●
山陰地方の山奥。
人跡未踏の山肌には、働きアリローカストによって作り出された異形の建築物が立ち並んでいる。
異形の建築物はそれ自体が生命体のように有機的に積み重なっており、更に、上空や周辺から完全に隠蔽される構造となっていた。
この異形の建築物の中心にある宮殿には、アリ系ローカストの支配者たる、狂愛母帝アリアが鎮座し、ローカストのゲートの地球側出口を守護していた。
そのアリアの元に、兵隊アリローカストの一体が駆け込んでくると、緊急の報告をする。
「大変です、アリア様! ゲートから大量のオウガメタルが出現、我等の制御を受け付けず、都市区域から逃走しようとしています!」
大量のアルミニウム生命体『オウガメタル』がゲートから現れ、そして、逃走しようとする。
この事態は、狂愛母帝アリアにも予測不能だった。
だが、最も重要なゲートの守護を任された実力者であるアリアは、すぐに打開策を考え実行に移す。
「今すぐゲートに向かい、ゲートを一時閉鎖する。お前達はただちに出撃し、逃げ出したオウガメタルを一体残らず殲滅するのだ。奴らが、他のデウスエクスやケルベロスの元に逃げ込めば、我等のゲートの位置が割り出されてしまうやもしれぬ」
その言葉に、弾かれるように退出した兵隊アリローカストに見向きもせず、アリアはゲートへと向かった。
●
「先日の黄金装甲のローカスト事件の報告を聞いて知っている者もいるとは思うが、この事件を解決したケルベロス達が、黄金装甲化されていたアルミニウム生命体と絆を結ぶことができた」
報告書や資料を広げながら、刀隠・緋彩(オラトリオのヘリオライダー・en0193)は、眼前のケルベロス達に言った。
「その結果、アルミニウム生命体は、本当は『オウガメタル』という名前の種族であることがわかった。彼らは自分達を武器として使ってくれる者を求めている。だが、彼らを支配しているローカスト達は、グラビティ・チェインの枯渇を理由に、オウガメタルを使い潰すような使い方をしているようだな」
協力させておいて使い潰すとは何事だと緋彩は眉を顰めつつ、呟いていた。
「しかも、黄金装甲化は、オウガメタルを絶滅させる可能性すらある残虐な行為であるらしい。これも絆を結んで知る事ができたが、可哀想なものだな。そして、ケルベロスはオウガメタルに助けを求められている」
そして、今まさに、オウガメタルと絆を結んだケルベロス達が、オウガメタルの窮地を感じ取ったのだと皆に説明した。立ち上がる時は今なのだ。
「オウガメタル達は、ケルベロスに助けを求めるべく、ローカストの本星から、ゲートを通じて脱出に成功。地球に逃れてきた――だが。最重要拠点であるゲートには、ローカストの軍勢がいるだろうことは皆にも想像できると思う」
そして、このまま我々が動かなければ、ローカスト達によってオウガメタル達は時を待たずして殲滅されてしまうだろうと緋彩は言った。
「オウガメタル達が、ローカストに追われている場所は、山陰地方の山奥。この後ヘリオンで現地に向かい、オウガメタルの救助とローカストの撃破をしてくれ。この作戦に成功すれば、オウガメタルを仲間に迎えるだけでなく、ローカストの最重要拠点であるゲートの位置も特定する事が可能になるかもしれないんだ」
緋彩はゲートの位置に関わる事から、ローカスト達の攻撃も熾烈になるであろうとも言った。
「厳しく難しい戦いとなるが、是非、皆の力を借りたい。よろしく頼む」
そう言った後、資料を渡しながら緋彩が説明を続けた。
「敵勢力は、兵隊蟻ローカスト1体が働き蟻ローカスト3体を率いている。山地の広範囲を探索して、逃走するオウガメタルの殲滅を行っているらしい。ヘリオンが現地に到着するのは、夜半過ぎとなる。暗い夜道だが、逃走するオウガメタルは、銀色の光を発光信号のように光らせるので、見つけられないわけではない。その光を目標に降下すれば、オウガメタルの近くへ降下する事ができるだろう」
緋彩はダイレクトに降下はできないが、誤差は目標から百メートル以内で済むと言った。合流自体は然して難しくないだろう。
