オウガメタル救出~真夜中の攻防戦

作者:凪木エコ

 山陰地方の山奥。
 人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
 異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
 この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
 そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
 大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
 この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
 だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
 その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。
 オリオン・ハーモナイズ(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0195)は、集まったケルベロスに詳細を説明し始める。
「黄金装甲のローカスト事件を解決したケルベロス達は、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことができるようだ」
 アルミニウム生命体の本当の種族名を『オウガメタル』。絆を結んだ結果、自分達を武器として活用できる者を求めるているらしい。
 現在、オウガメタルを支配しているローカストは、グラビティ・チェインの枯渇を理由に、オウガメタルを使い潰すような使い方をしている。特に、黄金装甲化はオウガメタルを絶滅させる可能性すらある残虐な行為といえる。
「故にオウガメタルは我らに助けを求めている、というわけだ。そして現在、オウガメタルと絆を結んだケルベロス達が、オウガメタルの窮地を感じ取っている」
 オウガメタル達はケルベロスに助けを求めるべく、ローカストの本星からゲートを通じて脱出し、地球に逃れてきている。しかしながら、最重要拠点であるゲートには当然ローカストの軍勢がおり、そのローカスト達によって、オウガメタル達は遠からず1体残らず殲滅されてしまうだろう。
「君らには至急ヘリオンで現地に向かい、オウガメタルの救出及び、追っ手の殲滅を頼みたい」
 オウガメタル達が、ローカストに追われている場所は、山陰地方の山奥になる。
「この任務が成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えるだけでなく、ローカストの最重要拠点であるゲート位置も特定する事が可能になるかもしれない。しかし、ゲートの位置に関わる事から、ローカスト達の攻撃も熾烈になるだろう」
 ローカスト達は、兵隊蟻ローカスト1体が働き蟻ローカスト2体を率いた群れで、山地の広範囲を探索して、逃走するオウガメタルの殲滅を行っているようだ。
 ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎで、逃走するオウガメタルは、銀色の光を発光信号のように光らせるので、それを目標に降下すれば、オウガメタルの近くへ降下する事ができるだろう。
 降下には誤差がある為、すぐそばに降下できるわけでは無いが、百メートル以内の場所には降下できると思うので、合流は難しくない。
 追っ手である兵隊蟻ローカストの戦闘力はかなり高く、ゲートを守るという役割からか、どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無いだろう。
 働きアリローカストは、戦闘は本職ではないが、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っている。ただ、働きアリについては、兵隊蟻ローカストが撃破され状況が不利だと思えば、逃げ出す可能性があるようだ。
「ローカストと決着をつける数少ない好機なのは確かだ。厳しい戦いになると思うが、是非、宜しく頼む」


参加者
天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)
シルフィディア・サザンクロス(この生命尽き果てるまで・e01257)
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)
四辻・樒(黒の背反・e03880)
月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)
神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405)
紗神・炯介(白き獣・e09948)
ヒビスクム・ロザシネンシス(メイドザレッド・e27366)

