オウガメタル救出~新たな『仲間』を救え!

作者:陸野蛍

 山陰地方の山奥。
 人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
 異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
 この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
 そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
 大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
 この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
 だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
 その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。

●『オウガメタル』の危機
「みんな! 緊急のお仕事だ! 重要な話になるから、しっかり聞いてくれ!」
 ヘリポートに駆けこんで来ると、大淀・雄大(オラトリオのヘリオライダー・en0056)は、真剣な表情でそう切り出した。
「黄金装甲のローカストの撃破が無事成功したのは、みんな知ってるよな? この事件を解決したケルベロス達が、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことが出来たんだ!」
 雄大のその言葉にケルベロス達からざわめきが生まれる。
「絆を結んだ結果、アルミニウム生命体は、本当は『オウガメタル』と言う名前の種族で、自分達を武器として使ってくれる者を求めているらしいと言うことが分かった」
 ケルベロス達の中に『オウガメタル』達自身が使い手を求めているという言葉に疑問を持つ者が居ると感じた雄大は更に説明を続ける。
「その理由は、現在オウガメタルを支配しているローカストにある。ローカストは、グラビティ・チェインの枯渇を理由に、オウガメタルを使い潰すような使い方をしているらしい。特に、この間の事件で、ローカストが使用した黄金装甲化は、オウガメタルを絶滅させる可能性すらある残虐な行為みたいなんだ」
 絶滅の可能性……支配されているとは言え『オウガメタル』が危機感を感じ、他に救いを求めるのに十分過ぎる理由だろう。
「そして今、オウガメタルと絆を結んだケルベロス達が、オウガメタルの窮地を感じ取った。オウガメタル達は、ケルベロスに助けを求めるべく、ローカストの本星から、ゲートを通じて脱出、地球に逃れてきたみたいだ」
『オウガメタル』と絆を結ぶ事が出来たケルベロス達が居たからこそ、ヘリオライダー達も今回の事態の細かい予知が可能になったのだ。
「でも、最重要拠点であるゲートには、当然ローカストの軍勢が居て、そのローカスト達によって、このままだとオウガメタル達は遠からず一体残らず殲滅されてしまう。そんな事には、絶対なっちゃいけないんだ! みんなには早急に『オウガメタル』の救出に向かって欲しい!」
 雄大の言葉に静かに頷くケルベロス達。
「オウガメタル達が、ローカストに追われている場所は、山陰地方の山奥になる。ヘリオンで現地に向かい、オウガメタルの救出とローカストの撃破をお願いしたい。この作戦に成功すれば、オウガメタルを仲間にすることが出来るだけでなく、ローカストの最重要拠点であるゲートの位置の特定も可能になるかもしれない」
『オウガメタル』の救出が最優先事項だが、ローカストのゲートの特定が可能になれば、ローカストの地球侵攻を防ぐことも現実味を帯びて来る。
「だけど、ゲートはデウスエクスにとって地球侵攻の最重要拠点だ。その位置に関わる事態になれば当然、ローカスト達の攻撃も熾烈になるだろう。……厳しい戦いになることは間違いない。それでも、皆に頼むしかない。それを頭に入れた上で、ヘリオンに乗って欲しい」
 真摯な瞳をケルベロス達に向ける雄大。 
「作戦の詳しい概要を説明するな。現在、ローカスト達は、兵隊アリローカスト1体が働きアリローカスト数体を率いた群れで、山地の広範囲を探索して、逃走するオウガメタルの殲滅を行っている。今から向かえば。ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎ。逃走するオウガメタルは、銀色の光を発光信号のように光らせてるから、それを目標に降下すれば、オウガメタルの近くへ降下する事が出来ると思う」
 つまり、追われている『オウガメタル』を目標に降下。その『オウガメタル』を殲滅しようとしているローカストを撃破し、『オウガメタル』を救うことが任務になる。
「降下には誤差があるから、すぐ側に降下出来るわけじゃないけど、俺が意地でも百メートル圏内の場所には降下出来る様にして見せる! だから、合流は難しくない筈だ。いち早く合流してオウガメタルをローカストから救ってくれ」
 夜間の山林内だが、オウガメタルの光を目標にすれば合流は容易い……しかし、それは追って来るローカストも同じ事である。
 迅速に行動しなければ合流した時点で手遅れと言うことになりかねない。
「追っ手のローカストは3体。そのうちの1体、兵隊アリローカストの戦闘力はかなり高い。ゲートを守るという役割もあるみたいだから、どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無い。苦戦すると思うけど、仲間と協力して撃破してくれ」
 戦闘タイプの精鋭のローカスト。協力そして連携を上手く行わなければ、撃破は難しいだろう。
「連れている働きアリローカスト2体は、戦闘タイプじゃないけど、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っている。ただ、働きアリローカストに関しては、兵隊アリローカストが撃破され、状況が不利だと考えれば、逃げ出す可能性があるみたいだ。確実とは言えないけど、兵隊アリローカストを撃破してケルベロスの力を見せつけて、逃がしてしまうのが最善だと思う」
 兵隊アリローカストが強力な敵ならば、こちらも無傷で勝利出来るとは限らない。
 何より、今回は『オウガメタル』を無事に救出する事が求められる。
 戦闘を早く終わらせる為に、敵を逃がすのも良策になるだろう。
「『オウガメタル』は、ケルベロスを信じて、危険を冒してまでローカストから逃げて来たんだ。絶対に救わなきゃいけない! ローカスト達にとってはただの武器かもしれないけど、俺達にとっては新しい『仲間』が助けを求めて来てるんだ! この作戦、絶対に成功させよう! 準備が出来次第ヘリオンを離陸させる。頼むぜ、みんな!」
 力強く言うと、雄大はヘリオン操縦室へ駆けて行った。