「追っ手である兵隊蟻ローカストの戦闘力はかなり高い。ゲートを守るという役割だから当然だな。どんな不利な状態になっても決して逃げ出す事は無いはずだ。働きアリローカストは、戦闘は本職ではないものの、それでもケルベロス数人分の戦闘力を持っている。ただ、働きアリについては、兵隊蟻ローカストが撃破され状況が不利だと思えば、逃げ出す可能性もあるだろうな」
可能性を話しつつ、緋彩はローカスト達のスペックを説明した。
「このローカストは、アルミの牙による攻撃や腕からカマキリの刃のような鎌を出して切り裂き相手の体力を奪い、破壊音波を放ってくるから気を付けてくれ」
説明を終えて緋彩は皆を少しの間見つめ、自分の想いを伝えた。
「絆を結んでくれた上に、頼ってくれるなど嬉しいことだ。だが、俺には救う手だてがない。正直、皆が心底羨ましいと思う。だからこそ時と未来を読み、絆と手を繋ぐことのできるお前たちに未来を託したいと思う。ぜひ、救ってやってくれ」
そう言って、緋彩は皆に頭を下げた。
参加者 | |
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神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663) |
テオドール・クス(渡り風・e01835) |
六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781) |
サラフディーン・リリエンタール(蒼き大鷲・e04202) |
ミオ・リリエンタール(百鬼繚乱・e09678) |
裏戸・総一郎(小心者な日記作家・e12137) |
ユーディアリア・ローズナイト(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e24651) |
ネーロ・ストリキニーネ(サキュバスのウィッチドクター・e28952) |
●黒く沈む森の中に
山陰地方の山奥にヘリオンのローター音が響き、8つと小さな影1つが夜の闇に飲み込まれた。
特に今回、防御の要を担いたいと申し出た裏戸・総一郎(小心者な日記作家・e12137)は、できればより近くにと思い、降下しながら大まかな位置を探る。
(「絶対に……助けます!」)
できれば敵の位置もと思うも、降下時間の中ではすべてを確認するまでには至らない。ただ、そんな彼の想いが届くかのように、無事オウガメタルの方側へと着地できたことは僥倖であった。
ケルベロス達は速やかに集結し、サラフディーン・リリエンタール(蒼き大鷲・e04202)がすぐさまReve d'Etoilesを点灯する。
「なんで?」
「お前たちは夜道に慣れていないだろう?」
疑問の声を上げた神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663)に、彼はそう言って笑った。
「なるほど……確かに目がすぐに慣れないなぁ」
焔は頷きつつ、手元のワークライトを点けて歩き始めた。
●深淵に佇む光
二人分用意された隠された森の小路の力によって、植物の生い茂った黒き道は歩きやすくなった。
足場を確保した一同はすぐに速度を上げ、遠く光る光源を求めて走り出す。
戦いに行った恋人を待つため、毎夜燈した灯り。今度は、助けを求める者のために燈されている。
六条・深々見(喪失アポトーシス・e02781)の腰にもライトが下げられていた。
ユーディアリア・ローズナイト(ヴァルキュリアのブレイズキャリバー・e24651)は光の翼を発動し、地獄の炎も光源にならないかと自分なりに必死で考えて左腕を燃え上がらせている。
誰もが灯りを掲げ、寄り添い、全力疾走で助けを待つ者を探す。
そして、徐々に強く光る光へと近付いて行った。
「助けに来たよ!」
深々見は草むらを移動する金属の光沢をしたスライムのようなものに向かって叫んだ。
それはグニャンと揺れ、動きを止めた。その代りに、強い光で瞬く。
「戦いや使い潰しの道具等でなく、共に地球で生きる仲間として迎えに来ました。お願いです、どうか私達に力を貸して下さい!」
ミオ・リリエンタール(百鬼繚乱・e09678)も、必勝と不退の意思を胸にその光に訴えかけた。
