オウガメタル救出～絆を頼る者に救助の手を！

■リプレイ

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　ここは山陰の山奥。本来ならば静かな場所だが、今は山鳴りのような音が響く。その原因は大量のローカスト。数は不明だが200体以上はいるだろうか。それが銀色に発光するナニカを追いかけていた。
　そんな銀色に発光するナニカに向かい、空から降下する影がある。ケルベロスだ！
　今回は早急なオウガメタルの保護の為、チームを一時的に飛行班と地上班の二つに分けた。飛行可能な者に複数人抱えて貰い、降下場所を調整する。
　愛柳・ミライ（宇宙救済係・e02784）がオラトリオの翼を広げて、山彦・ほしこ（山彦のメモリーズの黄色い方・e13592）とパティ・ポップ（溝鼠行進曲・e11320）を抱える。
「オウガメタルってあんまりわかんないでちけど、何か大変なことみたいでちね」
　そう、ミライに抱えられたパティが呟く。
「そうです。あの子たちは奪われてばっかりだったの」
「だから、おら達が来たからには絶対絶対たすけっぺ！」
　そんな言葉に答えるミライとほしこ。そのまま急降下していく。
　その隣では金剛院・雪風（雪風は静かに暮らしたい・e24716） がヴァルキュリアの光の翼を広げている。
「運んでもらう時はもふもふするって約束だからね！」
　白銀・風音（お昼寝大好きうさぎ・e01669）は空中で動物変身してもふもふ兎に変身。同時に後ろ足を伸ばして、『さぁどうぞ』って感じ。
「はい」
　そんな風音を優しく抱っこするフローネ・グラネット（紫水晶の盾・e09983）。その二人をまとめて抱える雪風。
「それじゃあいくよ！」
　翼で風を掴み落下地点を修正していく。
「あそこ、光っているよ！」
「うん、行くね捕まってね！」
　発見した光はか弱く、ほおっておくと消えてしまいそうな儚げな光。そこへ向かい雪風とミライは翼を羽ばたかせ急降下した。

「あっちだったな」
　空中部隊から少し離れて降下した神地・滄臥（ウォーガンナー・e05049）と大義・秋櫻（スーパージャスティ・e00752）。周囲を警戒しながら滄臥を先頭にはしる。すると、行く手を遮る枝が道を開いていく。それは『隠された森の小道』の効果。これにより、迅速な合流が可能だった。

「あれがオウガメタルか」
　SOSのように発光する金属生命体がそこにはいた。その外見は銀色のスライムのような姿。それが助けを呼ぶように発光を繰り返す。
「あなた達を助けに来たの！」
「ようこそ地球へ！」
　そんな銀色のスライムにミライたほしこが優しく声をかける。
「まだローカストは居ないみたでち！」
　その隣では、動物変身を解き周囲を警戒するパティ。このオウガメタルを全滅させるためにローカストが近くに来ているはずなのだ。
「おいで！　自由をお約束するのです！」
　先頭のミライが優しく声をかけると、オウガメタルたちは一瞬、銀色の発光を暖かく変化させ、子犬くらいの大きさに分裂。どうやら、オウガメタルはそういう事が出来る種族のようだ。
『キューキュー！』
　鳴き声……ではなく、金属の身体と何かの摩擦で発生した音だろうか。そんな音を響かせながら庇護を求める子犬のように移動してくる。
「……地球にようこそ、かな？」
　その光景はミライの言葉に答えたように見えるのだが、実際に会話が成立した訳ではない様子だ。
　しかし、同じ生命体として通じる想いがあるのだろう。少なくともオウガメタルはケルベロス達を『助けに来てくれた』と認識している様子だ。
「このスーパージャスティが皆さんをお守りします」
「私はあなた達種族と一緒にお昼寝したい、だから生きて」
　無表情で淡々とした声を響かせる秋櫻と、ちょっと個人的意見溢れる風音の言葉。そんな言葉の想いだけを感じている様子でケルベロス達の足元へ集まるのだった。