参加者
佐々川・美幸(忍べてない・e00495)
天谷・砂太郎(ぽんこつ戦士・e00661)
蒼天翼・舞刃(蒼き翼のバトジャン少女・e00965)
ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)
アリア・ライン(祈るように天使は歌う・e15812)
ジャック・ハイロゥ(廃墟の街のガンスリンガー・e15874)
リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)
エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765)

■リプレイ

●『SOS』が発せられた場所へ
 山陰地方のとある山林の上空に、闇夜とハイパーステルス機能を使い秘密裏に70を超えるヘリオンが集まっていた。
 一機のヘリオンから、次々にケルベロス達が降下していく。
 降下しつつ、SOSを発している助けるべき仲間の光を確認しながら、佐々川・美幸(忍べてない・e00495)が呟く。
「……ローカストってなんて極悪非道なんだろう。オウガメタルさん今助けに行くからね!」
「だいじょうぶだよ、メル。オウガメタルさんたちは、おれたちがたすけるからね」
 同じくオウガメタルの光を確認しながら着地した、エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765)は、プレゼントボックスに入った柔らかな相棒のボクスドラゴンのメルに、静かな口調に強い意志を乗せて話しかける。
「そういやローカストとは、戦った事ないから動きの予測が難しいが……そんな事言ってる場合じゃないな」
 降下前に灯した腰のランタンの光を確認しながら、天谷・砂太郎(ぽんこつ戦士・e00661)が言う。
「新たな仲間の受け入れの為にも、ここは一つ気合い入れていかんとな」
 そう言って両の拳を打ちつける砂太郎。
「これでよしっと!」
 細いが先行する自分と仲間達の道しるべとして、重要な役目を果たす糸を森の大樹にしっかりと結び付け、ジューン・プラチナム(エーデルワイス・e01458)が翼を羽ばたかせ空へと飛ぶ。
「じゃあ空からナビするから、この糸を辿って着いて来てね!」
 元気な声で言うと、ジューンは既に空中でオウガメタルの光を確認済みのアリア・ライン(祈るように天使は歌う・e15812)と蒼天翼・舞刃(蒼き翼のバトジャン少女・e00965)と合流する。
「オウガメタルは、あっちだよ。急ごう」
 長い三つ編みを揺らしながら、アリアが光に向かって先頭を行く。
「あたしがライトを光らせながら行くから、みんな着いてこれるはずよ。ジューンさんの糸もあるしね」
 舞刃が眩いライトを眼下の仲間達に分かる様に照らす。
「あたし達が、まずは急がなきゃね」
 言いつつ飛ぶも、舞刃には一つ不安な事があった。
(「相手は、ローカストなのよね……。あたし、虫は苦手なのよねぇ……。でもオウガメタルの方は金属生命体だから虫じゃない、わよね……? うん、大丈夫。必ず守ってみせるわ!」)
 心の中で不安に思いながらも、まだ見ぬ仲間を助けることを誓う舞刃。
 一方地上組も、飛行組の案内の元、リーナ・スノーライト(マギアアサシン・e16540)が植物に囁き、道を作りながら懸命に森を駆けていた。
 幸運なことに、仲間達は10m以上離れることなく降下出来た為、一緒に行動する事が出来ている。
 オウガメタルとの距離も山道とはいえ50mも離れていないだろう。
(「……助けを求めるオウガメタル達の声……絶対に見過ごしたりはしない……っ!」)
 表情こそ変わっていなかったが、リーナも強い思いを秘めていた。
「おっ! あの光じゃねぇか!」
 ジャック・ハイロゥ(廃墟の街のガンスリンガー・e15874)の視線の先に、強く発光しながら動く物体が映る。
「さぁて。んじゃ、新しい仲間を迎えるためにも、やるとすっかぁ」
 そう言ってカウボーイハットの鍔を弾くとジャックは一気に山を駆け上がった。