総一郎も自分の熱意と本心を伝えようと必死に訴える。
「助けを求められて、見捨てるわけにはいかないです! ボクも男だからね!」
それを聞いてオウガメタルがグニャグニャと動く。
テオドール・クス(渡り風・e01835)も訴えかけた。
「オレ達がぜったい護るから、力を貸してくれ! オレ達なら、より強い光を生み出す絆を繋げると思うんだ」
「オウガメタルの境遇聞いてるとさ……弱っちくて、色々言われてる俺ちゃんとしては、何だか他人事とは思えねえっす」
ネーロ・ストリキニーネ(サキュバスのウィッチドクター・e28952)はしみじみと言った。
このメンバーの中では一番攻撃力が低い自覚がある。でも、自分もメンバーなのだと必死に訴えた。
「こんな俺ちゃんでも出来ることがあれば、精一杯頑張るっすよ!」
「さすがにさー、助けてほしいって頼ってくれたりさー。こういう時、助けにいける人が羨ましいって言われたりさー。やる気に、ならざるを得ないじゃん」
(「あたしみたいなのでも、さ……」)
深々見の声を聴き、オウガメタルが反応した。
「戦おう、友よ……孤独な日々は終わりだよ」
サラフディーンが手を伸ばすと、戸惑い気味に蠢いたオウガメタルが彼の周りをくるりと動く。
そして、妹の方へと進んでいくと、大きく蠢いてミオを守る鎧になり、動きを止めた。
「そ、装着できたの?」
言葉ではない想い。
強く強く、ケルベロスと共に戦いたいと願うような、そんな感じをミオは受けた。
「兄さん……戦いたいみたいよ、一緒に」
原因はわからないが、他の皆には装着できなかったようだ。しかし、ケルベロス達の情熱は届いている。それは大きな一歩だろう。
そして、装着されたオウガメタルの鎧がチカチカと瞬いた。
「え?」
「何? 何かあった?」
焔が驚いて声を上げる。
再度、瞬いたオウガメタルの様子に、ミオは胸をチリチリと焼かれるような気持ちが湧いた。
「た、たぶん……来ます!」
「ローカストでしょうか? それなら、やっつけますです!」
「では、迎撃だな」
サラフディーンは笑って言った。
助けたい気持ちはここにいる全員が思うこと。ユーディアリアの初めて願いを聞いて、皆は奇襲をかけることにした。
●我らが聖戦
来るであろう敵に対陣を組み、一同が定位置に付いた。
声忍ばせ、ネーロは隣にいるサラフディーンに言う。
「サラフ、あんたは確かに強い人かもしれねえ……でもね、あんたは一人で戦ってるんじゃない」
「そうだな。俺たちケルベロスは3つの頭ではなく、8つの頭を持つ地獄の猟犬だ……お前もな」
「フン……」
「来たぞ……」
遊牧民たる者の目に異変が映る。
告げる声に応じて一同は狙いを絞り、容赦なしの一撃をローカストに食らわせるため準備した。
「!」
ミオが奥義を放とうとした瞬間、全身を覆うオウガメタルの装甲はミオの技に反応した。
装甲は光輝くオウガ粒子を放出し、前列で攻撃を開始を待つ仲間の超感覚を覚醒させる。
この暗き森の鳥の声さえも近く聞こえそうな、鋭敏な感覚。
「すごい……何でもできそうな気がする」
深々見は呟いた。
ネロ様は癒す翼をはためかせ、異常耐性を焔たち前列に付与した。
その後ろではテオドールにエレキブーストを施すサラフディーンがいる。
横では少々緊張したのか、ネーロがぎこちない動作で雷の壁を構築し、味方の異常耐性を高めていた。
「負ける気がしない……」
深々見はまた言った。
頑張ってる風を装いつつ、手を抜くことが得意な彼女が今回ばかりは真剣――本気だった。
(「出し惜しみなしの、全力。喰らえ!」)
『眠ろうよ、まだ、もっと、ずっと!』
深々見は兵隊蟻ローカストを包み込むように、光通さぬ深い深い闇の揺り籠を作り出す。安らかで、満たされた眠りがもたらされ、少しずつ兵隊蟻の体を闇へと文字通り溶かしていく。
「おぉッ?」
幸福感に満たされながら、兵隊蟻は甘く魔法に引きちぎられる。
奇襲に反応できないまま、敵は次なる攻撃を受けたが、深々見はこの妙な手ごたえに眉をひそめた。
『少し、ボクの人形と遊ぼうか……掴め! 獄卒鬼!』
『カカッテコイヤ!ムシケラガァ!!』
「く、口が悪いです獄卒君……まぁ、き、気持ちは解らないでもないですが」