　そんなオウガメタルとの邂逅を邪魔する影が近寄っていた。
「何処にいった、探せ！」
　先に発見したのはパティだった。
「あ、虫、発見でち」
　オウガメタルを捜索中のローカストを先に発見。仲間たちに声をかけ、迎撃態勢を整える。
「ぬ、そこに居るか！」
　今まで共に戦い、今も武器として使用しているオウガメタルに対して攻撃を繰り出す。
「させません！　アメジスト・シールド、最大展開！！」
　しかし、それを打ち落としたのはフローネが展開したアメジストの盾。
　しかし、その攻撃は牽制に過ぎない。同時に別のローカストも集結し、牙を形成したり鎌を形成したりと戦いの準備を整える。
　そんなローカストたちの前に庇うように立つのは、フローネ、秋櫻たち。
「貴様らにアレを渡す訳にはいかぬ！」
「彼らは私たちを頼り、保護を求めて来ました！」
　きっぱりと言い切るフローネ。弱き者を守る為に彼女の盾はある。そしてこの場に庇護を求めて来た者を追い返すようなケルベロスも居ない。
　そんな問答の間もミライたちはオウガメタルと想いを交わしていた。
「ねぇ、あなたお名前は？」
　そんな言葉に、お礼でも言うように、足元をくるくると回るオウガメタル。
『キュッキュ！』
　やはり言葉は通じていないが、仲良くしたいという想いだけは伝わったのかもしれない。
「ふ、我が名を問うか、ならば答えよう！　我が名はアリアの騎士・ザガバイグ！　冥土への土産とせよ！」
　そんな言葉に何故か答える兵隊ローカスト。その瞬間、皆の想いが重なる。
（「あんたに聞いてないでち！」）
（「貴方に聞いてませんわ」）
（「お前に聞いてねぇ！」）
　皆の気持ちが重なった瞬間に走る沈黙。それを『驚愕』の沈黙だと勘違いした兵隊ローカストは気合いを入れ腕にオウガメタルの刃を展開する。
「我の一撃にて滅べケルベロス！」
　芝居がかった様子のローカストに、不機嫌な様子でゆっくり前に出るのは滄臥。
「貴様が最初の犠牲者か！」
　吠えるローカストを完全に無視して、腕に展開されたオウガメタルを見つめる。
「俺は、ただ犠牲になっていく奴を見るのは虫酸が走る」
　それはローカストに酷使されているオウガメタルへの想い。ローカストはオウガメタルを使い潰すような使い方をする。このまま戦えばローカストに使われているオウガメタルが死ぬかもしれない。
「今、この瞬間にも仲間を殺そうとしているんだぞ……テメェらは本当にそれでいいのか？」
　さらに、この場に滄臥達が間に合っていなければ、同族を自らの意思とは無関係に殺していたはずなのだ。
「反抗する勇気を出すの、今なんじゃねえか？」
　普段は口数の少ない滄臥が、それだけの想いをはっきり口にするのは珍しい。それだけ、今回の件は滄臥に色々と気づかせたのだ。
「何を言っているんだ？」
　そんな滄臥の言葉に返答したのはローカスト。残念ながらローカストに使用されているオウガメタルは完全に支配されているようで、脱走したオウガメタルのように自由は無いようだ。
「まあ、それよりも我は任務を遂行するだけだ……」
　そう言うと展開した鎌状の武器を共鳴させ、頭が痛くなりそうな騒音を響かせる。
「させません！」
　狙いはケルベロスではなく、オウガメタルたち。しかし、激しい騒音を打ち消すように展開されるアメジスト色の防壁。さらに秋櫻も身を挺してオウガメタルを庇う。
　しかし、それであっても全てのオウガメタルを守る事は出来ない。一部のオウガメタルが蒸発するように泡立ちそして消えていく。
「畜生！」
　それがどのような意味なのかは分からない。人間の場合の怪我程度なのか、それとも帰ってこない命なのか……。
「こっちに入ってね！」
　そんな惨状の中、ポケットを広げてオウガメタルを誘導するのは風音。彼女のポケットには1メートル四方の物体が収納出来る。
『……キュッキュ！』
　言葉は分からない様子だが、それでもそこが安全そうな雰囲気だけ分かったようで、オウガメタルの一部が風音のアイテムポケットの中へ避難する。しかし、結構な量のオウガメタルがまだ残っている。
「残りの子たちは、スーパージャスティスの背中へ。皆さんをお守りします」
　 秋櫻が残ったオウガメタルを庇いながらも淡々とした声をかけ、他の者がオウガメタルを守るように陣形を組む。出来れば安全な場所へ逃がしたいが、周囲では他のケルベロス達とローカストの戦いが始まっている。逃がそうにも、安全な場所が分からない。
「我の目的は逃亡したオウガメタルの消去……ならば貴様らを全て倒す方が効率的だな」
　その状況にガザバイグも目標を切り替える。その態度は全員倒し、その後にオウガメタルを全滅させられる自信があるようだ。
　実際、単純な戦力を比較した場合、ローカスト側が多い。しかし、今までの戦いを生き残ってきたケルベロスたちに、そんな状況はいくらでもあった。
「少し離れててね」
　ミライは自分の側にいるオウガメタルに声をかけるが、やはり言葉が通じていないのか、足元から離れる様子はない。
「そっか。じゃあ、絆を選んだ君を守るからね」
　そんな側から離れないオウガメタルに優しく声をかける。もしかしたら、少しでも手伝いたい気持ちがあるのかもしれない。
　そんなオウガメタルの想いを感じながら武器を構えるケルベロスたち。本格的な戦いの始まりだ。