●『オウガメタル』救出
「この子がオウガメタル……」
 エドワウの言う、この子……オウガメタルはスライム状の金属生命体だった。
「この子、一体だけなのかな?」
 美幸がそう呟けば、オウガメタルは二十程の数に分裂する。
「こいつら、それぞれが一つの命で、合体して協力して逃げ出したってことか……?」
 ジャックの疑問を肯定するように、オウガメタルは一度だけ発光すると、また一つの大きな塊になる。
「私達は敵じゃないよ……。大丈夫……」
 リーナが優しい声でオウガメタルにかける。
「追っ手のローカストより早く、合流出来たみたいね」
 翼を畳みながら、慎重に降りつつ、舞刃がオウガメタルとの無事な合流に安堵の声を漏らす。
「けど、このまま逃がしてくれる程、敵も優しくないみたいだよ」
 翼を羽ばたかせたまま、上空と言う位置をキープしつつ、アリアがトリプルネックのギターを構える。
「早速おいでなさったか!」
 砂太郎が縛霊手を構えながら前に出れば、それにならってジャックも前へと出る。
「貴様等、ケルベロスだな?」
 林の暗がりから現れた、アリ型のローカストは低い声でケルベロス達に聞く。
「過労死するまで働かせる、ブラックな上司のご登場かな? お前ら、自宅警備員の名のもとに修正してやるー!」
 ジューンがローカストに怯まず反論すれば、ジャックも口を開く。
「一方的に踏みつける相手は仲間じゃねぇ。……まぁ、お前らにゃ仲間なんて要らねぇんだろうがな」
「仲間? 同胞と言う意味で言うならば、お前達の後ろにいるそれは、違うな。オウガメタル共は我々との生存競争に負けたのだ。その相手をどうしようが勝者の自由ではないのか?」
 語るローカストは、右手で指示を出すと暗がりから働きアリを二匹前に出す。
「そんな理屈は通用しないんだよぅ。オウガメタルは助けさせてもらうよ!」
 美幸はローカストにハッキリ言うと、オウガメタルを完全に背後に回し、ローカストの脚元に手裏剣を投げつける。
「貴様等がオウガメタルを守ると言うのであれば仕方ない。狂愛母帝アリア様の為、アリア騎士グギュラム! 貴様等を屠って、オウガメタルを殲滅する!」
 言うと、グギュラムは跳躍し、腕にカマキリの鎌の様な刃を発生させると、ジャックに斬りかかった。
 続く様に、働きアリ二匹も、続けざまにジャックへとキックを放つ。
「そっちから、狙って来てくれて嬉しいぜぇ。俺の狙いもお前だからな!」
 攻撃を受けながらもにやりと笑うとジャックは、旋風を巻き起こしながらグギュラムに、強烈な蹴りを入れる。
「鎧装天使エーデルワイス、いっきまーす!」
 森の中に声を響かせながら駆けると、ジューンは流星の軌跡を描く蹴りをグギュラムに決める。
 だが、グギュラムは落ち着いた声で。
「ふむ、ケルベロスの力とやらはこの程度か、この程度なら……」
「これからが、本番だよ……」
 暗闇から不意に現れた様に、グギュラムの耳元で囁くと、リーナは雷を纏った刀をグギュラムの脇腹に刺し、飛び跳ねる様にジューンの隣へと着地する。
「相変わらずの動きだね、リーナさん」
「ジューンさん、カエルレウムの時以来、だね……。心強いよ……」
 グギュラムから視線を離さず、かつての戦艦竜戦での戦友である二人は、口元に軽い笑みを見せながら言い合う。
「あたしも、全力でいかせてもらうわ。遠慮なんてしてあげないわよ」
 舞刃がグラビティ・チェインを高めていくと、純白だった翼が蒼天の様な青へと色を変えていく。
「見て、蒼天の奥義!この衝撃と華麗さに、動けなくなったって知らないんだから♪」
 翼や衣服を翻しながら、美しく舞う様に、蒼い天使の如く頬笑みを湛えながら、舞刃がグギュラムに急所を確実に狙った連続攻撃を与える。
「たすけにきました。おれたちはみかたです、どうか信じて、こっちへ」
 エドワウがグギュラムが纏っているであろうオウガメタルに語りかけるが、何も変化は無い。
「こいつらに何かを求めても無駄だ。私の、アリア様の支配からこいつらは逃れられない」
「そう……。なら、あなたをたおします。星たち。きらきら。ごちそうさま。そばに。いっしょに。いただきます」
 エドワウの言葉と共に、グギュラムの足元から粘着質の液体が染み出て来ると、彼の全てを蝕まんと侵食していく。
「女の子にばっかり、いい所持ってかれちゃ駄目だよな!」
 砂太郎が縛霊手から、巨大光弾を放てば、それは三匹のローカスト全体に襲いかかる。
 しかし、ケルベロス達の連続攻撃を受けてなお、グギュラムは落ち着いた声を崩さない。
「私の命はアリア様の物。そして、アリア様の望みは私の望み。それを邪魔するケルベロスよ。消えてもらうぞ」
「忍法、影縛りの術!!」
 グギュラムの影を縫いつける様に、美幸の手裏剣が再度、グギュラムの脚元に打ち込まれる。
「それはこっちのセリフだよ! 絶対、負けないんだから!」
 その時、戦場に戦い続ける者達へ捧ぐ歌が響く。
「ボク達は、オウガメタルを助けに来たんだ。だから、負けたりしないんだ」
 アリアはギターを掻き鳴らしながら、仲間達へ強きグラビティを与えて行く。
 ギターの音が響く中、双方同時に動いた。

