オウガメタル救出～光を追って

■リプレイ

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　眼下に広がるのは本来暗く寝静まった山があるだけのはずだった。だが今現在。木々はざわめき山の生き物達は緊張しながら身を潜めている。
　逃げるオウガメタルを殲滅すべく、ローカスト達が木々をかきわけ大掛かりな探索を行っているのだ。
　ローカストより先にオウガメタルを見つけるべくヘリオンによって現場へと向かったケルベロス達は身を乗り出し、眼下をくまなく見渡す。
　いち早く銀色に発光するオウガメタルを確認したのはアニマリア・スノーフレーク（疑惑の十一歳児・e16108）だった。
「っ！　見つけました、２時の方向です。降下しましょう！」
　簡潔にオウガメタルの位置を仲間に伝えると、彼女は一気にヘリオンから降下した。他の面々も降下しながらオウガメタルの位置を確認し、地面へと着地する。
「先導するからついてきてね」
　フィオレンツィア・グアレンテ（神様のてんつゆ・e00223）とアニマリアは味方を先導し、移動を開始した。２人が持ち込んだ隠された森の小路の効果で、進む先の植物たちが避け、足元を気にせず森を進むことが可能となり、ケルベロス達はものの数秒でオウガメタルの元へと辿り着くことができた。
　眼前に現れたオウガメタルはアルミニウムのような金属の塊が分裂したり、はたまた一つになってりしながら動き回っていた。固いような、柔らかいような、不思議な生命体だ。味方と認識しているケルベロス達と合流できたことで、発光していた体から光は消え、ケルベロス達の様子を伺っているように感じられる。
　七海・渚（真夜中・e00252）はそんなオウガメタルへと話しかけた。
「オウガメタルさん、無事でよかった！　私達は貴方達を助けにきたんだよ」
　その言葉に続き、アニマリアも渚の横にならび、話しかける。
「ゆっくりしている暇はないんです。すいませんがオウガメタルさん、力を貸してくれませんか？」
　ローカスト達がしているオウガメタルの武装化。それをケルベロスに対してしてもらえないだろうかと打診をしたのだ。オウガメタルはその体を波打たせる。武装への変化は見られないが、オウガメタルから一緒に戦いたいという意志がケルベロス達に伝わってきた。武装化するには何か問題があるのかもしれない。
「その意志、大いに歓迎だとも。私もケルベロス達に助けられた身。一緒に反逆の狼煙をあげよう！」
　先の戦いで地球へと定命化したヴァルキュリアであるヒストリア・レーヴン（鳥籠の騎士・e24846）は、使い捨ての駒とされる姿にかつての自分を重ねていた。だからこそ、必ず助けてやりたいと強く思う。
　ふいに枝木が割れる音を唐繰・沙門（蜘蛛の糸・e03727）は聞きつけ、その方角を見やる。
「む、すでにそこまで来ていたか。皆、奴らがお出ましだぞ」
　沙門の言葉に全員得物を構える。
　内阿・とてぷ（占いは気の向くまま・e00953）は音がした方向以外からの奇襲を警戒しながら当初の予定通りには行かなかったことを悔やむ。
「う〜ん、奇襲がかけられればって思ってましたが、難しかったようですね〜……」
　ローカストとオウガメタルがまだ遭遇していなかったら、武装化をしつつ、隠れてローカストの奇襲を……と思っていたのだ。
「強いやつと戦えれば奇襲なんてどうでもいいさ。さぁ、楽しませろよ虫ども！」
　そう言い放った氷鏡・緋桜（矛盾を背負いし緋き悪魔・e18103）は温厚そうだった表情は一変し、おろしていた髪が逆立った。
　音がした方向からローカスト達が現れ、緊張が高まる。どうやら兵隊蟻１体、働き蟻は２体いるようだ。
　緋桜は戦場となりそうな周辺へとライティングボールを数個放り投げる。これで戦場の明かりも十分に確保できた。
「ではオウガメタルさんはあまり離れない程度に安全な場所にいてください！　必ず助けてみませす！」
　ラリー・グリッター（古霊アルビオンの騎士・e05288）は高らかに宣言し、前衛へと躍り出た。ローカスト達は邪魔をするケルベロス達が現れたことを正確に認識する。
「邪魔者は排除しろ！　ゆくぞ！」
　兵隊蟻の言葉に、ケルベロス達に向け働き蟻は威嚇の声をあげた。