●
「オウガメタルちゃん、ようこそ地球へ！」
　ほしこは後ろで見ているであろうオウガメタルを励ますように、大きな声で声援を送る。
　同時にバスターライフルを構えポーズを決め、白色のビームを後衛の働き蟻ローカストを撃ち抜く。
「ボクも行くよ！」
　さらに追撃する雪風。オーラを収束させ放つ弾丸は喰らい付く牙。
「目標補足。戦闘モード起動」
　マントを翻しアームドフォートを展開させる秋櫻。
「全力全開！」
　同時に一斉掃射し、後衛のローカストを狙う。
「ふん、各個撃破か。戦いという物が分かっているな！」
　ガザバイグは呟きながら前衛の何人かを値踏みするように見つめ、そしてターゲットを決める。
「貴様から葬ってやる！」
　ガザバイグは目標を雪風に定めると、働き蟻に連携攻撃を仕掛けさせる。
「深く考えるのは得意じゃないからね」
　働き蟻の連携攻撃を直感的にノリと勢いで避け耐える雪風。
「そこだ！」
　その連携で出来た隙に攻撃を重ねるガザバイグ。高速回転からのローカストキック。
「させません！」
　そこへ割り込むのはフローネ。アメジストの盾を展開する。
「そんな盾など！」
　しかし、回転力を加えたローカストキックにより粉々に砕け、周囲に紫陽花の花弁のように舞う。
「ぴんちはちゃんすでち！」
　盾は砕かれてもローカストの連携攻撃は止められた。そこへ攻撃を仕掛けるパティ。
「いくでち！」
　そこへ踏み込み流星の力を足に込め、大きく飛び上がる。そこから空中で一回転して重力を足に宿し、流れ星のように兵隊蟻ローカストを貫く。
「おのれ！」
　飛び蹴りの応酬に悔しそうな表情のガザバイグ。続けて攻撃を繰り出そうとするところへ、滄臥の放つ弾丸が戦場を制圧するように放たれ、ローカストの追撃を止める。
　そんな激しい戦いの中で響くのは風音の周囲が一瞬明るくなる。
「癒しと察知をあの者達へ！」
　光の中で風音が手を軽く回すと同時に兎の形をした光の塊が複数出現する。その兎光が跳ねながら秋櫻やフローネ達に吸い込まれていく。すると、その光が傷を包み癒し、さらに感覚を鋭くさせる。
「こんなときこそ、元気になる曲を！」
　激しい戦いで傷ついていく仲間達を応援する曲を演奏し歌うミライ。その歌は光の意思と希望の歌ヘリオライト。その歌で背中を押され前へ進み出すケルベロスたち。
　しかし、戦力比を覆すのに無傷の勝利は難しい……。

