宮の剣英・e03309)は、裏通りに沿って立つビルの屋上に着地し、先に待機していたノリコ・ウォーカー(解放者・e28954)と合流した。
「付近に敵や不審物はありません。予定通り、時間までオークを待ち伏せするとしましょう」
「ありがとう龍城くん、地上の皆に連絡するわ。少女はもういるみたいね」
「……こんな物騒な世の中で路地をうろつく人間も……困ったものです」
龍城とノリコが屋上から下を見ると、少女がちょうど路地裏に入っていくところだった。外灯に照らされた道路のマンホールがよく見える。
鈴木・皆人(地球人の鹵獲術士・e03122)と正門・絵夢(正門流の妖姫・e14620)が表通りに、他のケルベロス達も付近に潜伏していた。
皆人は持参した鉄板をビルの壁に立てかけ、スマートフォンに周辺地図を表示してオーク達の退路を塞ぐ段取りをもう一度確認した。
「マンホールに通りの封鎖、うまくいくといいなあー」
「皆さんとばっちり打ち合わせしましたから、きっと大丈夫ですよ。殲滅あるのみ、です」
絵夢が裏通りの様子を見ながら答えると、その時はすぐに来た。
ゴトリという音を立て、マンホールの蓋が開く。よく見るとオークの顔が少しだけマンホールからのぞいていた。
そして路地裏からひょっこりと顔を出した少女を見つけると、下品な笑みを浮かべたオークが続々とマンホールから姿を現す。
状況を飲み込めず固まってしまった少女へ、オーク達は触手を伸ばす。ケルベロス達の携帯機器が一斉に合図のバイブで震え、8つの影がオークと少女へ殺到する。
少女へと伸びた触手には上空から舞い降りた龍城、横からは阿倍・晴明(阿倍王子の玄武・e05878)が割って入り、少女の近くにいたオークが皆人に殴られてひるむ。その隙に皆人は開いたマンホールに鉄板を置き、怪力無双で拳を打ち付けて穴に固定した。
龍城と晴明に伸びた触手が止まる。オーク達から焦りと戸惑いの声が聞こえてきている。
「ケ……ケルベロス!? なんでここに!?」
戸惑う少女は絵夢とフィマリア・フィーネス(ウィッチドクター・e28502)が確保。フィマリアは少女を安心させるように寄り添ってウインクした。
「怖い思いをさせてごめんなさいね。もう大丈夫よ。ノリコさん、お願いね」
ノリコ・ウォーカー(解放者・e28954)がフィマリアの隣に翼をはためかせて降り立つ。少女もやっと、自身がオークに襲われかけ、ケルベロスに救われた現実を認識した。
「羽……綺麗……」
少女の呟きにノリコは微笑み、少女の腰に手を回した。
「ありがとう。安全が確保するまでは屋上で避難しててもらうわ。捕まってて」
「はい!」
ノリコが少女を抱えて屋上へと飛び立つ中、オーク達は笑みを消し、複数体が表通りへ逃げ出そうとする。
「こっちは、きぃがいるから、通行止めなの。女の子に怖い思いさせたら、きぃ達が、ゆるさないから」
表通りの入り口に立つ隠・キカ(輝る翳・e03014)は魔導書を抱えながら、手から漏れるブラックスライムを光に反射させ、攻性植物の牙をむき出しにしてオークを威嚇する。
オークは踵を返し今度は逆側の道へ。
「あきらめて、死んでもらおうか」
だが逆側の道では、萃・楼芳(枯れ井戸・e01298)が静かに2本のゲシュタルトグレイブを翼と共に広げるように構えていた。腰のアームドフォートの砲塔がオーク達に向く。
「どこを見ているのですか?貴方達の相手はこちらですよ」
晴明の声に全てのオークが振り向く。そこには晴明他、ケルベロス達が各々武器を構えて歩み寄ってきている。オークは目標物を失い、退路なし。ノリコが地上に戻り、ケルベロス8人による包囲も完了。状況はできた。