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　真っ先に動いたのは兵隊蟻だ。前衛に向け羽をこすり合わせ、破壊音波を放つ。
「危ない！」
　ヒストリアは即座に反応し、緋桜への攻撃を庇った。しかし他の面々は攻撃が直撃する。
「この火力、長期戦になるとまずそうだ」
　寂寞の調べを奏でながらダメージの具合を見る。おそらくこの火力、クラッシャーなのだろう。作戦ではクラッシャーから落とし、働き蟻が残り一体となった場合には兵隊蟻を優先にする予定であったが、どうやら優先すべき対象とポジションがかぶっているようだ。
　ヒストリアに続き、リィクも前衛へと回復を施す。
「じゃあ兵隊蟻狙い一択かしら？」
　くすりと笑うフィオレンツィアは先ほどまでの冷静さとは打って変わり、恍惚とした表情でペトリフィケイションを兵隊蟻に向け放った。この人数の中、先手をとるその強さに、死闘を期待し、戦闘狂の本性をくすぐられたのだ。
　沙門も続き禁縄禁縛呪を兵隊蟻へと放つ。
「自分たちの星に居る分には構わんが、こちらに来たからには対応せねばなるまい」
　虫のような姿とはいえ、この大きさだ。侮らず全力で攻撃にかかった。
　兵隊蟻を狙った２人の攻撃だったが、兵隊蟻へと直撃する寸前に働き蟻の２匹に憚られてしまった。
「おっと、その隙はいただきだ！」
　攻撃を庇いよろめく２匹の働き蟻の間を抜き、緋桜は破鎧衝を兵隊蟻へとクリティカルヒットを繰り出した。
「はっ！　たいしたこ……っ！」
　近接した状態から離脱しようとした緋桜に働き蟻のキックが繰り出される。戦闘が本職ではないとはいえ、機敏な動きだ。
「させると思ったか？」
　すぐさま緋桜と働き蟻の間に体を滑り込ませた沙門が攻撃を防いだ。目まぐるしく動き回る戦況の中、その攻防の中、ラリーは働き蟻たちの死角から兵隊蟻へと破鎧衝を繰り出した。
「これは中々、お強そうです」
　確実にヒットさせた攻撃だが兵隊蟻はその攻撃をもろともせず武器を払い体制を整える様子を見て、相手の強さを感じる。その後他の面々は今後のための布石のグラビティを使ったりと体制を整える。
　またその後兵隊蟻に向けしかけた攻撃はすべて働き蟻に防がれてしまった。
　高火力にそれを守る盾が２枚。苦戦することは間違いないが、虐げられてきたオウガメタルのため、必ず勝たねばならない。ケルベロス達は粛々と攻撃を続けていった。