「まだまだ、ガツンっと行くよ！」
　満身創痍に近い状況であっても勢いを失わない雪風。一体目の働き蟻ローカストを倒した後、ガザバイグに攻撃目標を集中させる。
「見せてあげる。ボクのバトルセンスを！　思いつきから生まれる無双の拳だよ」
　ガザバイクとのインファイトで激しい攻撃を繰り出す雪風。右足の蹴りと右手の突き、かと思えば空を切った蹴りが、そのまま支点になり回転ながらの裏打ちが炸裂するようなノリと勢いの連続攻撃。
「強し！　だが、我も死ねぬ！」
　ローカストにとっては自種族の命運を分ける戦い。負けられない想いでは劣らない。
　攻撃が途切れたところでカウンター気味の反撃。
「……あれ……カラだ……が……」
　その一撃で勢いが途切れたのか、足と手が止まり、そしてそのまま崩れ落ちる雪風。
「残り７体か……」
　倒れた雪風に視線も向けずに次の目標を定めるガザバイグだった……。

●
「近接格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除」
　仲間を守るのに加え、時折混ぜるオウガメタルへの攻撃に翻弄されながらも前線を支えてきた秋櫻。最後の力を振り絞り、リミッターを解除する。
「我は負けぬ！」
　秋櫻の超光速の近接連続攻撃を受けながらも、歯を食いしばり耐えるが、最後の一撃で大きく弾き飛ばされた。
「……」
　しかし、それは秋櫻の力を利用した跳躍。
「ローカストキック！」
　大きく跳躍してからの蹴りに貫かれる秋櫻。
「戦闘継続不可能。後は任せます……」
　そのままゆっくりと倒れる秋櫻。切り札は残されているが、皆の勝利を信じているから後を任せる。
「このまま行く！」
　さらに再び飛び上がるガザバイグ。
「これ以上させません！」
　それを迎え撃つフローネ。再びアメジストの盾を展開する。
「ふんっ、その盾が砕かれた事をもう忘れたか！」
　展開された盾を蹴り抜くガザバイグ。しかし、盾は一枚では無かった。割れた側から再形成していく。
「砕かれた盾も大切な人達の暖かい心に支えられれば再び掲げる事が出来るのです」
　一瞬、視線をミライに向け、そのまま形成した盾でガザバイグの攻撃を受け流す。
「なんとぉ！」
　そこを御業によって掴み動き捕縛する。
「そこだ、覚悟しろ！」
　そこへ最後の力を振り絞るケルベロスたち。同時にミライとほしこが歌い奏で背中を押す！
「そこだ、覚悟しろ！」
　滄臥が放つ手榴弾によって上がる爆煙の中で背後を取るパティ。
「喰らうでちゅ！」
　後頭部の付け根に猛烈な衝撃を与える。
「グハァ！」
　大きく身体を揺らすローカストに風音の炎蹴りも加わりケルベロス最後の連携。
「……無念」
　そして、ガザバイグは膝を付きそのまま崩れて消えた。
「ギギギィィ！」
　ガザバイグが倒れたのを見ると、残っていた働き蟻ローカストは蜘蛛の子散らすように逃げ出した。
「すまねねな。譲るわけにはいかねえだ。この星の大地と命を……！」
　そんな背中を見送りながら呟くほしこ。同時にケルベロスたちの勝利を喜ぶように集まってくるオウガメタルたち。
「この子たちみてぇに、共棲のやりようはねぇのかな……」
　ともかく今はオウガメタルの無事を喜ぶケルベロスたちであった。

作者：雪見進	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年6月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
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