「ブヒイイ!! 男は殺し女はぐひひひ、ブヒオオオ!!」
先頭にいたオークが咆哮を上げ、呼応するように全てのオーク達が触手を展開して突撃した。
●
オーク達は各々好みの女性へ触手を伸ばす。
「ブヒヒヒ、でかい物ぶら下げてるブヒ」
「なのに胸元を露出して、どう見ても誘ってるブヒ!」
「清楚なふりして実は好き物だブヒ!」
「なっなんてこというんですか!? って触手?! この程度で……ひゃあんっ!? く……北方を護りし神の化身よ、迷える不死者達を其の叫びで薙ぎ払い給え……『玄・武・召・喚』」
晴明に伸びたオーク3体の触手は、ぬめぬめとした触感を保ちながら服と体の隙間に入り込んで縛り上げる。しかし構わず晴明は玄武の幻影を召喚、玄武は咆哮を上げて一体のオークへ雷を落とす。
「ぐぎゃあ!?」
「むお、だが俺はこのまま……ブヒぃ!?」
「ブヒャア!?」
「豚のスライス、って食えたもんじゃないよなぁー。大丈夫ー?」
皆人の桜花剣舞が一閃、3体のオークが吹き飛び、最初に雷を受けた一体はそのまま倒れて動かなくなった。
「ありがとうございます皆人さん」
「いいよいいよっ、先に胸元直しといてね。またくるよぉー」
「あっ!? はっはい!」
絵夢は走りながら攻撃のタイミングをはかっていたが、すぐ近くで2体のオークが並走していた。
「私には2体ですか……!」
「あの眼鏡の女! 妙な感じがするブヒ!」
「コートの下はきっととんでもない恰好してるブヒ! ひん剥いて直に味わうブヒ!」
「そういうところはどうして察しがいいんです!? くっ!」
2体のオークから触手が絵夢へと伸びる。楼芳はヒールドローンを展開して間に入り、サーヴァントのボクスドラゴン、ウルと共に攻撃をガードした。
「防御と回復は任せてもらおう。攻撃は任せるぞ」
「はいっ! 制圧射撃で奴らの足を止めます! ぜっぜったい脱ぎませんからね!」
「男にも爬虫類にも用はないブヒ!」
「さっさと死んで女を差し出すブヒ!」
「心も外見どおりか、冷静に事を運べて助かる。情が沸かぬ敵はな」
楼芳と絵夢が2体のオークと戦う中、一般人の少女が元々いた場所では3体のオークへ、龍城、フィマリア、キカ、ノリコが対峙している。
「ブヒイイイ!! 女だ女ああああ!」
「男には見向きもしませんか。スターサンクチュアリッ」
龍城が天秤宮剣で地面に守護星座を描き、後列の味方の耐性を強化する。
「あら、それじゃあ……」
フィマリアは口紅を取り出して自身に塗りなおすと、好色の笑みを浮かべてオークの前へ出た。
「刺激的なキスをしてあげる。……ん」
「ブ、ブヒイイイ!?」
フィマリアのウイルスキスを受けたオークは恍惚の表情でダメージと毒に悶絶し、他のオーク2体が嫉妬の悲鳴を上げる。
「お前だけずるいブヒ! 次はオラが……あ、れ……?」
「その気の女ならすぐ気持ちよくしてやる……ブ……ヒ?」
「女の人達に、ひどいことしないで。じゃないと、あなた達のこわいものが、来るよ」
キカが発動した幻葬廻路(ミラージュ・ラビリンス)、蜃気楼のような朧気な幻覚がオーク3体の脳内へ侵入し、催眠状態にして内面へダメージを与える。
「一番ダメージが多い奴はあいつね」
ノリコはウイルスキスと幻葬廻路(ミラージュ・ラビリンス)を立て続けに受けたオークへ狙いを定めた。対艦拳銃を槍のようにそのオークの腹へ突き当て、近距離限定の神性弾丸、貫くもの(ブリューナク)を発砲する。