総一郎は血液の糸で古い学生服を着た人形を動かし、鎖の付いた枷を兵隊蟻に放つ。
「グアッ! な、何だと?! こ、このアリア騎士クルガンをコケにしおって!」
いきなり手痛い攻撃を受けて声を荒げた。
獄卒君は『道具』としてオウガメタルを使い捨てしてたことにご立腹のようだが、兵隊蟻はもっとお怒りだった。他に見向きもせずに総一郎に怒りを向けた。
「くたばれッ!」
テオドールは大鷲の雌のファミリアロッド、Sultanaを杖と変え、先端から大量の魔法の矢を一斉発射した。流星群のような魔法の矢にクルガンが叫ぶ。
「グォォッ!! な、なんのこれしき!」
アリア騎士クルガンはこれだけの攻撃を受けても怯まない。なお、猛き闘志を燃やしている。
「ちょっと、あなたの相手はあたしよ!」
焔は赤き髪を揺らし、働き蟻に向かって巨大な鉄塊剣を腕力だけで御す。単純かつ重厚無比の一撃で敵を叩き潰した。
「ァアア!!」
前衛を担う働き蟻は巨大な剣で殴り切られ、軋むような声ともとれる音を上げた。
複眼がギラギラと光り、焔に対して闘志を燃やしているようだ。
『真っ直ぐ飛び出す!』
敵を引きつけてくれている先輩方に勇気付けられつつ、ユーディアリアは外部へ放出するグラビティを体内へと逆転、帰還させることで瞬間的に身体能力を向上させた。
(「ボクは誰かを助けたいって、今初めて本気で思ったのかもしれません……」)
帰還させたグラビティを脚部へ集中し、敵へと愚直に突貫する。
「えーーい!!」
無理やり逆転させたグラビティは身体を蝕んだが、地獄の炎がそれを覆い隠す。小さな体を張って、彼女とグラビティは光の砲弾となった。
「ギャッ!」
兵隊蟻は全身にその攻撃を受けて半歩下がる。
「おのれ、このクルガンを下がらせたか……破ァッ!!」
「くうッ。しかし、ボクが……大役を引き受けたんだァ!」
総一郎は引かなかった。
全身に攻撃を受け、なおも前を見る。傷など痛くはない。ただ、自分が盾になり戦うのだと睨み返す。
「ほう……こんなところにも漢(おとこ)がおったか……ならば、相手にとって不足はない。来い、ケルベロス共!」
『では、手加減などはかえって非礼――俺の一太刀を受けよ! 光―元めより在りて、終焉りし時にも在り。真なる目を以って顕現せしめよ!』
すべての悪を押し返す斬撃がサラフディーンのApollyonから放たれた。
「グヌゥ……なるほど。しかし、まだまだァ!」
「みなさん、いきますよ! ほら!」
ミオは前衛にの頭上に爆発を発生させた。夏祭りのような光と音を背に、味方の士気は高まっていく。
「景気が良いね! こんな気分なら、ガチャも当たりそう!」
深々見は十界六道三悪趣餓鬼を鋭い槍の如く伸ばした。
アリア騎士クルガンを前に、深々見は本気を出す。ミオとオウガメタルが放ったオウガ粒子と爆風が深々見を強くしていた。
「ZETTAI☆届く!」
「ぐあッ! な……なんと! これが、ケルベロスの力?!」
貫かれて傷口からクルガンは汚染されていく。
「うおッ、ぐぬうッッ! し、しかしこのクルガン。困窮する仲間たちのォ、未来の為にィ! 引き下がることは、せぬ!」
「おい、あいつを攻撃だ!」
サラフディーンがネロ様に指示を出した。
「ぶにゃー!」
ネロ様は指示通りに自分の爪を立てて、クルガンを引っ掻きにかかる。
『去れ、この星から―― ……』
この世で一番重く暴力的な言の葉。
テオドールは桜花修羅刀【倭姫】に口付けながら囁き、言霊を宿しその怒りに満ちた霊力を刃に乗せる。
そして走り込むと、テオドールは連続してそれを振るい、その力を弾丸のように高密度に圧縮して飛ばした。
「このクルガン、アリア騎士にして同胞に未来を誓った者! 悪しき言霊を放つか、愚か者め!! うぬは逆凪というものを知らんのかァッ!」
「知らないね!」
「己が言葉に足元を掬われるぞ、悲しき戦士よ……ぐァッ……」
「俺たちの、星から……」
圧縮した言葉がテオドールの心臓を跳ね上げる。重い言葉を飲み込んで、テオドールは次の攻撃の準備をした。
「ボクも行くよ!」
「じゃあ、あたしも!」
「「でやああッ!」」