■リプレイ

●邂逅
 暗闇が蹂躙する夜の森にて、銀色の小光が点滅を繰り返す。それは救助信号の証でもあり、希望の証でもある。
 オウガメタルのSOSサインを目指し、8人の戦士が現場へと降り立つ。
 お神酒代わりの甘酒を口にし終えていた神宮寺・結里花(目指せ大和撫子・e07405)は慎ましくも告げる。
「行きましょうか」
 いつもの親しみ深い口調の彼女はおらず、ルーティン、というよりも儀式に近い行為を終えることで、戦闘モードに切り替えていた。
 主人、スノードロップの姉である結里花に従うべく、ヒビスクム・ロザシネンシス(メイドザレッド・e27366)が一同に付いてこいと言わんばかりに移動を開始。夜目が利く彼女にとって銀光の残粒子だけでも十分に明るく、サーヴァントのガブリンも信頼して並走している。
 ヒビスクムの後を追いかけるメンバーも、暗視ゴーグル等を用いることで夜道をカバー。光源の類を使用しない理由は、敵兵に自分たちの存在を認知されないため、あわよくば奇襲を仕掛けるため。
「……」
 未知の存在である敵と戦うだけに、月篠・灯音(犬好きの新妻・e04557)の顔色は優れない。それは暗視スコープを用いようが、この暗闇では察することはできない。伴侶である四辻・樒(黒の背反・e03880)を除いて。
 声を出すこともできない空間にて、樒は灯音の手を握り締める。
 瞳を大きく開いた灯音に対し、さらに隠された森の小路を樒は発動。メンバーの足元の木の根や植物のツルが、静かにも道を切り開いてくれる。
 意図を理解した灯音は、「ありがとう、助かった」と樒の温かくも頼もしい手を握り直す。
 オウガメタルの出し続ける光のもとへと到着する目前、
 天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)の耳が僅かに反応を示し、メンバーに制止のハンドサインを送る。直後、メンバーも制止の理由を理解する。
 遠方の木々が揺らいでいた。
 それは風によるイタズラか、それとも……。
 メンバーの視線は、自然とヒビスクムに集まる。ヒビスクムは瞬き1つせずに眼球のピントを調整していく。
 そして静かにも頷く。
 3体のローカストで間違いないようだ。
 故にメンバーは悩んでしまう。距離でいえば自分たちのほうが近いものの、ローカストは物音を考慮せずに移動している。到着はほぼ同時になるだろう。
 ローカストに奇襲する場合は、オウガメタルへのダメージ覚悟でギリギリまで待機する必要がある。
 安全にオウガメタルを保護する場合は、奇襲を考慮せずに物音覚悟で移動速度を上げる必要がある。
 奇襲を優先するか、保護を優先するか。
 約1名が迷う必要はないとエアシューズの出力を高めていく。
 ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)だ。
 助けを求めているオウガメタルを救いたい。あらゆる者たちを守るためにレプリカントになったラズだからこそのアピールだった。
 点滅する光に映るラズの表情は無表情だが、仲間たちを見つめる瞳には熱きものがあった。仲間たちが話し合いで決めた内容を思い出すには十分なほどに。
 答えが決まれば、寡黙になる必要はない。
「最優先は新たな仲間だね」
 紗神・炯介(白き獣・e09948)はそう語りながらも、ワイヤレスヘッドフォンを起動。直ぐに自分の通信機とラズのアイズフォンのペアリングが完了する。
 賛同を示すかのように、仲間たちの通信機が連携されていく。
 全ての連携が完了した瞬間、シルフィディア・サザンクロス(この生命尽き果てるまで・e01257)の翼が大きくも広がる。
「救いに行きましょうか……」
 軽やかにもシルフィディアの足が地面から離れ、慈悲深さを象徴する修道服から一変。シルフィディアの全身がフィルムスーツとフルフェイスにて覆われる。まるで敵への慈悲深さを遮るように。
 メンバーはライトを灯し、希望の光へと駆け出す。