「動いちゃだめよっ!!」
「ぶひょ!?」
ノリコに腹を穿たれたオークは吹き飛んで絶命。残った2体のオークは催眠状態のまま互いに罵詈雑言をぶつけ触手で攻撃し合っている。
晴明と皆人の前にいる2体のオークのうち1体も、皆人の桜花剣舞によって催眠状態に陥っていた。
「ぶへへ……」
「ちっちがうブヒ! 女はあっちブヒ! 触手をはわせるなブヒ!」
「って言いながら何で私にはしっかり触手当てるんですかあ! やぁっ、そこはだめ……ひぎぃっ! 薙ぎはらえ黄金の融合竜!」
「じゃあ俺も! 来たれ、力と共に。なんか強いやつ!」
晴明の黄金竜がオーク一体をかぎ爪で押しつぶし、皆人のAIPALOOKVIK(アイパルークヴィク)により召喚された黒い霧がもう一体のオークを引き裂き屍に変える。
「残りは4体っ一気に終わらせます! わっひゃあんっ!?」
絵夢にオークの触手が触れるが、ヒールドローンが攻撃を妨害して満足にからみつけていない。
「くそっ! 変な機械が邪魔ブヒ!」
「お返しです! 万物の根源たる重力よ! 紫電の縛鎖となりて彼の敵を束縛せよ! 古代語魔法・束縛の雷撃(ハイエンシェント・ライトニングバインド)!」
鎖状にかたどられた電撃がオーク一体を縛り上げる。悲鳴を上げて動けないオークを、楼芳は稲妻突きで追撃し撃破した。残り3。
「おっと、すまんな。そろそろ終わりにしようか」
楼芳へ触手を刺そうとしたオークの一撃をウルがガードする。
「最後まで油断はしません。来たれ我が刃よ、奔れ光の如く。碧皇耀炎斬(ヘキコウヨウエンザン)」
龍城は目の前のオーク、催眠状態で仲間を攻撃し合っている相手を嘲笑することもない。長大な紺碧の刃を持つ太刀を鞘ごと手元に召喚すると、オークから少し離れたところで居合の構えから一閃。
刃を返して納刀すると、標的になったオークは空間ごと横にその身がゆらめき、自分の命が終わったことも気付かぬうちに地面に倒れ伏した。
「メディカルレインを使うわ。止めはお願いね!」
残りは2体、フィマリアが薬液の雨を降らせて万全を期し、キカは自らオークに肉迫する。
「ブヒ! 未成熟だけど差別はしないブヒ! 可愛がってやるブヒ!」
「きぃは、キキがいるから、あなた達なんて、こわくない」
キカはブラックスライムを捕食モードに変形、丸呑みにして全方位から締め付ける。オークがもがき顔だけスライムから抜け出す。
「ぷはっ! あっ」
「もう一体!」
ノリコは飛び上がり旋刃脚でオークの顎を蹴り上げる。キカがブラックスライムの拘束を解いても、オークはもう動かなかった。
「ブ……ブヒ……!」
残り一体となったオークはさすがに余裕をなくしたようだった。包囲されているのがわかっていても、じりじりと後退している。
「1体くらいお持ち帰りしても……やっぱりダメよねぇ。1体くらい手元にいると、色々便利なんだけどねぇ♪」
「なにに便利なの? きぃに教えて」
「キカさん、世の中には知るべき時に知る知識もあります。今はご容赦ください」
「もう少し大きくなったら、ね?」
「んー……わかったの。んー……」
龍城とノリコの言葉でキカは収まる。フィマリアは少しだけ申し訳なさそうに、龍城とノリコへ片手で拝むようにジェスチャーしウインクした。
とはいえ皆オークへ武器の構えは解いていない。皆人は皆に聞こえるように提案する。
「こいつらの上がいるっつー話だし、倒さず情報とりてーな。ガムテで縛ってどうにかできねーかな」
だが、オークも聞こえていたようだ。
「ブヒブヒ!! ここにいる女全員と繁殖させてくれたら情報くれてやってもいいブヒ!」