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　戦闘開始から３分。攻撃手達は次々とバットステータスを考慮したグラビティを放っていた。兵隊蟻へ集中攻撃を行うが働き蟻達のディフェンスも厚く、３体に平均してバットステータスは重なっていった。最初は足止めや捕縛。また味方には狙いアップなどのエンチャント効果も付与し、その後は氷や毒などのバットステータスをばらまいていた。
　下準備は万端。一番危惧していた催眠もBS耐性やキュアの効果で今の所重大な状態には陥っていない。
　ただ敵もその間黙っているわけではない。範囲攻撃の威力も驚異的だが、単体への攻撃力がとても高く、攻撃手が狙われたところをディフェンダーの面々が庇うシーンが多く見受けられた。その都度渚やとてぷが回復グラビティを使用するも、ダメージは重なり、疲労がたまり始めている中、一際ダメージを受けているのはとてぷのサーヴァント、マミックだ。
「マミック、回復します」
　とてぷはサキュバスミストをマミックに使用する。ある程度回復はするものの、残り体力は少ない。それでもマミックは果敢にも敵に喰らい付きに行った。見事働き蟻に喰らい付きダメージを与えるが、食らいついた働き蟻に蹴り上げられ、もう一体からアルミニウムシックルを繰り出され、マミックはその場で体力がつきてしまった。
　ヒストリアは前衛へ軍神の調べを奏でながら味方へ提案する。
「このままではジリ貧だ。働き蟻を一匹、先に倒さないか？」
　敵はまだ３体とも残っているのにこちらは前衛に出たサーヴァントが戦闘不能になり、他ディフェンダーも随分と体力を削り取られている現状は望ましくない。
「ヒストリアさんの言う通りかも。まずは一体、削っちゃおう！」
　その意見に同意し、渚は体力が削れてそうな働き蟻へとクイックドロウを繰り出し、他の面々もそれに続く。１体に集中し確実に攻撃を当てられればなんてことはない。攻撃に重視をおいた戦術を取っていたこともあり、一気に体力を削り取りとり、緋桜の降魔真拳で働き蟻一体にとどめを刺した。
　全員が全員、当初の作戦に固執していたら危険な状態へと突入していただろう。残りは兵隊蟻と働き蟻１体ずつ。ケルベロス達は再度兵隊蟻へと標的を絞り、攻撃を続けていった。

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　戦闘開始から５分。ケルベロス達に好機が訪れた。
　残った働き蟻が粘り兵隊蟻を庇っていたが、フィオレンツィアの旋刃脚でよろめき、隙が生まれたのだ。立て続けにケルベロス達の攻撃が兵隊蟻へと直撃し、同時に氷や毒によるダメージが重なり兵隊蟻の体力を大きく削っていく。
「時の氷に閉ざされよ！」
　アニマリアが放った矢は轟音を轟かせ兵隊蟻をその場に縫い付ける。
　彼女の隣を走り抜け、ラリーは兵隊蟻の眼前へと躍り出た。
「刃に輝きの洗礼を！ 邪悪を貫く光の奔流……受けてみなさい！！」
　グラビティで形成された巨大な光の刃が兵隊蟻へと突き刺さる。高威力の破壊力をもったグラビティはとどめの攻撃となった。
「ァ、アリア……様……」
　兵隊蟻は絶命し、その場に崩れ落ちた。
「さて、残るはあなた１人だけど……？」
　フィオレンツィアは残った働き蟻へとにっこりと微笑みかける。働き蟻ケルベロスはまだ８人とサーヴァント１体が生存している状況を見渡すと後ずさる。ケルベロス達が追撃してこないことを確認するとそのまま山の中へと逃亡していった。
　深追いはしない、と決めていたためケルベロス達は当たりの安全を確認し、オウガメタルを改めて保護した。
「危ないところでしたがなんとかなりましたね！　A friend in need is a friend indeed（困った時の友は真の友）!　よろしくお願いしますね！」
　ラリーはボロボロな状態だがオウガメタルに満面の笑顔で挨拶をする。ラリーだけではなく、前衛は皆ボロボロであと一撃、二撃でも受けたら危うい状態だった。それでもオウガメタルを助け、兵隊蟻を撃破することができたのだ。作戦は成功を収めることができ、ケルベロス達は安堵のため息をついた。

作者：鬼騎	重傷：ラリー・グリッター（古霊アルビオンの騎士・e05288） ヒストリア・レーヴン（鳥籠の騎士・e24846）  死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2016年6月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 3／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 0
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