●脅威
 信号を発し続けていたオウガメタルが、前後方から迫り来る物音に反応。数秒後、前方から飛び出した影に身構えるが、ケルベロスだと知ると安堵の息を漏らす。
 しかしながら安心するのはまだ早い。後方からやって来る者たちがローカストに違いないのだから。
 一刻の猶予もない。
「お待たせしました。我々がローカストを蹴散らします」
 結里花の一言にオウガメタルはスライム状ながらも大きく頷き、そのままラズに手引きされ最後方へと移動を完了させる。
「私たちの後ろに、隠れていてくださいね」
 救急箱型のミミック、エイドもラズの指示に従い、オウガメタルの護衛を開始。メンバーも陣を整える。
 物音が最大限にまで達し、一同の緊張も最高潮に。
 が、茂みからは何も出てこない。
 樒が、はっ、と気付く。
 今の自分たちは格好の的であることに。
「ライトを消せ! 奴ら――」
 樒の指示が通る直前だった。兵隊蟻が奇襲を仕掛けたのは。
 光に集まる獰猛な虫が牙を剥く。
 ターゲットは結里花。兵隊蟻の巨躯な獲物が、結里花の脳天を貫こうと迫る。
「結里花の姐さんに触んじゃねえ!」
 ヒビスクムが結里花と兵隊蟻の間に介入。
「くっ……ぁ!」
 ヒビスクムの身体が軽々しくも吹き飛ばされ、大樹へと叩きつけられる。
 兵隊蟻は片手を上げる。刹那、暗闇から鼓膜をつんざくような不協和音を働き蟻は放射。
 陽動からのかく乱。後衛陣にいるオウガメタルはパニックに陥ってしまう。敵か味方かの区別が付かず、銀光を発しながらも戦地を駆ければ敵の思う壺。
 最後の働き蟻がオウガメタルを始末すべく茂みから飛び出した。
「させない」
 兵隊蟻のシナリオを防ぐべく、炯介がオウガメタルと身体を入れ替える。働き蟻の長くも鋭い管が、肩部を貫きながらも体液を注入していく。
 痛みは全身に広がり、炯介の身体の自由を奪っていく。支配されていく感覚は過去の自分を思い出してしまう。
 だからこそ炯介は抵抗する。
 僅かにも動く左手で力いっぱいオウガメタルを空へと放り投げる。
 支配から君も逃げるんだ、と想いを込めて。
 炯介の想いを紡ぐべく、樒がケルベロスチェインにてオウガメタルを回収することに成功。ナイフをメインウエポンとする樒だが、諜報と暗殺の技術を磨き上げた彼女にとって、鎖の操作など造作もない。
「手荒になってすまなかったな」
 鎖の先端に付随した呪符が光を帯び、混乱していたオウガメタルの自我を取り戻させる。
 計画を崩された兵隊蟻は舌打ちをすると、働き蟻とともに再度闇へと溶け込んでいく。
「ふぉぉ。樒、かっこいいんだゾ。だから私も頑張るゾ!」
 灯音がライトニングロッドを地面に差し込むと同時。地面から溢れ出る金色の光が大きくもそびえ立ち、壁を形成していく。
 光の壁は視覚のアドバンテージを拭い去り、3体のローカストの居場所を明確にも照らし出す。
 上空からは、より顕著に。
「一体も、逃しはしませんよ……!」
 1体の働き蟻目掛けて急降下するはシルフィディア。
 ラズはシルフィディアをサポートすべく、複数本のメスを投擲。
 上空に気を取られていた働き蟻の関節部に的確にも刺さるメスは、機械の身体にも影響を与える魔の麻酔が塗りこまれている。
『ギギギッィィ……!』
 神経を阻害され、1歩も動けないダモクレスへ振り下ろされるシルフィディアの連撃。地獄化した腕は禍々しいタノワール状の刃と化し、指南するかのように突き刺さるメス目掛けて振り下ろされる。
 硬い天然の鎧に覆われていない関節が1本、また1本と地面へと落ちていく。何度も何度も鋼のような体躯に刃が通過し、溢れ出る体液と甲高い悲鳴。その悲鳴は、許しを請うように聞こえた。
 それでもシルフィディアは止まらない。
『ギギギ……、ギ』
 許しを得れたのは、グシャリと働き蟻が崩れ落ちたとき。
「さぁ! 次はお前だぜ?」
 十夜は未だに木を背に隠れる兵隊蟻の影に宣告。十夜のボクスドラゴン、アグニも隠れるのは無駄だと自身の身体に炎を纏い、サーチライトのように木を照らす。
 すると、静かにも姿を現す。
 ケルベロスは改めて敵の全貌を、頭からつま先まで見回してしまう。
『紹介が遅れたな。私はアリア様に仕えるアリア騎士団の1人だ』
 漆黒の西洋甲冑を身に纏い、巨躯なランスを軽々しくも片手で持ち上げる兵隊蟻。かなりの硬度を誇っているのは明白であり、何よりも静かに佇む姿が異質、不気味さを醸し出していた。
 兵隊蟻がランスの矛先をメンバーに向け、静かにも屈む。
『虫けらを殺したくらいでいい気になるなよ?』
 ヒビスクムは戦いの激化に備え、携帯するスイッチを握り締める。
「盛り上げていくぜ……!」
 スイッチを押したと同時。虹色の爆風が仲間を包み込み、兵隊蟻が大地を蹴り上げる。
 