●『アリア騎士グギュラム』の最後
「……いいから、ちょっと黙ってろ!!」
 拳に大量のグラビティを込めると、砂太郎はグギュラムに強烈なボディーブローを喰らわす。
 その砂太郎に、働きアリの蹴りが決まるが、砂太郎は一歩も引かない。
「わざわざ働きアリ狙わなくても、お前は身を差し出してくれるんだろ? なら働きアリなんて狙う必要ねぇじゃねぇか。勝手に俺様の射程に入って来いよ、ンダラァッ!」
 叫びながら、魔を降ろした拳をグギュラムの顔にヒットさせるジャック。
 戦闘開始から5分、ケルベロスとグギュラム率いるローカスト達、どちらも引かない攻撃の応酬が続いていた。
 但し、ローカスト側で確実にダメージを受けているのはグギュラムだけだ。
 ケルベロス達は、兵隊アリであるグギュラムさえ倒せば、働きアリ達は逃走するだろうという情報を元に、ターゲットをグギュラムだけに絞っていた。
 ただ、誤算だったのは予想以上にグギュラムの一撃一撃がケルベロス達を……特に、ジャックと砂太郎の身体にダメージを与えていた。
 アリアが攻撃の及ばない上空から回復に専念していたが、それでも彼等のグラビティ・チェインは確実に減少していた。
 ジャックに至ってはメルのヒールを受けても追いつかない程だ。
 そして、働きアリの攻撃も数を受ければ十分なダメージとなって蓄積されていく。
「3れんの盾よ、きて」
 砂太郎の頭を狙って振り下ろされた働きアリの踵落としを、エドワウの盾が防ぐが、防いだ瞬間に音をたてて割れる。
「攻めて攻めて、一気に落とすわよ!」
 両手の手裏剣を高速回転させ、二つのの竜巻を生み出すと舞刃はグギュラムを挟む様にぶつける。
 美幸の螺旋を纏った掌底が、リーナの空をも斬る斬撃が、ジューンのやれば出来ると放った冷気を纏った一撃が、グギュラムを襲う中、グギュラムがグラビティを伴った破壊音波を放った。
 その音波は、砂太郎、ジャック、舞刃を苦しめ、遂にジャックが膝を折る。
 その時、舞刃を狙い、働きアリが襲いかかった。
 理屈では無かった。
 彼流に言うならば、『ディフェンダーの踏ん張りどころ』身体が先に動いたのだ。
「グォッ!」
「ジャックさん!」
 働きアリのキックがジャックの頭を捉えると、ジャックは地に倒れた。
「まず、一人……」
「そっちだって、まさしく虫の息じゃないか! この一撃を受けてみろ!」
 ジューンは叫ぶと、英雄の輝きを受けたゲシュタルトグレイブを一回転させ、グギュラムを貫く。
「ジャックは、任せたぜ!」
 アリアに向かってそう言うと、砂太郎は残っているグラビティ・チェインを縛霊手に込めると網状に霊力を編み込んでグギュラムを捕える。
「貴様等!」
「アリアさん! ジャックさんは?」
 美幸の問いにアリアが首を振る。
「戻って治療しないと、今すぐに回復させるのは無理だよ。だから……グギュラムを倒して! 民が君たちの名を呼ぶ。英雄よ今こそ立ち上がれ! 決して折れぬ剣と、魂を握りしめ、その剣と魂の輝きが闇を祓う時が来たのだから!!」
 アリアは歌に己のグラビティ・チェインをそして魂を込めて歌う。
 その歌は、少女達に力を与えて行く。
「オウガメタルも、皆も誰も犠牲にしないんだよ!」
 美幸の思いのこもったオーラの弾丸が激しい音をたてながら、グギュラムの装甲にヒビを入れる。
「この一撃で、終わりにするね……。集え力……。わたしの全てを以て討ち滅ぼす……! 討ち滅ぼせ……黒滅の刃!!」
 リーナの両の手に周辺の魔力、そしてグラビティ・チェインが収束していく。
「これで、倒せなくても、限界まで……。あなたが倒れるまで、この黒い刃を生みだすから……」
 言って、リーナはその黒い巨大な刃をグギュラムに振り下ろした。
「アリア様……」
 グギュラムの言葉は、その圧倒的な刃に飲み込まれた。