総一郎と焔が叫んだのは同時。クルガンに喰らいつくオーラの弾丸を二人は放った。
「ぬう! そ、それはァ!!」
「まさかッ!」
クルガンの声に深々見は声を上げる。
脳裏で閃いた何かが形になった。初手の違和感は予感だったのかもしれない。
「やったぁ!」
焔は快哉の声を上げた。
「裏戸の兄貴ィ!」
ネーロも慕っている総一郎の攻撃の威力に歓声を上げた。
クルガンを守ろうと、働き蟻たちが攻撃に出る。
深々見は叫んだ。
「このローカスト、魔法に弱いよ!」
「「えぇッ?!」」
「チャンスだね!」
総一郎が喜びの声を上げた。
「行くぞ!」
「「おう!」」
皆は掛け声を上げ、それからは、攻撃を一点に切り替えていく。
見切り以外は全て魔法による攻撃に変えた。
働き蟻一匹は羽をこすり合わせて破壊音波を放ち、もう一匹は腕からカマキリの刃のような鎌を展開してユーディアリアを斬り裂こうとする。
ユーディアリアは攻撃を食らったが、二発目はネロ様が助けてくれた。
働き蟻の攻撃にネーロは危うく意識を飛ばしそうになったが、ユーディアリアの気力溜めに助けられ回復した。
戦いは苛烈さを増したものの、総一郎の決死のディフェンスと命中率が上がっていること、弱点が見つかったことでその攻撃は威力を増している。
ミオは後方にもオウガ粒子を放ち、ブレイブマインで攻撃力を上げた。
「はははッ! これが……死の恐怖! 称賛するぞ、ケルベロス共よ!」
クルガンは叫び、総一郎に斬撃を飛ばす。
「クッ……防具が見切られている?」
「甘いな。我も騎士ぞ!」
『Quod per sortem sternit fortem, mecum omnes plangite!』
焔は電子的、霊的に思考とリンクした銃身より、弾体に自身の意識を載せて射出する。
それにテオドールの惨劇の鏡像が重なり、クルガンはもうやっと立っているのが精々ようだった。
「今よ!」
焔が叫んだ。
深々見が安寧テネーブルを放つ。
『眠ろうよ、眠ったらいいんだよォ……」
「ボクはッ……盾になるんだァァッ!!」
総一郎は叫びながら気咬弾を放つ。
「最初の死。そして、最後の死だ」
全てを無に帰す者、Apollyon――両端に巨大な刃を施した漆黒の大鎌に死を纏わせ、サラフディーンはクルガンの首めがけて振り下ろした。
●暗き森に微睡む回廊
「先に帰るな。無茶はすんなよ」
「あぁ……」
テオドールのハグに苦笑しつつ、サラフディーンは一度だけ恋人を抱きしめる。
ネーロを伴い、テオドールはヘリオンの待つ方角へと歩いて行った。
その手には、ミオから分けてもらったオウガメタルの欠片が握られている。
アリア騎士クルガンを撃破した後は、働き蟻の一匹が死に、残りの二匹が逃走した。
どうしても持ち帰りたいというテオドールの意志の強さに応え、オウガメタルは一部を分けてくれたが、残りのオウガメタルはミオから離れない。
そして、全身全霊、救出のために心血灌いだ兄と不退転の決意で助力に努めた妹は、共にゲートを割り出そうと歩きはじめる。
ある地点まで歩くと、違和感を感じる場所を通り抜けた。
「なん、だ……これは」
見上げれば、中国山地の山中に現れたゲート。
繋がった場所が悪く、発見されただけで危機となる状態であるのが見て取れた。
「兄さん……この状態って」
違和感の正体は半透明の幕のようであった。
遠く離れた所から見ると、基地拡張が行われる前の山の様子が見える。
近付けば隠されていた拠点が確認でき、狂愛母帝アリアと配下の軍勢を送り込んで拡張を続けてきたであろう状態がわかった。
「ヤバい……って感じ」
これから先は進めないという、深々見の声に皆は頷いた。
「これだけわかれば十分だ、帰ろう」
それだけ言うと、サラフディーンは皆を連れて急ぎ、その場を退散した。
作者:黒織肖 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2016年6月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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