●猛攻
「うおおおおお!」
 滾る気持ちを抑える必要はないと、十夜は叫びながらも兵隊蟻と対峙。呼応するかのように身体から浮き彫りなる紋様が兵隊蟻へと迫る。
 兵隊蟻は実体化した紋様をランスにて一閃。次いで、拘束されずとも切り裂いてやると、ランスの刺突を十夜へと注ぎ続ける。
「くっ……!」
 絶え間ない雨を、十夜は全神経を集中し絶妙なボディバランスにて躱し続ける。が、全てを躱すことは難しい。守護星の加護を得た防具でさえダメージは免れない。
 十夜は一矢報いるべく拳を振るうものの、僅かに鎧を掠めるだけ。上体を後ろへ反らせたスウェーバックにて兵隊蟻は回避。
 防御力だけでなく、回避力もかなりもの。だからこそ、重心が傾いたタイミングを逃すわけにはいかないと、結里花は撫子の首飾りに願いを込める。刹那、撫子の花片が地面に舞い落ち、美しくも獰猛な攻性植物が兵隊蟻の右足へ絡みつく。
 メキメキ、と兵隊蟻の装甲が悲鳴を上げ、結里花の絶対に離すものかという強い意思が植物には込められていた。
「捉えました!」
 ディフェンダー陣であるヒビスクムと炯介、エイドも攻撃に転じようとするが、これ以上に好きにはさせないと働き蟻が接近。
『ギギギィィィ!』
 またしても音波にて妨害。最も至近距離で受けたエイドは、体内から大量の黄金を拡散し、二次災害を発生させる。その隙に兵隊蟻は拘束を解除してオウガメタルのもとへと移動を開始。
「サポートは私と樒に任せて!」
 灯音のライトニングロッドと樒のゾディアックソードが交差。溢れ出る白光の霧が守護星座の恩恵を拡散させ、前衛陣の防御力と耐性を向上させていく。
「目にも止まらぬ早撃ちだぜ」
 兵隊蟻の背中へ照準を合わせ、ヒビスクムが十指からバトルオーラを練り固めた弾丸を射出。真紅のオーラは放たれると同時に赤黒くも成長していく。黒のスパイスを加えたのは炯介。
「全部残さず食べといで」
 弾丸が全弾直撃し、兵隊蟻の片手が弛緩。ランスが抜け落ちたことを意味する。
 アグニとガブリンの火球が迫り来ることに気付いた兵隊蟻は、己の身体を硬質化。堅牢な身体、甲冑、グラビティによる3重の壁は相当の堅さのようでダメージは殆ど通らない。
 伊達にゲートを守り続けてはいないと、兵隊蟻は『舐めるなぁ!』と大きく咆哮。
 それでもシルフィディアは攻める。
「まだです……!」
 低空飛行から仕掛けるゼロ距離の破鎧衝。それは炯介による黒の恩恵を自分も受けていると証明するには十分な一撃だった。
 兵隊蟻の身体を纏うグラビティが、ドス黒いオーラに食い尽くされてしまう。それだけではない。甲冑のボディに亀裂が生じる。
「くらえ!」
 十夜が携行するスイッチを押し込み発動させる。
『!?』
 兵隊蟻の腹部に貼り付けていたステルス型の爆弾が炸裂。先ほどの戦闘にて多大なダメージ覚悟で仕掛けていた爆弾は、甲冑の亀裂を剥がれ落とすにまで変えてしまう。
 3重だった防御癖が1つになる。
 爆炎の死角から飛び出すはラズ。
『しまっ――、っ……ぁぁあ!』
 ラズのロッドに蓄電されていく高密度なエネルギーが、兵隊蟻の剥き出しになった身体を穿つ。
 兵隊蟻の身体から燻る煙が、夜空へと吸い込まれていく。それでも兵隊蟻は崩れない。アリス騎士の称号のもと、立ち尽くしながらもオウガメタルへと静かな殺意を漏らす。
『殺す……! 貴様だけは絶対に……!』
 震えるオウガメタルの前にケルベロスのメンバーが立ちはだかる。代表するかのように、十夜はオウガメタルに向かって親指を立てる。
「キッチリ護り抜いてみせるぜ! 仲間なんだからな!」
 震えていたオウガメタルは、更にフルフル、と震えてしまう。感涙という言葉が適切だろう。
『くだらん! 消耗品如きがぁぁぁ!』
 激昂する兵隊蟻に対し、残りの働き蟻が畏怖しているのは明らかだった。それは兵隊蟻に対してではなく、ケルベロスたちに対してで間違いないだろう。
 その態度が気に入らないと、兵隊蟻が働き蟻の尻尾の針を握り締める。
『ギギッ!? ギギィ……!』
 ブチ、、、ブチブチ、、、と働き蟻の針が引きちぎられ、内蔵すら付随したその針を、兵隊蟻は首元へと射し込んだ。働き蟻は予期せぬ事態に地面にて悶絶する。
 働き蟻を見下ろしながらも、針から分泌された液体が兵隊蟻の身体を癒やす。
 そして、最終決戦だとオウガメタル目掛けて迫ってくる。
 オウガメタルは思う。新たな1歩を踏み出すため、仲間に守られるだけではなく、仲間と戦いたいと。
 既に震えは止まっていた。