「うっ……」
「……尋問するだけ、無駄に見えるがな」
絵夢の小さな悲鳴と楼芳の呆れ声に、皆人も苦笑するしかなかった。
「ああー……そうだねー倒すかー」
「止めは私がっ!」
晴明が達人の一撃で止めを刺すべくオークへと走り出すが、その前にオークの最後の触手攻撃が晴明を襲った。
「えっちょっ……らめぇ……ッ! も、やめ……アッー!!」
「ブヒヒヒ……ブヒョウ!?」
晴明は荒い息で顔を赤くしつつも、乱れた巫女服を抑えて触手を掻い潜りオークを殴り飛ばした。
「はぁ……はぁ………お還りなさい……貴方の在るべき場所へ!」
「うーん? 見えないのー聞こえないのー」
キカの目と耳を龍城とノリコが優しく塞ぐ中、戦闘は完了した。
●
「お待たせ、もう終わったわ。捕まって」
ノリコが飛翔して屋上の少女を迎えに行き、地上へと降ろした。少女はケルベロス達に頭を下げてお礼を言う。
「怪我はありませんでしたか?」
「は、はい」
絵夢の問いかけに対し、返答通り少女には傷一つない。計画的に現場に突入できた成果はあったようだ。
少女は場の惨状を見て、顔を青くした。楼芳が地面や巻き込まれた外灯をヒールしているが、戦闘の苛烈さを物語る傷跡はまだ残っている。晴明は少女の隣に立つ。
「……これが今の世の中の厳しさです。怖気づくなら、親御さんの元へ戻るべき、独り立ちには時期尚早ですね。まだまだ親から学ぶ事も多い……それをモノにしてからでも遅くはないでしょう?」
戦闘を終えたばかりで巫女服が乱れたままの晴明を見て、少女は感じることがあったようだ。
「オークに捕らわれてたら……私……でも……」
「私、孤児院を開いてるのだけど一度来てみる? 私としては親御さんの所に帰ってほしいけど……不安なことがあるなら相談に乗るわよ」
「はい、私もご協力します」
フィマリアと絵夢の言葉で、少女の瞳が揺れた。キカが少女の服の裾を引っ張る。
「きぃね、パパもママもいないの。さみしいよ。あなたのパパもママも、あなたがいないとさみしいよ。だから、帰ろう。きぃも一緒に行ってあげるから」
「……ありがとう。でも大丈夫。一人で帰れるから。皆さんありがとうございました。とりあえず家に帰ります。痛い目は見ましたから……もう、こういうのに襲われそうな場所には一人で行きません」
少女ははっきりとそう言ってもう一度ケルベロス達へ頭を下げた。皆人も傍からその様子を見ていたが、頭を下げる少女に微笑んで特に干渉はしなかった。
少女が表通りに戻るのを見届け、ケルベロスも帰還を開始する。付近のヒールを終えた楼芳はウルを肩につかまらせて飛翔し、空から帰るようだ。
龍城はそれを見上げ、最初に空から付近を偵察したことを思い出す。
「……襲撃前、付近に見張りや支援者はいませんでした……ならば……いえ、これ以上は確証のない憶測ですね」
「まー今は難しい事考えずに帰ろー! 少女も救えたんだし、オークはちゃんと倒せたんだし、さ!」
「ええ、そうですね」
皆人の明るい口調で龍城も表情を崩した。オークの撃破に住民の救助、ケルベロスたちはまた一夜、世界に平穏をもたらしたのだから。
作者:大府安 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年6月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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