●『仲間』と共に前へ
「やっぱり、だめだね……」
 エドワウがメルと共に木にもたれかけさせた、ジャックにヒールをかけるが、ジャックは目を覚まさない。
「ヘリオンに戻れば、ジャックちゃんは大丈夫だよ。でも、ボクの回復でも追いつかなかったんだね。ローカストにも十分な戦力になる兵が他にもいるのかもしれないね」
 アリアが口惜しそうに言う。
「それにしても、働きアリって本当は憶病なんだね。兵隊アリが倒れた途端、逃げちゃうんだもんね」
 ジューンが言う様に、既に働きアリ二匹の姿はこの場に無かった。
 グギュラムが、リーナの刃を受けて地に伏し、動かなくなったのを見ると働きアリ二匹は、顔を見合わせすぐにその場から逃げだしたのだ。
「働きアリと、兵隊アリの役割の違いなんだろうな。けど、こいつらの女王でいいのかな? 狂愛母帝アリア。そいつを倒せば、ローカストは弱体化出来るかもしれないな」
 ジューンの言葉を聞きながら、息をしなくなったグギュラムの身体を調べていた砂太郎が呟く。
「オウガメタルには……みんな、でいいのかな? 怪我は無いみたい……」
 リーナが塊になった金属生命体の無事を仲間達に報告すれば、美幸が笑みを漏らす。
「このまま保護して帰れば、任務完了だね。これでこの子達も仲間になれるね」
 美幸の言葉にオウガメタルは、一度発光する事で答える。
「みんな! まだ戦闘が続いている所もあるみたいだけど、今ならヘリオンに戻れるわ。オウガメタルを連れて戻るわよ。……ジャックさんも心配だし」
 空から周りを調べていた舞刃は、地上に降りて来ると仲間達にそう言った。
 まだ、動いているチームはあるが、自分達の役目は達した。
 新手が現れる前に、この場を離れるのが良策だろう。
「じゃあ、戻ろう。新しい仲間を連れて」
 言うと砂太郎は、ジャックを背負い歩き出した。
 それに続く様に、皆歩き出す。
 スライムの様な新しい仲間『オウガメタル』も仲間達に囲まれながら新しい道へと進み出したのだった。

作者:陸野蛍 重傷:ジャック・ハイロゥ(廃墟の街のガンスリンガー・e15874) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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