●希望
「オウガメタル……?」
 炯介はオウガメタルの異変に気づき、振り向いてしまう。そして、オウガメタルへと触れる。
「!」
 揮発するかのようにオウガメタルは空気へと溶け込み、一瞬で炯介の身体へと装着。オウガメタルが武器となった瞬間だった。
「力を貸してくれるのか……?」
『死ねぇぇぇ!』
 兵隊蟻のランスが、鎌を構える結里花の脳天目掛けて迫り来る。その光景は数分前の映像と重なる。
 炯介とオウガメタルの仲間を守りたいという気持ちが1つになる。全身の装甲から光輝くオウガ粒子が拡散し、結里花の身体を黄金色のオーラが纏う。
 結里花は自分以外の世界が止まったかのような感覚に陥る。それほどまでに五感が研ぎ澄まされていた。迫り来るランスを身を捻りながらも躱せば、遠心力を利用した袈裟斬りが兵隊蟻の片腕を切断。それでも結里花の回転運動は止まらない。
「これで終わりです!」
『っぁぁ……』
 兵隊蟻の首が地面へと転がり、そのままに身体も崩れゆく。
 結里花は残りの働き蟻の始末を行おうとするが、這いつくばっていた残兵は灯音の御業によって捕縛を完了されていた。そして、樒が刃を振るえば、働き蟻の身体は一瞬で肉塊へと変わり果てる。
 シルフィディアの翼がしまわれ、元の修道服、元の慈悲深い少女へと戻る。
「改めて、よろしくお願いしますね……」
 その言葉にオウガメタルは歓喜。感謝と返事を込め、今一度光の粒子にて仲間の身体を癒していく。
 無事に任務を遂行した瞬間だった。

作者:凪木エコ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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